俺はとある事件に巻き込まれ、たった数秒前に死んで誕生した新人幽霊である。黒埼・茜って怖い婆さんに殺られ、現在に至る。
魂魄になった俺は、朝靄の様に光の粒子となって霧散する自分の肉体を見つめていた、死んだ事で現世の様々な柵から解放され、やっと自由になれたと言う思い。
死ぬ事で手に入る自由か、確かに、苛酷な生き方をする位なら死んだ方が楽なのは事実だろう、現に今の俺は何処か清々しさえ感じているのは間違いない、間違いないのだが、俺の中に去来する後悔と言う想いは何故こんなに大きく膨れ上がるのだろうか・・・・・・。
「x・・・・・・」
今頃心配してるだろうか、俺が死んだと知ったら彼女は泣いてくれるだろうか?それとも呆れるのかな、彼女なら泣いてくれる様な気がするな、彼女の事だから俺の仇を取ろうと黒埼・茜に報復するだろう、だけど、奴は俺やxとは別次元の化物なんだ、きっと俺の様に殺されてしまう。
「それは嫌だな・・・・・・」
俺が死んだのは俺の勝手が招いた結果だ、だが、彼女が殺されるのが俺の我儘が招いた結果なんて絶対に駄目だ!!
「すげぇ未練たらたらじゃんか、黒埼と災禍の言う通りだ、本当・・・・・・馬鹿だなぁーーー俺」
「今さら気付いたのかよ(小声)」
試験管と培養液の中で製造られ、殺人兵器として育てられた俺は、同じ様に製造られた姉妹達と共に拷問より凄惨な実験を施され、その中で姉妹達を失ってしまった。俺は、俺達の素体となり、苛酷な運命に招いた鬼姫災禍を恨んだ。
「そんなの逆恨みだろう(小声)」
そして、俺達を製造り家畜や実験動物以下の様に扱ったとある組織の人間どもを皆殺しにした俺は、鬼姫災禍を抹殺する為に流浪の旅を始めた、幾つかの世界、国、街々を流れ辿り着いた先でxと出会った。
出会って最初の頃は俺も彼女もお互い敵視してたけど、何だか彼女が寂しそうな表情を見せるのが気になって、思い切って話し掛けてみたのは良い思い出だ。
「お惚気お惚気お馬鹿が通る(小声)」
何度か話し掛けてるうちに、彼女は特有の小声で話し返してきた、そんな事を何回も繰り返し彼女が俺と同じ製造られた側の存在だと知った。
姉妹達以外で同じ様な境遇の彼女に益々興味を持った、それからは事あるごとに彼女と一緒に過ごす事が増えていった、ある時にハルマゲドンが発生して俺も彼女も一時敵対関係になったけど、お互い無事生き残れたから同棲する事にした。
「ひとつ屋根の下だね(小声)」
彼女と生活する内に本来の可愛らしい表情を見せてくれる様になり、そんな彼女と生活する事で、俺は一端の真人間の様に生きている錯覚を覚えた、それは決して訪れない未来。それは決して許されない希望だった。それでも願ってしまったんだ、この女と、彼女と生きていたいと・・・・・・。
俺は迷っていたんだ、死んだ姉妹達に誓った鬼姫災禍の抹殺と鬼姫殺人と言うオリジナルの存在になる事と、彼女への想いに揺れていた、結果として俺はどっち付かずの上に未練を残して死んだ訳だが・・・・・・。
「どうしたものか」
「全くだ(小声)」
そろそろイラついて来たぞ(苛)
「おい、さっきからうるせぇよ・・・・・・」
「いやぁ、何か幽霊仲間が増えたらさーーー妙に嬉しくってね(笑)」
さっきから俺を小馬鹿にしているのが俺や姉妹達の素体となった『転校生』鬼姫災禍その人って奴だ、そもそも俺が死んだ原因の一因を作ったタロットカードの亡霊でもある。本当に傍迷惑な奴だ・・・・・・。
「何となく理解るけどよぉ、これだけは言わせてくれや・・・・・・、何で災禍がココに居るんだ?」
「そりゃあねぇ~~~、殺人に憑いてる悪霊だからね(笑)」
「おめぇ・・・、何時か何処ぞの雑誌編集社から狙われるぞ(呆)」
相手にしてるだけ馬鹿らしくなるが、何故か今だけは災禍の存在に安堵感を覚えてしまう。それが少し悔しくて更に苛っとした。
「で、どうだい?」
「・・・・・・んぁ、何が?」
「初めて死んだ気分は?(笑)」
「おめぇ・・・・・・殺すぞ?(苛)」
「いやいやいやいや、これでも心配してるんだよぉー?(笑)」
「その割に顔がニヤケっぱなしじゃねーか(苛)」
「まぁーね~~~、愚妹をからかうのが楽しくてね(笑)」
「・・・・・・はぁ~~~~~~」
俺は深くため息を吐き、今の気持ちを吐露した。
「気分は何処かサッパリしてんだがよ、まだ素直に成仏る訳にいかなくて正直焦ってる、このままだとxが殺されちまう・・・・・・」
「それは・・・・・・嫌だね(悩)」
「災禍もよ、xに死なれたくねぇーだろ」
