ソウスケにとって最上の喜びは、“知らない事を知る事”である。

ソウスケには一般的な倫理観が存在しない為、非人道的な行為が選択肢から外れない。そのため、ソウスケの“知らない事”は、一般的なそれよりは幅広い。
その幅広い探求心は、頭脳と行動力が伴うことで凶悪なものとなった。名前と顔を幾度も変えながら、連続殺人をしてみたり、犯罪組織を作ったり、おおよそ非人道的と言われる行動の多くに知見を得た。
その内に、興味をそそる“知らない課題”を見つけるのは難しくなってきていた。
ソウスケは、体験による経験と同じくらい、書物等による知識を重要視していた。知識と経験を収集し、統計にする。統計を分析することで、類型化と効率化が可能になる。
ソウスケにとって難しかった課題も、気が付けば易しい課題へと変化していった。

何かもっと面白い課題は無いかと考えていたときに、ソウスケはコトミと出会った。
何事にも立ち向かう気の強さと、結果傷ついてしまう繊細さを併せ持つ。自分第一なのに、他人に優しく情にもろい。信念をもって愚かな道を選ぶ姿は、あまりにも潔癖だ。
コトミは、ソウスケが予想もしない選択を取る。最初は、それが興味深かった。
次第にソウスケは、コトミと一緒にいるだけで嬉しさがこみあげてくることに気が付いた。
コトミは、真偽を見破る感性を持っている。ソウスケが被っていた仮面を早々に見破った。
それでも、コトミはソウスケから離れなかった。「気持ち悪い」「胡散臭い」「信用ならない」といいつつも、コトミはコトミの信念を持って、ソウスケの傍にあり続けた。

コトミの前では、ソウスケは仮面をかぶらない“ソウスケ”でいられた。
それは、ソウスケに「知らなかった自分」という、新しい課題を与えてくれた。

コトミはソウスケに新しい課題をくれる。ソウスケが新しい発見をすると、新しい視点でコトミを見ることができる。そうすると、コトミはまた新たな課題をくれる。
そんな無限のような循環が、刺激的で、心地よかった。

コトミといる事が、ソウスケにとって最上の幸せだった。
こんなにもソウスケを幸せにしてくれるコトミは、絶対に幸せにならないといけない。
それこそが、今のソウスケの行動原理だ。

――――


「ソウスケは、死んだ後の事って考えたことはあるの」

コトミがソウスケにそんなことを聞いたのは、イグニッション・ユニオンの2回戦が終わった後のことだった。
リッターバイクを運転するソウスケと、タンデムシートに腰を下ろしてソウスケにしがみつくコトミ。
雨混じりの風音が耳にうるさいが、幸い二人が被っているヘルメットには通信機が付いていたから、会話に支障はなかった。

「Of Course! 何しろ僕は死んだことがないからね。とても興味があるよ」

ソウスケは、声に喜色をにじませる。
二人の会話が長く続くことは少ない。ソウスケからコトミへの問い掛けの多くは、「うざ」等の一言でスルーされるからだ。
会話のラリーが続くとしたら、それはコトミからの問い掛けが主である。
そして、コトミがソウスケに興味を持つことなど、滅多にあることではない。
ソウスケは、コトミのことをもっと知りたいと常に思っているからこそ、これは実に楽しいイベントであった。

「……アンタらしいな」
「コトミは、死後の世界に興味があるのかい」
「そうじゃない。ただ、アンタが何の躊躇も無く死んだから」

そうだろうね。その言葉を、ソウスケは口には出さなかった。
ソウスケは2回戦の終盤、対戦相手からの負傷により、コトミの腕の中で死んだ。
幸い、先に死んだのは対戦相手だったので勝利はしたが、コトミにとって人が目の前で死んでいくというのは初めてのことだ。
人が死ぬ場面を目にしたコトミに、大きなショックが加わることと、それを乗り越えることはソウスケの想定内だった。コトミは、最も信頼していた祖父を亡くしている。死に対する忌避感が強いのは、想像がつくからだ。
だが、“ソウスケ”という一個人の死に対しても、コトミが哀憐の情を持っているのは、いささか想定を超えた。
コトミにとって、ソウスケは嫌悪感すら抱く相手だ。
そのソウスケが死んでも悲しむことができるというのは、コトミの優しさに他ならない。
ソウスケは、コトミへの尊敬をさらに強くした。

