私は榎波春朗。体液を薬品に変化させる末期がん患者です。私の事を知る人はこう思うだろう。その能力でがん治せないのかと。
実際私もそう思いました。そもそも、がんに冒された原因がこの能力でハイになったり毒手したりし過ぎたからなのですが、それでも魔人能力には無限の可能性がある。だから私は研究しました。授業と殺人とバスケをやっている以外の時間全てを自らの肉体の研究と魔人能力の試行錯誤に使いました。
研究した。研究した。授業して研究してバスケして男を殺して女を犯してから殺して研究してバスケして研究して殺人を山乃端一人に見られて学校に来なくなった彼女を気にかか研究し授業してバスケして研究してバスケしてさあ喧嘩しようぜバスケしてバスケして研究が進まずバスケしてバスケしてバスケして授業してバスケバスケバスケバスケバスケ研究バスケ殺人バスケバスケバスケサスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケバスケ。
3Pの成功率が3Pの性交率を超え、校内での渾名が『さわやかナイスガイ』から『バスケットマン・ハル』に変わった頃、私の肉体に変化が生じた。
「宿主ー、僕を消そうとしても無駄だレズよー」
『うわあ、がん細胞が喋った』
ある日、理科室でがん細胞に硫酸を注射していると、私のがん細胞が意思を持ち語りかけてきたのです。全身のがん細胞が右肩に集まり、タコみたいな姿に変化して私に話しかけてきます。
「はじめましてレズ、いや、いつもお世話になってますと言った方が正しいレズかな?僕はレーズン星から来たレーズン星人なんだレズ」
『レーズン星人?貴方はがん細胞では無いのですか?』
「この星の医学ではがん細胞に分類されるけど、僕はれっきとした宇宙人レズ。僕はこの星で採れる百合エネルギーを手にする為に仲間達と一緒にやって来たレズ」
彼が言うには、レーズン星人は才能ある地球人に寄生してその身体を操り百合エネルギーを採取するのらしい。寄生の方法は千差万別で、虎の着ぐるみに擬態する個体やローションに擬態する個体もいるとの事。実に興味深い。
「で、僕の場合は君のがん細胞に紛れ込み徐々に侵食して支配する予定だったレズ」
『人の身体で何してやがりますか』
「でも、君の精神が強すぎて支配は失敗。更に、僕を追い出そうと必死に抵抗するから、こうして会話で説得する事にしたのレズ。宿主、僕と一緒に山乃端一人を殺して欲しいレズ」
『私が寄生虫に従うとでも?ですが、私も山乃端一人を殺さねばと思っていた所です』
なんと、奇跡的に私とレーズン星人の利害は一致していました。しかし、彼らの目的は百合エネルギーとやらの採取だったはず。
『レーズン星人さん、ちょっといいですか?』
「レーズン星人は種族の名だレズ。僕の事はラム・レーズンと呼んで欲しいレズ」
『わかりました、ラム。では、私の事も宿主ではなくバスケットマン・ハルと呼んで下さい』
「オッケーハル」
『それで質問なんですが、貴方達の求める百合エネルギーは山乃端一人の死によって生じるのですか?』
私の問い掛けにラムは頷きました。
「その通りレズ。僕達レーズン星人は山乃端一人が死ぬ際に生じる百合エネルギーで発展してきたのレズ。地球人より文明が遅れていた僕達は、山乃端一人が死ぬたびに進化し、今ではこうして地球に来たり外見を自在に変え他の生命に寄生できるまでになったレズ」
『山乃端一人が死ぬたびに?彼女は何度も死んでいるのですか?』
「ハルはこの世界がいくつも存在してるのは知ってるレズ」
『まあ、バスケットマンですから概念ぐらいは』
「僕達は全ての並行世界の山乃端一人を観測し、その死と報われなかった女子同士の愛、即ち百合エネルギーを得てきたレズ。でも、最近どの山乃端一人も死ななくなったレズ」
