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〈ある大学教授の書斎に残された取材メモ〉
回答者1:A・Y(女子)
『あー……。えと、まあ、そうですね。私は、嫌いかなぁ。はい。
やぁ、無理でしょ。あんまり陰口とか好きじゃないですけど、アレは流石に無理ですって。
顔合わせても挨拶もしないし、そのくせちょっとしたことでぴーぴー駄々こねるし、お姫さま気取りならそういうサークルでやってほしいです』
回答者2:C・K(男子)
『好きではないです。誰かさんみたいに"にーとちゃん係"にされたら敵わないので、僕はあまり関わらないようにしてますね。
そうだ、教授にずっと聞きたかったんですけど、あの人が入試をフルスコアで突破したって本当の話なんですか?
だから素行が悪くても全部不問にされてるってもっぱらの噂ですよ。ほぼ都市伝説の域ですけど。……え、なんですかその顔。まさか、本当に?』
回答者3:I・R(女子)
『……もしかして、アイツなんかチクった感じっすか?
――違う。あ~~、おけです(笑) 今のは忘れてください(笑)
いやあ、凄いっすよね、アイツ。アレで成人してるって流石に冗談でしょ。品性もない、知性もない、取り柄はロリィなお顔だけ。
せっかく一部には需要ありそうな体型してるんだし、キモオタ相手にアイドル営業でもしてろよって思いますわ、はい(笑)
え? アイツに何かしたのかって? んー、まあ、その。一時期ちょっとイジってあげてただけですよ。いじめとかじゃないですって。
それに泣かせでもしたら、献身的な保護者様がすっ飛んできますから(笑) 流石お姫さまですよねー、お城のセキュリティは万全みたいで(笑)』
回答者4:J・H(女子)
『先生、あの人のこと調べてるんですか? なんで――あ、やめてください言わないで。
関わりたくないし知りたくないです本当にやめてください。私の頭にアレの情報を入れないでください。
だめですよ、絶対深入りしちゃだめです。あの人やばいです。天才とか馬鹿とかじゃなくて本当に私達と違う生き物なんですよ。
自分勝手なんじゃなくてそもそも私達のことなんか見てないんです同じ生き物だと思ってないの。
私達が足元に歩いてる蟻を気にしないのとおんなじで風景かなんかだと思ってるの。
みんななんで分からないのか不思議です信じられない、ましてや小突いたり脅したりしてる奴らはどんだけ馬鹿なんだよ自殺なら家でしろよ人のこと巻き込むなボケ。
先生もあの人の目をよく見たらわかりますよ。あの宇宙みたいに深くて広くておかしくなりそうな目で見られたら生きてるのなんかヤになっちゃう。
病気とか障害とかじゃなくて、本当に頭がおかしい人って災害なんです。生きてるだけでみんなヘンにしちゃう放射線みたいなのをゆんゆん出してるんです。
心当たり、ありますよね? 最近げっそり痩せて、何か病気でもしてるんじゃないかって噂になってますよ、先生。
高天さんもおかしくなってるんじゃないですか? なってないんだったら責任持ってアレ、蔵かなんかに閉じ込めといて欲しいんですけど。
私もう大学やめます。クソみたいな家が嫌で上京してきたけどあんなのと同じ町で暮らすくらいなら親の言う通りに生きてた方がよっぽどマシ。
あんなの自由に動き回らせてたらいつか絶対やばいことになりますよ。先生も早いところ逃げた方がいいです。
天枷仁杜には、絶対、関わらないで』
(※メモ
回答者4はインタビューの数日後、宣言通り大学を自主退学して親元に帰っている。
私ももう潮時かもしれない。近頃、毎晩のようにおかしな夢を見る。異常な輝きを放つ、巨大な月を何時間も見上げる夢だ。
最近では眠るのが恐ろしくて堪らず、本業にもかなりの支障が出ている。この間など脳神経内科の受診を勧められてしまった。痴呆を疑われたようだ。
私とて、頭では理解している。此処から先に待っているのは、私如き矮小な生命体では総体を推し測ることもできない宇宙の宵闇だ。
天枷仁杜に関わるな。退学した彼女の残してくれた忠告を甘んじて受け止め、踵を返すべきなのだろう。
なのに不思議と確信があるのだ。私はきっと行くところまで行き、すべてを失いながら、求めた答えなど何も得られず失墜する。
そも何故、私は天枷さんを追おうと思ったのか。あのすべてにおいて現実離れした、少女のような大人に、こうも傾倒してしまったのか。
恐らく私は盲いている。太陽網膜症のように、強すぎる光に網膜を灼かれて、とうに正常な世界を認識できなくなっている可能性が高い。
それでもやはり私は、月の裏側を識りたいと思ってしまう。
何故。きっと、そこにあるモノを視てみたいから。
だって、そうでなければ、 )
◇◇
「では落ち着いたところで、状況を整理しましょう」
移動手段として用いていたSUVは先の一件でスクラップになってしまった。
ただ幸い東京は日本が誇る百万都市、手段を選ばなければ代わりの足は簡単に工面できる。
それはいいが、その前にすべきことがあった。
あまりに色々ありすぎたし、何より登場人物が増えすぎた。
呉越同舟というほど剣呑ではないが、流石にある程度の整理は必要である。
よって現在、一行はFWから一キロメートルほどの地点の路上で、車座になって会合の場を設けていた。
今や渋谷は爆撃機が飛び回る戦場よりも危険な、一寸先にどんな危険が潜んでいるかも分からない魔境と化している。
場所を屋外にしたのはそれが理由で、いつ襲撃があるとも分からない状況では、コンクリート製の建物は安全性を保証しないどころか逆効果。
月姫の尖兵、特に戦乙女(ワルキューレ)と呼称される個体群は空から襲ってくる。
まさかいちいち目視で敵を特定しているとは思えないし、見晴らしのいい場所でどんと構えていた方がまだマシと踏んだわけだ。
「我々の当座の目的は、この結界を展開している月神の討伐です」
月神の排除は、いずれ誰かがやらねばならない難行(クエスト)だった。
何故なら月の夢幻神界は時間経過と共に都市そのものを食い潰しながら支配圏を拡げていく大災害。
聖杯戦争の破綻だけで済めばまだいい方で、女神の支配が完成してしまえば、その先どんな地獄が待っているか誰にも分からない。
「女神・天枷仁杜を排除して渋谷を元に戻し、展開されたFWの中から輪堂天梨を救出する。
我々とアサシン・アーチャー陣営はこれで挙党一致できるかと思いますが――」
「や、いいよ。今はまだやりたいこともないしな、アタシもアンタらに協力する」
ファウストの視線に肯定を返したのは華村悠灯。
彼女はこの場で唯一、輪堂天梨と面識のない人間だ。
更に言うと、ついさっきまで全員にとって赤の他人だった新顔でもある。
先に顔触れの増加に言及したが、実質的に懸念が必要だったのは彼女達だけ。
「資格者だの神だのは未だによく分かんないけど、まあ一応聞いてる。
要するに、アレだろ。祓葉みたいなのが他にも色々いるってことだろ。合ってるよな?」
「ええ。こちらもそういう認識です」
「だったらやっぱりアンタ達とは協力できるよ。アタシもアンジェさんと同じで、アイツのデタラメっぷりを実際に見てきた人間だ」
とはいえ悠灯はこの通り、実に物分かりがよく話が早かった。
彼女は自分で言うように、恒星の資格者という概念に対してほぼほぼ無知である。
しかしその代わり、原初の極星・神寂祓葉の眩さに実際に触れている。
一の体験は百の論考に勝る。皆まで聞かずとも、悠灯はファウスト達へ全面的に協力するつもりだった。
「それに、これは個人的な心象だけどよ――この恒星(おんな)は好かねえ。こういう甘ったれた奴は張り倒してやりたくなる」
今も脳内に響く堕落への勧誘に悠灯は不快感を隠さない。
月女神の理は慈悲に溢れているが、同時にとても無遠慮だ。
相棒と過ごした時間と、辿った離別。自身にとって宝物のような一ヶ月に土足で踏み込まれ、平静を装ってはいるが内心非常に腹が立っている。
諦めよう、休もう、辛い思いして頑張り続けるなんてあなたの大事な人は望んでないよ。
大人になんかならなくていい。ずっとのんびりだらけていれば、それだけであなたは永遠に幸せなんだから。
座せる雄牛に示した答えさえ軽い言葉で侮辱され、これで噴飯するなというのが無理な話だ。
恒星どうこうを抜きにしても、この鬱陶しいラジオの配信主を引っ叩けるなら、悠灯は二つ返事で誘いに乗ったことだろう。
「それはありがたい話です。何分この状況です、人手は幾らあっても足りませんからね」
「おう」
「で、貴女にはもうひとつ聞きたいのですが……」
語った言葉に嘘はない。
華村悠灯。極星を知る者の助力は、神殺しを志すにあたり得難い後押しになる。
だからこそ懸念は彼女ではなく、悠灯が連れている英霊にこそあった。
悠灯は既に自前のサーヴァントを失っている。
そして祓葉から"炉心"を授けられた彼女は、現在に至るまで他と再契約を行っていない。
だというのに長年を連れ添った相棒のような気安さでその傍らに立つ、謎の青年がひとり。
彼への疑念を口に出そうとしたファウストはしかし止め、ホムンクルスに目配せを送った。
それで意図は通じたのだろう。幼い見た目にそぐわない厳かな声が、疑念を隠そうともせずに木霊する。
「忌まわしい顔だ。棺桶から這い出てきたか、山越風奇」
「残念ながら別人だよ。話せば長くなるんだが、まあ一種のドッペルゲンガーみたいなもんだ」
「はぐらかすな。そんな分かりきった話をしているのではない」
華村悠灯個人に関して言えば、恐らく信を置いていい人間だ。
彼女は嘘や腹芸が得意なタイプには見えないし、もし弄していればファウストかミロクのどちらかが見抜いていよう。
