ある日の秋、颯太と朝美は居酒屋で話をしていた。颯太は料理ができる売れない脚本家、朝美は料理ができないバリキャリの合理主義者である。2人は颯太の友人の紹介で知り合い、朝美は颯太が書いた小説のファンであった。この日に朝美の好物のだし巻き卵などの話をした後、二人はスピード婚をし、幸せな生活をしていた。しかし、結婚1年目のある日、朝美の左手にうまく力が入らなくなる。それから二月立った冬にも、朝美が最寄りの駅から家までの道が分からなくなっていた。その後、病院で検査すると朝美は余命1~2年ほどしかなく、それまでにさまざまな記憶を忘れて体も動かなくなることが判明した。翌年の春、二人は旅行の話をしていたが、次第に朝美の話になっていき、朝美は自分の事をあまり気にしないでほしいと思っていたようだ。梅雨の始まり、朝美の左足のマヒがひどくなりボウルを落としてしまう。どうやら、朝美は自分が死んだあとの颯太の事を気にしているようである。夏、朝美は自宅での生活が困難になり病院で入院するようになった。秋、颯太は朝美にまた自己紹介をする。しかし、今回は颯太が作っただし巻き卵の事だけは覚えていたようだ。朝美は冬まで生きることはなかった。
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