それで、彼らは地球に降り他人を操り山乃端一人を殺そうとしたと。事情は理解出来ました。
『良いでしょう。貴方と私、力を合わせて山乃端一人を殺しましょう。ただし、一つお願いがあります』
「何レズ?」
『無事に百合エネルギーを回収出来たのなら、私をレーズン星に連れて行ってくれませんか?』
研究とバスケを通じて、この身体はもう治らない事は薄々分かっていました。ですが、肉体を自在に変化させ他者を乗っ取れるレーズン星人の技術なら治療は可能だと私は考えました。
「別にいーレズよ。星に帰らないとこの身体は分離出来ないし元々君はレーズン星に連れていく予定だったレズ」
『感謝します』
よし、生きる望みが見えて来ましたよ。私が心の中でガッツポーズをした時、手紙を持った体操服姿の女子生徒が私の前に走って来ました。
「バスケットマン・ハル先生!こ、これ読んで下さい!」
金髪の女子生徒がハートマーク付きの封筒を手渡して来ます。ははーん、ラブレターですね。頭がよくバスケが上手い私は女子にモテモテです。丁度がん細胞と和解して新生バスケットマンになった所。彼女を口説きながらオモチャにして今の身体の試運転をしちゃいましょう。
『えーと、何かな…』
わざとらしい演技をしながら封筒を開くと、中の手紙には大きな文字で逮捕状と書いてありました。
「殺人、薬事法違反、拳銃など警察備品窃盗、免許証偽造」
『え?』
「未成年への性的行為、立ち小便、魔人能力申請漏れ、貴方の罪はそこに書いてある通りで間違いないわね?」
視線を手紙から手紙を持ってきた少女に移すと、彼女の髪が逆立ちスーパーサイヤ人みたいになっていました。
『うちの生徒じゃありませんね。誰ですか君は?』
「少女の味方、魔人囮捜査官のブルマニアン!裏切り者を倒すため、この学校の一人ちゃんも守るため、ダンボールで世界を越えて只今参上!」
魔人警察?私の古巣の人間ですか。しかし、こんな婦警は知らないし、【この学校の一人ちゃん】とか【ダンボールで世界を越えて】とか、違う場所から来たかのような発言。ラムが言った通り並行世界は存在し、彼女はそちらから来たのでしょうか。
「チェストー!」
おっと、戦闘に集中しないと。凄まじい速さでブルマの中から警棒を取り出し振り下ろしてきますが、脳内麻薬とバスケの1on1で鍛えた私なら対応可能です。まずは、この警棒を右肩のラムで受け止める!
「痛いレズー!」
『今まで私の身体を苦しめてたのでしょう?これぐらい我慢してください』
よし、思った通り私にはダメージは無い。
『さあ、今度は私のターンですよ』
私は女性は無力化してからいたぶり殺すルーチンが染み付いてますので、これは殺す為の攻撃ではありません。
『左手は添えるだけ』
私は神経を麻痺させるガスを纏った左手を真っ直ぐ相手の顔面へと突き出します。命中すれば良し、回避されたり撃ち落とされても、ガスを吸ってジ・エンド。ガスマスクを装備でもしない限り、この間合いで私に勝てる魔人はそうはいません。
「よいしょっと」
カポッ
グシャァ
ブルマニアンは素早くガスマスクを取り出し被りつつ、私の左手首を握りつぶしました。この婦警マジ素早いし、対応も完璧です。
『あのー、いくら何でも対策ガチ過ぎません?これが試合とかならブーイングが飛びますよ』
「これは実質三周目だからね。まあ、私はあの人から話を聞いただけなんだけど」
ふふふ、口を滑らせましたね。今の会話で私は貴方に仲間が最低一人いる事や並行世界の知識を元に対策を立てていた事が露見しましたよ。ふふふ、うふふふ。
笑ってる場合じゃ無いですね。誰かたーすーけーてー!
