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この針音が響く第二次聖杯戦争において。
全ての参加者の中で、最も「予選脱落者」たちのことを気にかけていたマスターは。

きっとおそらく、〈はじまり〉の中の一角、〈脱出王〉だったろう。

もちろん複数の狙いがあってのことである。
分かりやすい所では、脱落者の一部が積み立てていた聖杯戦争のための備えは、〈脱出王〉の「タネと仕掛け」の一部になっている。
神出鬼没な移動手段や、遠隔地の情報収集。
脱落者の遺産をちゃっかり利用することで、かなりの効率化を図っている。

しかし、それ以上に。

〈脱出〉という目的のために、彼女は多くのことを知る必要があった。
例えば、魔術と縁のない一般人も含めた多数の参加者は、どういう理由でここに集められたのか?
法則が分かれば、参加者を呼び寄せる行為の逆、つまり〈脱出〉も可能かもしれない。
それが無駄足になる可能性も承知で、彼女はかなりの労力をかけて、早期脱落者たちの身元を洗っていたのだ。

 過去、蛇杖堂寂句に大恥をかかされて、復讐の機会を伺っていた異国の魔術師がいた。
 英霊に恵まれて強固な陣地を築くまでは良かったのだが、〈蝗害〉の強襲を受けて文字通り蝗の糞になり果てた。

 サムスタンプ家の現当主が魔術使いの傭兵に身を堕としたことに、憤っていた一族の女魔術師がいた。
 常識的には悪くない戦略で聖杯戦争に臨んだが、相手が悪く、禍炎に魂ごと焼き尽くされた。

 楪の家の遠縁、色彩魔術を感知方向に特化させ、他者の白黒の見極めに使っていた少年がいた。
 初っ端の遭遇戦にてサーヴァントを喪い、奇術王の舞台の上で笑いながら眠りについた。

いずれも前回の聖杯戦争の参加者に縁のある者たち。
あるいは、縁のある者からさらに縁が繋がる者たち。
二人三人とリレーを重ねてやっと届く者たち。
その縁も、あまりにも薄くて、相互に自覚のない者も多かったけれど……

基本的に、どこかを辿れば、いつかは六人、あるいは――神寂祓葉に繋がる、そんな縁を持つ者ばかりだった。


ところが。
かの〈脱出王〉の調査でさえも、どこに繋がるのか分からない、そんな参加者もいた。

 才能に期待していた一人息子を失い、家の存続すら見通しが立たなくなった魔術師がいた。
 焦りから強硬策を選び、よりにもよって最強の治癒術師を襲って返り討ちに遭った。

 幼い頃にはぐれた妹の行方を追い続ける女性がいた。
 召喚した英霊とのロマンスに溺れて、果てに「ジュリエット」となって朝露に散った。

 子供の頃に兄が家出して、以来音信不通。不本意ながらも家業を継がざるを得なくなった女魔術師がいた。
 学校に拠点を構えて慎重に準備を重ねていたが、その備えを逆に利用されて首を刎ねられた。

どこにも繋がらない因縁を持つ者たち。
どんな縁で呼ばれたのか分からない者たち。
自覚がない程度では済まない、本当に宙ぶらりんの人々。

それらの共通項はたったひとつ。
大切な人や血縁者を、相手が幼い子供のうちに、喪失していること。
それらの中には死んだのだろうと推測された者もいたが、明確に死体を確認された者はだれもいない。

そしてまた、脱落していない参加者の中にも、同様にどこに繋がるのか不明で、かつ、幼い身内を喪った過去を持つ者がいる。


多数の『因縁の消失点(ヴァニシングポイント)』。
誰かがいてしかるべき位置にぽっかりと開いた、大いなる空白。


〈脱出王〉には、予測できていたのだ。
誰か、何か、未知の大物がいる、と。
これらの因縁の繋がる先に、〈脱出王〉ですら用意に尻尾を掴めないようなモノがいる、と。


まあ、流石の彼女も、実際に遭うまで、このタイミングでそんなモノと顔を合わせることになるとは思ってもいなかったのだけど。


◇◇


「だけど、まさかこんな所で『没プラン』と遭うとは思わなかったなぁ」

未だ蛇の腹の中からの脱出は出来ないとはいえ、ひとまずは当面の危機を脱した、呉越同舟の四人組。
のんびりする余裕なんてものはないが、焦る必要もなくなったし、体力の温存も必要だ。
走るのをやめ、無理のない速度で歩きながら、彼女たちは言葉を交わす。