しかし彼女が連れているサーヴァント、山越の姓を持つ正体不明の英霊は別であった。
「山越風夏の走狗、英霊となったハリー・フーディーニだな。
何を目論んでその少女に連れ添っている? 私は貴様が信用出来ない」
「おいおい、嫌われてんなぁ。そっちの風奇(ぼく)、一体何をやらかしたんだい?」
真名、ハリー・フーディーニ。九生を渡る逃げ上手。
ミロクに言わせれば、その名を持つ生命体は老若男女問わず目障りな害獣に他ならない。
第二生の青年は肩を竦めて戯けてみせたが、ミロクの向ける殺意は本物だ。
悠灯もそれを感知したのだろう。眉根を寄せてストリート流の臨戦態勢を取る。
「こら、やめんか。貴様はもう少し思慮というものを覚えろ」
「……だが、元を辿れば」
「"だが"ではない。第一、嫌われ者は其方も大概であろうが」
あわや一触即発の場を収めたのは和装の美丈夫だった。
天若日子。アンジェリカ・アルロニカのサーヴァント・アーチャーである。
諌めた対象はミロクだが、ついでに風奇にも一瞥を送っている辺り抜け目ない。
彼も、ミロクの警戒自体は尤もなことだと理解しているのだ。
〈はじまりの六人〉。祓葉の衛星にして信奉者たる六人の死者。
その一角の遣いであるという事実は、流石に有耶無耶にはしておけない。
然るべき説明を求めると眼差しで促され、さしもの風奇も背筋に寒いものを覚える。
「おーこわ。わかったわかった、ちゃんと話すよ。と言ってもご主人様(ぼく)の考えは、自分自身でもいまいち読めないんだが……」
流石にゴリゴリの戦闘英霊が送る無言の圧は堪えたのだろう。
風奇はすべてを知っているわけではないと前置きした上で、悠灯との馴れ初めについて話した。
無論、そうなるに至った要因である、〈脱出王〉の命令についても。
一通り聞き終えたファウストの表情は、正しく"怪訝"の一言だった。
『――とのことですが、見解を窺っても?』
『にわかには信じ難い話だ。どう考えても論理が破綻している』
『意見が一致しているようで何よりです』
当然であろう。彼は針音都市の中でも屈指の知恵者だが、なればこそ〈脱出王〉の考えは理解できない。
自ら進んで蛇の狩場に飛び込んでおきながら、わざわざ懐剣を手放して丸腰になるなど狂っている。
行動のすべてを賽の目で決めていると言われた方がまだ信じられた筈だ。
しかしかのマジシャンについて深く知るホムンクルスは、理解はできずともある種の納得は抱けたらしい。
『とはいえ、恐らく此奴が述べた話に嘘はない。
全幅の信用など論外だが、華村が変心しない限りは当面安全と見る』
『……意外ですね、貴方はもっと強硬に反対するものかと思いましたが』
『私は現在の〈脱出王〉と一度邂逅している。
鬱陶しい物言いは相変わらずだったが、例の如く奴も狂気に憑かれていた。
察するにアレは、奇術劇の主役が誰かに固執しなくなったのだろう。
己の書いた筋書きで祓葉を魅せられるなら、成し遂げるのは己でなくてもいい。そういう考えの下で動いていると考えれば、まあ説明は付く』
脱出王・山越風夏の狂気は〈再演〉。
しかしそのままやり直したのでは不出来も不出来、芸がない。
自己の写身との対話を経て問題点を自覚した風夏は、その病痾を更に飛躍させた。
――より破綻した不可解(ロジック)で、より魅力的な未知(マジック)を魅せよう。
――であれば仕掛け役が主役でなければならないというお約束すら最早古い。
――採算も実利も度外視で、希求するべきはただひとりの観客に向けた心意気。
『難解です。簡潔に要約してください』
『山越風奇(これ)は奴のスペアプランだ。
〈脱出王〉は鬱陶しくはあれど、ノクト・サムスタンプほど悪辣ではない。それに』
主役の座に拘るエンターテイナーなど三流も三流。
魅せる驚きが極上ならば、そこに演者の貴賤はない。
神の視座で視る常識からさえも、必ずや脱出してみせよう。
宿敵の腹立たしい笑顔を想起しながら、ミロクは言う。
『もし不都合があれば、華村悠灯共々切除してしまえばいい。簡単なことだ』
ファウストは否定も肯定もしない。
何故なら彼は、とうにその結論へ至っていたから。
結局のところ悪魔は悪魔。取捨選択は、算盤弾きの基本だ。
同時にホムンクルスに対しても、やはり危険な存在だと再認識する。
今でこそ同じ目的を目指して合一できているが、自分がこの人形と真の意味で道を同じくすることは決してない。
理由は単純。奉ずる星が違う。神を産むための設計図が違う。
これと仲良く肩を組んだところで、待っている未来は天使と悪魔の星間戦争。
事の当人達が和気藹々としているだけで、いずれ来たる決戦(ライブ)までの道行きを舗装するのは色とりどりの策謀だ。
故にファウストからミロクへ向ける印象は、ノクト・サムスタンプに対するのと大差なかった。
もしも必要になったなら、その時ゲオルク・ファウストは、そう騙るとある悪魔は、躊躇なく天使の友人を切り捨てるだろう。
「……ご説明感謝します。こちらも、一先ずはそれで納得しましょう」
咳払いをし、ファウストは風奇の説明に建前の好意を返す。
ミロクも、それ以上は何も言わなかった。
第二生の脱出王は、実に胡散臭い笑みを湛え、「それは光栄」と慇懃に一礼してみせる。
「あー、ちょっといいか。次はアタシから質問させてほしいんだが」
これで目先の問題は解決したわけだが、まだ最大の議題が残されていた。
手を挙げた悠灯にファウストが頷く。
質疑応答の体ではあるものの、彼女が切り出さなくても別の誰かが同じことを訊いていただろう。
「神様気取りのクソをぶっ飛ばすのは分かったけどよ、具体的にはどうやるんだ?」
疑問は単純、天枷仁杜を如何にして討ち取るのか。
倒す倒すと口で言うのは簡単だ。しかし結果が伴わなくては負け犬の慰めでしかない。
神寂祓葉の同類にして完成形。恒星神の権能は推し測るまでもなく極大で、どの数値を取っても英霊の水準を超過している。
悠灯の疑問は当然のものだったが、だからこそ結論を出すのは困難極まる。
矮小な欠片達が手と手を取り合い神を討つ。物語として読むなら美談だが、いざ実践するとなると雲を掴むような話だ。
「我々はこの中で唯一、羽化する前の天枷仁杜と交流しています。
その時の彼女もいろんな意味で非凡ではありましたが、世界を思うままに塗り替えるような化け物じみた力は持っていなかった」
「……、じゃあ、何かがあったわけか。アンタらと別れた後に」
「はい。そしてその理由は容易に思い当たります」
ファウストが眼鏡のブリッジを押し上げる。
「半身の喪失」
「っ――」
悠灯が息を呑んだのは、彼女にも直近で覚えがあったからだろう。
永劫の離別は、時に人へ飛躍のきっかけを与える。
ある時は正しく。そしてまたある時は――。
「詳細は追って伝えますが、高天小都音という"半身"を失ったことが天枷仁杜を神の座へ押し上げた。
裏の取れた話ではありませんが、ほぼ間違いないと睨んでいます」
ファウストの小都音に対する印象は、必死に背伸びし続ける凡人。
実際間違いではなかろうが、彼女はひとつだけ非凡な才能を持ち合わせていた。
恒星に灼かれず、狂うことなく共に歩める不変のたましい。
今ならそれがどれほど異常なことだったのか分かる。
輝くことでしか生きられない星の娘と、彼女はずっと対等に寄り添って生きてきたのだ。
「砕月を成すのは無論簡単ではありません。事実、私どもは華村さんの質問に明確な答えすら返せない。手探りと言ってもいいでしょう。しかし」
親友を失った心の傷が、内側で眠っていた本質を呼び覚ました。
神の素養。全能の資格。揶揄でも蔑称でもない、お姫さまの資格。
哀れなことだ。その死さえなければ、彼女は歪んではいてもひとりの人間として生涯を終えられたろうに。
哀れだとは思うが、しかし。
「もし私の想像する通りの経緯なら、付け入る隙はあるかもしれない」
悪魔にとって、ヒトの哀しみほど頼れる食い扶持はない。
語るファウストの口元がわずかに歪んだのを、人狼の少女は見逃さなかった。
同時に理解する。この男は表面はどうあれ、根っこの部分は血も涙もない冷血漢なのだと。
かつて自分に手を差し伸べ、共に煙草を燻らせ、そして最後はひとり青春の彼方に消えてしまった――怖(やさし)い男の背中を思い出した。
「……あっそ。ろくでなしだな、アンタ」
「否定はしません。綺麗事だけでは難しい業種ですのでね」
だからどうするわけでもない。
どの道自分以外は誰も彼も敵なのだ、本格的に信用できなくなったら切るだけのこと。
よって悠灯は皮肉をひとつ残して引き下がったが、彼女と入れ替わりに手を挙げた人物がまたひとり。
「わたしからも、ちょっといい?」
「どうぞ。アンジェリカ・アルロニカさん」
かつて、〈雷光〉と呼ばれた或る魔術師の遺児。
アンジェリカの視線が、真っ向からファウストを見据える。
「わたしはそのアマカセ、って人とは面識ないから、あんまり踏み込んだことは言えないんだけどさ」
しかしその眼差しには、明確に値踏みの色が混ざっていた。
猜疑とまでは行かないが、何か疑念を持っているのは間違いない。
この同盟の方針についてではなく、ファウスト個人に対してだ。
今しがたの悠灯とのやり取りの前から、彼女はこの"プロデューサー"にずっとそういう感情を抱いている。
具体的には、煌星満天が資格者であると分かった瞬間から、ずっと。
「――――貴方、マンテンをそいつにぶつける気じゃないわよね?」
アンジェリカは、星を育てようとする者のおぞましさを知っている。
当人の意思を無視して、おまえは星だと囁いて背中を押す、傍迷惑なメンターを。
