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食事も終わり、一息ついて、おしゃべりに花が咲いていたが、ふと時計を見るとかなりの時間になっていた。
「あれ、もうこんな時間か」
「あら、ホント」
「えっと、俺はこれで失礼します」
「あ、じゃあ、オレも帰るか。あんまり遅いと兄貴達も心配するだろうしな」
藤岡と同時に立ち上がった冬馬。
「あ、俺冬馬を送っていきます」
「え? いいよ。一人で帰れるし」
「良くないよ。いくら冬馬が男だって言っても、小学生がこんな時間に一人で歩いてたら危ないだろ」
確かに藤岡の言う事も一理ある。
「そうね、藤岡君なら脚力もあるし、いざという時は冬馬を背負って逃げる事も出来そうだし」
サッカー部のエースだけあり、足には自信がある。
何より冬馬と藤岡は仲がいいことをハルカは知っている。
「おい、藤岡ぁ、夜道に二人っきりだからって変な事するなよ」
なにやら含みを持った言い方をするカナ。
勿論、冬馬を男と見ている藤岡はカナの言葉に含まれている意味に気付きはしない。
「そんな事しないって」
「そうだぞ馬鹿野郎。藤岡がそんな事するわけないだろう」
何故か千秋にも否定された。
「えっと…じゃあ、俺はこれで」
「じゃあなー、ハルカ、カナ、千秋」
「またいらっしゃーい。気をつけてね」
「藤岡、またいつでも来てくれ」
千秋とハルカに見送られ、藤岡と冬馬の二人はマンションを後にした。
「あれ、もうこんな時間か」
「あら、ホント」
「えっと、俺はこれで失礼します」
「あ、じゃあ、オレも帰るか。あんまり遅いと兄貴達も心配するだろうしな」
藤岡と同時に立ち上がった冬馬。
「あ、俺冬馬を送っていきます」
「え? いいよ。一人で帰れるし」
「良くないよ。いくら冬馬が男だって言っても、小学生がこんな時間に一人で歩いてたら危ないだろ」
確かに藤岡の言う事も一理ある。
「そうね、藤岡君なら脚力もあるし、いざという時は冬馬を背負って逃げる事も出来そうだし」
サッカー部のエースだけあり、足には自信がある。
何より冬馬と藤岡は仲がいいことをハルカは知っている。
「おい、藤岡ぁ、夜道に二人っきりだからって変な事するなよ」
なにやら含みを持った言い方をするカナ。
勿論、冬馬を男と見ている藤岡はカナの言葉に含まれている意味に気付きはしない。
「そんな事しないって」
「そうだぞ馬鹿野郎。藤岡がそんな事するわけないだろう」
何故か千秋にも否定された。
「えっと…じゃあ、俺はこれで」
「じゃあなー、ハルカ、カナ、千秋」
「またいらっしゃーい。気をつけてね」
「藤岡、またいつでも来てくれ」
千秋とハルカに見送られ、藤岡と冬馬の二人はマンションを後にした。
その帰り道、藤岡に送ってもらってよかった冬馬は思った。
何故か今日の帰り道はいつもよりちょっと暗い。
変質者がいつ出てきてもおかしくない。そんな夜だった。
「なあ、藤岡」
「ん?」
「今度の2010年サッカーワールドカップ南アフリカ大会、日本代表は何処までいけると思う?」
「そうだなあ、過去の大会の記録を見ても予選リーグ敗退、日韓ワールドカップでもベスト16だったし…本大会に出てみないと分からないかな」
「そうか。オレはまた予選リーグ敗退だと思うけどな」
「どうしてそう思うんだ?」
「だってさあ、ヨーロッパとかと比べたら、パワーもテクニックも劣ってるし」
「うん、それはいえてる」
そんな他愛もない話をしながらの家路は何だか楽しかった。
何故か今日の帰り道はいつもよりちょっと暗い。
変質者がいつ出てきてもおかしくない。そんな夜だった。
「なあ、藤岡」
「ん?」
「今度の2010年サッカーワールドカップ南アフリカ大会、日本代表は何処までいけると思う?」
「そうだなあ、過去の大会の記録を見ても予選リーグ敗退、日韓ワールドカップでもベスト16だったし…本大会に出てみないと分からないかな」
「そうか。オレはまた予選リーグ敗退だと思うけどな」
「どうしてそう思うんだ?」
「だってさあ、ヨーロッパとかと比べたら、パワーもテクニックも劣ってるし」
「うん、それはいえてる」
そんな他愛もない話をしながらの家路は何だか楽しかった。
一方その頃、もう一つの南家では…
「遅い! 冬馬は何をしている!」
名もなき長男が冬馬の帰りが遅いのをかなり心配していた。
「南さん家に遊びに行ったら、いつもこの時間に帰ってきてるぞ」
と、ナツキ。
「そうだよ。それに、さっきカナさんから電話があって、藤岡って人が家まで送ってくれるみたいだし」
と、アキラ。
「藤岡? 誰だそれは」
「冬馬が仲良くしてる人だよ。何でも、サッカー部のエースらしいけど」
「サッカー部のエース…いかん、将来の日本代表になってワールドカップ初優勝も決まった様なものではないか」
「兄貴、今の会話でどうやったら、そこまで考えられるんだよ」
南家3兄弟が不毛な会話をしているそのさなか、冬馬が帰ってきた。
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
「よし、藤岡なる人物がどの様な奴か俺が確かめよう」
そういうなり、名も無き長男は玄関へと向かった。
