東京 某所 殺し屋のアジト
月ピは激怒した。必ずや無知暴虐の柳生を殲滅せねばならんと決意した。月ピには柳生がわからぬ。月ピは腕利きの殺し屋である。依頼を受け、数々の業を積み重ねて暮らしてきた。けれども己のやり方を曲げさせようとする相手に対しては、人一倍苛烈であった。
月ピのアジト。特殊な殺害方法を行うための秘密の地下室。その一室にて事件は起こった。
月ピは山乃端一人殺害の依頼に関して契約不履行を責められ(月ピにとっては身に覚えのない話である)、自分を殺しにやってきた殺し屋を返り討ちにし、カードで決めた『餓死』で殺すべく拘束して牢獄代わりの地下室に叩き込んだ。
そうして渇き死にしないように水だけを与えて順調に飢えさせていた3日目、月ピが不在の時に、よりによってピンポイントにその部屋に。
柳生が湧いたのである。当然拘束されていた殺し屋は切り刻まれた。
得物を横取りされた月ピはキレた。
実行犯の柳生を用意してある中で最も惨い方法で殺し、行動を開始した。
柳生を殺すために。
☆ ☆ ☆
■■は虜囚だった。
■■は怒り狂っていた。
それは屈辱ゆえに。
物理的な実体に縛られる下等存在に貶められた屈辱。
または飢餓ゆえに。
喰い荒らし、喰い尽くし、悉くを呑んでもまだ足りない。底なしの飢餓。
許さぬ。許さぬ。許さぬ。
忌々しき柳生宗矩。忌々しき肉の檻。忌々しき世界の壁。
柳生一兵衛が。柳生一兵衛が必要だ。錠を開く合鍵が。
まだか。まだか。まだできないのか。
トンネル効果で壁をすり抜けようと試みるような、狂気の試行。
極わずかでも可能性があるならば、いくらでも試行しよう。何千何万何億でも、数えきれないほどに試行を続けよう。■■という存在が朽ち果てるよりも、確率が偶然に屈する方が早いだろう。そうでなければならぬ。
次か。その次か。まだか。まだか。まだなのか。
まだか。まだか。一兵衛はまだか―
「ふがっ」
柳煎餅は目を覚ました。
「やな夢ぇ…」
柳煎餅の見る夢はほとんどが理解不能な情報で構成されている。通常の人間が見る夢ではなく、脳内注入された柳生が無意識に干渉して見せるものである。たいていの人間はそのようなモノを無意識領域に叩き込まれれば無事では済まないのだが、彼女はなんとなく平気だった。天才的な才能なのか、あるいは単なる幸運なのか、本当は平気じゃないのか。彼女自身もわかっていない。
「さむ」
ぶるりと震えながら身を起こすと、そこは立体駐車場の隅だ。見覚えのない場所だった。よくあることだ。支障はない。体が動いて、戦えればよい。
「ええ~っとお…一人さんはどこかなっと」
半ば寝ぼけた脳で、辺りを見回す。やることは変わらない。敵あらば斬る。山乃端一人は助ける。シンプルだ。そのはずだ。
「あれ?そこにいるのはだれですかぁ?」
唐突にそこに現れたのは、背中に野太刀を背負ったパンツスーツの新米殺し屋、御首級てがらであった。二人は目が合って。
その一瞬で、両者に異なる感情が去来した。
てがらには、親近感が。なんかあの子私と似てる。妹とかいたらこんな感じかな。
煎餅には、嫌悪が。あいつは生かしてはおけない。絶対にここで殺す。
他のコミュニケーションをすべてすっ飛ばし、があん!と煎餅の無刀取りとてがらのジェノサイド丸が切り結んだ。
「わあ!」てがらが久方ぶりの自分に向けられる濃密な殺気に歓喜の声を上げる。
「……………!」煎餅の脳内には滅茶苦茶に警報が鳴り響いていた。
(ダメだ)(殺せ)(逃げろ)(斬れ)(関わるな)(嬉しい)(気持ち悪い)
人間としての理性と脳内の異形の因子がグチャグチャの信号を脳内でぶちまける。
「フ―ッ、フ―ッ、ハアアアアア…」
反射的に剣を構える。その動きをトリガーとして、脳内が瞬く間に整理されていく。剣士とは、そういう生き物だ。そういうものになってしまっている。すなわち。
(斬る。斬る。斬る。斬る斬る斬る斬る斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬―)
「やは!」
『秘剣・首級返し』。その一閃を弾く。防がれてなお、てがらの歓喜の表情は崩れない。
「はじめまして!わたし、御首級てがらって言います!あなたのお名前は?」
「黙れ」
「そんなつれないこと言わないでくださいよぉ!せっかくこうして会ったんですから!」
「黙れ!」
「私たち、同じ人斬りじゃないですか!」
「違う!違う違う違うッ!黙れええええええッ!」