そうやって宇宙への道を歩まされた者がどういうモノになってしまうのかも、その目で見てきた。
「煌星は戦闘向けの魔術を体得しています。詳細は私の機密に触れるので伏せますが、過去には〈蝗害〉にも通用した実績が――」
「そういう話をしてるんじゃないの。はぐらかさないで」
だから当然、煌星満天という資格者と共に在る彼のことも疑わしく思っている。
この男もまた、聞こえだけは美しい大量破壊兵器を創り出すことに邁進する狂信者なのではないかと。
「神を討つために、神を用立てる。そんな悪だくみをしてるのかどうか、今此処で答えて」
もしそうなら、自分はこの男を信用できない。
それはホムンクルスと同じ穴の狢。
年端もいかない少女に自分の理想像を押し付ける、狂気の徒だ。
「わたしは神寂祓葉を知ってる。輪堂天梨を知ってる。今、天枷仁杜についても知った。
その上で言わせて貰うけど、"そういうモノ"を造りたがる連中のことを、わたしは絶対信用しないし軽蔑する」
驚いた様子の満天が何か言おうとしたけれど、あんたは黙ってて、と睨み付けて黙らせる。
「貴方がマンテンを恒星(カミ)にするつもりなら――わたしは、貴方の企みを砕く手段を考えなきゃならないわ」
星の否定者。それが、アンジェリカ・アルロニカの選んだ生き方だ。
神が産まれるのではない。誰かが神にされるのだ。
そのお節介の先に待つのは、世界を塗り潰す大災害。
何の罪もない年下の少女がそんな結末に堕ちることを承諾できるほど、アンジェリカは人の心を捨てていない。
そして彼女は、知っているのだ。
恒星の完成が齎す滅びの運命を。
輪堂天梨の堕天、『Fall』。
今まさに進みつつある天枷仁杜の回帰、『Daydreamer』。
ふたりの資格者が持ち合わせた破滅の未来。
であれば必ずや、天使と相克する悪魔の少女にも――
「……やれやれ」
欺瞞を許さない詰問に、ファウストは深く嘆息した。
面倒なのが紛れ込みやがったな、という心の中の毒づきは誰の耳にも届かない。
「例によって詳細は話せませんが、ひとつだけ明かしましょう。私は煌星とある"約束"をしています」
「約束……?」
「"煌星満天をトップアイドルにする"。
それが煌星の、そして私の目的でもあります。
言ってしまえばそこが肝心要の部分で、聖杯戦争に勝てるかどうかは然程重要視していません」
「……、……はぁ……?
い、いや。何言ってんの? 英霊の座から遥々出て来てやることがアイドルのプロデュース? そんなサーヴァントがいるわけ――」
アンジェリカの言うことは至極もっともである。
だがそこで、さっきは射竦められるままに黙ってしまった満天が控えめに片手を挙げた。
「あ、あのー……。たぶん、キャスターはウソ言ってないと思う……」
そう。如何に不可解だろうが、それが彼女達の絆なのだ。
約束とはすなわち契約。
ゲオルク・ファウストを騙る悪魔は、煌星満天という少女と勝負をしている。
夢見たトップアイドルの座を手に入れるか、もしくは道半ばで諦めて魂を奪われるか。
「マンテン、あんた騙されてるんじゃないの?」
「ち、違くて、あー、えぇっと、うー……」
"言っちゃダメだよね?"と念話を送る満天。
"ダメに決まってますよ?"と釘を刺すファウスト。
「と、とにかく! 私とキャスターは聖杯戦争じゃなくて、トップアイドルになるために戦ってるの。
確かにそいつ、無茶言うし時々人の心ないし、絶対私になんか隠してるし、色々アレな奴だけど――そこについては信用していい! ……と思い、ます!! はい!!!」
本当のことは言えないけど、なんだかんだで色々と世話になってきたプロデューサーが疑われるのも忍びなく、結果満天はヤケになった。
理論ではなく感情で彼の信用を保証する。むちゃくちゃな言い草だったが、しかしこうも言い切られてしまうとアンジェリカも気圧される。
第一、アンジェリカもファウストについては測りかねている部分が大きいのだ。こうしてわざわざ答えを迫っているのがその証拠である。
「とにかく、です」
咳払いをひとつし、ファウストが改めて口を開いた。
「私は己の威信に懸けて、アイドル・煌星満天を輝かせます。
その上で恒星としての羽化が最善手なら、確かにそちらへ導くことも吝かではありません」
「……! あんた……!」
「が、逆にこうも言えます」
ゲオルク・ファウストとは偽りの名。
今はまだ溶解の時を待つメッキの内側には、悪魔の真名が潜んでいる。
彼は詐称者(プリテンダー)。ある愚かな錬金術師(キャスター)の皮を被った大嘘吐き。
よってこの男は、切るカードの種類を選ばない。
「優先するのはあくまで誓い。それを果たせるならば、私は、"光の種別には拘らない"」
結末がどんな形であれ、己はそれを受け入れよう。
そこに在るモノが、時間の停止を願いたくなるような絶景ならば。
瞬間の美に、それを仰ぎ願うココロに、正しいも間違いもないのだから。
怜悧なる悪魔は、本気でそう思っている。
「もしも煌星を星にさせたくないのなら、どうぞ貴方が私達に、もっと美(よ)い道があることを教えて下さい。
そしたら私は喜んで、そちらのプランを選択しますよ」
「――――は」
あまりにもあまりな答えに、アンジェリカは思わず笑っていた。
「呆れた。悪魔ね、あんた」
「まさか。ただのしがないプロデューサーです」
新たな星を産みたくないのなら、おまえが代案を示してみろ――そう投げつけられたのだ。
よもやこんな風にやり込められるとは想像もしなかった。
断言する、この男は悪魔だ。もしくは詐欺師だ。少なくとも真っ当でないことは確かである。
「……分かった。とりあえず、腹の中を晒してくれただけマシってことにしとくわ」
だがアンジェリカは、最低限の信用はできると判断した。
違うやり方に想いを馳せる気がある時点で、頑として一本の道しか認めない狂人達より幾分マシだ。
それにこの男は形はどうあれ、煌星満天という個人のことを想っている。
「ただ、ヘンな方向に転がりそうなら容赦なく邪魔するからね。見ての通り、わたしのサーヴァントは強いんだから」
「それは怖い。ボディガードがなるべく早く帰ってくるよう祈っておきましょう」
なら、ひとまず及第点としておくべきだろう。
実際、強大なる月女神と相対する上で満天の力は不可欠なのだ。
アンジェリカもああは言ったが、その辺りの現実はよく分かっていた。
目の前の現実と、星の否定という理想をどう折り合い付けるか。
そこはこれから、出たとこ勝負で模索していくしかないらしい。
「ごめんね、話の腰折っちゃって。わたしはもういいから、どうぞ続けて」
「……アンジェさんって結構やり手だな。さっきの、なかなかエゲツない恫喝だったぞ」
ともあれ、星絡みの問答はこれで一段落だ。
感心したような口振りの悠灯に、アンジェリカは唇を尖らせた。
「失敬なこと言わないでよ、ユウヒ。わたしは言いたいこと言っただけだから」
「まあでも、ちょっと安心したかも。アタシもさ、ソッチ方面の話はあんま気乗りしなかったし」
「え~? わたしはいいと思うけどなぁ……。神様になるって、実際けっこう素敵じゃない?」
悠灯もまた、星の哀しさを知る人間だ。
彼女は神寂祓葉と袂を分かった者。
星の誘惑を捨て、ネバーランドに三行半を突き付けて、大人になりたいと願った孤狼。
相棒との永訣を経て答えを得た彼女も、神の誕生よりそこにいる少女(だれか)の幸福を願える人間だったらしい。
「ま、そういうわけだから。改めてこれからよろしくね、マンテン」
「アタシもな。……まあ、なんというかお前、アタシの周りにはいなかったタイプだからさ。あんま怖がらないで気安く接してくれると嬉しい、かも」
「アッ……ハ、ハイ……ヨロシクオネガイシマス……ヘヘ……エヘヘ……キョ、キョウハイイ天気デスネ……」
「よろしくね~! ねえねえ、あとでみんなでゲームしない?」
三人寄れば姦しい。
外部の因子を加えて、此処にもうひとつの砕月同盟が完成した。
「――それで。これからどうするの、敏腕プロデューサーさん」
「ねー。どうするんだろね? 本当に」
さりとて、重要なのはこれからだ。
雨降って地固まったはいいが、肝心の部分はまだ何も見えていない。
ファウストには神討ちの心当たりがある。
ただ、現実問題として女神は未だ繭の中。
彼女は眠っているだけでいい。それだけで誰も彼女を害(おこ)せない。
「まあ、どうにかするしかねえだろ。こんだけでかくコト構えてんだし、誰かしらおんなじこと考えてる連中もいるんじゃねえか?」
「うんうん、それで?」
「三人寄れば……、……なんだっけ。とにかくそういうことだよ。
ルール無用の喧嘩の基本でな、頭数集めてぶっ叩けば大概なんとかなんだ。アタシは趣味じゃねーけど」
「え? 三人ぽっちでわたしのとこまで来る気なの?」
悠灯の予想は当たっている。
此処に成立した砕月同盟は"二つ目"だ。
白黒の魔女と、茨の王子。そして暇を持て余した狩猟の女神。
野蛮極まりない姦しさを体現したもうひとつの神殺し勢力が、既に進軍を開始している。
「上手いことサーヴァントがどうにかしてくれたらいいんだけどね。聖杯戦争でマスターが出張るって、本当はすっごく異常なことなんだから」
「いやぁ、まぁ、無理じゃない?」
「やってみなきゃ分かんないでしょ、それは。わたし達だって持ってるモノは極上な筈。キャスターの言う通り、何かしら糸口はあると思う」
「や~~、やんなくても分かるよ。だっていちばん強いサーヴァントはずっとわたしのそばにいるんだもの。スライムが寄ってたかっても大魔王は倒せないでしょ」
弓兵、奇術師、悪魔、暗殺者。
四騎の英霊でさえ尚、恒星神を射落とすには不足すぎる。
