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 ――視認。
 その瞬間に全員が再認する。

 これは勝てない。
 否、そもそも"勝てるように出来ていない"。
 力の多寡や陥穽の有無、そういう概念を既に超絶している。
 ある者は戦慄を。ある者は総身が沸騰するほどの怒りを。
 三者三様の感情を憶えながら、第一の砕月同盟は女神の巨城を観測した。

「やれやれ……既に一度見ているが、やはりやってられないな、これは」

 腕組みをしながら難しい顔で呟いたのはカスター。
 尤も、他の面々も同意見だったことに違いない。

 見てくれはどこにでもある高級なホテル。
 が、その最上階を中心として無機質な四角形が生えている。
 隕石の着弾。人工衛星の墜落。宇宙から落ちてきたナニカがたまたま既存の建築物に突き刺さったような、そんな印象を抱かせた。

「偵察隊(バッタ)が帰ってきた」

 白黒の魔女・楪依里朱が苛立たしげに呟く。
 月女神の領域において虫螻の王は役立たず。
 とはいえ偵察に用途を絞るなら、〈蝗害〉の莫大な物量は依然として唯一無二だ。

 目視で神の本丸を視認した後、先遣隊として二万匹ほどを送った。
 そうして実際に間近で確認させ、総体意思を通じてマスターであるイリスへ伝える。
 クレバーなやり方だったが、得られた成果が希望的なものでなかったことは彼女の表情を見れば明らか。

「あの建物……"お城"の全体が、天枷仁杜が持つのと同種の性質を宿してる。
 つまり、外部からの干渉を一切受け付けないってこと。耐久値じゃなく位相(レイヤー)の違いですべてを遮断する、魔法に等しい究極防壁」

 月女神・天枷仁杜を語るにあたって、彼女が垂れ流す救済説法はそれほど脅威ではない。
 演者の資格を持つ者ならメンタル次第ではあるが抗えるし、サーヴァントなら尚のこと然りだ。
 真の脅威はウートガルザ・ロキから継承した万能の大幻術。そして今挙げた、荒唐無稽なほどの防御力である。

「バッタ君、君達は土地喰いだろう。結界を喰らうのと同じ要領でなんとか出来ないのかね?」
「無理だな。そもそも相性が悪すぎてまともに動けないのもあるが、ありゃ蜃気楼みたいなもんだ。
 実体のある草原ならどれだけ広かろうと食い尽くしてやるけどよ、最初からそこに無いならどうしようもない。
 つーかそれなら、俺としては巨人の姐さんに知見を伺うべきだと思うぜ」

 カスターの喩えを引用するなら、"写真の中の人間に弾丸を放ったところで、現実の被写体を害することはできない"。
 まさにそれだ。天枷仁杜は確かにそこにいるが、同時にそこにいない。
 現実の距離と実際の距離が途方もなく開いている。その間合いを詰める手段がなければ、たとえ本物の神であろうと天枷仁杜は斃せないだろう。

「ま、概ね意見は一緒だねェ。実際に見るとますますいけ好かない女って印象だが、持ってる力は間違いなく一級品だ。
 しっかし、あの悪ガキが託すことを覚えたとは。なんだか感慨深い気分だよ」
「言ってる場合ですか」
「そいつはアタシが決めることさ。
 で、長々話すのも趣味じゃないから結論から言おうか。
 正面突破はまず無理だ。ウートガルザのロキが本気で守って、手品のタネを引き継がせたんだろ?
 額面通りの性能を引き出せるならアタシの元旦那を連れてきても手間だよ。恒星云々の補正も加わるんなら更に倍率ドン、お手上げさね」

 ひらひら、と手を振っておどける姿は無責任だが、スカディほどの英霊/神霊が伊達や酔狂でこう言う筈もない。
 結論、天枷仁杜の"お城"は難攻不落。突破不能、突入不能。招かれざる者にできることは真実皆無。

「だから、後はアンタの手腕に懸かってるってワケだ。期待してるよ、アギリが唯一認めた宿敵(ライバル)さん」
「……、……」

 だがもしも、内側から扉を開けさせることさえ叶うなら。
 此処までに英霊達が述べた絶望的な推論すべてをねじ伏せて、女神への謁見が叶い得る。

 資格を持つ人間はふたり。
 しかし伊原薊美は、既に女神から面と向かって拒絶されてしまっている。
 だからこそ、こと入り口を開けさせることにかけての適任はひとりしかいない。
 即ち楪依里朱。姫の半身を殺し、最強の同盟を瓦解させた張本人だ。

「言われなくても、やってやるっての。でも――」

 扉さえ開けば、とりあえず賽を振る権利は与えられる。
 それでも通じないならそこで終わり。ただし零と一の間には無限の差があり、無を有に変えられるか否かは非常に大きい。

 イリスがインターホンを押して、仁杜から彼女の世界への入室権を得る。
 その上で薊美共々、仁杜の中に残る一抹の人間性に賭けてアプローチするのだ。
 勝算と呼ぶにはあまりにか細いが、溺れる者に縋る藁を選ぶ権利なぞない。
 そして最悪なことに、そこまで成し遂げて尚、まだ巨大な問題が残されている。

 続くイリスの言葉は、誰もが皆予想できた。
 神殺しの最終関門。それは――


「おはようございます。あの、ちょっといいですか?」


 不意に、誰も聞き覚えのない新たな登場人物の声が響く。
 全員の殺気が殺到したが、英霊達の本気の威嚇を浴びてさえ、その人物は狼狽ひとつする様子がなかった。

「皆さんへお電話が来ています。お繋ぎしろとの仰せでして……」

 通話中になったスマートフォンを片手に、見るからにうだつの上がらなそうなサラリーマンが営業スマイルを浮かべている。
 左右どちらの腕にも令呪の刻印はない。この明らかに不自然なタイミングで現れた"一般人"に、最悪の既視感を覚えたのはまたも白黒の魔女。

「……あんた、まさか――!」

 蘇る苦い記憶。文字通り神出鬼没で現れる、残機無制限の便衣兵。
 "前回"、忌まわしい傭兵の走狗としてあらゆる猛威を振るった髑髏面の残像が脳裏をよぎる。
 咄嗟に白黒の槍を生み出し、射出しようとした判断を短慮とは責められまい。
 彼女達はそれほどの思いをしたのだ。が、早まろうとした魔女を茨の王子がそっと諌めた。

「よしましょう。何か用があるみたいですし」
「駄目、こいつは……!」
「イリスさんのも後で聞くから。とりあえず、電話を取ってみてからでも遅くないでしょ」

 イリスはまだ何か言いたげだったが、薊美の言うことも一理あると思ったのだろう。
 それに、仮にあの最悪の暗殺者が再び東京の地を踏んでいたとしても、マスターまで前回と同じとは限らない。
 苦い顔をしながらも射出しかけた色彩を収め、滞空させた状態で静観に移る。
 なんとかじゃじゃ馬の激情を鎮められたことに胸を撫で下ろして、薊美がサラリーマンに手を差し出した。

「わざわざありがとうございます。貸してもらえますか?」
「はい。では、確かにお取り次ぎいたしました」

 実際に会話して薊美も確信する。
 このサラリーマンはNPCだ。只、今の渋谷で目的意識を持って活動できてる時点で誰かの息がかかっているのは間違いない。

(問題は、吐息の主が鬼か仏か……)

 最大限の警戒を維持しながら、受け取ったスマートフォンを耳に当てる。

(…………或いは、悪魔か)

 何でもいい、とは流石に言えない。
 此処で新たな揉め事がやってくるのは流石に御免被る。
 まさに鬼が出るか仏が出るか。固唾を呑みながら「もしもし?」と口を開いた薊美の耳朶を揺らしたのは。

『不躾な接触失礼します。〈渋谷の神〉の打倒を目指す、砕月勢力(レジスタンス)の勇士とお見受けします』
「……まあ、間違ってはいませんが。貴方は?」
『私もまた、貴女がたと志を同じくする身。身勝手な女神に玉座を退いて貰いたい、天に唾する不信心者の一員です……と。堅苦しいのはこの辺りにして』