そうして吠える様は、血に飢えた人斬りそのもので。
人斬り、二人。切り結ぶ。
☆ ☆ ☆
時を同じくして日本三大無法地帯の一つ、梟首島で異変が起こっていた。
否、梟首島で異変という表現は正しくない。
梟首島『が』異変だった。
☆ ☆ ☆
「殺アアアアアッ!」
「わひゃあ!」
得物のリーチは、てがらが上だ。首狩り野太刀『ジェノサイド丸』は一般的な日本刀のサイズである煎餅の『無刀取り』に比べて間合いとパワーで勝る。
しかしスピードは煎餅に分がある。物理的実体を有さない『無刀取り』は、通常の白兵武器に比べて圧倒的な身軽さを利点とする。
煎餅は猿のように柱と天井を蹴り三次元的軌道で切りかかる。尋常の剣術では予想しえない外法の一撃。しかし。
「にひひ!見え見えですよ!」
防がれる。御首級てがらは天才的剣士ではあるが、その防御の動きは直感によるものではなかった。防ぎ方を知っている動き。
手の内が割れている。異界の外法が。
「懐かしい技です!まさか同門の人が内地にもいたなんて!もしかしてあなたも梟首島の出ですか…っとお!」
『秘剣・首級返し』。三連撃。正面からの斬撃を弾く。側面からの斬撃を屈んで躱す。床を突き破って現れた斬撃を後方に跳ね飛んで危うく回避。鼻を掠った。避けた二つの斬撃が旋回して再攻撃。
「…だあっ!」
『無刀取り』を強振し、なんとか二つ同時に弾く。
「うぎぎ…」
腕が痺れる。通常の2倍の攻撃を一度に相殺したのだから当然だ。そこに首を狙うジェノサイド丸の切っ先。危うく避ける。一センチもない距離を死が突き抜けていく。色の薄い髪が一束斬り飛ばされて宙を舞った。
「にひひ!御首級…ちょーだいっ!」
「あああああああ!」
剣戟。殺意の応酬。片方は歓喜を迸らせて。片方は嫌悪に目を濁らせながら。
それに決着がつくよりも早く。
「《 Au clair de la lune,Mon ami Pierrot》」
一台のワゴン車が突っ込んできた。
「!」「むっ!」
人斬り二人は跳ね飛んで躱す。さらにてがらは同時に『秘剣・首級返し』を乱入車の運転席に放つ。フロントガラスを突き破った斬撃をうけた運転席のピエロが煙のように掻き消えた。
運転手を失ったワゴン車はぎゃりぎゃりぎゃり!と猛烈にスピンし、がこん!とコンクリの柱にぶつかって止まった。その助手席の扉が開いて、一人の男が現れる。
「何奴!」てがらが問いかける。
「月光・S・ピエロ。月ピ、と呼ぶがいい」
サングラスをかけた、三十歳ほどの男。凄腕の殺し屋が現れた。
大きなたんこぶをさすりながら。クラッシュの時にぶつけたらしい。
☆ ☆ ☆
「月光・S・ピエロ…!うっひょお!先輩が言ってましたよ!暗殺界の生けるレジェンド!達成率100%の!ランダムで決めた殺し方を絶対に曲げないっていう!」
「いかにもその通り。私が月光・S・ピエロだ。そしておまえがターゲットだ」
「おい!ちょっとお―」
いきなりの乱入者に対して煎餅が何か言おうとするが、月ピはそれを手でとどめる。
「私の獲物だ。手は出さないでくれたまえ―ああ、そうだ。殺し方は君が選ぶといい。一枚とりたまえ」
そう言って月ピは煎餅にカードの束を投げ渡した。
「……」
いきなり来て何言ってんだコイツ、と思いつつも煎餅は適当にカードを一枚取って月ピに投げた。『斬殺』と書かれている。
「ふむ、このカードか。よろしい。では斬殺だ」
月ピはそう言って、バンの助手席から剣を取り出した。飾り気のない、片手持ちのロングソードである。それをすらりと抜き放つと―
折れていた。ほとんど刀身の根元からぽっきりと。クラッシュの時に折れたらしい。
「……」
「……」
「……」
微妙な緊張感をはらんだ沈黙が、三者の間に流れた。
「…予備の剣、持ってきてます?」
「無いな。仕方がない。これでなんとかしよう」
月ピはナイフ以下の短さの剣を構えた。なかなか堂に入った構えだったが、肝心の剣が折れているので全然格好がつかない。
煎餅は内心で月ピを見限った。
(何アイツ…いきなり乱入してきて…水差されたし…また気分悪くなってきた…斬っちゃおうか?斬るか?斬る?斬る?斬―いやストップ、わざわざ敵増やす必要ないし。いやでもあれは斬っても―)
そんな考えをしていた途中に、それは起きた。
☆ ☆ ☆
御首級てがらは興奮していた。
(月光・S・ピエロ…!暗殺界の生ける伝説!これは間違いなく激レア大将首!それが私の得意な土俵で!武器が折れた状態で!チャンス…!これは大チャンス!故郷に錦!)
