第一回：しらいし裕 - 土場藩国

～失われた黄金を求めて～

ここにいる摂政、一見どこにでもいるふつうの藩民である。
名をしらいし裕と言う。
今日は、彼に起こったちょっとした出来事を紹介しよう。

「来たれ、冒険者」
安っぽい紙に１色インクで書かれた チラシを手に入れてしまったのが
彼の運のツキであった。
【主人がオオアリクイに殺されて１年が過ぎました…】
この書き出しだけでもあやしさ抜群なのだが、このチラシの迷走はさらに続く。
どうも金に困っているから、主人の残した宝の地図を買え、というのだが
みるからに怪しい。
場所が裏山、というのもそうだが。地図の値段が「１０００わんわん」なのである。
宝の地図の値段にしては法外に安い。どう考えても詐欺なのだが、彼はコレに乗ってしまった。
なぜ、とか聞いてはいけない。それがロマンだからだ。
彼は、その地図を買うと藩王に出発許可を求める。答えは「おみやげがあるならいいよー」であったが、あくまで気楽な国であった。

そして、しらいしが降り立ったのは土場藩国のとある田舎町。有名なところなど何一つない。
ここに地図に書かれた裏山があるというのだが…

藩王「休暇を利用して宝探しをしたいという申請がありました。
仕事ぶりもまじめだし、息ぬきぐらいはいいだろうと思って許可したのです。
でも・・・まさかあんなことになるなんて」

しらいしは田舎町を暇そうに歩き、やがて荒れ果てた裏山へとやって来た。と、次の瞬間！！
何と見るからに黄金に関係なさそうな少年が顔を出しているではないか！！
話が違うと頭をかかえるしらいし、しかし相手はいっこうに聞き入れない。
どうやら、しらいしの外見が比較的信用できそうだったのがいけなかったらしい。
見事にストーキングされている。事態の深刻さに気づいたしらいしはすぐさまレスキューを呼んだ！

（実際の音声）
オペレーター「はい、こちら山岳警備隊です」
しらいし「大変なことになったんだ！子供に！ストーキングされてる！」

オペレーター「とにかく、いたづらはいやづら…と思いました。」

すぐさま警察に通報した。しかしそこで彼らが見たのは信じられない光景だった。
それにしてもこのオペレーター、ノリノリである。

警察の気配を察知し感覚を強化して逃亡を企てるしらいし、
胸のポケットにお守りを握り締めている。
お守りは当然、通販で買ったポチ王女のブロマイドである。
このお守り実はポチ王女のブロマイドではない。
すりかえられたのではなく、初めから違ったものを送りつけられていたのだ。
この件に関しては壮大な陰謀があったりするのだが、時間の関係上ここではあえてふれずに置く。

数時間後―――
発見した黄金の前で、警察に取り押さえられるしらいしの姿が。
黄金を発見したものの、少年を誘拐したと思われ警察に逮捕されてしまったのだ！

と、ここでネタばらし。実はこの企画、ターゲット（しらいし）以外すべてが仕掛け人。
全ていたずらだったと知ったしらいしは笑いながら胸をなでおろすのだった。

黄金と少年は計算外であったが、ピクニックにいって通報逮捕は全て
計画されていたことだったという。
この国の恐ろしい姿をみた一瞬であった。
なお発見した黄金は国庫に収められたという…哀れ。
また、ここで発見された少年はこの作戦における
貢献度を評価され藩都に招かれたという。