「まだこの身体を失うわけにはいかないレズ!」
「キャッ、何このタコみたいな生き物!イヤンっ、スミで視界が!」
おおっ、ナイスですよラム。彼が口から吐いたスミがブルマニアンの視界を封じたのと同時に、私は自らの意思で左手を粉砕骨折させ拘束を脱出します。
『最後のガラスをぶち破れー!』
ガシャアアン!
私は理科室の窓に飛び込んでその場から脱出。
「待ちなさい!死にたく無かったら戻ってきてお縄につきなさーい!」
『誰か逃げるか、お尻ペンペンですよー!』
やばかったですね。アレは1on1で勝てる相手じゃない。サリンか最大火力のニトロなら倒せるかも知れませんが、私自身も致命的な自爆ダメージを受けるからこれは却下です。それに、彼女に入れ知恵した仲間、そして他の魔人警官がこの学園を包囲しているでしょう。
さて、これからどうしますか。悩んでいると、私と同じ様に悩んでいたラムが声をかけてきました。
「ハル、これからどうするレズ?」
『君は何か良い案は無いのですか?私よりずっと頭が良いのでしょう?』
「僕はレーズン星の文明の恩恵を受けてるだけで、頭はあまり良くないし、この星の事もそこまで詳しく無いレズ。スマホ持ったニートがアインシュタインより賢い訳では無いのと同じレズ」
『ならば、そのスマホに該当するオーバーテクノロジーで何か使えるものは無いのですか?』
ラムは右肩周辺の肉を震わせながら、「う〜ん」と考え込みました。そして、暫くすると泣きそうな顔で語りかけてきました。
「ごめんレズ。ハルのがん細胞に寄生する前に、レーズン星のアイテムは全部宇宙船に置いてきたレズ」
『じゃあ、その宇宙船に取りに行けはいいしゃないですか』
「その手があったレズ!」
やれやれ。どうやら私の相棒は想像以上に間抜けみたいです。
『それで、その宇宙船はどこにあるんですか?』
「この学校の校庭に埋めておいたレズ!レッズレズレズエビマヨーの合言葉で地上に出現するレズ!」
『わかりました!最後のガラスをぶち破れー!』
ガシャァァン!
私は再度窓を突破して校庭にショートカットしました。さあ、レッツダンシングです。
『レッズレズレズエビマヨー、レズー!
レッズレズレズカニマヨー、レズー!
レッズエビマヨー』
「宇宙船に反応ありだレズ!三秒後に出現するレズよ!3!2!1!」
ちゅどーん。
「にょわー!あたしのアイリ・ラボがぁー!」
レズマヨダンスからきっちり三秒後、二年生の教室が爆発し、ツインテールの少女が降ってきました。
『おや、徳田さんじゃないですか』
「あ、バスケットマン・ハル先生。ちーす」
彼女は徳田愛莉。校内郊外を問わず発明品で迷惑行為を繰り返す問題児です。お互いの犯罪行為を見てみぬフリをする事で今まではゆる~い同盟関係を結んで居たのですが…。
『徳田さん、ここに埋まっていたはずのものに心当たりはありませんか?』
「し、知らないんだぜ!宇宙船を掘り出してラボに隠したり、その宇宙船が突然動き出してラボを壊したりなんて事は一切無いんだぜ!」
『その宇宙船は私のものなので返して貰えませんか?』
「う、うるせー!先生こそ、今まであたしに隠し事してたじゃん!流石に人殺しは見逃せないし、ヒトリを狙ってるなら、あんたはあたしの敵だぜ!」
ああ、やはり交渉決裂ですか。仕方ありませんね、この子は人質として利用する事にしましょう。
カポッ
「さあ来い!こっち何時でもオッケーだぜ!」
『何故貴女もガスマスクを?』
彼女とはゆる~い同盟を組んではいましたが、手の内は教えて無かったはずです。
「うへへへ、イッチさんが色々教えてくれたんだぜ。宇宙船を見つけたのは偶然だけど、ハル先生が極悪人なのも、毒使いなのも、ブルマニアンが味方なのも、全部あの探偵さんが教えてくれたんだぜ!」
おのれ探偵イッチ。私がこうして苦戦を重ねているのはお前のせいですか!