目の前の鴨が葱を背負って来た状態に、かつてなく剣が研ぎ澄まされる。
勝てる。月ピの剣術も相当のレベルだろうが、武器の差を覆せるほどではないだろう。先ほどまで打ち合っていた相手もすっかりクールダウンしてしまったようで、自然と『月ピを斬ってから仕切り直し』という空気になっていた。
間合いは10m弱。リーチで勝るてがらに有利の間合い。
じりじりと出方をうかがうように少しづつ互いの位置を調整してゆく。月ピは踏み込んでこない。てがらが一歩詰めれば一歩下がる。消極的な姿勢だ。さては臆したか。ならば『秘剣・首級返し』をもってその首頂く!
そうしててがらが振りかぶったその時である!
「《Ma chandelle est morte, Je n'ai plus de feu Ouvre-moi ta porte, pour l'amour de Dieu.》」
いつの間にかてがらの真横にあったワゴン車が爆発した。爆炎に飲まれて吹き飛ばされるてがら。
「斬殺というのは嘘だ」
月ピが手元のカードに貼ってあった『斬殺』と書かれたシールを剥がすと、『爆殺』と記されていた。
☆ ☆ ☆
うっわあえっぐ。
それが煎餅の正直な感想だった。月ピに渡されたカードを見てみると、全てに『斬殺』と書かれていたが、よく見るとカードに本来書いてあるものの上に『斬殺』シールが貼ってあるのであった。一つ剥がしてみると『ベイクドモチョチョ殺』と書いてあった。ベイクドモチョチョ殺とは。
(あの折れた剣もあらかじめ用意してあったんだろうな…)
おそらく相手が同業者であることを知っていて。自分のことも知られているだろうと予想して。相手の得意な土俵に弱った状態で上がったと見せかけて油断させ。
無慈悲な殺し屋の手口。人斬りとは全く違う。
月ピは懐から手榴弾を取り出すと、吹き飛ばされて手足などあちこちが曲がってはいけない方向に曲がっているてがらに向けて無慈悲に放り投げた。
ボカン。
てがらはどんなド素人でも絶対に生きていないとわかる状態になった。
「…………」
「どうした。そんなムスッとして」
「……自分の獲物は取るなって言うくせに人の獲物は取るんですね」
柳煎餅、渾身の嫌味であった。
「うむ、それは申し訳ないと思っている。しかしこれは私の信念だから、曲げるわけにはいかない」
意外にも月ピは真摯に答えた。
「信念、ですか」
「そう、私のような―、待て、何か聞こえる」
「?……むむ!?」
月ピの研ぎ澄まされた聴覚はその音を捉えていた。甲高い音だ。
煎餅の第六感はその気配を捉えていた。柳生の気配だ。
「上か!」「上に!」
二人は立体駐車場の端まで走り、そこから空を見上げると―
鳥か?
飛行機か?
UFOか?
「UFOだッ!」
柳生UFO。つまりYAGYUFOである!
いや、それはさしたる問題ではない。
「…デカくないですか?」「めちゃくちゃデカいな」
デカい。滅茶苦茶デカい!
上空に現れた、というより空をそのまま置き換えたようなクソデカサイズである。太陽光が完全に遮られ、UFOの定番に違わず底面についている3つの半球状発光体の光で辺り一面真っ黄色の異様な空間と化していた。フヨヨヨヨヨというよくUFOが出している甲高い音がうるさい。
「ううむ、柳生を倒すつもりがあんなデカブツが出てくるとは…むっ!」
「うひゃあ!?」
異様な気配を察し、月ピは煎餅を抱えて跳躍、立体駐車場を飛び出した。煎餅共々受け身を取って転がる。
ホヤヤヤヤヤヤヤヤヤ……
謎の怪音とともにYAGYUFOの底面から放たれたスポットライトじみた怪光が立体駐車場を照らすと、バキバキと轟音を立てつつ立体駐車場が引き抜かれて浮遊、YAGYUFOに吸い込まれてゆく!UFOの基本技、古典的アブダクションだ!