 目の前のサラリーマンよりずっと慇懃に、ある種胡散臭いほどの丁寧さを貼り付けた男の声だった。
 その声に、伊原薊美は、確かな聞き覚えがあって……


『お久しぶりですね、伊原さん。私のことはどうぞ気安く、"プロデューサー"とお呼びください』



◇◇


 女神のお城。或いは、万魔殿(パンデモニウム)。
 数時間前にそこで披露された、冗談みたいなアイドルライブ。
 その際に主役の少女へ同伴していたサーヴァントの声が、通話の向こうから聞こえていた。

 驚きはあまりない。むしろ安堵したくらいだ。
 音に聞くノクト・サムスタンプのような新顔の曲者が出てくるより、わずかでも関わりのある強敵が相手の方がずっと気が楽だから。

「驚きました。そういえば連絡先の交換とか、意味なくなっちゃいましたもんね。高天さんが死んじゃったから」
『やはりそういうことでしたか。彼女は優秀な人材だった。素直に、残念です』
「同感です。あんなによく頑張る凡人は見たことなかったし」

 世辞ではない。薊美をして、高天小都音は驚異的な人物だった。
 同時に今後、己が恒星と成る未来において憂慮すべき前例。
 星の光に灼かれず、眷属でありながら星を叱咤できる"究極の凡人"。
 薊美の望む未来にはあるべきでない存在だ。台本を無視して主役の尻を引っ叩く端役などあってはならないのだから。

『時に、質問です。高天さんを殺したのは貴女ですか?』
「……、……」
『糾弾しようというわけではありません。今後のために聞かせていただきたいのです』
「手を下したのはイリスさんですよ。私も狙ってましたけど、先を越されちゃいました。何だったら代わりますか?」
『……成程。いえ、それには及びませんよ。貴女の方が建設的な話し合いができそうなので』
「うん、私もそう思う」

 間違いなく魔女とこの悪魔は水と油だろう。
 よってこう言ってもらえて助かった。
 『建設的』という単語と一番無縁なのが楪依里朱という女だ。

「では次はこっちから。
 プロデューサーさん、最初に聞きたいことが幾つかあります。
 その回答如何で貴方がたが信用に足るかどうか判断しますから、どうか嘘偽りなく答えて貰えると」
『ええ、勿論。こちらの不利益にならないことであれば、何なりとお答えしましょう』
「よかった。じゃあ早速だけど、そっちはいま何人で所帯を構えているんですか?」

 煌星満天のキャスター……"プロデューサー"が自分にとって善であれ悪であれ、単独ということは有り得ないと薊美は踏んだ。
 余程の馬鹿でもない限り月女神の絶対性は分かる筈で、下手に楯突いても死ぬかそもそも相手にもされないかの二択である。
 もし単独ならば最適解は日和見。一か八か神殺しを成し遂げてくれる勇者が現れるのに懸けて、結界の外で趨勢を見守るのが利口だ。
 自分が思いつく程度の思考である。楪依里朱をああも動揺させるほどのナニカを抱え込める男なら、その発想に至らない筈がない。

 では何故そんな彼らが神殺し、砕月を狙えているのか。
 単純に、挑めるだけの戦力を持っているからだろう。女神の総力の桁は未だ不明だが、少なくとも最低ラインの暴は持っているということ。
 即ち徒党だ。そこの部分を確かめるためにも、まず薊美は初手から数を問い質しにかかった。

『我々を含めて四組です。内の一組は少々複雑な事情があるのですが、取り立てて重要度の高いことではないため、一先ず割愛させてください』

 果たして返ってきた回答に、薊美は小さく眉を動かす。

(四組か。思ったより多いな)

 流石にこちら以上の質ということはないだろうが、成程結構な大軍団である。

 薊美は、此処までの数言ばかしのやり取りで既に気付いている。
 今自分が会話している相手は、こと智謀という分野において圧倒的な格上だ。
 情報の献上さえ碁打ちの一環。心理掌握か戦況誘導、ないしその両方を兼ねているものと仮定して対話を続ける。

「こっちは主従が二組と、もう一騎とても強いサーヴァントがいます。どうしてこうなったのかの経緯は、そちらに倣って割愛で」
『お上手だ。ブラックボックスを残して、万一の際のカードを少しでも多くがめようという魂胆ですね』
「貴方がさっき教えてくれたことですよ。私って、いいと思ったらすぐ真似しちゃう性分なんです。演技も、魔術も、考え方も」

 軽口を叩きながら舌を巻く。
 やはり見様見真似の腹芸が通じる相手ではない。
 ロキのようにひたすら神経を逆撫でてくるのではなく、変わらない抑揚で淡々と詰め将棋されているような感覚。

 今の指摘だって、自分が智謀に一家言ある身だと開示する意図での発言だった筈だ。
 つまり釘を刺されている。素人の付け焼き刃など通じないぞと、先回りして楔を打たれた。

「……落ち着きなさい。あんたが熱くなってどうすんのよ」

 いやあなたに言われたくはないんですけど。
 魔女に肩を小突かれ、思わず漏れかけた科白を堪える。
 とはいえ感謝だ。頭脳での格上を相手に熱くなるほど愚かなことはない。
 前提を見誤るな。大前提として、自分が話している相手は敵ではないのだ。

「わかりました、ありがとうございます。じゃあ、改めてお話を聞きましょうか」

 彼、いや"彼ら"は、自分達と同じく月の破砕を掲げる集団。
 いわばその時点で味方であり、警戒しつつも胸襟開いて臨むべき相手である。
 何せ彼らを懐柔することは、未だ以って暗黒に包まれている、最後の懸念を解消する材料になり得るのだから。

「お察しの通り、こっちも尻に火が点いてるのでね。それなりの譲歩はするつもりですよ、不利益にならない限りは」

 ちょっとした意趣返しを織り交ぜつつ、薊美は兜の緒を締め直す……のではなく、あえて全身の緊張を緩めた。
 王のように聞き英雄のように受け止めるのだ。猪口才な奸計や削りなど物ともせず、威風を持って受容しろ。
 自分(わたし)にはそれができる。主役の座に囚われた少女に対し、通話越しの声が言う。

『貴女方は"鍵"を持っている。その自覚は、ありますか』

 鍵。その単語を聞いた瞬間、薊美が覚えたのは安堵だ。

「ええ。しかと胸(ここ)にありますよ」

 ああ、よかった。
 やはり風は、主役たるこの身へ吹いている。

『それは何よりだ。心置きなく交渉に入ることができる』

 月女神の自閉を破るためには鍵が要る。
 何故なら月のお姫さまは、他の誰によりも自分自身に優しいから。
 気に入らないなら見もしない。見えないのならそれは無いのと同じ。無いものを気にして悩んだり怒ったりするなんてバカのすることだ。

 そういう価値観のまま神になってしまったあの女は、"誰にでも"倒せる存在ではない。
 天枷仁杜に認められる誰かを、即ち鍵を持ち込まない限りお城の門すら開けてはくれない。
 だからこそ、まず真っ先に必要なのは鍵だった。その発想に到れる人間が自分達へ手を差し伸べてきた事実を、薊美は喜悦と共に歓迎する。

『私達はそちらの同盟との合流、ひいては共闘関係の樹立を求めます。ついて、これに必要な条件をお伺いしたい』
「種明かしの先払い」

 であれば。
 プロデューサーの言葉に、茨の王子の返事は即答以外になかった。

「にーとのお姉さんを打倒する具体的なプランを示してください。それが魅力的だったら、喜んで申し出を受けます」
『ほう。では、お眼鏡に適わなかったら?』
「もう少し足元を見ることになりますね。ねちねちしたイヤな条件を二・三呑んで貰います」
『いいでしょう。でしたら審判を仰ぎましょうか』

 言うまでもなく、薊美は既に足元を見ている。
 権謀術数が当たり前の聖杯戦争で、策の先出しを求めるなど急所を晒せと言っているのと同義だ。
 その上審判という体を取る以上、策が優れていようがいまいが難癖ありきで振る舞うことができてしまう。
 プロデューサー……ゲオルク・ファウストに得など微塵もない。それがわからない莫迦でもなかろうに、しかし、電波の向こうの悪魔は。