「死後の世界ではなく、僕が死をどうとらえているかに興味があるってことだね。コトミが僕に興味を持ってくれるなんて、こんなに嬉しいことはないよ!」
「聞かなきゃよかった」
「まあ、そう言わずに」

ソウスケが努めて明るく声を出すのは、コトミにこれ以上悲しみを引きずってほしくないからだ。
コトミの負担感を解消するには、心配すらばかばかしく思わせるのが最適解だと、これまでの付き合いで分かっている。
それは、ソウスケ自身それほど意識していないものの、間違いなくソウスケなりの優しさだった。

いつもなら、ここで話は終わりだ。
だが、ソウスケはもう一歩踏み込んでみたいと思った。
何故ならば、ソウスケはこの後、コトミと精神的に永遠の別離をする可能性があるからだ。
それは、コトミがソウスケを信じられなかったときに、コトミを幸せにするための一つの手段だ。
その手段を使えば、ソウスケにとって至福ともいえるこの時間は、二度と帰ってこなくなるだろう。
ソウスケは、少しでもコトミとの会話を長引かせたいと思っていた。

「コトミは、死んだ後のことをどう思っているんだい」

コトミが、少し黙る。
無視をされる可能性も高いな。ソウスケがそう思った時、コトミが絞り出すように、ぽつりと言った。

「……考えたことも無いな。そうだなあ。痛くないといいなあ、って思ってる」
「流石コトミだ。実に率直で人間の根源的な欲求に基づく言葉だね」
「バカにしてるだろ」
「命を賭けてもいいよ。僕が、コトミを馬鹿にするなんて未来永劫あり得ない」

コトミが、ふんと鼻を鳴らした。
コトミにとって、ソウスケの言葉は信用に足りない。だから、その言葉はコトミの芯に届くことは無い。
だが、ソウスケの言葉は真実だ。ソウスケはコトミにウソをつかない。
ソウスケにとってコトミは、新しい自分を教えてくれる人で、最上の幸せをくれる人だ。
ソウスケが、コトミと向き合うことなく嘘をつけば、新しい自分を見る事はできなくなるだろう。
だから、ソウスケが“ウソをつかない”と決めたならば、たとえ自分が死ぬことになったとしても、決してウソをつくことは無い。
ソウスケには、自分にウソをつくという発想が無いのだ。

「アタシがアンタを信じられなかったら、殺してもいいってこと?」

コトミは、吐き捨てるように言った。
ソウスケは、内心ほくそ笑んだ。そう言われれば、返す言葉は決まっているからだ。

「さすがコトミ。実にCriticalな返答だね。もちろん。僕は抵抗しない。それをコトミが望むなら、喜んで心臓を差し出すよ」
「はあ……。アンタなら、それはそれで楽しみそうだけどね。初めて死ねるとか言って」
「はは。コトミがそこまで僕のことをわかってくれるなんて、嬉しいなあ」
「命は大事にしろよ」

コトミは、ため息をつきながら、ソウスケの背中に頭を預けた。

「アタシは、死にたくない」

君がそう言うなら、僕は君を死なせないよ。
ソウスケはそう思ったが、コトミがこれ以上の言葉を望んでいないことを察して、言葉を飲み込んだ。

ソウスケは知っている。
コトミは、常に死への誘惑を抱えながら生きている。
コトミは、自分自身を確立しすぎている。あるがままに生きられないと死んでしまうような、脆弱な人間なのだ。
それ故に傷つきやすく、だからこそ死が救済と考える瞬間もあるだろう。
だけど、いくら心を傷つけたとて、自ら死を選ぶことはない。
コトミは、人生に絶望していないからだ。人生の先に、自分の望む世界があるという期待を持ち続けている。

コトミは、ソウスケとは違う。
死を恐れ、生に期待を持つ。そんな、普通の人間だ。
だから、たとえソウスケが「死なせない」と言ったとしても、何の意味もない。
ソウスケにできる事は、ただ一つ。
コトミがコトミの思うように生きていけるための手段を確保することだけだ。