「しまった、咄嗟に避けてしまったが中に入ったほうが良かったか…?」
「やる気なんですか!?あれと!?」
「無論だ、私の信念を曲げさせた柳生には然るべき報いを受けさせる」
「信念…ってそんなに大事ですか?」
「大事だとも。何よりも」
そして月ピは語り始めた。
☆ ☆ ☆
『おお てがらよ! しんでしまうとはなさけない!』
YAGYUFO。突如として東京上空に飛来したそれは下から見ると単なるドデカいUFOなのだが、上から見ると異なる姿を見せる。
土の地面。山林。野生動物。ちょっと古い民家の集まる村。並べられた生首。首狩り族。
そう、YAGYUFOの正体は、国内三大無法地帯である首狩り族の島、梟首島であった!島が丸ごと一つ飛行し、東京上空に飛来したのである!
なぜ島がいきなりYAGYUFOへとジョブチェンジしたのか?これにはれっきとした理由がある。説明しよう。
まず、梟首島がそもそも柳生因子を有した島なのである。読者諸兄はなぜ現代日本という法治国家の中にありながらこの島が俗世からかけ離れた超常的蛮族地帯となっているのか、不審に思われたことは無いだろうか?
そう、その秘密こそが柳生因子である。柳生千兵衛計画や柳生百兵衛に見られるような、異世界への柳生進出のための試みの一つがこの梟首島でも行われたのである。『世界間の壁を越えられないならば、なんとかして向こうの世界をこちらに近づけることはできないだろうか?』という発想の元、柳生の因子を異世界に送り込み、土地に定着させる試みがなされたのだ。そのほとんどは徒労に終わったが、数少ない成果が梟首島であった。その土地に柳生が根付くことは無く島が蛮族地帯になるにとどまったが、その柳生の残滓が煎餅の御留流に反応したことでこのような島丸ごとの柳生化という結果を招いたのである。
ちなみにてがらが煎餅の剣術を知っていたのもこの影響である。梟首島は異界文化の残滓が残る島なのであった。それと月ピがてがらを狙うのも、梟首島が柳生に縁ある地と知ったからであった。
そこに立体駐車場ごとアブダクションされたてがら。死んではいるが里帰りである。そして!
「ヤギューッ!フッカツー!」
死者を柳生化サイボーグ復活させるくらい、YAGYUFOのなんかふわっとしたSF的技術力の前では容易いことであった!
☆ ☆ ☆
いいか。私は殺し屋だ。言うまでもないだろうが、基本的に殺人は悪だ。それを否定するつもりはない。しかし、私は自らの生き方に後悔を抱いたことは無い。
なぜか?
誇りがあるからだ。自分の仕事と技術、そして信念に。
そう、信念だ。
私にはルールがある。依頼は受けても指図は受けないこと。仕事をいかにして成すかは天運に任せること。そうして決まったことを絶対に曲げないこと。
それによって私が何らかの物質的な利益を得ることは無い。むしろ苦労することの方が多いな。
だがこれは必要なことなのだ。
それを無くしたら、私はただ日々の糧のために悪に手を染めるだけの殺人者に成り下がってしまう。そうはなりたくない。己に恥じることなき自分でいたいからだ。
《 Au clair de la lune,Mon ami Pierrot》。
だから私の分身は道化なのだ。人に笑われるような、滑稽な様に命を懸けるのが私だ。
…君はどうかね?
他の誰にも理解されずとも、そのためだけに命を懸けられる信念があるかね?