「ブルマニアンさんが何とかしてくれると思って引き籠ってたけど、出番が来たならやってやるんだぜ!あいきゅうごしゅうさんマン徳田愛莉が相手だぜ!」
そう言い、徳田さんは白衣の袖から80センチぐらいの棒を取り出しました。
「これぞ痴漢撃退棒・世界樹!宇宙船の壁材から作った、軽くて固くて甘い棒!地球に存在しない物質だから銃刀法違反にもならないスグレモノだぜ!」
徳田さんが世界樹を振るう。先端からは音速を突破した事を証明する破裂音が聞こえてきました。
『速いですね』
「避けんなー!マッハでスパーンと叩いて気絶させてやるから大人しくするんだぜ!先生はあたしに倒された方が幸せだと思うから観念するんだぜ!うりゃー、マスパー!」
『甘いっ、世界樹の味ぐらい甘いですよ!知らんけど!』
いくら武器の先端が加速しようとも、本人が素早くなる訳ではありません。魔人警察と化学教師を経てバスケットマンとなった私の敵ではありません。
私は懐に飛び込み、ニトロの爆発で加速した蹴りを彼女の腹部に突き刺します。
『ニトロ真拳!』
「ぐはっ…私は忠告したんだぜ…あの探偵マジやばいから…」
『毒しか取り柄の無い存在と私を甘く見たのが貴女の敗因です』
さて、邪魔者もいなくなったし行きますか。
『ラム、あの爆発のあった場所に宇宙船があるのですよね?さっさと行きましょう』
「この子を人質にはしないんレズか?」
『そのつもりでしたが、校庭での騒ぎと教室の爆発でブルマニアンがどちらに来るか半々なんですよね。ですから、足手まといになる彼女はここに放置して全力で宇宙船を取りに行きます。上手く行けばブルマニアンが校庭に行ってる間に宇宙船ゲットです』
「わかったんだレズ」
『では行きましょう。最後のガラスをぶち破れ!』
ガシャァァン!
三度目の窓ショートカットをし、私は爆発のあった教室に向かいました。そこには、私の求めていた宇宙船、そして見知らぬ女性が立っていました。
『貴女が探偵のイッチさんですか?』
「ホアー!」
推定イッチさんは私の質問に答えず、ノータイムでペンナイフで斬りかかってきました。
『なんの、友情ガード!』
「また身代わりにされたレズー!」
ラムが受け止めてくれなければ死ぬ所でした。危ないですねえ。
『ちょっと落ち着いて下さい、私はそこにある宇宙船に入りたいだけなんですが』
「嘘つけ!私は既に二回も鏡助にビジョンを見せられてるんだコラ!あっちの話でもそっちの話でもお前は糞外道だった!だからこっちの話でもお前は糞野郎に決まってるんだよ!つーか、知ってますしおすし!私の魔人能力の前では隠し事は通じませーん!」
なるほど、ブルマニアンもあいきゅうごじゅうさんマンも「私に倒された方が幸せだ」的な事言ってた原因はこれですか。
『あーもう、五月蝿いですね。ブルマニアンと徳田さんの話では真面目な切れ者をイメージしてたのに』
「るせー!私だってクールに登場したかったんじゃい!でも、全部理解できるのと全部受け入れられるのとは別問題で、私はお前らのおかしさにおかしくなってしまったのでーっす!天災少女とか変態囮捜査官とか猟奇殺人鬼の秘密を次々知ってsan値ピンチ!たすけておかーちゃん!」