ソウスケ自身の懸賞金である、50億円。
それはもうすぐ、コトミの物になる。

――――――


間も無く、ソウスケとコトミの戦いは終わった。

コトミはソウスケを信じ切れず、ソウスケは自らを犠牲にした。

コトミは新しい人生を始めるための金を手に入れた。
ソウスケは表向き死んだことになり、二度とコトミの前に姿を現さないことになった。

こうして、二人の物語は終わったのだ。

そのはずだった。
――――――


アタシの人生は、本当にクソみたいな一生だった。
アタシがアタシであることを、家族は認めてくれなかった。受け入れてもらう努力をしても、逆に反抗をしてみても、結局何も変わらなかった。
一番の理解者の祖父を亡くした後は、転がるように落ちていった。クソみたいな詐欺グループに入って、胸クソ悪い事をこなした。
それでも、アタシは自分の人生を諦めたくなかった。だから、へばりつくみたいな泥沼から抜け出すために、あんな頭のおかしい戦いに参加して……。
相棒を、自分の手で殺した。

アタシは新しい人生を手に入れた。使いきれないほどの金という、やり直すための手段を手に入れた。
だけど、ずっとアンタの最期の笑顔が目に焼き付いて離れてくれなかった。
初めて人を殺した時の胸クソ悪い気持ちが、ずっとアタシにこびりついている。

今ならわかる。

あの時アタシは、アンタの言葉を信じられなかった。アンタは、アタシに意味なくウソをつくような人間ではないと、分かっていたのに。
アタシは、信じたい人に裏切られるのが怖かったんだ。もう、傷つきたくなかった。目も耳も塞いで逃げ出したかった。

だけど、アンタならひょっとしたらと思った。
信じてもいいのかもと思った。アンタは、アタシを裏切らないのかもしれないと、思ったんだ。
アタシは、アンタにまでウソをつかれるのが、耐えられなかったんだよ。

結局、アタシはまた逃げだしてしまった。
アンタのあの時の言葉がウソかどうか、アタシには永遠にわからない。

なあ、ソウスケ。

アンタは知ってるだろう。
同意無しで、アタシの能力は発動しないんだ。
どうしてアタシは、アンタを殺せたんだよ。
なんで心臓をくれたんだよ。
なんでNOと言わなかったんだよ。

なんでアンタは、笑ってたんだよ。

――――――


(酷く寒いな)

英コトミは重力に抗えず、指の一本すらも動かせずにいた。
口の中に血の味がして、内臓がひっくり返ったような痛みが全身を薄く貫き続けている。骨が折れているのか、腕から先、膝から先が思うように動かない。
少しでも痛みに耐えるため、自分の身体を抱き締めるように丸まろうとする。

「……っ!」

身体中に激痛が走り、声にならない悲鳴をあげた。
悪態もつけずに、コトミは痛みを飲み込む。じっとしていると痛いし、動くともっと痛い。コトミは顔をしかめた。
目を開けようとすると、視界が赤く染まって染みる。頭からの出血が瞼を覆っているのだ。血を拭うために腕を上げようとして、折れていた事を思い出し、やめた。
小さく舌打ちをしながら、コトミがなんとか薄目で見た世界は、うすぼんやりと歪んでいた。

目の前に誰かがいた。

何か話しかけてきているが、まるで水の中にいるように、声がくぐもって聞こえない。
鼓膜が損傷しているせいだが、それをコトミは知る由もなかった。

(どこのどいつだ)

コトミが声を出そうと、息を吸う。広がった肺が折れた胸骨を圧迫する。痛みが走り、咳と共に血反吐が出た。とてもじゃないが、口を開けそうにもない。

(クソったれ)

何も見えず、何も言えず、何も聞こえない世界で、誰かがコトミを抱き上げた。
痛みで絶叫しそうになったが、そんな声はコトミには出せなかった。
せめて睨み付けてやろうかと思ったが、眉を寄せると酷い頭痛に襲われる。
コトミは、何もできる事が無い自分に呆れてしまった。

(アンタは、こんなアタシを見てどう思うかね)

気持ちの悪い笑顔が、脳裏に浮かんだ。
その時、コトミの体に異変が起きた。
身体の末端から、だんだんと体温が消えていくのを感じる。
心臓の鼓動が、弱くなっていくのを感じる。
頭の中から、パチパチと大事な何かが消えていく。
命が、消えていく。