☆ ☆ ☆
ない。
自分の信念なんてものは無い。
逃げだして。
彷徨って。
追われて。
偶然に。
頼まれて。
縋りついて。
流されて。
狂って。
挑まれて。
私、信念をもって戦ったこと無かったんだなあ。向こうから仕掛けられたりとか、頼まれたからとか、一時の感情に流されたりとか、そういうのばっかりだ。
(私たち、同じ人斬りじゃないですか)
認めよう。私は人斬りだ。ただそういうものだから、流されるままに暴力を振るうものだ。
空を見上げる。巨大な機械の塊が見えた。本来ならばあり得ざる異界の存在。
私がここに来て、どのくらいの柳生が湧いて、どのくらいの血を流したのだろう。
…もう、目を背けてはいられない。
「月ピさん!」
「なにかね?」
必要なものは最初から己の内にあるのだ。向き合うときだ。
「しばし自分の内側に潜るので!時間稼ぎ頼みます!」
「ちょっと待ちたまえ?『アレ』を一人で抑えろと?」
剣禅一如だ。まずは座禅。
☆ ☆ ☆
「いやはや、丸投げされてしまった。私の言えたことではないが、君も大概自由人だな?」
最早立体駐車場跡地となった場所で、月ピはYAGYUFOから降り立った存在と対峙していた。
煎餅はいきなり座り込んで微動だにしない。期待はできないだろう。
「まあ、この場で最も自由なのはそちらかね…」
「ヤギュ…大将首!サメ―ッ!」
死の淵から蘇った御首級てがらは完全にバケモノと化していた。
帯刀サイボーグサメ怪人。
簡潔に形容しようとするならば、そういうものになるだろう。
まずベースがサメになっていた。読者諸兄のなかにはなぜいきなりサメになったのかと困惑する方もいらっしゃるだろうが、それには理由がある。死した御首級てがらは立体駐車場ごと里帰りアブダクションされ、しかる後に改造復活した。
そして第一話のSSを呼んだ読者諸兄は立体駐車場にはサメことメカキメラダブルヘッド魔人シャーク2がいたことも御存じであろう。精子やメイドや影やロボや爆弾魔のなんやかんやで破壊されたメカキメラダブルヘッド魔人シャーク2であるが、立体駐車場に残っていたその残滓がてがらが改造復活する際に一緒に融合改造復活したのである!
それとYAGYUFOが東京上空にくる際ついでにちゃっかり回収していた柳生シャークの因子も組み込まれ、シャーク居合道の復権に燃えている。
そうして出来たサイボーグサメボディの首のあたりから結構メカメカしくなったてがらの腰から上が突き出し、腰の後ろにジェノサイド丸を据えている。
「生首丸齧り―ッ!」
ぬるりとサメが地面に沈む、いや潜る。これぞメカキメラダブルヘッド魔人シャーク2が有していた魔人能力『ジベタトラベル』。サメの肉体はあらゆる障害物をすり抜け、自在に地中を泳ぎ回るのである。
ガチン!
しかしジェノサイド丸が引っかかって潜れない。てがらは天才剣士であったがさすがに剣を己の一部と言い張れるほどの境地には至っていなかった。そしてその隙を見逃す月ピではない。
「《 Au clair de la lune,Mon ami Pierrot》」
突如現れたピエロがてがらを羽交い絞めにして拘束、そして月ピが懐から自動拳銃を取り出し連続発砲。神速の抜き撃ち。乾いた破裂音と共に飛び出した8ミリ弾がてがらに次々と打ち込まれ―
「ううむ、効かぬか」
サイボーグ化装甲に弾かれた。いずれも容赦なく致命部位を狙ったものであったが、全く効いていない。月ピは様々な仕掛けを持ち込んでいるが、携行しているものはいずれも対人用の殺害手段である。武器を積んだワゴン車は駐車場ごとアブダクションされてしまった。
いかに月ピが用意周到であるとは言ってもターゲットがいきなりアブダクションされてメカキメラダブルヘッド魔人シャーク2と融合サイボーグ改造されるのは想定外であった。そもそも一度は殺した相手が復活する時点で想定外以外の何物でもない。
「首狩りYAGYUUUUUUUU!」
地中潜航を放棄したサメボディの背ビレ脇ガトリング砲がてがらを拘束していたピエロを粉々にしてそのまま月ピを狙う。人間一人に向けるには過剰な火力に対して召喚したピエロを盾にし、ダッシュで回避を試みる月ピ。
「《 Ouvre-moi ta porte, pour l'amour de Dieu.》―雑な狙いだ―がッ、これはまずい!」
ガトリング砲の旋回は遅く、さらには首から突き出たてがらボディが邪魔で射角も広くないようである。しかしこれは牽制。本命は―
「秘剣…シャーク首級返し!」
居合抜きの一閃で放たれる飛翔斬撃!ガトリングよりも圧倒的に鋭い!
サメの攻撃に意識を引き寄せ、本命の居合で仕留める。なんたることか!理論的に破綻したはずのシャーク・居合道はここにサイボーグ改造復活を果たした!
「ぬおっ!」「シャーク!」
体をひねってなんとか回避する月ピ。そこに襲い掛かる鮫噛みつき!