「まぁ、愚妹が死んだのは自業自得に因果応報って言えるけど、xちゃんが殺されるのは災禍お姉さんもムカついちゃうなぁーーー」
「俺はまだ災禍を完全に許してねぇー、だけど、今は頼れる奴がおめぇしかいねぇ・・・・・・」
「(へぇーーー・・・、少しは成長出来たじゃん殺人(笑))」
「散々自分の為に人の道から外れた事をして来たけどよ、今だけは一人の女の為に動いても罰は当たらねぇーだろ」
「思ったんだけど・・・・・・、殺人ってさ同性愛者?」
「・・・・・・・・・相手による」
冗談はさて置き、俺は現状を再確認する為に、一度死んでタロットの亡霊となった災禍に助言を求めた。
災禍が説明するには、生命活動が終わった時点で死が訪れる、だが実際はその段階では本当の死を迎えた訳ではなく、現世に数日間は留まっているらしい、数日間は浮遊霊となり以降は俗に言う天国と地獄の何方かに行く様で、中には現世に未練を残し怨霊や呪縛霊になる輩もいるらしい。
そして、今の俺は死んで間もない浮遊霊に該当しているって事だそうだ。
「ちなみに、私はタロットカードの亡霊と自称してるけど、分類的にはカードに憑いた呪縛霊ってとこかな?自分でもあんま考えた事ないんだけどね」
「いや、間違いなく災禍は悪霊の類か魑魅魍魎だろうよ」
「失礼な(憤)」
「はてさて・・・・・・、結局んとこ俺達に時間が無ぇーって事は変わんねぇ」
「それだけじゃないけどね、そもそも殺人・・・・・・身体失くしてんじゃん」
「誰のせいでこうなったと思ってんだゴラァ!!(怒)」
「むむむ、それを言われちゃうと災禍お姉さんも申し訳なく思うけどさぁ~~~、まさか君があんなにポンコツだと思わなかったんだもん(涙)ピエン」
「災禍腹立つわぁ~~~・・・・・・(怒))」
「ま、死んだのは愚妹ちゃんがクソ雑魚だったから仕方ないとして、巻き込んだのは私なのも確かだわな・・・・・・・・・、はぁ~~~~~~、やっぱ行くしか無いかぁ~~~(鬱)」
「何だ、喧嘩か?喧嘩大特価セールか?!買うぞ!!幾らでも買ってやんぞ災禍!!」
「まあまあ落ち着きなよ、そんなんじゃあ早死にするよ?(笑)」
「もう死んでんだよ!!」
「あ、そっか(笑)」
「・・・・・・(苛)」
「ごめんごめん、殺人をからかってると妹達を思い出しちゃってさ、そう拗ねんなって(笑)」
"妹達"か、俺にはもう・・・・・・。
「話しを戻すけどさ、もしかしたらだけど身体ならどうにか出来るかも知れないよ?」
「・・・・・・・・・どうやって?」
「フフーン♬ちょっとね~~~(笑)」
「当てはあんのかよ」
「災禍お姉さんを嘗めんなよ」
「で?」
「私の姉ちゃんが鍛冶屋をやってんだけどさ、この女なら身体くらいは作れるはずなんだ」
「災禍の身内ってヤベー奴が多そうだな(汗)」
「そう!!ヤバイんだよ!!?ちょっと聞いてくれよ~~~」
災禍が言うには、人気の無い山奥で物創りを生業とし、ひっそりと鍛冶屋を営みながら生活をしてる年の離れた姉が居るらしく、その女の能力なら身体を創れるそうだ。
だが、かなりおっかない女らしく、鬼姫家の中でもかなり厳しい性格だそうで、ガキだった頃の災禍が悪さをした時に滅茶苦茶ボコボコにされた様で・・・・・・。
「はぁ、行くしか無いかぁ~~~、死んだ挙句に肉体くれって言ったら殺されんじゃねぇーかなぁ~~~・・・・・・、阿欲姉コエーよ~、超コエーよ~~~~(涙)」
「(あの災禍がガチでビビりまくってるよ、そんなに怖ぇーのかよ阿欲姉?!何か俺も怖くなってきたぞ・・・・・・(怖))」
俺達は腹を括り鬼姫阿欲が住んでると言う島根県、出雲の山奥に向かう事にした。だが、俺達はここに来て重大事項に気付かされる。
「どうやって行くんだよ?」
「あ・・・・・・」
「・・・・・・・・・(呆)」
そう、俺達は移動手段が無い、幽霊でも足は有るが移動手段が無いとはこれ如何にってやつだな。災禍の計画性の無さに呆れてると、俺は背後から声を掛けられた。
「殺人様」
「ひゃいっ!!?」
急に呼ばれ俺はとんでもない声で返事をしてしまった・・・・・・ハズい!!動揺する俺を余所に声の主は淡々と話し掛ける。
「お久しぶりですね、殺人様」
「お、おう、ク・・・クロノか(汗)」
「何やら迷宮時計の反応が無くなったので様子を伺いに参りましたが・・・・・・」
「あ、あぁ、ちょ・・・ちょっと、な(汗)」
「ねーねー殺人ぉ~、このカワイ子ちゃん誰なんだい?あ、あんたまさか!浮気相手かい!?」