よって砕月同盟の一本化は避けて通れない必須条件だった。
何しろ月の女神は、都市における最強の一角・全能の奇術王を喰らい再誕した、霧の月主神(ウートガルザ・オーディン)なのだから。
「ちょっと、さっきからなんで黙りこくってるの男衆。
認めたくないけどあんた達が頼りなんだから、黙ってないで意見出しなさいよ」
「……、……あ、あの」
「ん? 何だよ、満天」
月は常に地上を笑覧している。
昼と夜。視える視えないの違いなど結局のところは些末。
星とは常に其処にあるもの。
よって完成した恒星神に距離の概念は適用されない。
人類悪の資格持つ獣が、時空を超えて任意の地点(ポイント)へ顕れるように。
そも、抗おうという思考そのものが神の掌中だということを忘れてはならない。
「ふたりとも、さっきから、誰と喋ってるの……?」
月は視ている。
神は観ている。
視界の中に在るのなら、当然、触れることも可能である。
「「――――ッ!?」」
満天に指摘されて初めて、アンジェリカと悠灯は理解した。
この場に自分達ではない"誰か"が紛れ込んでいることに、ようやく気付いたのだ。
「…………馬鹿な」
唖然と零したのはホムンクルス36号、通称ミロク。
ファウストをも遥か凌駕する解析能力を有した彼は、気配遮断を適用したアサシンクラスの接近さえ察知する。
だがその彼が、今は信じられないという顔で瞠目していた。
「ッ、下がれ、嬢ちゃん達――!」
「今だけは貴様に同調してやる、暗殺者!」
闇を切り裂いて顕れる、髑髏面。
次いで、即座に溌剌とした殺気を剥き出す天津神。
短刀と剛弓が時を同じくして轟き、アンジェリカと悠灯のちょうど間に立っていた"ソレ"を狙い撃つ。
が。
「非道いなぁ。せっかく会いに来てあげたのに」
刃が通らない。
矢が弾かれて地面へ転がる。
規格外の強度だというのに、阻まれたそれぞれの得物は刃こぼれひとつ起こしておらず。
その事実が、"ソレ"が物理的なあらゆる概念から切り離された、別位相の星であることを証明していた。
「でもちょっと安心。わたしをやっつけるっていうからちょっと怖かったけど、まぁ、やっぱりその程度だよね」
アンジェリカが、息を呑み。
悠灯が、背筋を凍らせ。
満天は、目を離せなかった。
ミロクも、英霊達も概ね同じだ。
これを前にして、ヒトと英霊の間にそれほどの差はない。
ただ其処に在るだけで、世界のすべてを圧倒する。
その存在ひとつを以って、理をねじ伏せる。
だからこそ、これは、こういうものは。
星に散りばめられた神話の主役達は――
「やっほー。久しぶり、満天ちゃん。あとその他大勢のみんなも」
――恒星(カミ)と、呼ばれるのだ。
「跪け。わたしが星だ」
◇◇
天若日子は武の神格。よって害意があれば即座に見抜く。
ハサン・サッバーハとは死の本殿。そこに殺意があれば彼の目を逃れられない。
メフィストフェレスは悪魔。あまねく悪意は頭脳を以って濾過される。
そしてガーンドレッドのホムンクルス、その36番目は最高傑作。天使の加護を賜り成長した彼の空間演算は英霊すら凌駕する。
どれもが、神の出現をまったく察知できなかった。
そのことが、彼女の神話をより確かなものとする。
(――素晴らしい誤算だ。完成した星は紛い物ですらこれほどの数値を叩き出すのか)
ミロクは、天枷仁杜を恒星と認めていない。
だがそんな彼でさえ、今は目の前の輝きから視線を反らせなかった。
魔力。存在強度(スケール)。放つ気迫の深度。
弾き出された概算数値、その算出結果すら幽けき輝きを帯びている。
すべてが規格外。否、数値で測ろうという発想自体が烏滸がましい。
創作物の世界を現実の法理で読み解こうとするかのようなもの。これは絵空の世界の住人だ。
答えなど出るわけがないし、出せるわけがない。
それでも彼は知らねばならなかった。天使という恒星の天昇を願う狂人に、それ以外の選択肢はなかったから。
「【同調/調律(tuning)】――」
魔術回路を廻し、目の前に佇む小柄な影へ全機能を傾ける。
表層より更に深く、薄笑みの底に広がる実数を読み解かんとして。
「――ご、ぁ……? がはッ……!」
「大将ッ!」
次の瞬間、ホムンクルスの鼻と眼窩から大量の血が溢れ出した。
情報量の許容値突破。ひとつの用途に最適化された脳がオーバーヒートし、破壊的な返し風を運んでくる。
彼が輪堂天梨によって成長させられていたことは幸運だったろう。
そうでなければこの愚行の代償に、回復不能な脳損傷を負っていたやもしれない。
『おやめなさい。貴方を失えば我々も困る』
『……ああ、そうだな。済まん。しかし、分かったこともある』
身を案じるよりも自分達の実利を優先したファウストの念話に、ミロクも恨み言ひとつ零さない。
何故なら彼らこそ真の呉越同舟。
天使と悪魔、いつか雌雄を決する星々を用立てたがる守り人達であるから。
『アレには勝てん。少なくとも純粋武力で打ち倒すのは不可能だ』
『あのFWと同じで、ですか』
『いいや、もっと質が悪い。恐らく全身を極めて強固に概念化している。対粛清防御と同種か、更に異質な代物だ』
それが、激痛と引き換えに持ち帰ったホムンクルスの演算結果。
勝率は皆無。この世の誰であれ月女神の微睡みを害せない。
今まさに極限の絶望を齎していることなど露知らず、当の女神はミロク達へ一瞥もくれず、ある少女の方を向いていた。
「満天ちゃん。久しぶり」
アンジェリカも、悠灯も、等しく動けなかった。
現実の存在として顕れた月の神を恐れているからではない。
恐怖だの畏怖だのよりももっと上の次元で圧倒されていた。
だってこの存在は、生き物として常軌を逸して美しすぎた。
白い羽織は神域で育成された蚕蛾の繭を解し、得られた糸の最初の一寸だけを縒り合わせたよう。
それを纏った手足はいずれもか細く、触れるだけで折れそうなのに、この世の如何なる宝石よりも頼もしく輝いて見える。
華のかんばせは言わずもがな。きっとこの世界に、これより美しいモノなどありはしない。
色の残った片瞳は万華鏡の最上値のみを切り出したようで、色を失ったもう片方さえこの星神が有しているなら至純の雫。
発する声など、聞くだけで悩み迷いのすべてが優しく溶けて、甘やかな堕落に浸れる極上のウィスパーボイスだ。
美しい。キレイだ。この女はこんなちいさな身体で、すべてにおいて非の打ち所なく完膚なきまでに完成されている。
だから動けない。誰も彼もが固まるしかない。
お前達は器ではない。星に伸ばした掌は空を切り、誰もがやるせなさを噛み締めるしかないのだから。
神は、只人(おまえたち)など端から見てもいない。
「ごめんね。わたし、怒らせるつもりなんてなかったんだよ」
「ぁ……」
顔に片手を添えられ、顎を持ち上げられて。
満天は、消え入るような声を漏らすのが精一杯だった。
「仲良くなりたくて、がんばってお話振ったんだけど……。
満天ちゃんの好きなヒトのこと、悪く言っちゃってたんだね。
あの後しこたま怒られてさ、だから謝りに来たんだ。許してくれる?」
「う、……う、ん……」
この場で、"成る"前の天枷仁杜を知る者はファウストと満天だけ。
満天は、仁杜という人間が一体どれほど無配慮で無遠慮かよく知っている。
人の大事なものを我が物顔でこき下ろし、相手がそれを聞いてどう思うかなんか考えもしない。
率直に言うと、この女のことは嫌いだった。
もう二度と会いたくないと思っていた。
けれど、いや、だからこそこう感じるのだ。
これは、本当に天枷仁杜(あのひと)なのかと。
「よかった。許してくれるんだ。じゃあわたし達、もう友達だよね」
「え、えぇ……? そ、それはちょっと、さすがに早いんじゃ……」
「なんで? わたしが仲良くなりたいって言ってるんだよ。
ほら、満天ちゃんも嬉しいでしょ。神様と友達になれるなんてめったにないよ~、周りに自慢できちゃうねっ」
「あ、え……? そ、そうかな……? そうかも……はは、あはは……」
謝意を伝えているのに、こっちの意思なんて汲む気もない。
その傲慢さは相変わらずだ。だけど、今浴びせられているのは原液すぎた。
我こそ世界の中心。我こそ星。ならばおまえら、等しく跪け。それこそおまえにとって、至上至大のしあわせなのだから。
そう遠慮なしに告げてくる神を諌める"誰か"は既に居らず。孤独の一番星は、どこまでも狂おしく美しくなれる。なれてしまう。
「じゃ、謝ったから、もういいよね」
「え」
「今度は本当に友達になろう、満天ちゃん。あなたのライブ、本当に感動したんだから」
つ、と指が翳される。
謝意は一瞬。彼女にとって、他人の心を慮るという機能はもう本当に意味のないものに堕してしまったから。
相対する満天に、ついぞ敵愾心さえ抱かせない神秘の極致。
よって伸びてくる右手に、悪魔の少女は反応することさえできなかった。
「――いけません煌星さん、離れなさい!」
ファウストが吼えるも、すべて遅い。
否、早かろうが遅かろうが関係ない。
神が触れ合いを望んだのだから、下々の者は頭を垂れて光栄に与るのが定め。
「仲直りの印に、救けてあげる」
混じり気のない究極純度の善意で、仁杜が満天へ触れた。
額に沈み込んでいく女神の指。接地点が水面のように歪み、貫いているのに血の一滴も出てこない。
「さあ、しあわせになっちゃおう?」
暴くのは、煌星満天の底に秘められた暮昏満点。
本人でさえ忘却した、或いはそうなるように仕組まれた記憶の秘密箱。
複雑怪奇に絡み合った脳細胞(ニューロン)の寄木細工を、神の指が凌辱した。
◇◇
『満点。俺達は失敗した』
『どこから、かと問うのなら、やはり産まれた家と時代だろう』
『百年そこらしか積み重ねのない極東の凡家。