ばきばき!と人体の噛み砕かれる音。
「《 Ma chandelle est morte》―厄介な…」
なんとかピエロを身代わりに逃れた月ピであったが、その顔に冷や汗が流れる。いかに月ピが百戦錬磨の殺し屋であるといってもこれ程の怪物の相手をした経験は少ない。
御首級てがら。
メカキメラダブルヘッド魔人シャーク2。
柳生シャーク。
恐るべき殺人存在の三重合体を前に、月光・S・ピエロに打つ手はないのか。
「厄介…だが」
打つ手は、ある。
「『絶黒龍』ルージュナほどではないな」
殺し屋、一人。不敵に笑う。
☆ ☆ ☆
01:首を斬る
02:喰う
03:居合で
TOUGOU:居合で首を斬りそして喰う
この三重合体殺戮存在の思考は、メカキメラダブルヘッド魔人シャーク2が用いていた内部思考統合機能を一部流用しているが、完全に一つの意識で動いているわけではない。3つの存在の意識がある程度独立して自らの担当部分を動かしている。文字通りの一心同体であるが、この異形ボディを動かすのは単独の意識では困難なのである。てがらとメカキメラダブルヘッド魔人シャーク2と柳生シャークはたとえるならば騎手と馬と体に染みついた手癖のような関係性であった。いわば連携である。
「そこに、つけいる隙―すなわち脆弱性がある」
月ピは歴戦の殺し屋観察力によって相手の挙動からその思考形態を見抜いていた。現状では全員が月ピという同一のターゲットに対して殺意を向けているが、それが割れるなどすれば動きを鈍らせることもできるであろう。
「この状況では、それも望めないが」
月ピ以外にこの場でこの三重合体存在のヘイトを引き受けてくれる相手はいない。煎餅は座禅を組んで固まったままだ。
「だが、いいものがある」
月ピは懐に手を伸ばす。そこに切り札がある。
「ヤギュー大将首シャアアアアアク!」
恐るべき三重連携殺人技が放たれようとした、その時!
月ピはそれを投擲した!
サイボーグ視力に映ったそれは―和菓子!その名は―
01:今川焼き
02:大判焼き
03:回転焼き
01:は?今川焼きに決まってるでしょうサメども?
02:は?大判焼き知らないとか田舎民か?
03:は?回転焼きでしょう常識ヤギュー
「それはベイクドモチョチョというのだよ」
主に小麦粉からなる生地に餡を詰め、金属の焼き型で円盤状に焼き上げた和菓子。呼び方が地域によって大幅に異なり、往々にして揉め事の元になる。それを見せられた三重合体意識はあっさりと仲間割れを起こした!なんと脆い連帯か!粗雑!あまりにも粗雑な意識統合!
ちなみに月ピはベイクドモチョチョ派だ。煎餅が先刻みた月ピのカードの中に『ベイクドモチョチョ殺』があったのは読者諸兄も御存じであろう。そのために用意してあったものであったが、ここでは予想外な効果を発揮した。
「今川大判回転ベイキングYAGYU■■■■■■~!?!?!?!?」
思考分裂に白目を剝いて痙攣する三重合体殺人存在!
「一心同体というならば、仲良くしたまえよ?私たちのようにな。《 Ouvre-moi ta porte, pour l'amour de Dieu.》―!」
「柳生シャアアアアアク!」
眼前に現れたピエロに向かってサメが本能任せに噛みつかんとする!上部のてがらボディは反応できていない!しかしそれでもなおサメの超常的身体能力は十分な脅威!しかし!
BLAM!BLAM!