『鍵を用いて、神の中に眠る少女を呼び起こします。
 斯くして全能を剥ぎ、泣きじゃくる"人間"を我々総出で嬲り殺す』



 ――――あまりにも、薊美が思い描く通りの、答えをくれたから。



「素晴らしい」

 気付けば打算も忘れて、茨の王子は笑っていた。

「こちらこそ、どうぞ宜しくお願いします。ぜひ末永く、円満な関係を築きましょう」

 吐いた言葉に嘘はない。
 宜しく頼もう。仲良くやろう。
 いつか私が、おまえの星を蹂躙(ほろぼ)すその時まで――円満に。

 斯くして、砕月の大同盟は結成された。
 狙うは月姫、天枷仁杜。
 神は今、標的となる。



◇◇



「……や、全然意味分かんないんだけど」

 ゲオルク・ファウストと伊原薊美の交渉が行われているのと並行して。
 先刻ファウストが述べた言葉の意味を測りかね、アンジェリカ・アルロニカが遠慮がちに挙手をした。

 ――これはとても残酷な仕事になる。
 ――私達はこれから、少女の楽園(ネバーランド)を壊します。

 言葉のままの意味と取るのは簡単だが、それが正解でないことは流石に分かる。
 だから恥を忍んで問いかけたのであったが、他の二人も同じだったらしい。
 満天と悠灯もばつが悪そうな顔をしてそっと手を挙げた。
 それに対し、ちょこんと座っていた少年は信じられないものを見るような顔で眉を顰める。

「本気で言っているのか? 平均的な思考能力があれば察せることだと思うが」
「あ゛ーもう! バカですみませんでしたね! 生憎こっちはあんたらみたいに四六時中悪だくみしながら生きてないのよ!!」

 させるつもりはないが、満天を進化させて正面からブチのめすと言われた方がまだ理解はできた。
 だがネバーランドを壊すとかふんわりしたことを言われても困る。
 アンジェリカの言う通り、誰もがファウストやミロクのように策を研ぎ澄まし生きているわけではないのだ。
 常在戦場は万人の共通項ではない。うんうんと悠灯が頷き、満天も食い気味でそれに倣う。ミロクがその反応を見て、呆れ混じりの溜息を吐いた。

「では、不本意ながら教授しよう」

 どの道、計画がまともに共有できてないのに実行に移すなど論外だ。
 まして目の前の三人は優しすぎる。
 未だ人の心には疎いミロクだったが、この不合理な少女達にぶっつけ本番で知らせるリスクの大きさは分かっていた。

「天枷仁杜はある意味での最強だ。先の解析では表層程度しか掘れなかったが、それでも十分すぎるほど分かった。
 アレを正攻法で斃す手段は恐らく存在しない。それこそ同じ土俵に立った恒星でもなければ、まず不可能だろう」

 一瞬ミロクが満天を見る。
 アンジェリカが警戒の面持ちで彼女を庇った。すっかり保護者面が板についている。

「異常な出力値もさることながら、真の問題は月女神が有する究極の防性だ。
 自分が望まないすべてを受け入れず、絵空事として履き捨てる精神性が、星の性質によって現実の法理(ルール)と化している。
 無敵だよ、女神に敵などいない。アレは、自分の意に沿わないものをそもそも見ないのだから。
 完成した星とは神であり、神とは即ちひとつの世界である。世界が目を閉ざし、存在を否定したのなら、如何なる事象も"無い"のと同じなのだ」
「え~~っと、つまり……臭いものに蓋ってことか?」
「悪くない表現だ、華村悠灯。天枷仁杜はその思考法を突き詰めた、ひとつの極致といえる」

 個が持つ価値観とは基本的に自慰に等しい。
 八十億分の一、井の底を飛び出すことのない蛙の視座。
 さりとて一度与えられた身の丈を超え、空への飛翔を果たしたなら。
 それはもはや個の慰めに留まらず、世界を侵食する"悟り"となる。

 完成した恒星とは、ある意味では覚者と同義だ。
 どれほど幼稚な思想でも、恒星神(カミ)が抱くのなら覇者の憲法。
 よって持たざる者には倒せない。月女神・天枷仁杜を砕く手段は地球上に存在しない。

「しかしだ。もし女神の底に人間の名残が残っているのなら、話は些か変わってくる。
 弁慶の泣き所、アキレウスの踵……天と地の差を埋め得る、得難い光明だ」

 が。
 あちらから地上へ降りてきてくれるのなら、話は別だ。

「天枷仁杜の人間性を呼び起こし得る"鍵"を用いて、神の表層をこじ開ける。
 露出した地金が首尾よく零落を招いたなら、そこを我ら全員で叩き、偽りの神を弑する。
 妄想の楽園(ネバーランド)を破壊し、少女に堕ちた全能を叩き潰すのだ」

 それが天枷仁杜、ひいてはこの後顕れ得る、恒星神達への唯一無二の対抗手段。
 羽化を果たして尚残るヒトの名残を狙い撃ちにし、星の権能を零落させて押し潰す。
 こうまで語られれば善良な少女達も、全員がホムンクルスの言わんとすることを理解した。
 ゲオルク・ファウストが何故、この策を残酷と形容したのかも。

「噛み砕いて言えば、傷口に塩を塗り込むということだ。貴殿らの価値観で言うなら、この上なく惨い攻略法だろう?」

 どれだけ大仰に語っても、結局のところ本質はそういうこと。
 大切な人を失い、心に深い傷を負って眠りに就いた女。
 それを叩き起こして塒から引きずり出し、現実を見せつける戦い。

「しかし誰かがやらねばならない。私は友を救うべく神へと挑むが、そこを置いたとしても、これは必要不可欠な聖戦なのだから」

 夢見る限り、月の女神は倒せない。
 女神の夢は世界を喰らう。堕落の底へ、甘い絶望へとすべてを引きずり込んでいく。
 ホムンクルスの無配慮にはほとほと辟易していたアンジェリカだが、そんな彼女も今回ばかりは反論のしようもなかった。

 天枷仁杜は既に産まれてしまった恒星神。
 破滅の未来、ルート・γを確定させた終末星。
 迫る滅亡を食い止めるためには、もうその枝自体を剪定する以外に術はない。

「説明は以上だ。何か質問は?」
「あ、あの~……」

 おずおずと手を挙げたのは、満天。

「話は、その……あんま分かりたくないけど分かったよ。
 だけどさ、怒ったにーとさんがすっごい勢いで暴れ出したらどうするの?」
「ふむ。なかなかいい着眼点だ、紛い物A」
「ま、ままままま紛い物A!?!?!?」
「私はおまえを星と認めていない。故に適当な呼称だろう……まあ、半分は諧謔だ。忘れて構わん」

 あまりの物言いに開いた口が塞がらない満天。
 他の一同も概ね「こいつ……」という顔をしている。唯一、山越風奇だけは愉快そうに肩を揺らしていた。
 なお当のミロクはどこ吹く風で、さてどう講釈するか、とちいさな身体で腕を組み――

「身も蓋もない言い草だが、"やってみるまで分からない"という回答になる」
「わかんない……って……」
「実際、この作戦の最大の問題点はそこなのだ。
 鍵を用いて扉を開き、女神のドレスを剥いだとして、その先に待っているのが希望か絶望か予測できない」

 ようやく見えかけた光明を否定する、本末転倒の答えを返した。

 だが言わんとすることは満天達にも分かる。
 わずかな時間の邂逅でも嫌というほど思い知らされた神の力。
 今は防御と堕落の拡散にしか使われていない星光が、万一攻撃に傾けられたならどうなるのか。
 考えるまでもない。作戦がうまく行けば御の字でも、失敗すれば最悪の場合、全滅もあり得るわけだ。そしてむしろその可能性の方が圧倒的に高い。

「とはいえだ。先にも述べた通り、我々はこれをやらねばならん。
 天枷仁杜という目先の脅威を退けるためもあるが、何よりも後々のためにだ」

 幾ら問題があろうが、無敵の恒星神を退ける現状唯一の手段であるのは変わらない。
 だからやらねばならないという言い分は分かる。しかしホムンクルスの言葉の後半には、どこか不穏な含みがあった。
 その真意に気付いたのは、アンジェリカ・アルロニカ。