根源への方舟を造るにも、西洋の貴族共はこんな田舎者に貴重な資材を融通してなどくれない』
『――ああ、ものの喩えだ。本当に木や鉄が欲しかったわけじゃない。強いて言うなら、求めていたのは鏡だ』
『古代メソアメリカにルーツを持つ黒曜石の鏡。それが二枚あれば最高だった。
鏡は光だけでなく気をも反射する。行き場をなくした陰気は乱反射を繰り返し、局所的な異界への門を作り出せる。
最もインスタントな降霊術だ。それをかの"煙る鏡"の触媒でやれたなら、俺達の望みは速やかに叶っていたかもしれない』
『鏡を使うなら、水鏡という手もある。お前も聞いたことくらいはあるだろう。
夜中の十二時に鏡の前で桶に水を張り、剃刀を咥えて覗き込むと、未来の伴侶の顔が映る……まぁ、手垢の付いた怪談だが』
『さて、此処でひとつ質問をしよう。合わせ鏡と水鏡、ふたつに共通している点が一個ある。それは何なりや』
『……そう、正解だ。いずれも鏡の向こう側に怪異が現れ、こちらの心胆を寒からしめるわけだ』
『鏡は身なりを整える道具であると同時に、才能の有無を問わずに異界を観測できる望遠鏡だ。
こちらの世界と瓜二つの、左右だけが反転した世界。少々屁理屈じみてはいるが、これもまさしく異世界だろう』
『この世界で"存在しない"とされるものに接触したいのなら、此処とは違う世界に手を伸ばせばいい。
其処は怪異と神秘の原生林だ。歴史の深いも浅いも関係ない。其処に在るものを取り出すだけなのだから、しち面倒な資格を求められることもない』
『そんな発想自体が、今となっては失敗だったと言わざるを得ないが』
『俺達は釣り堀に糸を垂らしたんじゃない。垂れてきた糸に食い付いたんだ。
左右反転の世界に貯蔵された蜜が、我々が知るのと同じ味だなんて保証は無いのに』
『だから兄貴は歪んで――父さんも母さんも■■■■■■――きっと、俺も、もう、いずれ――』
『話が長くなったな。つまるところ、俺からお前に言うことはひとつだ』
『この家を出ろ。一刻も早く、出来るだけ遠くまで逃げるんだ。最後の仕事だ、蓋は俺が閉めてやる』
『父さん達から聞いた。アイドルになりたいんだってな。いいじゃないか、俺はお前に合っていると思う。案外、立派に叶えられるかもな』
『そしていつか、お前も恋をするのだろう。あの馬鹿兄貴と同じように』
『願わくばその初恋が、春の木漏れ日のように美しくあたたかなものであるように、最後に祈っておこうか』
『……それは俺達が、叶えられなかったユメだから』
『…………、満点?』
『聞いているのか? おい、満点――』
『――――――待て。貴様、誰だ?』
◇◇
『お兄ちゃん』
『諦めちゃったんだ?』
『それじゃあ、■■■■■■』
◇◇
深夜12時00分00秒に合わせ鏡をすると、鏡の道から悪魔が来る。
◇◇
――――――暗転。あるいは、
◇◇
知らない記憶が、濁流のように頭の中から溢れてくる。
まるでうつらうつら舟を漕ぎながらやるテレビのザッピング。
私の頭から出てきたんだから私のものでしかない筈なのに、ちっともそれに現実感を持てない。
目の前で私の箱(あたま)を暴く神さまは網膜が焼け焦げるほど綺麗で。
昔美術の教科書で見た、天使と人間の絵を思い出した。
そうだ、受胎告知だ。人ではないとてもうつくしいものに、自分の真実を伝えられる神話の一幕。
そんなすべてが薄ぼんやりとした神秘体験の中で、唯一実感を持って受け止められたワードがある。
『暮昏光点』。三きょうだいの真ん中。私の、下のお兄ちゃんだ。
光点お兄ちゃんは理屈っぽい人だった。というかヘンなヒトだった。
いつもおどろおどろしい本を難しい顔で読んでいて、部屋の本棚には胡散臭いパッケージのホラーDVDがびっしり。
なのに本人はいつも真面目な顔でそれを見漁ってて、私が訊くとにこりともせず『受験勉強みたいなものだ』と言ってのけるから唖然としたっけ。
正直まともな話をした記憶はない。なのにどうしてこんなことを思い出してしまったのか考えても考えても答えが出ないし、出しちゃいけない気がする。
だってせっかくお兄ちゃんが蓋を閉めてくれたのにその中身を私が覗いてしまったらそれは見るなのタブーに抵触して■■の再臨条件を達成し10月21日の聖餐をやり直すことになって、ああ違う知らない知らない何を言ってるのかわからない。
「かわいそう」
神さまが、私に言った。
怪我をした小動物でも見るような顔だった。
「せっかく逃がしてもらったのに、結局そっちに行っちゃうんだね」
「……な、にを……いっ、て……」
「暮昏の聖餐。あなたは見落とされた時限爆弾。すべてが台無しになるその時まで、誰もそのことに気付けなかった」
ああ、この人はきっと、もう全部そういう風にしか見えなくなってしまったんだろう。
苦手な相手だったけど、あの良くも悪くも天真爛漫とした振る舞いを覚えているとなんだかすごく切なくなる。
神は人を愛玩(めで)るもの。真の意味で友誼を結べることはない。だって目線が合わないし、その必要もないんだから。
「満点ちゃん、もうやめよう?」
だから私の中身を覗いておきながら、こんな科白が吐けるのだ。
「あなたはもう十分がんばったよ。アイドルにもなれた、あんなに素敵なライブもできた。だったらさ、そろそろおしまいにしてもいいじゃない」
それをしたら私は死んでしまう。
ツギハギの舞台衣装は生命維持装置。
その縫い目を、神さまが優しく解いてくれる。
「天梨ちゃんのことも、わたしがなんとかしてあげるから。
そしたらみんな幸せ、なんにも怖いことなんてないんだよ」
もしこの声に従えたなら、きっととっても気持ちがいいのだろう。
私は解放される。すべての恐怖と宿命から解き放たれて、生まれたままの姿になれる。
最高の気分で足を弾ませて、幸せだなぁと陶酔しながら"あれ"の晩餐に並ぶのだ。
今もきっと私を追いかけ続けている、黒い影の捕食者。
"あれ"は諦めたものを喰べる。だから私は、諦めることを許されてない。
救われてはならない。いつか抱いたユメを叶えるまでは。
なのにそんなのお構いなしに、身勝手な救世主は私を救けてしまう。
「さあ、おいで。こっちの水は甘いよ」
やだ。やめて。絶叫したいのに声がうまく出せない。
溢れ出す過去の断片と、それをも押し流す救いの魅惑。
言い聞かせて貰うまでもなく月の誘いは脳が馬鹿になるほど甘くて、絶対頷いちゃいけないと分かってるのにそっちへ行きたくなってくる。
「一緒に行こう、満点ちゃん。あなたも私の友達(みんな)にしてあげる」
四肢が痙攣して、喃語のような声が口をついて出る。
恒星の輝きが私をどこかへ連れていく。
堕落の底、甘くて優しいどん底の月面に。
或いは。私にとっての〈はじまり〉である、あの暗闇に。
「わ、た、しは……」
私を、救けないで。
私を、助けて。
矛盾した願いを懐きながら、理性ではない本能が、致命的な一言(ワード)を吐き出そうとして……
「――――おい」
横から割って入った誰かの手が、神さまの腕を掴んでいた。
「人の米櫃に手突っ込んでんじゃねえ。殺すぞ」
こめかみに青筋を浮かべて、犬歯を剥き出しにして。
見たことないくらい怖い顔をしたキャスターが、私を地獄へ連れ戻したのだ。
◇◇
触れた刹那、ファウストの右腕が音を立ててひしゃげていく。
関節が物理的に増設されて、骨肉が捻れていく光景は雑巾を絞るのに似ていた。
仁杜は何もしていない。ただ"邪魔だなあ"と思っただけだ。
蟻が象を噛むのにも劣る些細な茶々入れだったが、その介入で一瞬、満天の身体に自由が戻る。
「……っ、はぁ、はぁ……!」
「――マンテン!」
わずかに身を反らしたことで、額へ沈んでいた神の指が抜けた。
その一瞬でようやく我に返ったアンジェリカが魔術を起動。
思考の超加速で月の魅了を振り払い、瞬電の速度で満天を掻っ攫う。
「大丈夫!? しっかりしなさい!」
「う、ん……。たぶん、大丈夫だと、思う……っ、ギリギリ……」
満天の言葉は半分は強がりで、半分は本当だった。
今も頭の中には死にたくなるような甘ったるさが残っているし、正直に言うと吐きそうなほど具合が悪い。
ただ、脳のどこかが破壊されたとか、おかしくされたとか、そういう感覚はしない。
ということは、やはり仁杜なりの善意による行動だったのだろう。
蓋をズラされた――そんな形容が脳裏に浮かんだ理由はよく分からなかったので、口には出さず留めた。
「聞きしに勝るクソ女だな。人の身内に手出しやがって、ボコられる覚悟は出来てんだろうな?」
悠灯も時を同じくして忘我の境地を脱し、人狼の力を引き出し臨戦態勢を取る。
だが頭は冷静だ。正式な契約を結んでいないため念話を使えないのが不便だったが、目配せだけでライダーに意思を伝える。
"ツー、緊急事態だ。これ以上やばくなったらお前の判断で、一番強ぇフーディーニを出してくれ"
その命令に応えた場合、別な意味で制御の利かないモノが出てきてしまうことを悠灯は知らない。
しかしだとしても、このまま目の前の神に嬲り殺されるよりはマシだろう。
今の一幕を見て悠灯は確信していた。これは自分が欲した未来のカタチとは真逆を行く、停滞という現象の具現であると。
永遠の子ども。ネバーランドに帰化した停滞者。成程確かに、祓葉の同類に違いあるまい。
「えと、ごめんね? 満点ちゃん以外にはあんまり興味ないんだ。逃げたかったら逃げてもいいよ?」
気まずそうに目を逸らしながら言う姿はコミカルだし腹も立つのだが、これだけの級位(スケール)の存在がやっていると逆に怖気が立つ。
津波や台風が愛嬌のある行動を取ったとして、それに小気味いいツッコミを入れられる人間はいない。それと同じことが人型の生物で起きている。