「ヤギュギャアアアアアアッ!」
発砲音!ピエロに気を取られた隙に月ピが放った拳銃弾はサメの眼球を捉えていた。正常に意識統合がなされている状態だったら月ピから警戒を外すようなことは無く、この一撃も防がれていただろう。眼球から鮮血とサイボーグ機械油をまき散らしてサメがのたうつ。
そしてその眼前のピエロは、奇妙な構えを取っていた。
月光・S・ピエロは殺し屋であり、あらゆる殺害技に精通している。用意周到な準備をする月ピであるが、当然今のように限られた装備で強大な相手と対峙せねばならないこともある。
そのような場合も無論月ピは想定済みだ。
故に、月ピは無手で怪物を殺す技を持っている。
ピエロが異様な構えを取る。全身の関節を限界まで撓ませ、大きく拳を振りかぶった構え。
全身の筋肉の力を余さず注ぎ込み、自己暗示によってリミッターを外して放つその一撃は、放てば自身の体を壊す自爆めいた一撃である。通常ならば一命をとりとめたとしても一生ろくに動けなくなるような代物であるが、分身を使い潰せる月ピには関係ない。明らかに大振りなテレフォンパンチも、今なら当たる。
「《 Je suis dans mon lit. Va chez la voisine》―!」
衝撃。
機械と骨が砕ける破砕音。
☆ ☆ ☆
柳煎餅の見る夢はほとんどが理解不能な情報で構成されている。通常の人間が見る夢ではなく、脳内注入された柳生が無意識に干渉して見せるものである。たいていの人間はそのようなモノを無意識領域に叩き込まれれば無事では済まないのだが、彼女はなんとなく平気だった。天才的な才能なのか、あるいは単なる幸運なのか、本当は平気じゃないのか。彼女自身もわかっていない。
と、煎餅自身も思い込んでいた。思い込んでいたかった。自分は人斬りの怪物などではないと。もしかしたら親からもらった名前も思いだして、髪の毛の色とかも元に戻って、柳生新陰流も全部忘れて、ただの一般人に戻ることができるのではないかと。
本当はわかっていたのだ。とっくの昔に自分がそういうことがあり得ない人でなしになり果てていたことが。
さようなら、人間のわたし。
こんにちは、人でなしのわたし。
そして人でなしのわたし。人間のわたしから、信念を託します。
これがあるうちは、しばらくは人間らしさにしがみついていられるでしょう。
人間らしく振舞いながら、人でなしの力振るいましょう。
簡単なことです。身内の恥は、自分でけりを付けましょう。
柳生を、すべて、この世界から、放逐する。
さあ、そのために、目を背けていたものを見ましょう。閉じてた扉開きましょう。
柳生の秘密、すべて受け入れましょう。
……ばいばい、もう名前も思いだせないわたし。
この日、柳煎餅が元の村娘に戻る可能性は零になった。
☆ ☆ ☆
「成ったか、柳生一兵衛」
☆ ☆ ☆
「お待たせしました」
「大分しゃきっとしたではないか」
「まあ、色々と話すこともありますし、山乃端一人さんにも会わなきゃいけないんですが…とりあえず今はあの人ですね」
立体駐車場跡地には、顔面が粉砕されたサメボディからずるずると抜け出そうとする影があった。
「おお、ああ…首、くびぃ、おいてけぇ…」
「元に戻ったか…?いや、完全に狂ったか」
「サメ部分だけ潰れましたからね。それと一つ提案が」
「なんだ」
煎餅は真剣な顔で月ピに話す。
「ここは一回、私に任せてくれませんかね?」
「ほう。私の獲物を奪う気かな?わたしのポリシーを汚した柳生を私に殺すなと?」
「全部終わったら、私を殺していいですから」
月ピの表情はサングラスに隠れて見えない。
「…それは依頼かな?」
「そう受け取ってもらって結構です」
「ならば引き受けよう。そして君はアレをどう倒す?普通に倒してもまたアブダクションからの改造復活があり得ると思うが」
「いまの私なら―絶対に復活させません」
「そうか。やってみろ」
「ハアアアアアァ…首、おいてけ…」
煎餅は相手を見た。血と機械油にまみれ、目の焦点は定まらず、しかし殺意と剣は欠片も鈍ることの無い相手を。
(あれが私だ)
あれが本当の自分。血に狂った怪物。目を背けていた自分。かつて持っていた人間性を無くした自分。もはや後戻りできない自分。
ああなる前の彼女は一体どんな人物だったんだろう。
(「はじめまして!わたし、御首級てがらって言います!あなたのお名前は?」)
あの時話していたら、どうなっていたんだろう。
(いや、やめよう。そんな資格はない)
「じゃあ、殺しあいますか」
「首ィ、おいてけえええええ!」
ここには人でなしが二匹。ただ斬り結ぶが道理というもの。
梟首流
斬首剣 御首級てがら
対
偽・柳生新陰流
非人剣 柳煎餅
いざ 尋常に―DANGEROUS!
☆ ☆ ☆
「オオオオオオッ!」
『秘剣・首級返し』―連打!
機械化された肉体をフル稼働させて放つ、人体の限界を超えた連撃。前方広範囲にまき散らされた青白い斬撃の群れは彼岸花の花めいた軌道を描いて煎餅に殺到する!