「没プランだぁ?」
「ああ。なにしろ私は〈脱出王〉。
 ありとあらゆるモノを利用して、この針音響く都市からの脱出を図るのは分かるだろう?
 いくつものプランを立てて検討していた中に、そこそこ行けそうだったけど結局捨てた案がひとつあってね」

赤坂亜切の疑問に、山越風夏は楽しそうに語る。
レミュリンもルーも、後に続いて歩きながら、耳を傾ける。

「君たちはもちろん『蝗害』は知ってるよね?」
「イリスのだろ。一度やりあったよ」
「こちらも一度は交戦した」
「じゃあ、『赤騎士』という英霊は知ってるかい?」
「そちらとは縁がないな」
「新宿に集まってた連中の中に、それらしいのが居たってのは聞いている」
「どちらも一発で分かるような、『黙示録の四騎士』、あるいはその代理だ。
 でも普通は、そんなものは英霊として召喚されたりはしないんだ。
 つまり、何か普通ではないことが前提にある」

〈脱出王〉は楽しそうに笑う。二本の指を立てて、そこからさらに二本の指を加えて四本にする。

「私は考えた。
 きっとこれは〈抑止力〉が介入を試みでもしなければ、出てくるはずのない存在だってね。
 そして『黒騎士』を代役で済ませたように、残りの2騎も代役が立てられている可能性が高い。
 サーヴァントかマスターかは分からないが、まあ、『赤騎士』1騎だけでも相当な横紙破りだからね。乱発はできないさ。
 では、そこまでの無理をした〈抑止力〉の目的は?
 決まっている。
 黙示録の四騎士が全て揃った、その時には……
 高らかに喇叭が吹かれ、〈世界〉の『終わり』が始まるんだ。
 彼らは、〈世界〉を終わらせる者なんだ」
「それって……!」

レミュリンが息を呑む。亜切もルーも言葉を失う。
この世の理に反し、〈抑止力〉が反応しかねないモノが、確かにこの場にはある。
黙示録の四騎士がてきめんに効くはずの相手がいる。

 針音の響く、この仮想の東京。それそのもの。

神寂祓葉自身は〈抑止力〉のくびきから逃れた、世にも珍しい特異点なのかもしれない。
しかしこの仮想の東京は、必ずしも彼女そのものではない。
世界そのものが持つ自浄作用が、こんな無法を許しはしないと動くに決まっている。

「そして……たぶん本人は、そう聞かされたとしても、きっと知ったこっちゃないと言うんだろうけどね。
 この『蛇』は、おそらく『支配』の白騎士、第一の騎士の代役でもあるんだ。
 あの『蝗害』や『赤騎士』の同類なんだ、そりゃあ容易い相手じゃないよねぇ」
「…………」
「私も一度は彼らを利用できないかなーとか考えたんだけどねぇ。
 実際に蛇さんを見てしまった後だと、このプランは放り捨てて正解だったよ。
 流石の私も、アレは手に負えない。利用するどころじゃない」
「………あの」

長々と語る〈脱出王〉の言葉に、おずおずと口を挟んだのは、レミュリンだった。
歩幅の狭い彼女は少しだけ速足になりながら、それでも浮かんだ疑問を口にする。

「じゃあ、四騎士の四番目……。
 疫病や野獣を率いてひとを殺すという『蒼褪めた騎士』も、誰か『代役』がいるんですか?」
「…………あー…………」
「……手前、何か企んでるだろ」

まずいことを聞かれた。
そんな表情で目を逸らす〈脱出王〉に、亜切は殺意の籠った視線を向ける。チリッと空間が熱を帯びる。
黙秘は通らないとみた〈脱出王〉は、目線を逸らしたまま、頬を掻く。

「あー、ずっと死病に苦しんでて、死を誤魔化す能力に目覚めて、果ては獣に身を転じる魔術に目覚めた。
 そんな第四の騎士の代役にうってつけの、あまりみんなに注目されていなかったマスターなんて、知らない、知らない。
 まだまだあれでも本領発揮には至ってないんだろうし。
 てかどうみても数段は格下なんだけどなぁ。ひょっとして、あの子にもさらに『先』があるのかな?」
「……おい……」
「あ、企んでた訳じゃないのは本当だよ?
 私だってそうかもなーって気づいたのは、実際に『支配の蛇』に遭った後だし!
 何かに使えそうだなーと思って、念のためにキープしていただけ。
 ただまー、そういう訳だから、私のサーヴァントはこの窮地にも干渉してこないと思って欲しいかな」
「本当に最悪だな、手前……」