ふむ、彼女は探偵なだけに真実を知る系の能力者なのでしょう。で、真実の内容に耐えられずおかしくなってしまったのですね。
ならば私のやる事は一つ。そう、ダメ押しです。
『ラム、彼女に挨拶してあげなさい』
「こんにちは、僕はレーズン星から来たレーズン星人レズ!山乃端一人を殺して百合エネルギーを手に入れたいレズ!」
「アイエエエ!知らん、お前なんか知らん!知りたくないけど知ってしまうー!ぐはっ」
名探偵イッチは白目を剥いて倒れました。イッチよ、貴女は強かった。だが、知りすぎたのです。
『さて、邪魔は無くなりましたので宇宙船に乗り込みますよ』
「ああ懐かしのマイシップだレズ。よし、どこも壊れて無いし、持ってきたアイテムも全く無いレズ」
『徳田愛莉ィィィィィ!!!』
間違いありません。あのクソガキが宇宙船の中身パクったのでしょう。勝ち筋が消えました。
「うおー!バスケットマン・ハル先生はいるかー?第2ラウンドだぜー!」
「イッチさん、どうか早まらないで!他人に人殺しをさせない心構えは立派だけど、自分の事も大事にして!」
はい、負け筋がやって来ました。こうなったら、もう手仕舞いですね。
『正義執行(ジャスティス)!』
ブルマニアンとあいきゅうごしゅうさんマンが教室に入るのを待つ事なく、私は宇宙船の発進スイッチを押しました。
「ハル!何をしているレズ!これじゃあレーズン星に帰っちゃうレズ!」
『君に言ってない事が一つありましたね。私は快楽殺人者だから、気持ちよく殺せない相手からは逃げるのです。それとも、ここから勝てとでも?』
「レズ…。一時撤退するしか無いレズね」
ガスマスクを着けた二人に見送られながら、宇宙船は旅立ちました。レーズン星まで私の命が保つか心配でしたが、宇宙船内のコールドスリープ装置で眠る事でどうにか生き延びれました。
そして今、私はタコそっくりの姿となりレーズン星の病院に居ますレズ。
『なんじゃこりゃーレズ!』
「君の新しい健康な身体だレズ!」
『ふざけないで下さいレズ。こんな身体では魔人能力も使えないしレイプもバスケもできないレズ』
私は分離手術を終えたラムに掴みかかろうとしますが、触手が上手く扱えずその場に転んだレズ。
「何で怒ってるレズ?君の身体は生きてるのが不思議な状態だったから、その身体に記憶を転写してあげたのレズ。義足つけるのと変わらないレズよ?」
『私の身体を返すレズー!人間はそう簡単に割り切れないのレズ!』
「それは無理な相談レズ。さっきも言った様に、君は元の身体の持ち主の記憶を転写した存在レズ。元の身体にはオリジナルのバスケットマン・ハルの人格が残ってるレズ。ほら」
ラムが窓の外を指差したのでそちらを見ると、中庭で車椅子に乗りながらバスケをする男が居ましたレズ。
『私だレズ』
「同じ人間が二人居ることについては心配ご無用レズ。あっちはもうすぐ死ぬだろうし、万が一あっちが奇跡的な回復をしたなら、君を処分すれば解決レズ」
私は、私達はこれからどうなるのレズ?