「~~~!ゲホ、ゲホっ、このバカ!!おめぇが変な事を言うから咽たじゃねーか(汗)」
突然の来訪者、クロノは浮遊霊と化した俺達の姿に驚いてる様子もなく、そんな彼女に災禍が興味津々だった。頼むから話をややこしくしないで欲しいんだが・・・・・・。
先ず来訪者の事だが、彼女は俺が十束学園の研究所を抜け出して間も無い頃に現れた、全身が機械仕掛けの自動絡繰少女人形なのだ。
「クロノ・・・、幽霊が見えてんの?」
「・・・・・・?はい、普通に目視で確認出来ておりますが、それが何か?」
「え?え?この子、私達を認識出来てんの?!凄くないっ!?」
「私は御覧の通りの絡繰人形でして、創造主によって魂を与えられた付喪神でも在るのです、ですからこの様に、魂魄体になられたお二人様もすんなりと認識出来るのですよ」
「へ、へぇ~・・・、そ、そうなんだ」
「ところで殺人様、先程から迷宮時計の所在を探しているのですが、どちらへお持ちになられましたか?」
「あ、えっと・・・・・・(汗)」
「(おい殺人、さっきからこの娘は何の話しをしてんだよ!それに、迷宮時計ってなんだよ!?(小声))」
「(おめぇは黙ってろ!話しがややこしくなんだろうが!!(小声))」
「・・・・・・・・・コホン」
「ひっ!(怯)」
本気でヤバイ、クロノから凄い怒りのオーラを感じる、真剣でヤバイ、黒埼の婆と殺り遭ってた時に迷宮時計を破壊されたんだ・・・・・・、クロノに知られたら何されるか解った物じゃないぞ?!
「あぁ、迷宮時計ってさっきまで殺し合ってた婆さんにぶっ壊された銀時計か!!」
「ちょ~~~~ーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
「・・・・・・・・・(苛)」
ふざけんな災禍!!ここに来て一番の地雷を踏み衝けやがったぞ畜生が(涙)
「災禍様」
「は、はぃ」
「私が殺人様に迷宮時計をお渡しになられた際に、忠告した事はお忘れになられておりませんね?」
「はひぃ」
「(あれま、あの殺人が借り物の猫みたいに萎縮してらぁーw)」
「迷宮時計は殺人様にお渡しした物だけでなく様々な形状、機能を持つ特級呪物なのです、あれらの存在が如何に危険か散々説明申し上げた筈ですが、ちゃんとお聴きになられなかったのでしょうか?」
「お、おっしゃる通りです(涙)」
「ま、まあまあ、クロノちゃんだっけ?その、迷宮時計?ってのを壊したのは殺人が弱っちくて殺られたのが原因なんだけどさ、ただ私としても殺人を巻き込んだ結果こんな事になっちゃったんでね、余り強く言わないであげてくんないかな?(苦笑)」
「・・・・・・はぁ」
災禍に宥められクロノは溜息を洩らした、彼女の表情は読み取り辛いが、瞼を伏せて少々思案をしていると、徐に話し出した。
「殺人様、貴女様の"願い"は叶ったのですか?」
「願い?」
「そうです、貴女様の願いです、私が殺人様と初めてお会いした時の事を覚えておられますでしょうか?」
「・・・・・・・・・あぁ、忘れて無ぇーよ」
「鬼姫災禍の抹殺と、そして・・・・・・」
「俺は俺と言う存在になる、だろ・・・・・・」
「そうでございます、殺人様・・・・・・、願いは叶えられましたか?」
「・・・・・・解んねぇ、解んねぇーよ」
「殺人・・・・・・」
クロノに言われるまで忘れてた訳じゃなかった、俺の願い、俺の望み、それは災禍をブチ殺す事を生きる糧として今まで走って来た、だけど、彼女と出会い俺は迷っていた、もしかしたら俺は不毛な事をして来たんじゃないのか?姉妹達の生きてきた証を立てる為にどんな事もやって来た、でもそれって、結局は俺の勝手な自己満足であって姉妹達はそんな事は望んで無いんじゃないのか?そもそも、災禍は俺の事を小馬鹿にしたりするし正直まだムカつく事が有るけど、タロット事件に巻き込まれ、俺とx、そして災禍と不思議な共同生活をしている内に何時しか望んでいたんだ、こうして普通に生きたいと・・・・・・。
「もう一度お聞きします、殺人様・・・・・・、願いは叶いましたか?」
「・・・・・・ごめん、クロノ」
「その謝罪は何に対しての謝罪なのでしょうか?」
「迷宮時計を譲って貰った時さ、必ず俺の願いを叶えろって・・・・・・、クロノとの約束守れそうも無ぇーや(苦笑)」
「殺人、あんた・・・・・・」
「・・・・・・左様でございますか」
黒埼の婆に聞かれたっけか、「あんたの願いは?」ってな、俺は迷わず「鬼姫災禍の抹殺」と言おうとしたさ、だけど俺は言い淀んだ、何故か?