「……今回得たノウハウを、次の星に応用するため?」
「然り」

 返ってきた肯定に苦い顔をしたが、しかしこれもやはり反論に窮する。
 理解できたからだ。ホムンクルスの語る通り、この戦いは今後の滅亡を跳ね返す試金石にもなると。

「恒星神とは少女を器に生み出される終末装置だ。
 その出力は神霊の本体に匹敵し、同格でなければ土俵に上がることも許されない。
 しかしそこに共通の弱点という再現性があるのなら、第二、第三の恒星神を崩す手立ても組めるというものだろう」

 神の中に残った不完全な要素を外的に刺激し、人間性を引きずり出して弱体化させる。
 そのアプローチが本当に有効ならば、これから先に生まれる星神達にも同じ手を使って攻略を図れるかもしれない。
 たとえ先に垣間見た破滅の未来――羽化を果たした輪堂天梨のような終末が実現してしまったとしても、神殺しのノウハウを確立できれば詰みのその先を足掻くことができる。

 なればこそ、やはり天枷仁杜への挑戦は自分達にとって不可避のチェックポイントになるわけだ。
 改めて突き付けられた今後の道行きを前に、少女達は押し黙るしかなかった。

「説明はこんなところだ。もはやそう猶予もない、キャスターが戻ればすぐに動き出す運びとなるだろうが……」

 当然の沈黙をよそに、ホムンクルスが視線を向けた先は満天でもアンジェリカでもない。
 華村悠灯。先の一悶着以降は特段関心を向ける素振りのなかった相手へ、幼顔に見合わぬ無機質な眼光が注がれる。

「あれが戻ってきてから揉めるのも面倒だ。よって貴殿には先に伝えておこう」
「あ? なんだよ、藪から棒に……」

 訝しげな顔をする悠灯だが、ややもすると彼女は、この時点で既に続く言葉を察していたのかもしれない。
 狩魔やゲンジといった知己の相手を軒並み失い、ここにいる面々以外にろくすっぽ人物関係の矢印が存在しない野良犬。
 そんな自分に対し、改めて断っておかなければならない事柄などたかが知れている。
 そして、予感の理由はもうひとつ。


 非常にムカつくが――"神を殺す"なんて大それた目的を掲げる姿は、あの女にとてもよく似合う気がしたから。


「私のアサシンが接触し、現在煌星満天のキャスターと交渉を行っている演者は、伊原薊美だ」


 だから悠灯は数時間ぶりに聞く忌まわしいその名を、奇妙な納得と共に受け入れたのだ。



◇◇



「薄気味悪い女だ。好んで関わりたくはねえな」

 交渉はつつがなく進み、ファウストは通話の切れたスマートフォンを片手に素の口調でぼやく。

 結論から言うと、砕月の大同盟は無事結成された。
 天枷仁杜を討伐するまでの、期限付きの呉越同舟。
 もう少し難航するかと思っていたが、薊美は実に物分かりがよかった。
 お互い渋い条件を押し付け合うこともなく、概ね平和的に話を着地させられた形だ。

 だからこそ、ファウストは伊原薊美という演者への警戒度を上げる。
 ライブの一件で、自分が策謀家である旨は伝わっている筈。
 おまけに恒星の資格者を連れた、言うなれば第二の天枷仁杜、第三の神寂祓葉となり得る器を連れた英霊である。
 ファウストが彼女の立場なら、まず絶対に譲歩などしない。
 表面上は理解を示して友好をアピールしつつも、確実に一つ二つは強烈な条件を付けて縛りにかかる。
 なのにその辺りの機微をおくびにも出さず、トントン拍子で話を進めさせてくれたのだ。

 思いつく理由は以下。
 如何なる智謀も爆弾も、すべて踏みしだいて進む自信があるか。
 地に足着いた堅実な打算に、己がエモーションを優先させてしまうほど狂っているか。

 ……もしくは、その両方か。

(伊原薊美。以前見た時から、妙な匂いのする女とは思っていたが……)

 何にせよ、細心の注意を払って付き合う必要がある。
 都市においてエモーションほど厄介な劇物はない。
 これから自分達が立ち向かう傍迷惑な月神も、己が育てる妖星の悪魔も、本を正せばすべてはその六文字に起因した傑物なのだから。

「よう、プロデューサー殿。ちょっといいかい」
「ええ。お疲れ様でした、アサシン。何かありましたか?」

 兜の緒を締め直したファウストの傍へ、ぬるりと髑髏面の黒子が現れる。
 "継代"のハサン・サッバーハ。渋谷内に潜伏させていた端末を用いて素早く敵の本丸と、もうひとつの砕月同盟を探し出したのは彼の手腕だ。

 ファウストをして見事と呼ぶ他ない手際の良さである。
 彼の辣腕のおかげで、事は当初の予想よりだいぶ早く進んでくれた。
 だが当のハサンは己の成果を誇るでもなく、むしろ面の下の皮膚に一筋の汗を伝わせていて。

「ああ。端末が破壊された」
「……、……何ですって?」

 薊美達への接触に使った端末(NPC)が不慮の殉職を遂げたことを、焦燥の滲む声で伝えてきた。

「やったのは恐らく新手だ。メインの仕事が済んだとはいえ、合流までは連絡要員として向こうに残しておくつもりだったんだが……」

 ハサンの報告に、ファウストも訝しげに眉根を寄せる。
 新手の仕業という点に疑義の余地はない。
 薊美個人への心象はどうあれ交渉は平和裏に終幕し、であれば此方との窓口になる傀儡人形を壊す理由がないからだ。

「――これ、もしかしなくても急いだ方がいいかもだぜ。俺が思うに、こいつは……」
「同感です。すぐに結果を伝え、出発しましょう」

 みなまで聞く必要はない。
 既にゲオルク・ファウストの脳裏には、ハサンの端末を壊した下手人の魂胆が想像できていた。

 繰り返すが、ヒトが打算を捨てる時、そこに存在し得る理由は概ね三つしかない。
 神をも恐れぬ圧倒的な自信。理屈を度外視して足を走らせる狂気。
 そして、その両方。

 この時点では顔も名前も知れない最後の役者の人物像が、さっきまで言葉を交わしていた"茨の王子"とにわかに重なるのを感じ、悪魔は心底辟易する。
 ああ、つくづくヒトというものは――度し難く愚かで、油断ならないモノだと。



◇◇


「……話は纏まったの?」
「ええ。大変有意義な話し合いができました」

 電話代わってよかったです、という言葉を喉の奥に留めつつ、薊美はイリスの問いに微笑で応えた。

「やっぱり怖い人ですね。あのロキさんに一杯食わせたのは伊達じゃないや」
「ねえ、本当にあんな胡散臭い奴と組む気? 破算するならひとりでやってほしいんだけど」
「そこは今更言いっこなし。イリスさんだって、流石に私達だけで勝てるとは思ってないでしょ」

 んむむ……と不服そうな顔をする魔女だが、反論の言葉は出てこないようだ。
 スカディを引き入れられたのは僥倖だったにしろ、結局のところ今の彼女はマスターが別な戦場にお熱になっている間、暇を潰しているようなもの。
 令呪の命令があれば呼び戻されてしまうだろうし、考えたくはないが、赤坂亜切の機嫌次第では此方に襲いかかってくる可能性すらある。
 そういう意味でもやはり、頭数が多いに越したことはないのだ。とはいえこれは小癪な理論武装に基づいた、表向きの理由に過ぎなかったが。

「それに。プロデューサーが来るってことは、自慢のアイドルも来るってことだ」
「ロクでなし。どうせそっちが本命なんでしょ」
「あれ、イリスさんだって興味あるんじゃないですか? 苟も夜空の星を僭称する紛い物が、偽物同士どうやって殺し合うのか」

 薊美は、イリス達六人のように恒星の資質そのものを疑っているわけではない。
 とはいえ是認できないのは同じだ。茨の王子は、主役たれと自己を律する少女は、己以外の輝きを決して許せないから。

 煌星満天もまた、星だ。
 羽化を果たし神と成った仁杜と接触することで、どんな化学反応が齎されるのか――確かめる絶好の機会である。
 もしも輝きが浅ければ、仁杜のついでに踏み潰してしまってもいい。
 どうせ紛い物、いずれ躙る徒花なのだから。生かすも殺すも薊美の一存に委ねられている。