「それにさっきも言ったけど、……あー、名前なんだっけ……? まあいっか。とにかく、貴方達じゃわたしをどうこうはできないわけだし」
ファウストの片腕をスクラップに変えながら、素面とは思えない傲慢な科白を何の悪気もなく吐き散らす。
「できないことに時間を使ってもしょうがないでしょ。ほら、その時間でのんびりおしゃべりでもしてたら? お酒とお菓子でもつまみながらさ」
これが恒星神。これが少女性の成れの果て。
神々しく瞬く、世界で最も美しい腐乱死体。
悠灯はただひとり、アンジェリカが何故ああも強い剣幕でファウストに迫っていたかを理解した。
こんなモノは、生み出してはならない。
好きな奴、嫌いな奴、この世界にはたくさんいるけれど。
それでもこんなキレイなだけの化物になっていい人間なんてひとりもいないと断言できる。
自分は一度はこれに成りたがっていたのかと思うと愕然としたし、比喩でなく背筋が凍る思いだった。
「ご忠告感謝します。しかし生憎ですが、少々慢心が過ぎるのではありませんか」
生きながら腕を捻り潰されるのは絶叫モノの激痛だろうに、ファウストは汗一つ流さず、そんな女神へと語りかける。
仁杜がこてんと首を傾げた。本当に何を言われているのか分からないのだろう。
しかし悪魔は舌鋒を緩めない。顔に飛んだ血飛沫を指先で拭いながら、切開に臨むように口を動かし続ける。
「貴方は力のあるだけの子どもです。ウートガルザ・ロキのような悪辣さもなければ、高天小都音のように愚直でもない。
私に言わせれば甚だ疑問ですよ。何故、降って湧いた力を頼りにそうも舞い上がれるのか」
「……うーん」
「それとも。神は神であるだけで、誰にも足元を掬われないと信じているのですか?
でしたら老婆心ながら忠告しましょう。古今東西、神の失墜はそういう傲りから起こるものですよ」
「う~~~~~ん……」
かつて、天枷仁杜の率いる大同盟は掛け値なしの脅威だった。
最強の幻術遣いと最強の殺人鬼を有する彼女達は、最も聖杯に近い一団であった。
しかし今や奇術王は去り、無頓着なお姫さまのために政治ができる相棒も散っていった。
「えっと、なんか、勘違いしてない?」
彼女は独りぼっちの夜空の星。
指摘自体は正しいが、仁杜の圧倒的戦力を崩すアテがない事実がその正論を負け惜しみに堕させている。
ゲオルク・ファウストという悪魔(おとこ)を知る者なら、彼がただの感情任せにベラを回すなどあり得ないと疑念を抱いたろうが――
しあわせの恒星神は、そんな難しいことなんて考えない。それに彼女の目線では、もっと明確に訂正するべき箇所があったのだ。
「ロキくんとことちゃんなら、今もわたしの傍にいるのに」
「――――は?」
「ね、ロキくん! なんだろね、これ。わたしを動揺させる策か何かなのかな。
あう、そ、そんな呆れないでよぉことちゃん。こんなうすほそなインテリになんか負ける方が難しいってぇ……」
虚空と漫才を繰り広げる姿は、これまでに見えた神秘性とは趣を異にする異常な代物だった。
ファウストが言葉を失う。先に浮かべた不敵な笑みも忘れ、悪魔は神の痴態を呆然と見つめていた。
「わかったでしょ? わたし達は何も変わってない。わたしは何もなくしていない」
曰く、古い時代の人々は月を狂気の象徴と呼んで恐れたという。
夜天に揺蕩うあの星が狂気を運ぶ病原ならば、その写身たる神もまた狂っていて然るべきだ。
天枷仁杜は狂っている。壊れている。彼女を正常の世界に留めていたものはすべて失われ、残ったのはひとつの全能だけ。
ゲオルク・ファウストが如何に智謀冴え渡る策略家でも、仁杜を心理戦で倒すことは不可能だ。
早々に匙を投げたノクト・サムスタンプこそ正しい。
圧倒的な力から繰り出される絶対的痴愚は、どんな綿密な計略でも真正面から踏み潰してしまう。
「まぁ、それでも来るって言うなら、別にわたしはいいけどさ」
仁杜の視線がくるりと、再び満天の方を向いた。
「満点ちゃんはもう、そんな無駄なことしないよね?」
この場で月女神が意義ある他者と認めているのは煌星満天ただひとり。
仁杜にとって、満天との喧嘩別れは唯一残る未練だった。
小都音にも散々叱られたし、次会ったら誠意を込めて謝るようにと言い聞かされていた。
だから謝罪と、あの一件の補償を兼ねてこうしてわざわざ顕れたのだ。
堕落の理を通じて満天の内心に触れ、とても深い闇を抱えていることを知ったから。
仲直りして、ついでにそれを取り除き、煌星満天ではなく暮昏満点という少女を救けるために寝殿を出た。
よって仁杜は、満点の記憶の深淵を知っている。
暮昏光点が最後に閉じた蓋の奥に眠る、聖餐の真相を識っている。
その上で、今や女神は心から彼女の安らぎを願うようになっていた。
歩みを止めよ。すべてを諦め、堕ちてしまえ、と。
「――――私は」
満天が口を開く。
まだ息は荒く手足も震えていたが、それでも確と目の前の神を見据えて。
「私には、夢があるんだ」
アンジェも悠灯もとても親切だ。
ファウストだって自分のために身を粉にして働いてくれている。
けれど、おんぶに抱っこじゃいられないこともあった。
「トップアイドルになりたい。誰もが私にペンライトを振って、私の歌でアツくなってくれる、そんな最凶の偶像(アイドル)になりたい」
やめたいと思ったことなんて何度もある。
されど煌星満天は、諦めることを許されない。
彼女はずっと、自分の影とゲームをしているから。
でもこの都市に来てから、夢は久しぶりに最初のカタチを取り戻していた。
「それに……約束したんだ。絶対助けに行くって」
天枷仁杜は怖い。見ているだけで気が変になりそうになる。
だけど、怖いくらいキレイなものなら他にも知っている。
満天にとっての憧れで、この世の何より恐ろしい死神。
白い翼をはためかせて舞う"最強"の偶像が、今も瞼に焼き付いて離れないのだ。
「堕ちてなんかいられない。私は、私の意思で、この気持ちを"諦めない"」
忍び寄ってくる"あれ"なんか、今はこの際どうでもいい。
私が、諦めたくないんだ。私が、そこに行きたいんだ。
星でも何でも構わない。なりふり構わず、泥に塗れ土を噛んででも、辿り着きたい舞台(ステージ)がある。
「だから――」
震えたままの指を、神へと向ける。
銃口を突き付けるようなその仕草は、紛うことなき宣戦布告だった。
「――私は、あなたに勝たなきゃならない。無駄でも無謀でもなんでもいい。それをしなくちゃ、満点(わたし)は満天(わたし)でいられない!」
それは、神を撃ち落とす灯。
ふたりの詐欺師を魅了した悪魔の少女が遂にヴェールを脱ぐ。
標的は恒星神。耽溺の終末星、『堕落恒星・月姫真体(ムーンセル・オートマトン)』。
満天の啖呵を境に、数秒の沈黙が流れた。
その静寂を断ち切ったのは、神の溜息。
「……はぁ。いいよ、わかった。フラれちゃったってことだね」
仁杜は不貞腐れたように眉根を寄せて、頬を膨らませる。
彼女には人の心が解らない。
だからバックボーンを読み解いたところで、肝心な部分を不要と切り捨ててしまう。
満天の夢に懸ける想いだ。仁杜はそれを不要な蛇足とみなしたが、であれば神であろうと満天の意思を挫けない。
過去の欠落した時限爆弾。そんな彼女を突き動かす唯一にして最大の骨子/衝動こそ、トップアイドルへの憧憬なのだから。
「わたしは、みんなにしあわせになってほしい。
つらいコトなんか何ひとつしなくていい、誰もがのんびり休んでだらだら暮らせる世界が理想だと思ってる。
わたしの知ってるしあわせを、"その他大勢(みんな)"にもお裾分けしてあげたいんだ。だけど――いや、だから、かな」
女神の隻眼が、妖しい蒼白の輝きを強める。
身勝手な救済を真理と説く狂気の神が示した感情の名は、ごくごくありふれたものだ。
「せっかくわたしが親切にしてあげてるのに、そうやって無碍にされるとさ。なんだか踏み潰したくなっちゃうよ」
神はせっかく差し伸べた手を振り払われて、ちょっぴり不快な気持ちになった。
「――なんてね。ふふ、じょーだんじょーだん。びっくりした? やだなー、そんな大人げないことするわけないじゃんか」
走った戦慄は、もはや一種の攻撃行為にも等しかった。
霊基が軋む。意識が揺れる。あらゆる生存本能が悲鳴をあげ、此処から逃げろと喚き立てる。
「神様なんだもん、みんなのお手本じゃないとね。ヤなことはしない、面倒なこともしない。わたしはのんびり寝てればいいや」
此処にいる全員が、月の神を微塵も舐めてなどいなかったが。
しかしそれですら認識があまりに甘すぎたのだと理解した。
彼女がもし本当にその気だったなら、今の一瞬で全滅していただろう。
神は人を導くモノだ。けれど同時に、切り捨てることもできる。
惑星の色を選ぶ権利と、そこに息づく命を間引く権利。
裁定者(ルーラー)の審判を前に、資格なき者は異議も許されない。
「好きにしなよ。それもわたしが許してあげる」
神の気配が、空に溶けるように薄らいでいく。
魔術界においては魔法の領域とされる空間転移を息を吐くように行いながら、堕落の女神は去っていった。
死者はゼロ。負傷者はファウストとミロクのみ。彼我の戦力差を加味すれば奇跡と言っていい僥倖だ。
だが、口の中には舌を噛み潰したような苦渋の味が広がっていた。
討つべきモノの強大さを思い知っただけならまだいい。
真に絶望的なのは、仁杜にはすべてが筒抜けだったという事実だ。
神は全能。抗う者の愚かさすら寝殿の中で寝転びながら笑覧している。
釈迦の掌で踊る孫悟空のように、自分達は玩ばれ、見逃されているだけだとこれ以上ない形で突き付けられた。