タロットの件で災禍の記憶が俺の腐れ脳味噌に流れ込んでからか、奴に対しあれだけ激しく抱いてた憎悪が鳴りを潜め、ズルズルと一緒に暮らしてるうち、俺はちょっとずつ死んでいった姉妹達の面影を災禍に重ねていた。
そう、今の俺は災禍の事をどうにかしようとは微塵も思ってないんだ、ただこうして罵詈雑言を吐いたり悪態吐いたり、災禍から言われた事が実は的確な助言なのに素直に聞かなかったり、下らない事で喧嘩を始めたりするのも結局のところ、俺は災禍に甘えてたんだと思う。
「本当にごめんなクロノ・・・、あんたに言った願いなんだけど、どうやら俺は"願い事"を間違えてたらしい」
「要領を得ませんね」
「俺は人と関わって生きる事が苦手だよ、だから、ちゃんと言いたい事も巧く話せなかったりするんだ」
「・・・・・・はぁ、殺人様が言いたい事は解りました」
「もう一度だけ俺に機会をくれないか?」
「・・・・・・次は有りませんよ?そもそも迷宮時計を何個も使った者にどの様な副作用が出るのか創造主も存じ上げておりません、ですが、殺人様の真実の"願い"を見抜けなかった私にも落ち度が御座います、ですので、今回は私の権限べ特措と言う形で対応させて頂きます」
「クロノ・・・・・・、また借りが出来たな」
「これも"願い"の為です、お礼を言うなら私でなく、殺人様を(良い意味で)変えたお二人に謝辞を述べて下さい」
「あぁ、そうするよ」
クロノとのやり取りが終わり安堵してると、災禍が傍に来て「良かったね」と優しく声を掛けてくれ、俺は自然とこの言葉を口にした。
「ありがとな・・・・・・、災禍(照)」
「あぁ~~~もう!!急に姉貴って言われると何か体中ムズムズするなぁーーー(照)」
「ところで殺人様の御姉様」
「クロノちゃん、その堅苦しい呼び方止めてくれないかな?(苦笑)」
「それでは災禍様」
「災禍様・・・・・・、まぁ、いいかな(苦笑)」
「お二人様の御話し中に横から割って入り大変ご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした」
「いいよいいよ」
「何やら、ご家族様にお会いしに行くと聞こえておりましたが?」
「そ、見ての通り今私等って幽霊じゃない?姉さんに頼んで身体を作って貰おうと思ってね?(笑)」
「そうでしたか、身体を・・・・・・」
「さてと、これからどうする災禍?」
「そうだな(悩)」
「それでしたら、殺人様にお譲りした迷宮時計で空間移動をすればよろしいかと存じます」
「え、あれは壊れてるって」
「殺人様にもお話ししておりませんでしたが、私も迷宮時計所持者の一人ですございます、そして、私の迷宮時計は時間の"逆行"に特化した物なので、こう言う事も可能なのです」
そう言うと、俺達三人の周りだけ現行時間を遡っていき、遂には壊されてしまった迷宮時計だけでなく、光の粒子となり消えてしまった俺の身体も復元されたのであった。
「す、すげぇーな迷宮時計・・・、こんなんチートアイテム過ぎるだろ(汗)」
「殺人様にお譲りした物も時空転移や空間移動が出来るだけでも中々のチートだと思われますが」
「へぇ~~~・・・、良いなぁーーー災禍お姉さんも欲しいなぁーーー!!」
「災禍様もご所望でしたら、創造主に掛け合ってみましょうか?」
「マジで?!それは嬉しいよ(嬉)」
「なぁ災禍、思ったんだけどよ、身体を復元出来たのは良いけどよ・・・・・・、何で俺達
rb:幽霊ままなんだ?」
「・・・・・・あぁ、確かに」
「それはお二人様がお亡くなりになられた際、魂と肉体との繋がりが途絶えてしまったのでしょう、そうなると完全に肉体が復元出来たとしても魂が納まる事は無いのです」
「「ま・・・・・・?」」
「ですが、実際には復活系の魔人能力もございますし、どうにかして魂と肉体を再接続すれば大丈夫だと思われます」
「仕方ないか、そう簡単には生き返れないって訳だな」
「とりあえず殺人の時計で阿欲姉んとこまで行こう、後の事はそれから決めよう!!」
「その方が良いかと思います、焼失した肉体が復元されただけなので仮死状態を続けては結局の所、肉体は死を迎えてしまいます、殺人様の御身体は私がお運び致しますので早速行きましょう」