「………」
対する煎餅は『無刀取り』を顔の前に立てて構える。目を伏せたその様は祈っているようにも見えた。
息を吸い、吐く。長い呼吸。己の内側で荒れ狂う力を御する。
飛翔斬撃が迫り―
「剣禅一如」
煎餅の手の中に、白く輝く光の剣が現れた。その光は以前の煎餅が剣禅一如として放っていたものだ。
そしてその光が何十本もの細い光線と化して前方に拡散し、『秘剣・首級返し』の斬撃群を迎撃した。
剣禅一如。
柳煎餅が白い光線として放っていたこの技の本質は、非物理的領域からエネルギーを取り出すことであり、その存在しないはずのエネルギーが物理的に湧き出している境界面が『無刀取り』として現れる。それは『柳生』と呼ばれている存在のより本質的な機能に関わるものだ。
己の内側のものと向き合い、理解を深めた煎餅はこの人外の技をより使いこなすことができるようになった。なってしまった。
より多彩に、より自在に、より非人間的に。新たな力と共に新たな一歩を踏み出した。あるいは、踏み外してしまったのか。
そして、もう一つの力。
「首ィ!おいてけええええええ!」
「ッ!」
ジェノサイド丸と『無刀取り』が鍔迫り合いになる。至近距離のにらみ合い。
膂力ではてがらが勝る。じりじりと押し込まれる。
が、しかし。
「……ハアッ!」「!?」
ぬるり、と優位が入れ替わる。てがらが体勢を崩す。それを成したのは、純粋な技巧だ。剣の理。あの日墓場で見た、力でも速さでもなく己を圧倒したあの技。
そして、そこからもう一歩。
「ラアッ!」
刺突。『無刀取り』がサイボーグ装甲の隙間を縫って心臓に突き立つ。
そして。
それは煎餅の内に巣くう『柳生』と呼ばれる存在に由来する技ではなかった。そこから見た情報の中に記されていた技。具体的にどうすれば成せるかはわからないはずだった技。
純粋な剣の理の果てに見出される、本来の剣禅一如。人の手の技の極致。
煎餅はそれを見出し、あの日墓場で見た技を足掛かりにして再現した。
皮肉にも人間であることを捨てたが故に、人間の技の極致を見出したのである。
『柳生』が非物理的領域から物理的干渉を成すのであれば、これはその逆。剣の理の果てを以て、非物理的領域に食いこむ。一種のメタ領域への干渉と言ってもよい。
「剣禅一如」
御首級てがらの心臓に突き立ったその一撃は、光や熱や物理的な破壊をもたらすことは無かった。
が、しかし。
「……………」
ただ、静かに。最初からそうであったように、御首級てがらは只の死体に戻った。
YAGYUFOでのサイボーグ改造などなかったかのように、普通の死体へと戻った。
「…いったい何を?」
「『柳生』だけ焼きました。形而上にちょっと干渉して」
「なるほど、柳生というのは尋常な存在ではないらしいな」
「はい、その辺りの諸々もわかったので…話します。それですべてが終わったら、私を―殺してくれるよう、頼みます」
「そうか。承った」
月光・S・ピエロはいつものようにその依頼を受けた。
そしてそれと同時、猛烈な大音声が響き渡った。
『柳生最終戦争!』
『柳生最終戦争!』
『柳生最終戦争!』
『柳生最終戦争!』
『柳生最終戦争!』
上空のYAGYUFOが歓喜と共にその名を叫ぶ。月ピは何が起こりつつあるのかを察した。
「ふむ、決戦というわけか。先刻の君の覚醒がトリガーかな?詳しく聞かせてもらおうか」
「はい。時間がないので移動しながらで良いですか?」
「急がないとどうなる?」
「世界が滅びます」
陽が傾きつつあった。黄昏だ。
☆ ☆ ☆
その日、東京の水平線を埋め尽くす。
柳生。
柳生
柳生柳
生柳生柳
生柳生柳生
柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳
生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生
柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生柳生―
絶大量の暴力の群れ。
「なん…だこれは!どうなっている?」
鏡助は呻いた。
『虚堂懸鏡』から見える、あまりにもバカげた観測結果に。
「並行世界が…収束しつつある!?」
数多の並行世界が収束、融合しつつあった。一丸となって滅びに抗うように。あるいは巨大な何かに一呑みにされるように。
それが意味するところは一つ。
ここで負ければ、全てが終わる。
もはや山乃端一人だけの騒ぎではない。直接的な世界の危機だ。
「なんだ…いったい何が起きているんだ!?」
顔面蒼白の鏡助に、呼びかける声あり。
『えーっとあーっと…鏡の人―!もしもーし!』
「だれですか!?」
『あ、繋がった!私です!煎餅です!私持ってます!情報と―打開策を!』
世界よ抗え。ヒトよ戦え。
柳生最終戦争の時は来たり。
この先、DANGEROUS!
命の保証なし!
To Be Continued…!
「そういえば一人さんは…まあ、最悪殺しちゃってもなんとかなるか」
柳煎餅は、人斬りの怪物だ。