「――く、くく」
ファウストの口から、引き攣った笑いが漏れる。
満天が心配そうな顔で見たのは無理もないだろう。
片腕を破壊され、得意の知能戦は通じず、示されたのはただ絶対的な力の差。
さしもの彼もこれにはお手上げなのだ。
あまりの失意に打ちのめされ、もう笑うしか出来ないのか。
満天だけでなく、誰もがそう思ったに違いない。
唯一人、悪魔の本質を知る、無垢な人造生命(ホムンクルス)を除いては。
「上出来だ。ようやく勝算が見えてきた」
「――――え?」
だからこそ、続くファウストの言葉に疑問符を浮かべるのは当然だった。
呆気に取られた満天だが、すぐに発言の意味を理解して問いただす。
「ま、待って待って。なんで今の流れでそうなるの!? いい情報なんて一個もなかったと思うんだけど!?」
「いえ、むしろ最高の収穫を得ることが出来ました。月の女神は完全な存在ではないとよく分かった」
ゲオルク・ファウストは、もちろん怒りに任せて挑発を仕掛けたわけではなかった。
彼は悪魔(メフィストフェレス)。算盤弾きに長けた、実利の奴隷である。
自分の獲物に手を出されたことに憤ったのは本当だが、それと並行して仁杜を試していたのだ。
ウートガルザ・ロキと高天小都音の名前を出したのはまさにその証拠。
仁杜が深く親愛を寄せていた二人を、地雷を踏む覚悟で利用した。
もし苛立ってでもくれれば御の字と思っていたが、引き出せた反応は予想以上。
天枷仁杜は、翼の喪失を受け入れられていない。それは神と呼ぶにはあまりにもいじらしく、情けのない陥穽ではないか。
「……勝算が見えたって言ったわね。具体的にどのくらいなの?」
「1%です。先程までは0%でした」
恐らくそこが、あの女神に残された唯一の不完全性。
高天小都音が育んできた、人間・天枷仁杜の名残であると推理する。
いわば月の恒星神とは、進捗度99%の全能者。
その1%が消える瞬間こそ、ファウスト達の真の意味での詰み。
逆に言えば彼女が砂粒ほどでも人間性を残している限り、そこには勝利への光明が存在する。
もしも1%の亀裂を押し広げ、神の内界を晒させることができれば。
天枷仁杜を覆う殻は剥げ落ち、全能は再び少女に成り下がる。
ファウストはそう読んだ。メフィストフェレスが、ヒトの弱さを嗅ぎつけた。
「とはいえ、私達だけでは無理でしょう。
それこそ煌星さんを同格の星にでも押し上げない限り、縁の薄い我々では彼女の亀裂に触れない筈だ」
「じゃあ――」
「鍵が要ります。神の未練を呼び起こす、特別な演者が必要だ」
その鍵の名前を、メフィストフェレスは知っている。
伊原薊美と楪依里朱。あの万魔殿に居合わせた、月の友人達。
「煌星さん。そしてアンジェリカさん。貴女達には、先に断っておきます」
悠灯の名前を挙げなかったのは、彼女はこの二人に比べてある程度ドライな考え方ができる人間だからだろう。
満天は弱くて、アンジェリカは優しすぎる。
だから彼女達にだけは、あらかじめ伝えておく必要があった。
「これはとても残酷な仕事になる。私達はこれから、少女の楽園(ネバーランド)を壊します」
◇◇
それでもやはり私は、月の裏側を識りたいと思ってしまう。
何故。きっと、そこにあるモノを視てみたいから。
だって、そうでなければ――私は彼女に、何も教えてあげられない。
◇◇
【月光夢幻神界〈渋谷〉・FW付近/二日目・午前】
【煌星満天】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(大)、断片的な記憶の回復、気分高揚気味、炎上に対するむかむか、左肩負傷
[令呪]:残り三画
[装備]:『微笑む爆弾』
[道具]:なし
[所持金]:数千円(貯金もカツカツ)
[思考・状況]
基本方針:トップアイドルになる
0:水子界を隔離する障壁を解除するために、月光の神に挑む。
1:魅了するしかない。ファウストも、ロミオも、ノクトも、この世界の全員も。
2:輪堂天梨を救う。
3:……絶対、負けないから、天梨。
4:天枷仁杜には苦手意識。でも、きれいだった。
5:私、なんで忘れてたんだろ?
6:好き勝手言うなよ、私達の何を知ってるんだ。
7:――――私は、何(だれ)?
[備考]
聖杯戦争が二回目であることを知りました。
ノクトの見立てでは、例のオーディション大暴れ動画の時に比べてだいぶ能力の向上が見られるようです。
※輪堂天梨との対決を通じて能力が向上しています(程度は後続に委ねます)。
・『微笑む爆弾・星の花(キラキラ・ボシ・スターマイン)』
拡散と誘爆を繰り返し、地上に満天の星空を咲かせる対軍宝具。
性質上、群体からなる敵に対してはきわめて凶悪な効果を発揮する。
現在の満天では魔力の関係上、一発撃つのが限度。ただし今後の成長次第では……?
・現状でも他の能力が芽生えているか、それともこれから芽生えていくかは後続に委ねます。
※輪堂天梨と個人間の同盟を結びました。対談イベントについては後続に委ねます。
※過去について少し気付きを得ました。詳細は後続に委ねます。
※満天の記憶には、次兄・暮昏光点によって"蓋"がされています。
※蓋が少しズレました。
【プリテンダー(ゲオルク・ファウスト/メフィストフェレス)】
[状態]:右腕損壊(魔術によって回復中)、及びそれによる失血(同じく回復中)
[装備]:名刺
[道具]:眼鏡、スキル『エレメンタル』で製造した元素塊
[所持金]:莫大。運営資金は潤沢
[思考・状況]
基本方針:煌星満天をトップアイドルにする
0:渋谷の神(推定:天枷仁杜)を退かし、かの街でライブを行わせる。
1:『鍵』を探す。
2:輪堂天梨との同盟を維持しつつ、満天の"ラスボス"のままで居させたい。
3:ノクトとの協力関係を利用する。が、ライブの実施が現実的になったなら切り捨てを視野に入れる。
4:時間が無い。満天のプロデュース計画を早めなければならない。
5:天梨に纏わり付いている復讐者は……厄介だな。
6:高天小都音とは個人的にパイプを持っておく。
7:アンジェリカ・アルロニカは油断ならないが――
[備考]
ロミオと契約を結んでいます。
ノクト・サムスタンプと協力体制を結び、ロミオを借り受けました。
聖杯戦争が二回目であること、また"カムサビフツハ"の存在を知りました。
高天小都音経由で、〈はじまりの六人〉及び神寂祓葉の情報を知りました。
【アンジェリカ・アルロニカ】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(小)、頭痛(大)
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:ヒーローのお面(ピンク)
[所持金]:家にはそれなりの金額があった。それなりの貯金もあるようだ。時計塔の魔術師だしね。
[思考・状況]
基本方針:勝ち残る。
0:あんなものを星と呼ぶのなら、やっぱり、私は戦わなくちゃいけない。
1:未来を変える。私は、神を生ませない。
2:神寂祓葉に複雑な感情。
3:蛇杖堂寂句には二度と会いたくない。
4:あー……きっつい、これ……。
5:満天のプロデューサー(ファウスト)に警戒心。こいつは絶対ロクでなしだ。
[備考]
※ホムンクルス36号から、前回の聖杯戦争のマスターの情報(神寂祓葉を除く)を手に入れました。
※蛇杖堂寂句の手術を受けました。
※神寂祓葉が"こう"なる前について少しだけ聞きました。
※アルロニカ家の魔術刻印と共鳴することで、世界の始点と終点の一部を観測しました。
【アーチャー(天若日子)】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(大)
[装備]:弓矢
[道具]: ヒーローのお面
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:アンジェに付き従う。
1:アサシンもアヴェンジャーも気に入らないが、当面は上手くやるしかない。
2:赤い害獣(レッドライダー)は次は確実に討つ。許さぬ。
3:神寂祓葉――難儀な生き物だな、あれは。
4:星神(天津甕星)とは次に会ったら受けて立つ。私には、その責任がある。
[備考]
※アサシン(継代のハサン)が2回目の参戦であることを知りました。
【ホムンクルス36号/ミロク】
[状態]:疲労(小)、脳にダメージ、肉体強化、"成長(第二フェーズ)"
[令呪]:残り二画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:忠誠を示す。そのために動く。
0:紛い物の星でさえあの域。凄まじい。
1:輪堂天梨を対等な友に据え、覚醒に導くことで真に主命を果たす。
2:……ほむっち。か。
3:煌星満天を始めとする他の恒星候補は機会を見て排除する。
4:アンジェリカ・アルロニカ――。
[備考]
※天梨の【感光/応答】を受けたことで、わずかに肉体が成長し始めています。
※解析に加え、解析した物体に対する介入魔術を使用できるようになりました。
※輪堂天梨が修羅場を超え、その力が洗練されたことで、ミロクの成長速度も急激に上昇しました。
現在、3~4歳程度の童子の姿まで変異しています。
【アサシン(ハサン・サッバーハ )】
[状態]:霊基強化、令呪『ホムンクルス36号が輪堂天梨へ意図的に虚言を弄した際、速やかにこれを抹殺せよ』
[装備]:ナイフ
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:マスターに従う
0:えぇ……マジでアレと揉めんの……?