「えっ!?俺、幽霊だけど時計って使えんの?!」
「迷宮時計は持ち主に呼応する様にその力を発揮致します、ですので殺人様、想う存分その力をお使い下さい」
「・・・・・・解った!!」
俺は騒めく心を落ち着かせ復元された迷宮時計に意識を集中した、すると時計も持ち主の俺に気付いたかの様に秒針を回し始めた、初めて時計と俺が繋がってると言う実感を得ていた。
「そっか・・・・・・、本当は迷宮時計、俺の気持ちが揺れていたの気付いてたんだな」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「はっ、迷宮時計に話しても応えられねぇーよな(苦笑)」
「殺人様、時空間が開きます」
「さぁーってと、ここからが本番だぞ殺人!!」
「あぁ」
迷宮時計が更に激しく秒針を回すと空間が湾曲を始め時空の裂け目が発生した、この裂け目の先に鬼姫阿欲が居る、災禍が恐れる様な人だ・・・・・・何か緊張してきたぞ俺(汗)
俺達は裂け目を通り辿り着いた先は都会の喧騒とは掛け離れた大自然のド真ん中だった、
木々と言うか・・・・・・、山、山、山。
「はは、相変わらずの山ん中だわ(苦笑)」
「災禍様はその、阿欲様?でしたか、御姉様のお住まいにいらっしゃった事が?」
「そうだね、私が『転校生』になる前だからかれこれ十数年振りかな」
「災禍ぁ~~~どっち行くんだぁーーー?」
「そうさな・・・・・・あっ」
災禍が何か言い掛けると同時に、俺達の前に身長2ⅿは超えている大女が佇み静かにこちらを睨み付けていた、その風貌はどこか古風な刀鍛冶の様な装いに黒い長髪をバンダナで纏め、右眼を眼帯で覆っていながらもハッキリと解る端正な顔立ち、正しく災禍の姉なんだろうな・・・・・・それにしても色々とデッケェーーー(汗)
「・・・・・・こんな山奥に何の用事かしらって、あら?」
「や、やっほ~阿欲姉、げ、元気ぃー・・・?」
「・・・・・・災禍、あんた」
鬼姫阿欲は腰に携えた大太刀を居合切りの如く瞬時に抜き鋭い斬撃を放った、俺は咄嗟に「伏せろ!!」と叫んでいた、災禍とクロノは瞬間的に地面へ伏せ、二人の立ってた所からその後ろを鎌鼬が駆け抜けていた。
「(あっぶねぇ~~~(汗)腰の大太刀に手を掛けた瞬間に凄まじい殺気を感じ取れたから何とか避けれたけどよ、この女鍛冶師だけじゃなく剣士としても超一流なのかよ!?)」
「あ、阿欲姉!?危ねぇ~じゃんか?!」
「・・・・・・明確な殺意を感じました」
「・・・・・・・・・災禍、なんで勝手に死んでんだい?私は前に言ったよなぁーーー、もし喧嘩で負ける事が有ったら私があんたをブチ殺すってさぁ~~~(憤)」
「あ、あはは・・・そんな事言われてたっけ?災禍ちゃん解んな~~~い(テヘペロ)」
「「(あ、死んだな)」」
「はぁ~~~・・・・・・で、そちらの二人は誰なんだい?一人は付喪神みたいだけど、もう一人の方は・・・・・・、あんた鬼姫家の関係かい?」
「えぇーーー・・・っと」
「殺人は私の妹だよ阿欲姉」
「・・・・・・そうか」
「お、鬼姫殺人っスよろしくお願いします!!」
「この馬鹿妹から話し聞いてると思うけど、この山奥で鍛冶屋を営んでいる鬼姫阿欲だ、よろしくな殺人ちゃん(笑)」
「お、阿欲姉が笑った!!」
「災禍の事はまだ許してないからな(怒)」
「ピエン(涙)」
「で、付喪神のお嬢さんは誰なんだい?」
「はい、私は"悠久堂"で創造主の使いをしておりますクロノと申します、以後お見知りおきを」
「へぇーーー、あの店の娘か」
「悠久堂をご存知なのですか?」
「うん、ちょっとね・・・、まぁ立ち話も何だし家に来なよ、災禍が来たって事は私に用が有るんだろ?」
「話しが早くて助かるよ~~~阿欲姉大好きーーー(笑)」
「災禍、次にはっちゃけたら・・・その霊体ごと斬り刻むからね?(苛)」
「ピエン(涙)」
阿欲に案内されながら山道を突き進み、少し歩くと小さいながらも確りとした木造家屋に辿り着いた。俺達は阿欲に促される様に自宅兼作業場の中へ入っていった。
「さてと、クロノさんが背負ってる死体は作業台に乗せて頂戴な」
「畏まりました阿欲様」
「さてと・・・、あんた達の用事ってのは死体を見て察してるけどさ、どうしてこうなったのか経緯は話して欲しいね」