目の前の窮地を脱した後にこそ活きるかもしれない、〈脱出王〉の隠し札の存在に、亜切も苦い顔になる。
なまじ理詰めではないからこそ、他陣営からは読みにくい〈脱出王〉の飛躍した発想。
これを好きにさせておくと厄介極まりないのは、前回でも散々に経験済みだった。

「話を戻すよ。
 なので、『支配の蛇』は。『赤騎士』や『蝗害』に相当……あるいはある面では、それすらも上回る脅威だ。
 改めてそう認識して欲しい。
 相性もあったとはいえ、そこのランサーすらも上回ってくるんだから、嫌になっちゃうよねぇ」
「まったくだ。
 俺にも縛りがあるとはいえ、あれは本当にとんでもない」
「とはいえ……つけ込む隙が無い訳じゃない。
 あいつもまた、たぶん無意識なんだろうけど、ひとつの縛りを抱えている」
「縛りだって?」
「そう――最初からルー・マク・エスリンを圧倒するような出力で来られていたら、私なんか骨も残らなかったろうさ。
 ある意味では慢心でもあり、ある意味では己が支配者だと信じるために必要なことなんだろうが……

  あの『蛇』は、目の前の相手を『少しだけ上回る』範囲しか、己の力を出せない。
  その代わり、誰が相手であろうとも、『少しだけ上回る』能力を発揮できる。

 なあアギリ、思い出さないかい?
 同じように『すべてに対して少しだけ上回ってきた』相手のことを。
 私たち全員が焦がれ灼かれた、あの子のことを」

「何?
 ……いやまて、まさか」

そして〈脱出王〉は、決定的な名前を口にした。


「『支配の蛇』。

 本名、神寂縁(かむさび・えにし)。

 かの、神寂祓葉(かむさび・ふつは)の、叔父に相当する人物さ」


◇◇


レミュリンも、ルーも、赤坂亜切も、揃って絶句する。

全員がその名前には辿り着いていた。
他ならぬ本人がそう名乗るのを聞いていた。
何なら相手の名前を呼びもした。

けれど、そこに思い至ることができなかった。
発想すら湧くことはなかった。


 あの『支配の蛇』が、この針音の都市を統べるあの白き神の、血縁者??


ある意味でこの3人だったからこそ発生した、それは思考の落とし穴だった。

レミュリンもルーも、日本人の名前そのものに馴染みがない。
「カムサビ」というファミリーネームが極めて珍しいものであることに、思い至らなかった。

赤坂亜切は、相手の姿形を見ない。名前にも頓着しない。
なまじ魂の形が見えてしまうがゆえに、人の名前すらもろくに覚えられないのが彼だった。

しかし、そんな。
いやまさか。

「驚いて貰っておいて悪いんだが、これは私自身の調査の賜物って訳じゃなくってね。
 ここに辿り着いたのは、私ではなく、ジャック先生さ」
「あの藪医者が?!」
「どうやら一番最初にヤツの名前に到達したのは、ジャック先生らしい。
 そこから半日もせずに、人を使って彼女との関係を洗い出したようだね。
 御丁寧なことに、自分が死んだ場合のことまで考えて、書置きまで遺しておいてくれたのさ」 

蛇杖堂寂句の遺産。
かの〈脱出王〉とノクト・サムスタンプの間の、早い者勝ちの争奪戦において、〈脱出王〉側が確保できた一番のお宝。
それは「情報」だった。
第二次聖杯戦争において、新宿に向けて出陣する前の彼が獲得していた全情報の要約。〈寂句の手帳〉。
ノクトは義手を手に入れて御満悦だったようだが、風夏が御満悦だったのは、あるに決まっていた治療薬のためではなく。
ライバルの目に触れるよりも先に、値千金の手帳を確保できた、その幸運ゆえだったのだ。