「……、……」

 はあ。イリスが溜息をつき、ツートンカラーの頭をわしゃわしゃと掻き乱した。
 その落ち着かない素振りを見て、小首を傾げる薊美。

「もしかして、気が乗らないんですか?」
「んなわけないでしょ。勝手に人の心を――」
「友達を悪趣味に嬲り殺すのは、嫌?」

 おい、と、ドスの利いた声を漏らすまでもなかった。
 イリスの眼光が、これまでのどこか苦労人じみたものから一気に切り替わる。
 腐り果てた華。狂人の貌(かんばせ)。死を超えた者にしか出すことのできない殺意が王子に注がれる。

「言葉は選べよ。知っての通り、私は気が短いんだ」
「怖い怖い。そんな鼻息荒くしないで。話は最後まで聞くものですよ」

 しかし薊美も、こんな程度の圧に怯む段階では最早ない。
 何故なら茨の王子は、既に究極の悪意を知っている。
 勝ち逃げされたことだけは不服だが、道化の王は本当に多くのことを教えてくれた。

「悪役とは、主役に踏み潰される林檎に等しい。
 けれど全員が全員、そこらのゴロツキみたいに情けなく絶叫してたんじゃ物語は締まりません」

 その点で言うならきっと、あの憎き/美しい月女神もそうなのだろうと思う。
 当人にさえ自覚はないだろうが、天枷仁杜という恒星もまた、自分に得難い成長を齎したのだ。

「凡百の悪は無様に。逆に一流の悪は美しく。相応しい声をあげながら轍と化してこそ、先頭を歩く主役(わたし)の誉れになる」

 ならばまさしく、あの"お姫さま"は伊原薊美という主役の物語における最初の通過点。
 必ずや踏み潰すと胸に誓いながら、同時に薊美はそこの末路に醜さを求めていない。
 露悪趣味の寸劇など今更流行らない。需要があったとしても、それは自分のような花形が演じる趣向ではないと薊美は自認している。

「にーとのお姉さんには然るべく死んで貰いますよ。そうでなくちゃ、私の益にならないのでね」
「……、……」
「第一、ちょっと弱点突いたくらいでそんな簡単にぐちゃぐちゃにならないですよアレ。
 むしろお姉さんのことだし、逆ギレしてとんでもないモノ出してきそうじゃないですか?」

 よって、誰がどう策を編んでいようが、薊美のやることは変わらない。
 この戦いは突き詰めれば自分と"彼女"のものだ。
 これから天に昇る主役と、最初に極点へ辿り着いた月の神。

 その結末は誰にも譲るつもりはないし、演目の色も己が決める。
 茨の王子は、踏み潰す林檎を選ばないのだから。

「まあ、話は分かった。その上で一個言わせなさい」

 聞き終えたイリスは目を閉じ、横溢させた殺意を内に引っ込めて。

「何を慮った気になってんのよクズ。私はあんたを主役とか認めた覚えは一ミリもないんだから」
「ぉうふっ」

 それはそれとしてムカついたのか、青筋を立てながら薊美の腹を殴りつけた。
 流石に魔力は載せていないものの、誰もが満場一致で認めるヒステリー女に手加減を期待するなど馬鹿げた話である。
 さしもの薊美もちょっと前のめりになってたたらを踏んだ。或いはこれは、"成った"後の薊美が初めて晒す吠え面だったかもしれない。

「……あの、痛っったいんですけど」
「殴ってんだから当たり前でしょ」

 むぅ、としかめっ面の薊美に、イリスがふん、と鼻を鳴らす。

「私はにーとのバカも、煌星満天も、星だなんて認めてないの。
 どこでどう野垂れ死のうが知らないし、死に方の是非なんて問うつもりはない」

 楪依里朱の星は、後にも先にもただひとりを除いて他にない。
 彼女が抱く狂気は〈未練〉。清算し損ねた青春だけが、燃え殻の身体を突き動かしている。

「あんたは自分の心配だけしてなさい。その座を狙うなら、あんただって私にとっては殺す対象なのよ」

 だからこれは、ほんのつまらない感傷なのだ。
 つかの間絆を育んで、少しだけ絆された相手に対して抱く気まぐれ。
 そういうことにして、白黒の魔女は鈍った己に鞭を打つ。
 あの〈はじまり〉を戦った者として、こんなぽっと出の新参に慰められているようでは、本懐など遂げられる筈もないのだから。

「イリスさんって」
「何」
「本当に素直じゃないですよね」
「マジで今度こそぶちのめされたい感じ?」

 兎角、やることは変わらない。
 天枷仁杜を殺し、都市を救う。
 薊美は、自分こそを真の恒星とするために。
 イリスは、いつか取り零した青春を終わらせるために。
 いずれ滅ぼすために、少女達は終わりゆく世界を延命するのだ。

「――あー、甘酸っぱくやってるとこ悪いんだが」

 ついては、まずはやはりファウスト達の同盟と合流する必要があろう。
 門を開ける機会は恐らく一度きり。鍵を持たない彼らは、薊美達の助力がなければ月の内界にすら入れない。
 この期に及んで待たされるのは億劫だが致し方ない――ふたりがそう思ったところで、頭を掻きながら口を開いたのはスカディだった。

「命が惜しけりゃそこから動くなよ」
「は?」

 イリスが疑問の声をあげた瞬間、スカディは既に行動していた。

「――――っ!?」

 撓る弓弦。解き放たれたイチイの矢の向かう先は、彼女達のどちらでもない。
 明後日の方向へ飛んでいき、爆撃もかくやの破壊音を撒き散らす。

「ち。相っ変わらず食えない爺様だことで」

 矢の先で微笑む、禿頭の老人の顔を視認できたのは恐らくスカディだけだろう。
 いつの間に現れたのか、そしていつからそこに居たのか――。
 何ひとつ悟らせることなく、自分は一滴の血も流すことなく目的を完遂する。

「ぷぎゅ」

 そんな気の抜けた、そもそも声だったかどうかも怪しい"音"を鳴らし、端役の頭蓋が吹き飛んだ。
 〈継代〉のハサン・サッバーハの端末だ。メッセンジャーの脳漿と共に、燃え尽きた形代の切れ端がひらひらと朝風に攫われていく。

 何故、と問わずとも、その行動の意味は全員が理解できた。
 連絡要員の排除によるレスポンスの遅延、足並みを乱す小癪な計略。
 分からないのは意図だ。真っ当な連中なら、今こんな真似を仕出かすのは損しかないと分かる筈。

「やれやれ……。どこの誰か知らんが、狂っているのか?」

 騎兵隊を招聘し、一斉射撃を敢行しながらカスターが呟いたのは詮無きこと。

 月の女神は全演者、全英霊にとっての厄災であり、放置すればすべてを御破算にしかねない弩級の厄種だ。
 それをわざわざ頭数揃えて討伐に臨もうとしている集団に、こうして嫌がらせじみた真似をするなど戦況が読めていないとしか思えない。
 故に少年将校の疑問は正しく。だが同時に奇しくも、咄嗟に出たその言葉が命題への回答となった。

「――――いや。よもや、"そういうこと"か」

 意味がない。理屈がない。
 正気とは思えない、しかしそれもその筈。

「不味いな。これは非常に不味い展開ではないかな、弓兵(アーチャー)よ」
「同感だね、騎兵(ライダー)よ。アタシは連中と旧知なんだが……いやはや、何とも立派になったもんだ」

 もしも本当に狂っているのなら。
 すべての常識は、感情の火柱の前に炭化する。

「追うかね?」
「悪くはないが、恐らく無駄さね。何せ奴らは一個、お星さまでも真似の出来ない虎の子を持ってやがる」

 カスターと、スカディ。
 そして茨の王子と白黒の魔女。
 四人が見つめるその先で、月の門扉の前へ立つ青年がひとり。

 かつてと比べて見違えるほど、もしくは見る影もなく変貌した火傷顔(スカーフェイス)に、狩猟の女神は牙を覗かせながら喝采を贈った。

「ハッピーバースデー、香篤井希彦。いや、ドゥームズデーと謂うべきか」

 ――その名が意味するは、七人目の狂人。


「アギリに代わって祝福しよう。アンタ、なかなかいい顔するじゃないのさ」



◇◇



 賽が転がり、棗がそれを呑む。
 溢れ出した無明の闇が、朝を迎えた渋谷の一角を無変の領域へ書き換えた。

 これなるは唐土の日月封じ。
 世界からあらゆる『変化』を剥奪し、陰陽論的な時間停止を成し遂げる大秘術。
 『秘封之法・陰陽无色』――スカディをさえ現在進行形で無力化している御業の中で、しかし例外がひとつ。