「殺人、あんたのこれまでの事を話すけど・・・・・・いいね?」
「あぁ、話してくれ」
災禍はここまでに至る経緯と、俺との関係、そして俺の出自を話し始めた、最初は険しい表情で聞いてた阿欲だったが、俺が製造れ実験動物以下の扱いを受けてきた話しから涙を流し始めた、それでも話し続け終わりの頃には大号泣していた。
「今まで酷い目に遭ってたんだね殺人ちゃん!?可哀想に(大号泣)」
「えっ・・・、そんな泣くほどっスか?(苦笑)」
「通常の感性をお持ちの方でしたら普通に号泣すると思いますよ」
「まぁ、自分自身でもこの世界を恨み呪った事も有ったけどよ、今はxに災禍、クロノも居るからそこまで自分が悲運の持ち主じゃないって思えるぜ(照)」
「うわぁ~~~災禍ぁぁーーー、殺人ちゃんいい子じゃないかぁぁぁぁ~~~~~~(大号泣)」
俺達は阿欲が落ち着くまで唯々待った、少しすると落ち着いてきたのか涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔をティッシュペーパーで拭いて真顔に戻った。ティッシュ一箱丸々使い切って・・・・・・、どんだけ泣くんだよ(汗)
「話しは解った、災禍の妹って事は私の可愛い妹と断言できる!私が責任を持って災禍ちゃんを復活させてあげようじゃないか!!」
「ありがとう阿欲さん!!」
「良いんだよ殺人ちゃん、それと、私の事は災禍と同じ様に阿欲姉って呼んで欲しいんだ、私達姉妹なんだから」
「阿欲姉・・・・・・あ、ありがとう・・・・・・ありがとう(涙)」
「なんやかんやで阿欲姉って優しいんだよね~~~(笑)」
「そうですね、素敵なお姉様だと思います」
「さて、善は急げ鉄は熱いうちに打てって事だし早速作業に取り掛かるよ!!」
「それでは私がお手伝い致します」
クロノは阿欲に俺の身体と魂がどんな状態なのかを説明を始めた。
「なるほどね、肉体は仮死状態だけど殺人ちゃん魂との繋がりが切れてるって訳か、そのせいで未だ魂が定着出来てないって事ね・・・・・・、それって凄い不味い状態じゃない?」
「はい、魂と肉体の繋がりは簡単に再接続ができないので、何か別の方法・・・・・・、繋がりではなく肉体と魂の間を連結装置的な物を組み込めば、或いは復活を可能にするのでは無いかと考えております」
「そうか、肉体と魂を直接繋げるんじゃなくて、間に何かを挟み緩衝材として連結の補助をすれば行けるって事か」
「仮定ですが、現状殺人様ご本人より肉体側に何らかの原因が有る様な気がしますので」
「試す価値は有ると思うね」
「ありがとうございます」
「さてと、仮組とは言え進展はしたけど・・・・・・、問題は連結装置なんだよねぇーーー(悩)」
「・・・・・・あの、阿欲様」
「ん、何?」
「連結装置なのですが、私を連結装置として殺人様の肉体に組み込め無いでしょうか?」
「はぁ~~~!?ちょ、何言ってるのクロノさん?!」
「先にお断りさせて頂きますが私は正常な思考ですのでご安心を」
「いやいやいや!!クロノさん貴女、自分が何言ってるか解ってんの?!肉体を失って今度は貴女が死ぬ事になるんだよ!?」
「その通りですね」
「その通りって貴女・・・・・・、何でそこまで殺人ちゃんに肩入れ出来んの?」
「そうですね、私が何故ここまで殺人様に肩入れする理由をお話ししましょうか」
「えぇ、お願いするよ」
「阿欲様もご存知の様に私は悠久堂の創造主、その使いとして製造された自動絡繰人形にございます、私は創造主の『強い願いを持つ者を支援する』と言う指令の基に行動してました、そこでお会いしたのが」
「殺人ちゃんって訳かい」
「その通りでございます、出会って間もない頃は今お様な人間らしさは微塵もなく、それこそ動く死体の様相でございました、ですが・・・・・・」
「そんなあの子にも変化が見られた、そうでしょ?」
「そうでございます、私は支援者として日々遠くから見守って参りました、その為でしょうか・・・・・・、私にも少しずつ変化と言うか、影響を受けてたのでしょう」
「変化?」
「創造主により組み込まれたプログラムとは別に、私にも自我と言う物が芽生えたのでしょう、人の手により製造れた私は、同じ境遇の殺人様に夢を託そうと想ったのです」