(ああ、イヤだ。死にたくない。怖い。なんでアタシがこんな目に会うんだ)

いくつもの言葉が、弾けて消える。
そうして、結局たどり着くのはここだ。

(アンタもこんな気持ちだったのかよ。ソウスケ)

コトミの体から、先ほどまでの激痛が嘘だったかのように、痛みと共に五感が抜け落ちていく。
やがて、体が軽くなる感覚がコトミを包んだ。
それはとても心地よく。コトミ自身、呼吸が止まっているのがわかっているのに、まったく苦しくなかった。
何故かを考える余裕は、今のコトミにはない。
だが、その心地よさは、コトミに僅かながら思考の時間を与えた。

(結局、逃げられないんだな)

自分を曲げられないから、人を傷つけて。
傷付けたくなかったけど、結局耐えられなくて傷つけて。
逃げ出した先で、また傷つけて。
助けてくれるって言った奴を、傷つけて。
そうやって得た自由の先で、何も成さずに死ぬ。

そんなもんだ。
人を傷つけたら、傷つけられる。
人を殺したら、殺される。
そういう輪から抜け出したかった。抜け出して、許されたかった。
だけど、結局アタシは許されなかったんだな。

(いや)

唯一、アタシを許してくれたかもしれない奴がいた。
そいつも、もういないけど。

(アタシの人生って……)

コトミは、誰に伝えるでもなく唇を動かした。その声はコトミ自身にも届く事はなかった。

―――――


英コトミに二度と会う事はない。コトミと袂を分かった時、仙道ソウスケはそう考えており、そう望んでいた。
だから、この再会はソウスケにとって喜ばしいものではなかった。
決して、あり得ないと思っていたわけではない。可能性として考えてはいたが、できれば起こってほしく無い事象だった。

ソウスケの目の前に横たわるコトミは、誰が見ても助かると思えるような状態ではなかった。
まず、地面を覆うかのような多量の出血が見えた。コトミの顔面は蒼白で、唇は震えていた。
腹部外傷はないものの、出血の状態から恐らく内臓が破裂している。四肢は全て複雑骨折しており、人の形をかろうじて保っている状態だ。頭部外傷は重症ではないが、出血が目にかかっており、それを拭おうとしているのか、コトミの体がびくびくと痙攣していた。
ソウスケは、コトミの傍に座り、耳元に声をかけながら肩を叩いた。

「コトミ。僕の声が聞こえるかい。返事ができなければ、体のどこかを動かすのでもいいよ」

コトミの体を注意深く観察するが、反応はない。
意識が混濁しているのか、耳を損傷しているのか。或いは、その両方か。
どちらにしろ、確実なことがある。
コトミはもう、長くない。
それは、過去に生きたまま人間を解剖した経験のあるソウスケだから、分かることであった。
人間がどのように損傷すれば死ぬかを、ソウスケはよく知っている。
再度、ソウスケはコトミの耳元に口を近づけた。

「ねえ、コトミ。返事ができないと思うから、僕の考えを言うよ」

話しながら、ソウスケは注射器と麻酔の入った小瓶を取り出した。
コトミの腕に針を刺したが、もはやこの程度の痛みでは身動ぎもできないようだった。
そのままコトミの腕に薬液が入りきるのを確認したソウスケは、注射器を回収して、手早く専用のケースにしまう。
これで、少なくとも痛みは消える。ソウスケは、言葉をつづけた。

「コトミはほどなく死ぬよ。その気になれば延命はできるけど、脳や体に後遺症が残るし、これから先凄く不自由な生活になるから、ちょっとねえ?」

ソウスケは、はは、といつもの調子で笑う。その表情に、大切な人を亡くす悲壮感はない。
まるで親しい友人に話しかけるように、ソウスケの声は明るかった。

「だから、僕は君を生き返らせようと思う。方法はこれから考えるけどね」

ソウスケは、事もなげに言った。

「なあに、死はただの現象さ。だったら、死を覆す現象を起こせばいいだけだ。そもそも、僕も前の大会で死んでから生き返っているしね。どうにでもなると思うよ。まあ、今は安心して死を堪能すると……」