「やはり駄目ですか。あんたの考察通り、あちらに許可されてないものは全部通じないみたいですね」

 目の前に聳える月女神の居城だけが、無明の法を無視して淡い月光を放ち続けていた。
 月を封じる秘術などむしろ覿面に効きそうなものだが、そもそもこの月は"有る"と"無い"を最初から同居させた幽幻の光源だ。
 即ち位相の違い。理屈は稚拙、だからこそ最悪に質が悪い。
 こうまで成ってしまった星神を退けるのは、冠位英霊を連れてきたとしても容易ではないだろう。

「とはいえありがたい。おかげで、どうするべきか確信できました」

 疵面をくしゃりと歪めて、希彦は以前の彼なら絶対に見せなかったろう、粘ついた笑みを浮かべた。
 これは偏執狂の貌だ。法も倫理も常識も、ヒトをヒトたらしめる鎖のすべてを破却して彷徨う狂人の相だ。

「どうせ聞いているのでしょう、お優しい女神さま。もうすぐ貴女を殺したくて堪らない人達が、鍵を携えてやってきます」

 そも希彦が『秘封之法・陰陽无色』を展開させたのは、月を無力化するためではない。
 引きこもりのお姫さまに異変を認識させ、興味を抱かせて引っ張り出すためだ。
 その上、邪魔な砕月勢力は無明の法に縛られて自分を邪魔立て出来ないのだから一石二鳥。

「貴女がとても強いのは知っています。でも、塵掃除も量が多いと面倒ですよね」

 ではそうまでして、香篤井希彦は何がしたいのか?
 月女神の排除に躍起になる勇者達の足を引っ張ってまで、一体何をやらかすつもりなのか。

「だから、僕がお手伝いしましょう。要は清掃員ですね。なので、まずは面接をお願いしたいのです」

 決まっている。
 この男は女神を倒して貰わなければ困るだなんて月並みな思考、微塵たりとも抱いていない。

 彼は祓葉の狂信者だ。
 茨の王子? 白黒の魔女? その他大勢、まだ見ぬ希望に望みを懸ける?
 実に馬鹿げた話ではないか。究極の恒星とは神寂祓葉ただ独りで、月が世界を呑むのなら、いずれ紛い物の輝きは"本物"の極光に掻き消される。
 ならば慌てふためくなど自分の矮小さを喧伝するようなもの。取るべき選択は恐慌でも対抗でもなく、迎合して利用する以外にないだろうが。

 月女神を利して、彼女を倒さんと集まった羽虫共を一掃する。
 そうして盤上の塵を減らし、己が描く勝利の未来をより現実的なものにするのだ。

「さあ、お返事は如何に。美しいお嬢さん」

 希彦は薊美とは違う。
 星になるなど興味はない。そんな肩書きに固執せずとも、総てを手に入れるのは己だと信じているから。

 闇の中、月光が蠢く。
 救済の発信源たる城の中から、神の意思が男を値踏みする。
 幸いにして渋谷の神は幼稚だ。居城を包む暗闇と、周囲に撒いていた救済論(ラジオ)の途絶は、好奇という釣り餌になってその関心を買う。

 斯くして王子も、魔女も、悪魔達も。
 誰もがものの見事に、この男に出し抜かれたのだ。

「それでは皆さん、お先に」

 城の中へ、最新の狂人が悠々と消えていく。
 こうしてようやく、すべての役者が出揃った。


◇◇


【月光夢幻神界〈渋谷〉・『月姫真体・堕落恒星』近辺/二日目・午前】

【伊原薊美】
[状態]:魔力消費(中)、頭痛と疲労(中)、魅了(自己核星)
[令呪]:残り二画
[装備]:
[道具]:騎兵隊の六連装拳銃、『災禍なる太陽が如き剣(レーヴァテイン)』
[所持金]:学生としてはかなりの余裕がある
[思考・状況]
基本方針:全てを踏み潰してでも、生き残る。
0:女神を討つ。そして私は、恒星に至ってみせる。
1:私は何にだって成れる、成ってやる、たとえカミサマにだって。
2:殺す。絶対に。どんな手を使ってでも。
3:太陽は孤高が嫌いなんだろうか。だとしたら、よくわからない。
4:最後に首を獲るのは私。でも、そのためには準備が必要みたいだ。
5:……やられた。
[備考]
※マンションで一人暮らしをしています。裕福な実家からの仕送りもあり、金銭的には相応の余裕があります。
※〈太陽〉と〈月〉を知りました。
※自らの異能を活かすヒントをカスターから授かりました。

→上記ヒントに加え、神寂祓葉と天枷仁杜、二種の光の影響によって、魅了魔術が進化しました。

『魅了魔術:他者彩明・碧の行軍』
 周囲に強烈な攻勢魅了を施し、敵対者には拘束等のデバフ、同盟者には士気高揚等のバフを振りまく。

『魅了魔術:自己核星・茨の戴冠』
 己自身に深い魅了を施し、記憶した魔術や身体技術の模倣を実行する。
 降ろした魔術、身体技術の再現度は薊美の魔術回路との相性や身体的限界によって大きく異なる。
 ただし、この自己魅了の本質は単なる模倣・劣化コピーではなく。
 取得した無数の『演技』が、薊美の独自解釈や組み合わせによって、彼女だけの武器に変質する点にある。

※ウートガルザ・ロキから幻術による再現宝具を授かりました。
 ・『災禍なる太陽が如き剣(レーヴァテイン)』
 対神、対生命特攻。巨人の武具であり、神の武具であり、破滅の招来そのものである神造兵装――の、再現品。
 ロキの幻術で生み出された武器であるため、薊美が夢を見ている限り彼女のための神殺剣として機能を果たす。
 逆に薊美が現実を見れば見るほど弱体化し、夢見ることを忘れた瞬間にカタチを失い霧散する午睡の夢。
 セキュリティとして術者であるロキ、そして彼の愛しの月である天枷仁杜に対して使おうとすると内蔵された魔術と呪いが担い手を速やかに殺害する仕組みが誂われている。
 サイズや重量は薊美の体躯でも扱える程度に調整されている様子。

 →ロキの消滅により、仁杜に対し使用できない呪いが消えているようです。


【ライダー(ジョージ・アームストロング・カスター)】
[状態]:疲労(中)、心臓にダメージ(中)、左鎖骨切断、複数の裂傷と刀傷、魅了
[装備]:華美な六連装拳銃、業物のサーベル(トバルカインからもらった。とっても気に入っている)
[道具]:派手なサーベル、ライフル、軍馬(呼べばすぐに来る)
[所持金]:マスターから幾らか貰っている(淑女に金銭面で依存するのは恥ずべきことだが、文化的生活のためには仕方のないことだと開き直っている)
[思考・状況]
基本方針:勝利の栄光を我が手に。
0:まったく、どいつもこいつもろくでもない。
1:神へ挑まねば、我々の道は拓かれない。
[備考]
※魔力さえあれば予備の武器や軍馬は呼び出せるようです。
※シッティング・ブルの存在を確信しました。

※エパメイノンダスから以下の情報を得ました。
 ①『赤坂亜切』『蛇杖堂寂句』『ホムンクルス36号』『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報。
 ②神寂祓葉のサーヴァントの真名『オルフィレウス』。
 ③キャスター(ウートガルザ・ロキ)の宝具が幻術であること、及びその対処法。
※神寂祓葉、オルフィレウスが聖杯戦争の果てに“何らかの進化/変革”を起こす可能性に思い至りました。
※“この世界の神”が未完成である可能性を推測しました。

※令呪および、伊原薊美の魅了魔術によって霊基が強化されました。


【楪依里朱】
[状態]:疲労(中)、腹部にダメージ(小)、魔力消費(中/色間魔術により回復中)、強烈な自己嫌悪、未練
[令呪]:残り一画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:数十万円
[思考・状況]
基本方針:優勝する。そして……?
0:――なんだ、あいつ。
1:祓葉を殺す。
2:にーとを今度こそ、必ず終わらせる。できれば、私の手で。
3:薊美に対しては微妙な気持ち。間違いなく敵なのだが、なんというか――。
4:このデカ女(スカディ)を連れてくとかマジで言ってんのか????
[備考]
※天枷仁杜(〈NEETY GIRL〉)とネットゲームを介して繋がっています。
 必要があればトークアプリを通じて連絡を取ることが出来るでしょう。
※蛇杖堂記念病院での一連の戦闘についてライダー(シストセルカ)から聞きました。
※今の〈脱出王〉が女性であることを把握しました。