「夢?」
「はい、夢でございます」
「クロノさんの夢って?」
「・・・・・・決して、決して笑わないで頂けますか?」
「あぁ、人の夢を笑う事はしないよ」
「ありがとうございます、私の夢・・・・・・それは、『自分が幸せになること』でございます」
「良い夢だよ」
「私の身体には迷宮時計が組み込まれております、本当でしたら私自身が夢を叶えたかったのですが」
「それなら・・・」
「迷宮時計、この装置を使えば副作用として使用者を蝕みます、殺人様は災禍様に巻き込まれる形であの様な状態になったのかも知れませんが、それはもしかすると殺人様の迷宮時計による副作用では無いのでしょうかと」
「そうか・・・・・・、確かにそれはあり得るね」
「現に、私に残された時間は後僅かでしょう・・・・・・」
「なっ!?」
「私も、反動と言うのでしょうか?こちらへ来る為に破壊された殺人様の迷宮時計を復元し、それと同時に殺人様の肉体も復元した副作用ですかね・・・・・・」
「どう言う・・・」
クロノは静かに機械の身体を見せ始めた、すると迷宮時計が埋め込まれた胸の中心部から急速に錆び付き始め、そこから少しずつ風化をしだしていた。
「これが私の持つ迷宮時計の副作用でございます、きっと力を使い過ぎたのでしょう、こうなるともう手遅れなのです」
「・・・・・・・・・・・・はぁ~~~、なるほどね」
「このまま唯々朽ちて行く位なら私は、連結装置となり殺人様のお力添えをしたいのでございます」
「クロノさんの覚悟は解ったよ、それじゃあ・・・・・・早速取り掛かるけど、この事は二人に言わなくて良いのかい?」
「・・・・・・えぇ、今お話ししたら殺人様と災禍様はきっと止めようとします、それに」
「それに?」
「私も躊躇ってしまいそうで(苦笑)」
「解ったよ、それじゃあ・・・・・・やるよ」
「・・・・・・お願い致します」
~~~~~数時間後~~~~~
「おっ!?」
「どうした?」
「何か解んねぇーけど何か魂が引っ張られてる様な感じが・・・・・・」
俺は一瞬意識消失したかと思うと阿欲姉の声で意識を取り戻した。
「殺人ちゃん!!殺人ちゃん!!大丈夫!?」
「えっ、あっ!?」
「良かったぁーーーーーー(涙)」
「お、俺・・・・・・」
「お帰りなさい殺人(涙)」
「阿欲姉・・・・・・ただいま(照)」
こうして俺は皆の手助けにより再びこの世に舞い戻って来れたのだが、その犠牲はとても大きかった。
「そんな、クロノが!?」
「あぁ、クロノさんには時間が残されて無かったのよ」
「クロノ、何で言ってくれなかったんだよ?!」
「言ったら殺人に止められるって解ってたんだろ」
「当たり前だろ!!」
「それでも、私の能力でも迷宮時計の呪いに罹った物は修復が出来ないんだよ」
「そんな・・・・・・」
「だから、ただただ朽ち果てるより殺人、あんたの力になったんじゃないのかい?!」
「殺人ちゃん、貴女の胸の手を当ててみて?」
「!?これは・・・・・・」
「迷宮時計よ」
俺と災禍が待機してる間の出来事を阿欲姉が話してくれた、クロノは自身の身体げ朽ちて行くのを感じ、魂と肉体の間に入り連結装置になる事を自ら申し出たそうだ。本当にお節介焼きだよクロノ、馬鹿野郎。
「迷宮時計がクロノなんだな」
「そうね」
「なぁ阿欲姉、クロノちゃん生きてるよね?」
「へっ?」
「そうね、姿形は迷宮時計に変わってしまったけど、殺人ちゃんの魂と肉体を繋ぐ為のバランス調整はクロノさんが担っているからね」
「クロノちゃん、そろそろ殺人が泣いちゃうからいじめないでよ(笑)」
「はぁ~~~?!」
「(災禍様にはバレてしまいましたか)」
「うぉっ!?クロノ?クロノなの?!」
「(殺人様、ドッキリを仕掛ける様な真似をしてしまい誠に申し訳ございませんでした)」
「今のクロノさんは以前の災禍と殺人ちゃんの状態みたいな感じかしら、少し違うのは魂と魂が一つ身体を共有するんじゃなく、文字通り身体の一部となって共存してる訳ね」
「なっ!?チクショーーーー(泣)」
「(本当に申し訳ありません殺人様、ですが私は今もこうして貴女様のお力になれる様お傍におります、ですから心配しないで下さい)」
「もう誰も信じねぇ~~~(拗)」
「殺人ちゃん拗ねないで~~~」