「顔色が悪いレズね。そっか、ホームシックレズね。地球の様子をテレビで見てげんき出すレズ」
私が塞ぎ込んでいる理由を勘違いしたラムが一緒にテレビを見ようと誘ってきましたレズ。心底腹が立ちましたが、殺人もバスケも出来ない状況では他に娯楽も無いので仕方なくテレビを見る事にしたレズ。
あっ、この二人って…。
第二話『山乃端一人とブルマニアン、レズ!』
「キーラカラスにヨイゾラアカネ?すみません、どちらも聞き覚え無いです」
「そっか、それじゃあやっぱり君は私が知ってる一人ちゃんとは別人なのね」
バスケットマン・ハルの撃退(何か勝手に宇宙行った)後、ブルマニアンは徳田愛莉の親友である山乃端一人に聞き込みを行っていた。
「世界が複数あって、普段は交わらないそれらが複雑に混じり合っている。その中心にいるのが各世界の山乃端一人。私には理解できないけど、こうして全く違う一人ちゃんに出会えたなら信じるしか無いわね」
ブルマニアンはこの学園に配達された時の事を思い出す。姫代学園に着き、ダンボールから出たブルマニアンは山乃端一人やトンネルで共闘した二人を探したが、そこにはキーラもあかねもおらず、山乃端一人は全くの別人となっていた。
自分は味方だと説明しても中々信じて貰えず、この世界におけるキーラの立ち位置にいる徳田愛莉と戦闘になってしまう。
作者がドラクエウォーク中にスマホを水溜りに落とし、更にニードロップしてしまったので戦闘内容は割愛するが、愛莉の罪を数えている間にラボに閉じ込められたブルマニアンが脱出の為に一人の名前を連呼しながら角オナするという一進一退の戦いが五千字に渡り行われた。
山乃端一人を守護する者同士の不毛な戦い。それを止めに現れたのが名探偵イッチこと一画さんだった。全知に近い能力と鏡助からの贔屓により多大な情報アドバンテージを得ている彼女は、ブルマニアンと愛莉の誤解を解き、更にバスケットマン・ハルこそが次の襲撃者であると説明した。それだけに留まらず、ハルの前歴を調べ上げ前科や魔人能力まで推理して見せた。
イッチの推理により逮捕状と人数分のガスマスクを用意できた守護者達は万全の状態でハルを撃退できるはずだった。だが、アクシデントが二つ生じた。一つはイッチの推理に無かったレーズン星人の存在、もう一つはイッチの発狂である。
「バスケットマン・ハルは通過点に過ぎず、最後の敵がまだ残っているはずです。山乃端一人を巡る戦いならば転校生との戦いは避けられません。私はこれまで得た情報から転校生との戦いについて考えてみます。まあ、私は探偵とか呼ばれてても本業は別にありますが、それでも私の探偵力は他の追随を許しません。かーっ、怖いわー、自分の才能が怖いわー」
そう言って推理モードに入ったイッチは、数分後に「精子ー!」と叫んで壊れてしまった。何を知ったのかはブルマニアンにも愛莉にもわからなかったが、近寄る者全部ペンナイフで刺そうとする狂人に変貌したイッチと共闘は無理と判断し、イッチはラボに閉じ込め愛莉が管理、ハルの所へはブルマニアンだけで行くことになり、なんやかんやで現在へと至った。
「じゃ、私は行くから。もしかしたらまた会う事になるかも知れないけど、その時はよろしくね。あっ、それとここにサインを」
気絶したままのイッチをダンボールに詰め、自分も中に入り伝票を上から二枚剥がす。山乃端一人が一枚目を受け取り、二枚目にサインをしてブルマニアンに渡すと、往復配送票の貼られたダンボールは課長の待つ警察署へと飛んでいった。
ブルマニアンとイッチが入ったダンボールが見えなくなった頃、入れ替わる様に愛莉が山乃端一人の前に姿を現した。愛莉の手には抱え切れない程の発明品が乗っていた。
「ヒトリ、イッチさんの言ってたラスボスへの準備するから手伝って欲しいんだぜ!宇宙船からパクったアイテムをアタシら向けにカスタマイズしたからテストさせて欲しいんだぜ!」
「いつもならふざけんな!って怒る所だけど、今回は特別に許しまーす!」
「よっしゃー!」
この実験の結果、この世界の山乃端一人が決戦前に死にかけたり、それを観測していたレーズン星人の文明が更に発展したりしたのだが、それはまた別の話。