「といっても、私も実際に『蛇』を目にするまで、まるで腑に落ちてなかったんだけどねー」
「さっきからそればっかりだな君は」
「しょうがないじゃんかよー。
 『因縁の消失点』『ノクトの同盟者』『白の騎士』『もうひとりの神寂』が全部同一人物なんて、流石に思わないってー」
「なんか今さらっと初出の単語が混じってたんだが」

亜切が首を捻る。風夏は曖昧に笑う。

「まあともかく、そういう訳だから、ここにいる『私たち』は『神寂縁』とは相性が悪い。
 私も、アギリも、大英雄も、それぞれある意味において『強すぎる』し、これ以上の『伸びしろ』に乏しい。
 私たちではどう足掻いても『少しだけ上回られて』しまう。
 アイツにぶつけるべきは、今は私たちよりも『弱く』てもいいから、『伸びしろ』のたっぷりある、未完成な可能性の塊なのさ。
 ぶつけ本番になるけれども、『支配の蛇』が少しだけ上回ってきた分を、さらに上回るような成長をしてもらうしか勝ち目がない」
「伸びしろ、か……」
「強いて言うならレミュリンにはその可能性があるかもしれないけど……あの異常な執着の仕方を見るとねぇ。
 逆に彼女だけは危険に晒す訳にはいかないよね」

同意するのは不本意なれど、亜切もその見立てには反論できない。
『支配の蛇』に挑むべきは、ここにいるメンバーでは、ない。

「これだけの大掛かりな固有結界だ。
 これまで出し惜しみしてきたことからも考えて、『蛇』にとっても代償はでかいんだろう。
 終わった後の消耗が激しいとか、使用回数に制限があるとか、一度解除したらしばらく使えないとか。
 ただ……いまその中に捕らわれてしまった私たちが突けるような欠点では、ないんだろう」
「だろうな」
「ただ同時に、これはめちゃくちゃ目立つし、無関係な者も多数巻き込みかねない。
 まず間違いなく、あの『蛇』と因縁の深い人たちが積極的に関与してくる。
 あるいはとっくにこの固有結界に捕らわれているかもしれない。
 おそらく、そういう子たちの中に、私たちが期待する『可能性の塊』が混じってきている」
「…………」

〈脱出王〉はそれが当然の摂理であるかのように語る。
ヒトとヒトを繋ぐ因縁、運命、それが何かしら必然となって繋がることを確信をもって語る。

「だけど困ったことに、ここにふたつ障害物がある。
 ひとつは、蛇さんも聖杯戦争のマスターであるからには、そのサーヴァントがいるってこと。
 もうひとつは、既に明かした通り、この件にはノクト・サムスタンプが関わってきている。
 私たちの受け持つべき仕事は、こいつらを足止めして、『可能性』たちをフリーにすることさ」

かくして盤面は整理される。舞台の前提条件が誰の目にも明らかになる。

カムサビエニシに挑むのは、未熟なれど飛躍の可能性を秘めているであろう、因縁のある人々。
亜切、ルー、レミュリン、〈脱出王〉の仕事は、それ以外の脅威を押さえ込むこと。

ここまで持ってくることが出来て初めて、そこから先の可能性に賭けることができる。

「しかし参ったねー、そう言ってる間にも、こうやって歩いててもノクトにも会えないんだもんなー。
 こりゃ、マズい組み合わせでとっくに始まってるかもなー」
「そうだな……『犠牲者』が出ていると厄介だ」
「ぎ、犠牲者って……」
「単に死んでいるならまだマシな方だね。私たち〈はじまりの六人〉は、それを下回る『最悪』を知っている」

不穏な言葉に怯えるレミュリンに、狂人ふたりはむしろそれすらも想定が甘いのだと告げる。
今回の敵陣営には、よりにもよって、熟練の契約魔術師、ノクト・サムスタンプがいる。
それと交戦し、破れる者が出た場合に発生する、真の最悪とは。

「レミュリンも、ランサーも、覚悟しておいて。
 私たちの前に立ち塞がるのは、さっき挙げた敵だけじゃないかもしれない。
 自由意志を奪われ、向こうの走狗と化した、無辜の第三者とも刃を交える必要が出てくる可能性がある」