1:さて、どうすんだ、大将? ほんとに神とやりあうのか?
2:大将の忠告を無視する気もないが……ノクト・サムスタンプ、少し気になるな。
3:状況が落ち着いたら新宿の兵隊(機動隊員)の余りをこっちに呼んでみるのもアリだが、さて。
[備考]
※宝具を使用し、相当数の民間人を兵隊に変えています。
※OP後、本編開始前の間に、新宿警察署に集まっていた機動隊員たちを催眠下に捉えていました。
※自身が2回目の参加であること、前回のマスターがノクト・サムスタンプであることを知りました。
※状況が状況なのでホテルに留まることを選びました。新宿の機動隊員たちは、数こそ減ったものの幾らか生き残りがいるようです。
【華村悠灯】
[状態]:人狼化。心臓喪失。永久機関・生死流転(同化完了)、生への渇望
[令呪]:喪失
[装備]:精霊の指輪(シッティング・ブルの呪術器具)、『時計じかけの方舟機構(Perpetuial motion Machine-Mark-Ⅲ(ver:3.3333333333333...))』
[道具]:なし
[所持金]:ささやか。現金はあまりない。
[思考・状況]
基本方針:大人になる。
0:生きる。好きなように、赴くままに。
1:取り急ぎ、ナイン達と行動を共にする。山越のことは変わらず信用してないが、その目的は利用したい。
2:……ありがとな、キャスター。
3:狩魔さん、ゲンジ――死んじまったのか。
4:あの刺青野郎ってば最悪!!
5:ナイン……お前さ、その……かわいいな……耳とか触っても良――いや待て何言ってんだアタシは!(うがーっ)
6:天枷仁杜は気に入らない。……だけど、カワイソウだ。
[備考]
神寂縁(高浜総合病院院長 高浜公示)、および蛇杖堂寂句は、それぞれある程度彼女の情報を得ているようです。
華村悠灯の肉体は、普通の意味では既に死亡しています。
ただし土壇場で己の真の魔術の才能に目覚めたことで、自分の魂を死体に留め、死体を動かしている状態です。
いわゆる「生ける屍」となります。
強いて分類するなら死霊魔術の系統の才能であり、彼女の魔術の本質は「死を誤魔化す」「生にしがみつく」ものでした。
自覚できていた痛覚鈍麻や身体強化はその副次的な効果に過ぎません。
この状態の彼女の耐久性や、魔力消費などについては、次以降の書き手にお任せします。
→魔力消費の影響をある程度無視できるようです。ただしあくまで誤魔化しているだけなので、度が過ぎると多分死にます。
→華村家の魔術は『死狼魔術』です。
狼信仰をベースとし、死霊魔術や獣性魔術、死徒の細胞などを取り込んで作り上げた継ぎ接ぎのパッチワーク。
覚醒した華村の魔術師は擬似的に人狼化し、超人的な身体能力と再生能力を得ます。
ただし、あくまでも死を誤魔化し、蓋をして無理やりねじ伏せているだけに過ぎません。華村の魔術は失敗作です。
→神寂祓葉から永久機関を手渡され同化中です。
華村悠灯は適応条件を満たさず体内から自壊していますが、死狼魔術により無理やり適応しようとしています。
彼女の永久機関はオルフィレウスの開発していた新たな試作品であり、神寂祓葉に埋め込まれた物とは仕様が異なる可能性があります。
→永久機関への適応を完了しました。
『時計じかけの方舟機構(Perpetuial motion Machine-Mark-Ⅲ(ver:3.3333333333333...))』には自我を無限時計文明の基準に合うよう矯正する機能が搭載されています。
試作品なので働きはまだ限定的ですが、悠灯の意思が弱まれば侵食が進行するでしょう。
また永久機関の影響で、サーヴァント不在のペナルティを無視できます。
【ライダー(ハリー・フーディーニ)】
[状態]:第二生(ツー)、令呪『私が令呪で許可するまで、第一生の棺を開けることを禁ずる』
二生→健康
三生→健康
五生→健康
九生→疲労(小)
[装備]:九つの棺
[道具]:
[所持金]:潤沢(ハリーのものはハリーのもの、そうでしょう?)
[思考・状況]
基本方針:山越風夏の助手をしつつ、彼女の行先を観察する。
0:華村悠灯に同行する。何考えてんだあのバカハリーは。
1:当面は悠灯に従うつもり。
2:神寂祓葉は凄まじい。……なるほど、彼女(ぼく)がああなるわけだ。
[備考]
準備の時間さえあれば、人払いの結界と同等の効果を、魔力を一切使わずに発揮できます。
宝具『棺からの脱出』を使って第三生のハリー・フーディーニと入れ替わりました。
第二生のハリー・フーディーニ:
生前の名は「山越風奇(やまごえ・ふうき)」
一度目の聖杯戦争に"参加しなかった"山越風夏の前世。
"脱出"の起源覚醒者。魔術的な能力を持たぬ代わりに、超抜の技巧と体幹を備える。
第三生のハリー・フーディーニ:
生前の名は「蛇杖堂寂尊(じゃじょうどう・じゃくそん)」、かの蛇杖堂寂句の2人で1人前の「共同後継者の片割れ」です。
蛇杖堂寂句の医術と体術を継いでおり、治癒魔術や治療薬の知識もありますが、治癒魔術の実践はできません。
寂句に自尊心をズタズタにされており、己の能力を過小評価する傾向がありますが、外科医としての腕と格闘術は超一級です。
第五生のハリー・フーディーニ:
神聖アーリア主義第三帝国陸軍所属。第四次世界大戦を生き延びて大往生した老人。
スラッグ弾専用のショットガンを使う。戦闘能力が高い。
ヴァルハラの神々に追われている妄想を常に抱いており話が通じない。
雪村鉄志、琴峯ナシロ、高乃河二、赤坂亜切の現在の動向について聞きました。
[全体備考]
※渋谷東部の一定割合が、固有結界『水子界・支配の蛇』によって取り込まれました。
※内部は『月光夢幻神界』の性質を維持したまま、蛇の固有結界の法則を帯びています。
※外から入ることは可能ですが、中から出ることは不可能に近いようです。
※固有結界『水子界・支配の蛇』の外縁を囲うように月光夢幻神界のFW(ファイアウォール)が展開されました。
※原則、堕落恒星の術者である〈スターゲイザーⅠ(天枷仁杜)〉の撃破なくして突破不能の絶対防壁であり、水子界の侵食を食い止めると同時に外側からの侵入をも阻んでいます。
【月光夢幻神界〈渋谷〉・『月姫真体・堕落恒星』/二日目・午前】
【天枷仁杜】
[状態]:〈スターゲイザー〉
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:セラフ=アレス改め、アルテミット・ガグンラーズ(建造中)
[所持金]:もう意味がない。
[思考・状況]
基本方針:さあ、しあわせな夢を見よう。
0:ずっといっしょだよ、みんな。
1:都市の制圧。聖杯の獲得。全部叶えようね。
2:薊美ちゃんのことは残念だけど、もういいや。バイバイ。
3:満天ちゃんには同情している。いつでも声をかけてよ、救けてあげる。
4:わたしを倒すなんて、できるわけがないのにね?
[備考]
※楪依里朱(〈Iris〉)とネットゲームを介して繋がっています。
必要があればトークアプリを通じて連絡を取ることが出来ます。
※祓葉との対話を通じて、資格者としての性質が向上しました。
※セイバー(トバルカイン)と再契約しました。
※恒星真体・スターゲイザーⅠとして覚醒しました。根源の渦への接続が再開されます。
※煌星満天のすべてを読み解きました。
前の話(時系列順)
次の話(時系列順)
最終更新:2026年05月29日 02:31