なんとなく気になったので、ナツキとアキラも玄関に向かった。
「冬馬、お帰り。そして藤岡なる人物はどいつだ」
「どいつだって、どう考えたって一人しか居ないだろ馬鹿兄貴」
そういって冬馬が指差したのは、アキラにとっては恐怖の存在でしかない人。
「え、え~!」
「あれ、君は…」
ばったりと、まさかこんなところに居ないはずの藤岡の存在を見たアキラは心底おどいた。
「ば、番長さん!」
「? アキラ、藤岡と知り合いだったのか?」
「君、冬馬のお兄さんだったんだ…」
「は、はい!」
「………負けないよ」
「え?」
「南は、そう簡単に君には渡さないから」
綺麗に存在をスルーされた長男とナツキ。
「じゃあ、冬馬。俺はこれで」
「おお。気をつけて帰れよ」
「ああ、そうするよ。じゃ」
ぺこりと長男とナツキに頭を下げ、藤岡は帰路に着いた。
「遅い! 冬馬は何をしている!」
名もなき長男が冬馬の帰りが遅いのをかなり心配していた。
「南さん家に遊びに行ったら、いつもこの時間に帰ってきてるぞ」
と、ナツキ。
「そうだよ。それに、さっきカナさんから電話があって、藤岡って人が家まで送ってくれるみたいだし」
と、アキラ。
「藤岡? 誰だそれは」
「冬馬が仲良くしてる人だよ。何でも、サッカー部のエースらしいけど」
「サッカー部のエース…いかん、将来の日本代表になってワールドカップ初優勝も決まった様なものではないか」
「兄貴、今の会話でどうやったら、そこまで考えられるんだよ」
南家3兄弟が不毛な会話をしているそのさなか、冬馬が帰ってきた。
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
「よし、藤岡なる人物がどの様な奴か俺が確かめよう」
そういうなり、名も無き長男は玄関へと向かった。
なんとなく気になったので、ナツキとアキラも玄関に向かった。
「冬馬、お帰り。そして藤岡なる人物はどいつだ」
「どいつだって、どう考えたって一人しか居ないだろ馬鹿兄貴」
そういって冬馬が指差したのは、アキラにとっては恐怖の存在でしかない人。
「え、え~!」
「あれ、君は…」
ばったりと、まさかこんなところに居ないはずの藤岡の存在を見たアキラは心底おどいた。
「ば、番長さん!」
「? アキラ、藤岡と知り合いだったのか?」
「君、冬馬のお兄さんだったんだ…」
「は、はい!」
「………負けないよ」
「え?」
「南は、そう簡単に君には渡さないから」
綺麗に存在をスルーされた長男とナツキ。
「じゃあ、冬馬。俺はこれで」
「おお。気をつけて帰れよ」
「ああ、そうするよ。じゃ」
ぺこりと長男とナツキに頭を下げ、藤岡は帰路に着いた。
(ちょっと変わったお兄さんだな…)
それが長男を見た藤岡の第一印象だった。
それが長男を見た藤岡の第一印象だった。
それから数日後、例のごとくカナに呼び出され、藤岡は南家へとやってきた。
ピンポーン
「はーい」
呼び鈴を鳴らすと、中から出てきたのは冬馬だった。
「おお、来たか藤岡。さあ、入れ」
「うん。お邪魔しまーす。ってあれ? 冬馬だけ?」
冬馬に招き入れられ、藤岡はリビングへやってきた。
「カナに呼び出されたんだけどさ。カナのやつお菓子買いに行っちまった」
「そ、そうなんだ」
「全く、呼び出した張本人がやる事じゃないって」
「おーす、藤岡~!」
「うわあ!」
「え、ちょ!」
突如現れたカナに背中を押された藤岡はバランスを崩し、そのまま冬馬を押し倒すように倒れこんだ。
「あれ? 軽く押したつもりだったんだけど…」
ちなみに、今の藤岡の体制は事情を知らない第3者が見たら、藤岡が冬馬を押した風にしか見えない。
藤岡がうまく四つん這いになって、冬馬を押しつぶすのを回避しても、やはり押し倒したという風にしか見えない。
「ご、ごめん…冬馬。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ!」
何故か分からないが、冬馬の顔は少しだけ赤くなっていた。
呼び鈴を鳴らすと、中から出てきたのは冬馬だった。
「おお、来たか藤岡。さあ、入れ」
「うん。お邪魔しまーす。ってあれ? 冬馬だけ?」
冬馬に招き入れられ、藤岡はリビングへやってきた。
「カナに呼び出されたんだけどさ。カナのやつお菓子買いに行っちまった」
「そ、そうなんだ」
「全く、呼び出した張本人がやる事じゃないって」
「おーす、藤岡~!」
「うわあ!」
「え、ちょ!」
突如現れたカナに背中を押された藤岡はバランスを崩し、そのまま冬馬を押し倒すように倒れこんだ。
「あれ? 軽く押したつもりだったんだけど…」
ちなみに、今の藤岡の体制は事情を知らない第3者が見たら、藤岡が冬馬を押した風にしか見えない。
藤岡がうまく四つん這いになって、冬馬を押しつぶすのを回避しても、やはり押し倒したという風にしか見えない。
「ご、ごめん…冬馬。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ!」
何故か分からないが、冬馬の顔は少しだけ赤くなっていた。
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