【ライダー(シストセルカ・グレガリア)】
[状態]:総軍、やる気なし、弱体化状態
[装備]:バット(バッタ製)
[道具]:
[所持金]:百万円くらい。遊び人なので、結構持ってる。
[思考・状況]
基本方針:好き放題。金に食事に女に暴力!
0:うん、やっぱりまともに動けねえわ。メンゴ!
1:祓葉にはいずれ借りを返したいが、まあ今は無理だわな。
2:煌星満天、いいなァ~。
[備考]
※イリスに令呪で命令させ、寒さに耐性を持った個体を大量生産することに成功しました。
 今後誕生するサバクトビバッタは、高確率で同様の耐性を有して生まれてきます。
※総軍を結集させました。再度散らすまで、戦闘時の魔力消費が大きく増加します。
※『月光夢幻神界』の堕落の法による影響をきわめて強く受けるようです。
 かなりの弱体化を被っており、戦闘能力は甘く見て平時の一割程度。

【アーチャー(スカディ)】
[状態]:疲労(小)、右腕が刀傷でズタボロ(行動に支障なし)、複数の裂傷
[装備]:イチイの大弓、スキー板。
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:狩りを楽しむ。
0:月女神の討伐に力添えする。アギリもアレは気に入らないみたいだし、丁度いいだろ。
1:向こうのゴタゴタが済んだらランサー(ルー)を再び狙う。逃がさないよ、色男。
2:日中はある程度力を抑え、夜間に本格的な狩りを実行する。
3:マキナはかわいいね。生きて再会できたら、また話そうじゃないか。
4:ランサー(アンタレス)を獲る。一皮剥けたようだしね、食べ頃だろ。
5:キャスター(シッティング・ブル)は一度見逃す。ただし次は必ず狩る。
6:面白いことをやるヤツがいるもんだ。懐かしい匂いだが、同郷のナニカかな?
7:伊原薊美。ふぅん。
8:セイバー(トバルカイン)とはまたやり合う予感がする。非常に楽しみ。
[備考]
※ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)の宝具を受けました。
 強引に取り除きましたが、どの程度効いたかと彼女の真名に気付いたかどうかはおまかせします。


【月光夢幻神界〈渋谷〉・『月姫真体・堕落恒星』/二日目・午前】

【香篤井希彦】
[状態]:〈恋慕〉、健康、右顔面に火傷痕
[令呪]:喪失
[装備]:
[道具]:式神、符、など戦闘可能な一通りの備え
[所持金]:現金で数十万円。潤沢。
[思考・状況]
基本方針:総てを手に入れる。
0:全部やろう。僕は、もう妥協しない。
1:月女神・天枷仁杜へ協力し、彼女に楯突く勢力を掃討する。
2:こんなものを恐れるなんて、思ったより底が浅いんですね、皆さん。
[備考]
※神寂祓葉との戦闘で一度死亡し、真備の秘術によって蘇生されました。


【キャスター(吉備真備)】
[状態]:全身にダメージ(大)、胴体に裂傷(修復中)、魔力消費(中)
[装備]:
[道具]:『真・刃辛内伝金烏玉兎集』
[所持金]:希彦に任せている。必要だったらお使いに出すか金をせびるのでOK。
[思考・状況]
基本方針:知識を蓄えつつ、優勝目指してのらりくらり。
0:さて。儂も、閻魔にどやされる覚悟は決めとくかの。
1:希彦の選択に思うところはあるが、魂から望んだことなら止めはすまい。その上で面白可笑しく愉しむまでよ。
2:カドモスの陣地は対黒幕用の拠点として有用。王様の懐に期待するしかないのう。
3:〈ニシキヘビ〉なる存在への興味。ともすれば非道い難物が出てきそうじゃ、楽しみ楽しみ。
[備考]
※〈恒星の資格者〉とは、冠位英霊の代替品として招かれた存在なのではないかという仮説を立てました。
※まがい物の生活続命の法を用い、香篤井希彦を蘇生させました。
 契約のパスが繋がっていることでどうにか出来たウルトラCなので、恐らく再現性はありません。


【月光夢幻神界〈渋谷〉・FW付近/二日目・午前】

【煌星満天】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(大)、断片的な記憶の回復、気分高揚気味、炎上に対するむかむか、左肩負傷
[令呪]:残り三画
[装備]:『微笑む爆弾』
[道具]:なし
[所持金]:数千円(貯金もカツカツ)
[思考・状況]
基本方針:トップアイドルになる
0:水子界を隔離する障壁を解除するために、月光の神に挑む。
1:魅了するしかない。ファウストも、ロミオも、ノクトも、この世界の全員も。
2:輪堂天梨を救う。
3:……絶対、負けないから、天梨。
4:天枷仁杜には苦手意識。でも、きれいだった。
5:私、なんで忘れてたんだろ?
6:好き勝手言うなよ、私達の何を知ってるんだ。
7:――――私は、何(だれ)?
[備考]
 聖杯戦争が二回目であることを知りました。
 ノクトの見立てでは、例のオーディション大暴れ動画の時に比べてだいぶ能力の向上が見られるようです。
※輪堂天梨との対決を通じて能力が向上しています(程度は後続に委ねます)。
 ・『微笑む爆弾・星の花(キラキラ・ボシ・スターマイン)』
 拡散と誘爆を繰り返し、地上に満天の星空を咲かせる対軍宝具。
 性質上、群体からなる敵に対してはきわめて凶悪な効果を発揮する。
 現在の満天では魔力の関係上、一発撃つのが限度。ただし今後の成長次第では……?
 ・現状でも他の能力が芽生えているか、それともこれから芽生えていくかは後続に委ねます。 
※輪堂天梨と個人間の同盟を結びました。対談イベントについては後続に委ねます。
※過去について少し気付きを得ました。詳細は後続に委ねます。
※満天の記憶には、次兄・暮昏光点によって"蓋"がされています。
※蓋が少しズレました。

【プリテンダー(ゲオルク・ファウスト/メフィストフェレス)】
[状態]:右腕損壊(魔術によって回復中)、及びそれによる失血(同じく回復中)
[装備]:名刺
[道具]:眼鏡、スキル『エレメンタル』で製造した元素塊
[所持金]:莫大。運営資金は潤沢
[思考・状況]
基本方針:煌星満天をトップアイドルにする
0:渋谷の神(推定:天枷仁杜)を退かし、かの街でライブを行わせる。
1:『鍵』との合流を急ぐ。厄介なことになった。
2:輪堂天梨との同盟を維持しつつ、満天の"ラスボス"のままで居させたい。
3:ノクトとの協力関係を利用する。が、ライブの実施が現実的になったなら切り捨てを視野に入れる。
4:時間が無い。満天のプロデュース計画を早めなければならない。
5:天梨に纏わり付いている復讐者は……厄介だな。
6:高天小都音とは個人的にパイプを持っておく。
7:アンジェリカ・アルロニカは油断ならないが――
[備考]
 ロミオと契約を結んでいます。
 ノクト・サムスタンプと協力体制を結び、ロミオを借り受けました。
 聖杯戦争が二回目であること、また"カムサビフツハ"の存在を知りました。
 高天小都音経由で、〈はじまりの六人〉及び神寂祓葉の情報を知りました。


【アンジェリカ・アルロニカ】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(小)、頭痛(大)
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:ヒーローのお面(ピンク)
[所持金]:家にはそれなりの金額があった。それなりの貯金もあるようだ。時計塔の魔術師だしね。
[思考・状況]
基本方針:勝ち残る。
0:あんなものを星と呼ぶのなら、やっぱり、私は戦わなくちゃいけない。
1:未来を変える。私は、神を生ませない。
2:神寂祓葉に複雑な感情。
3:蛇杖堂寂句には二度と会いたくない。
4:あー……きっつい、これ……。
5:満天のプロデューサー(ファウスト)に警戒心。こいつは絶対ロクでなしだ。
[備考]
※ホムンクルス36号から、前回の聖杯戦争のマスターの情報(神寂祓葉を除く)を手に入れました。
※蛇杖堂寂句の手術を受けました。
※神寂祓葉が"こう"なる前について少しだけ聞きました。
※アルロニカ家の魔術刻印と共鳴することで、世界の始点と終点の一部を観測しました。