コトミの指先が、何かを探るように意思を持った動き方をした。それを見て、ソウスケはコトミの手を握る。
コトミの血の気の引いた唇が、音も無く微かに揺れるのをソウスケは見た。

――――アタシの人生って、こんなもんか。

コトミの唇は確かにそう動いた後に、焦点の合わない瞳は光を喪った。
コトミは自分の人生に、世界に、明日に希望を抱いて足掻く人間だ。そんな彼女が、最期に諦めの言葉を吐いた。

ソウスケにとって、それは最も望ましくない言葉だった。

ソウスケは、後悔をしない。過去の事に思いを囚われるのは無駄だ。
過去から現在には、事実があるだけだ。必要なのは、事実に基づいて未来を作ることだ。
まずは、イグニッション・ユニオンと接触する。特に、鷹岡修一郎はかつてDSSバトルを運営していた重要人物だ。確実に手に入れる必要があるだろう。
同時並行して、人間を生き返らせることができる魔人を探す。大勢の魔人を集めて探すならば、ハルマゲドンを起こすのが手早いだろう。その時に、願いを叶える系の大会が開催されれば、こしたことは無い。
ハルマゲドンを起こす方法はいくつかあるが、一番手早い方法は一つだ。

(山乃端一人と言う魔人を殺す)

ソウスケはそっとコトミの顔に手を置いて、目蓋を閉じさせる。完全に支えを無くした彼女の手を、もう一度握り直す。

「Don't worry.」

死んだ人間の意思はわからない。コトミが、生き返ることを望むかなど、ソウスケにわかりはしない。
だが、コトミは死にたくないと言った。ならば、ソウスケはそれに基づいて行動をするだけだ。
過去は事実であり、それに基づいて行動することが肝要だ。

「コトミの人生が“こんなもの”で終わるなんて、僕はイヤだからね」

ソウスケは、コトミの手を握り続けた。

―――――――――


僕は、コトミと二つの約束をした。

『他人の尊厳を傷つけない』
『関係ない人を傷つけない』

それと、忍の女の子とも、二つの約束をしたね。

『コトミのために、身を隠し続けること』
『一切悪事から手を引くこと』

僕は、これらの約束を反故にする。
再び表舞台に立ち、他人の尊厳や関係ない人を傷つけ、ありとあらゆる悪事を使うだろう。
そうしてコトミが生き返ったら、なんて言うかな。

「ソウスケ、ありがとう」

いや、これはないな。

「テメエ、ふざけんな!」

この辺りの可能性が高いかな。

「……!」

無言で殴られる! これもありそうだな。

「クソ野郎が」

あ、殺された。そう言う展開もあるか。

「せっかく、楽になれたのに」

コトミがまた死ぬってこともあるか。死後の世界があって、そこの居心地がいい可能性もあるものね。なるほどなるほど。それもなかなか面白い。

コトミは、僕にいくつもの課題をくれる。
コトミが存在しているだけで、僕の未知が増え続けていく。
それは、とても幸せな事なんだ。
僕は、二度と君に会えなくていい。なんなら、死んだってかまわない。

だからさ、コトミ。

コトミが生きて、コトミ自身の人生を送ることを、僕は心から願っているよ。


補足

  • 仙道ソウスケは、この世界が単一ではなく、並行世界があること。その中には、山乃端一人が死ぬことがハルマゲドンのトリガーである世界が存在したことを知っている。
  • そのため、ソウスケの世界の山乃端一人がどのような存在であるかは関係なく、「可能性があるならば殺しておこう」程度の感覚である。
  • その情報源は、以前仕事で関わった転校生である。
  • ソウスケにとって、山乃端一人殺害は英コトミを生き返らせるための方法の一つでしかなく、並行して腹案を走らせている。
  • ソウスケは、どんな小さな可能性でも、一つずつひたむきに潰していくことが、目標を達成する最短距離だと考えている。
  • 従って、英コトミを生き返らせる手立てが確立されない限り、仙道ソウスケが山乃端一人殺害を諦める可能性はない。

上記はあくまでも応援スレに投稿された補足であるため、本戦SSに反映させるかは執筆者の判断に委ねるものである。
最終更新:2022年02月11日 19:12