◇◇


【月光夢幻神界〈渋谷〉/二日目・早朝】



【レミュリン・ウェルブレイシス・スタール】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、吐き気、精神的動揺(大)、決意
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:6万円程度(5月分の生活費)
[思考・状況]
基本方針:――進む。わたしの知りたい、答えのもとへ。
0:怖い、けど……〈脱出王〉の作戦に乗るしか、ないみたい。
1:胸を張ってランサーの隣に立てる、魔術師になりたい。
2:アギリ・アカサカともっと話す。そうでなくちゃ、わたしはあの日から抜け出せない。
3:コージさん達と合流できればいいんだけど……。
4:さっきみた、アレは……一体、なに……?
5:フーカさんを信用していいのか、よくないのか……。
[備考]
※自分の両親と姉の仇が赤坂亜切であること、彼がマスターとして聖杯戦争に参加していることを知りました。
※ルーン魔術の加護により物理・魔術攻撃への耐久力が上がっています。
またルーンを介することで指先から魔力を弾丸として放てますが、威力はそれほど高くないです。
※炎を操る術『赤紫燈(インボルク)』を体得しました。規模や応用の詳細、またどの程度制御できるのかは後のリレーにお任せします。
※アギリ以外の〈はじまりの六人〉に関する情報をイリスから与えられました。
※〈はじまりの聖杯戦争〉についての考察を高乃河二から聞きました。
※アギリがサーヴァントとして神霊スカディを従えているという情報を得ました。
※高乃河二、琴峯ナシロの連絡先を得ました。

※右腕にスタール家の魔術刻印のごく一部が継承されています(火傷痕のような文様)。
※刻印を通して姉の記憶の一部を観ています。

※アルロニカ家の魔術刻印と共鳴することで、世界の始点と終点の一部を観測しました。

※高乃河二に現況についての緊急連絡を送りました。
 内容は彼伝てに雪村鉄志にも転送されています。


【ランサー(ルー・マク・エスリン)】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)、胸部にダメージ(大)、全身にダメージ(小)、霊核損傷
[装備]:常勝の四秘宝・槍、ゲイ・アッサル、アラドヴァル
[道具]:緑のマント、ヒーロー風スーツ
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:英雄として、彼女の傍に立つ。
0:蛇を討つ。レミュリンは渡さない。そのためにもこの作戦しかねぇか。
1:不覚を取ったが致命傷じゃねえ。この屈辱、働きで雪ぐぜ。
2:レミュリンをヒーローとして支える。共に戦う道を進む。
3:神寂祓葉についてはいずれだな。今は考えても仕方ねえ。
4:今更だが、馬鹿じゃねえのか今回の聖杯戦争?
5:渋谷の"神"は非常に危険。レミュリンの問題を片付けたら、早急にどうにかする必要がある。
[備考]
予選期間の一ヵ月の間に、3組の主従と交戦し、いずれも傷ひとつ負わずに圧勝し撃退しています。
レミュリンは交戦があった事実そのものを知らず、気づいていません。
ライダー(ハリー・フーディーニ)から、その3組がいずれも脱落したことを知らされました。
→上記の情報はレミュリンに共有されました。



◇◇


「おい、変態」
「ひどい呼び方だなー。なんだいアギリ?」

作戦の骨子は決まった。
誰も〈脱出王〉に異論を言い出せなかった。

後は誰かと巡り合うのが先決。
神寂縁と縁のある誰かでもいいし、蛇以外の敵でもいい。

そんな大雑把な方針決定をして、人の気配を探して歩き続ける、その途中で。
赤坂亜切は、レミュリンたちに聞こえないよう、山越風夏にそっと囁いた。

「こうして僕たちが呑気に会話できる機会なんて、もう二度と来ないだろうからな……
 ついでだ、ひとつだけ教えろ」

己と姉/妹以外にはほとんど興味も持たない凍原の魔人が、それでもどうしようもなく抱いてしまう疑問。
あるいはこんな機会にでも恵まれなければ、決して口にしなかったであろう疑問。

「他所の家族なんて、本当にどうでもいいんだが……

 なあ、山越風奇(やまごえ・ふうき)。

 お前は自分の〈妹〉を、いったい、どうしやがったんだ?」

暗殺者の仕事は下調べが重要だ。
なので当然、赤坂亜切は辿り着いている。前回の聖杯戦争の時点で、全て洗い上げている。
参加者の家族構成なんてものは、当然知っていて当たり前の情報だ。

その上で、赤坂亜切には、目の前の相手の魂の形が視える。
目の前で山越風夏を名乗る女が、前回は山越風奇を名乗った〈脱出王〉と同一の魂を有していることを、誰よりも理解している。