【アーチャー(天若日子)】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(中)
[装備]:弓矢
[道具]: ヒーローのお面
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:アンジェに付き従う。
1:アサシンもアヴェンジャーも気に入らないが、当面は上手くやるしかない。
2:赤い害獣(レッドライダー)は次は確実に討つ。許さぬ。
3:神寂祓葉――難儀な生き物だな、あれは。
4:星神(天津甕星)とは次に会ったら受けて立つ。私には、その責任がある。
[備考]
※アサシン(継代のハサン)が2回目の参戦であることを知りました。


【ホムンクルス36号/ミロク】
[状態]:疲労(小)、脳にダメージ、肉体強化、"成長(第二フェーズ)"
[令呪]:残り二画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:忠誠を示す。そのために動く。
0:紛い物の星でさえあの域。凄まじい。
1:輪堂天梨を対等な友に据え、覚醒に導くことで真に主命を果たす。
2:……ほむっち。か。
3:煌星満天を始めとする他の恒星候補は機会を見て排除する。
4:アンジェリカ・アルロニカ――。
5:第二、第三の恒星神への対処法を見出すためにも、この作戦は成功させねばならない。
[備考]
※天梨の【感光/応答】を受けたことで、わずかに肉体が成長し始めています。
※解析に加え、解析した物体に対する介入魔術を使用できるようになりました。
※輪堂天梨が修羅場を超え、その力が洗練されたことで、ミロクの成長速度も急激に上昇しました。
 現在、3~4歳程度の童子の姿まで変異しています。


【アサシン(ハサン・サッバーハ )】
[状態]:霊基強化、令呪『ホムンクルス36号が輪堂天梨へ意図的に虚言を弄した際、速やかにこれを抹殺せよ』
[装備]:ナイフ
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:マスターに従う
0:えぇ……マジでアレと揉めんの……?
1:さて、どうすんだ、大将? ほんとに神とやりあうのか?
2:大将の忠告を無視する気もないが……ノクト・サムスタンプ、少し気になるな。
3:状況が落ち着いたら新宿の兵隊(機動隊員)の余りをこっちに呼んでみるのもアリだが、さて。
[備考]
※宝具を使用し、相当数の民間人を兵隊に変えています。
※OP後、本編開始前の間に、新宿警察署に集まっていた機動隊員たちを催眠下に捉えていました。
※自身が2回目の参加であること、前回のマスターがノクト・サムスタンプであることを知りました。
※状況が状況なのでホテルに留まることを選びました。新宿の機動隊員たちは、数こそ減ったものの幾らか生き残りがいるようです。
※薊美達へ接触させていたNPC(サラリーマン)が破壊されました。


【華村悠灯】
[状態]:人狼化。心臓喪失。永久機関・生死流転(同化完了)、生への渇望
[令呪]:喪失
[装備]:精霊の指輪(シッティング・ブルの呪術器具)、『時計じかけの方舟機構(Perpetuial motion Machine-Mark-Ⅲ(ver:3.3333333333333...))』
[道具]:なし
[所持金]:ささやか。現金はあまりない。
[思考・状況]
基本方針:大人になる。
0:生きる。好きなように、赴くままに。
1:取り急ぎ、ナイン達と行動を共にする。山越のことは変わらず信用してないが、その目的は利用したい。
2:……ありがとな、キャスター。
3:狩魔さん、ゲンジ――死んじまったのか。
4:あの刺青野郎ってば最悪!!
5:ナイン……お前さ、その……かわいいな……耳とか触っても良――いや待て何言ってんだアタシは!(うがーっ)
6:天枷仁杜は気に入らない。……だけど、カワイソウだ。
7:伊原、薊美――。
[備考]
神寂縁(高浜総合病院院長 高浜公示)、および蛇杖堂寂句は、それぞれある程度彼女の情報を得ているようです。

華村悠灯の肉体は、普通の意味では既に死亡しています。
ただし土壇場で己の真の魔術の才能に目覚めたことで、自分の魂を死体に留め、死体を動かしている状態です。
いわゆる「生ける屍」となります。
強いて分類するなら死霊魔術の系統の才能であり、彼女の魔術の本質は「死を誤魔化す」「生にしがみつく」ものでした。
自覚できていた痛覚鈍麻や身体強化はその副次的な効果に過ぎません。

この状態の彼女の耐久性や、魔力消費などについては、次以降の書き手にお任せします。
→魔力消費の影響をある程度無視できるようです。ただしあくまで誤魔化しているだけなので、度が過ぎると多分死にます。

→華村家の魔術は『死狼魔術』です。
 狼信仰をベースとし、死霊魔術や獣性魔術、死徒の細胞などを取り込んで作り上げた継ぎ接ぎのパッチワーク。
 覚醒した華村の魔術師は擬似的に人狼化し、超人的な身体能力と再生能力を得ます。
 ただし、あくまでも死を誤魔化し、蓋をして無理やりねじ伏せているだけに過ぎません。華村の魔術は失敗作です。

→神寂祓葉から永久機関を手渡され同化中です。
 華村悠灯は適応条件を満たさず体内から自壊していますが、死狼魔術により無理やり適応しようとしています。
 彼女の永久機関はオルフィレウスの開発していた新たな試作品であり、神寂祓葉に埋め込まれた物とは仕様が異なる可能性があります。

→永久機関への適応を完了しました。
 『時計じかけの方舟機構(Perpetuial motion Machine-Mark-Ⅲ(ver:3.3333333333333...))』には自我を無限時計文明の基準に合うよう矯正する機能が搭載されています。
 試作品なので働きはまだ限定的ですが、悠灯の意思が弱まれば侵食が進行するでしょう。
 また永久機関の影響で、サーヴァント不在のペナルティを無視できます。


【ライダー(ハリー・フーディーニ)】
[状態]:第二生(ツー)、令呪『私が令呪で許可するまで、第一生の棺を開けることを禁ずる』
 二生→健康
 三生→健康
 五生→健康
 九生→疲労(小)
[装備]:九つの棺
[道具]:
[所持金]:潤沢(ハリーのものはハリーのもの、そうでしょう?)
[思考・状況]
基本方針:山越風夏の助手をしつつ、彼女の行先を観察する。
0:華村悠灯に同行する。何考えてんだあのバカハリーは。
1:当面は悠灯に従うつもり。
2:神寂祓葉は凄まじい。……なるほど、彼女(ぼく)がああなるわけだ。
[備考]
準備の時間さえあれば、人払いの結界と同等の効果を、魔力を一切使わずに発揮できます。

宝具『棺からの脱出』を使って第三生のハリー・フーディーニと入れ替わりました。

第二生のハリー・フーディーニ:
生前の名は「山越風奇(やまごえ・ふうき)」
一度目の聖杯戦争に"参加しなかった"山越風夏の前世。
"脱出"の起源覚醒者。魔術的な能力を持たぬ代わりに、超抜の技巧と体幹を備える。

第三生のハリー・フーディーニ:
生前の名は「蛇杖堂寂尊(じゃじょうどう・じゃくそん)」、かの蛇杖堂寂句の2人で1人前の「共同後継者の片割れ」です。
蛇杖堂寂句の医術と体術を継いでおり、治癒魔術や治療薬の知識もありますが、治癒魔術の実践はできません。
寂句に自尊心をズタズタにされており、己の能力を過小評価する傾向がありますが、外科医としての腕と格闘術は超一級です。

第五生のハリー・フーディーニ:
神聖アーリア主義第三帝国陸軍所属。第四次世界大戦を生き延びて大往生した老人。
スラッグ弾専用のショットガンを使う。戦闘能力が高い。
ヴァルハラの神々に追われている妄想を常に抱いており話が通じない。

雪村鉄志、琴峯ナシロ、高乃河二、赤坂亜切の現在の動向について聞きました。


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最終更新:2026年06月22日 01:20