己のクリティカルな所への質問に、山越風夏は、にんまりと笑みを浮かべた。

「そうだよねぇ、知っていればそれを問うよねぇ。
 どうもうちのライダーは、その質問を思いつくことさえできなかったんだ。
 風夏という妹の有無、分岐点はきっと、そこなんだ」
「質問に答えろ」
「やだね、いくらなんでもまだ早すぎる。流石にもう少し勿体ぶらせてくれたまえ。だって――」

六人の中でたった一人、ただ蘇らされるのを待たずに死者の国から駆け上がってきた特異な存在。
第二次聖杯戦争がちゃんと始まるよりも前の段階で、意図をもって何かを仕込むことのできた、たった一人の人物。
未だに己のサーヴァントにすら明かしていない、深慮遠謀。
最大の伏せ札。


「風夏(わたし)の存在は、この〈脱出王〉が二回目の舞台を開始するにあたって用意した、最大の『タネと仕掛け』なんだからね」



◇◇




【月光夢幻神界〈渋谷〉/二日目・早朝】

【山越風夏(ハリー・フーディーニ)】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(中)、腹部治療済
[令呪]:残り二画
[装備]:舞台衣装(レオタード)
[道具]:マジシャン道具、〈寂句の手帳〉、蛇杖堂邸で回収した幾らかの道具(薬あり)
[所持金]:潤沢(使い切れない程のマジシャンとしての収入)
[思考・状況]
基本方針:聖杯戦争を楽しく盛り上げた上で〈脱出〉を成功させる
0:という訳で、私たちの仕事は神寂縁以外の足止めだねー。
1:レミュリンはやはり原石だった。彼女は星であろうとなかろうと、素晴らしい未知を生み出す筈。
2:華村悠灯はもうひとりの私に任せることに決めた。しかし青の騎士かー、どうなるんだろね彼女。
3:他の主従に接触して聖杯戦争を加速させる。
4:流石にそれはまだ「早い」。風夏と風奇の関係や、それを使った仕掛けについては、これから先のお楽しみってことで♪

[備考]
準備の時間さえあれば、人払いの結界と同等の効果を、魔力を一切使わずに発揮できます。

〈世界の敵〉に目覚めました。この都市から人を脱出させる手段を探しています。

蛇杖堂寂句から赤坂亜切・楪依里朱について彼が知る限りの情報を受け取りました。

蛇杖堂邸で狙い通り癒しの薬を回収しました。
また、〈寂句の手帳〉を入手していました。寂句が新宿の決戦に出撃する前までに得た情報がおおむねまとめられています。

東京の全区に仕掛けを施しています。主に移動時間短縮用。



【赤坂亜切】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、眼球にダメージ、左手に肉腫跡、右耳欠損、妄信
[令呪]:残り三画
[装備]:『嚇炎の魔眼』、M360J「SAKURA」(残弾3発)
[道具]:魔眼殺しの眼鏡(模造品)
[所持金]:潤沢。殺し屋として働いた報酬がほぼ手つかずで残っている。
[思考・状況]
基本方針:優勝する。お姉(妹)ちゃんを手に入れる。
0:〈脱出王〉の計画に従うのも忌々しいが、それ以外になさそうだ。当面は蛇以外を相手する。
1:レミュリン・ウェルブレイシス・スタールを見極める。
2:ノクト・サムスタンプを殺す。〈脱出王〉よりも優先順位は上だ。
3:神寂縁。〈蛇〉。雪村のオッサンも、来るんだろうか。
4:〈恒星の資格者〉は実在する。忌まわしいことだが。
5:渋谷をおかしくした元凶への激しい殺意。部外者が知った顔で何を囁いてやがる。焼き殺すぞ。
[備考]
※彼の所持する魔眼殺しの眼鏡は質の低い模造品であり、力を抑えるに十全な代物ではありません。
※香篤井希彦の連絡先を入手しました。

※ホムンクルス36号の見立てによると、自身の魂を燃やす彼の炎は無限ではなく、終わりが見えているようです。
 具体的にどの程度の猶予があるかは後続の書き手にお任せします。
※一回目の聖杯戦争で組んでいたランサーは、鬼若(いわゆる武蔵坊弁慶)でした。


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最終更新:2026年06月01日 15:56