こうして俺は阿欲姉とクロノの助力を得て何とか復活する事が出来たのだが、一つだけ疑問に思う事が有る。
「そう言えば、災禍はどうすんだ?」
「あぁ、そう言えば忘れてた」
「阿欲姉酷っ」
「実際どうしようかねぇー(悩)」
「俺の身体に同居してた訳だから、俺が復活すると同じ様に戻ってくるのかと思ってたんだけどな」
「(それは違います、そもそも人間とは本人の魂と肉体が繋がって初めて『個』となります、ですが災禍様はタロットカードの亡霊として殺人様の魂と繋がってしまったイレギュラーな状態だったと言えます)」
「それじゃあこのままって訳にも行かねぇーか」
「(不思議な事に殺人様の肉体なのですが、魂の空き部屋と言いますか、通常でしたら一人の肉体に納まる魂の空間は一人分なのですが、殺人様のソレは優に数十人分の空間がございます)」
「なんじゃそりゃあ!?」
「そりゃあ凄ぇーな(汗)」
「(これだけの空き容量がございましたら、迷宮時計の力で災禍様を呼び込む事が可能でございます)」
「良いのか殺人?」
「何でだよ」
「お前の肉体だろ、私が入ってっと邪魔になんじゃないかい?」
「はっ、何言ってんだよ災禍、姉妹が困ってんなら助け合うのは当たり前だろ?」
「うわぁ~~~~~~殺人ちゃんいい子だよぉーーーーーーーーーーーー(大泣)」
「阿欲姉は大袈裟なんだよ(苦笑)」
「(それでは早速ですが、災禍様の魂を殺人様の肉体へ転送します)」
「「うぉっ!?」」
「(転送作業は完了しました、具合いはどうでしょうか殺人様?)」
「い、いやぁーーー、何か魂が引っ張られるって感じ?あの感触は全然慣れねぇーな(汗)」
「殺人ちゃん、災禍はどうしてる?」
「災禍は・・・・・・『暫く寝てっから起こさないでくれ』だって(呆)」
「(災禍様らしいですね)」
「あの愚妹・・・はぁ~~~(呆)」
「まぁ何にしても、本当にお世話になったよ阿欲姉」
「もう行っちゃうのかい?少しは休んでいったらどうだい?」
「そうしたいのは山々なんだけど、女が俺を心配してるし早く帰らって守らないといけないからさ(苦笑)」
「そっか、何だか寂しくなっちゃうな」
「(阿欲様、本当にありがとうございました)」
「良いんだよクロノさん、貴方のお陰で私の妹達は助けられたんだし、こちらこそありがとうございました」
「阿欲姉ありがとう、今度は彼女連れて遊びに来っから!!」
「うん、遊びに来な!!」
こうして俺達は阿欲姉の家を後にし、少し開けた場所へ移動いした、そこで俺は自身の持つ迷宮時計を作動させた、身体の一部になったクロノが俺の持つ迷宮時計の統括システムとして出力動作等を一手に引き受け調整しているから、以前の様な不安定さは無く安定して迷宮時計を使えるのが助かる。
「(迷宮時計の出力、稼働率、効果範囲も安定してます)」
「それじゃあ、俺達の居た世界に戻ろう」
「(殺人様、私が迷宮時計の調節は行っておりますので以前よりは安定して使用する事は出来ます、ですが副作用や反動のリスクが消えた訳ではございませんので、引き続き乱用はしない様ご理解下さい)」
「あぁ、解ってるよクロノ・・・、迷宮時計はすげぇ危険なアイテムだ、俺も必要最低限しか使わねぇーよ」
「(それとですが、使用する度に周囲へ影響を及ぼす事が有ります、例えば別次元と繋がったり、世界歴史の改竄など色々と不都合が発生しますのでお気を付けて下さい)」
「了解だよ」
~~~~~東京の路地裏へ~~~~~
「何か、たった数時間前まで居たのに数年振りに戻ってきた感じだな」
「(そうですね、とても長い旅をしていた様な感じでした)」
「さてと、xが心配だ、はやく彼女の所に戻ろう」
こうして俺達は元居た世界線へ帰還し、俺は足早に大通りへ歩き出したがーーーーー。
「おっ!?」
「きゃっ?!」
俺は一人の女子高生とぶつかってしまった、咄嗟に彼女を掴まえ何とか転倒させずに済んだ。
「わ、悪ぃ!!大丈夫か!?」
「あ、だ、大丈夫です(汗)」
「良かったぁーーー」
「ごめんなさい、ちょっとボーっとしちゃってて」
「危ないから気を付けな?」
「すみませんでした(汗)」
そう言って女子高生が立ち去ろうとした時だった、彼女の足元に銀色の懐中時計が落ちていた、俺が広いあげその銀時計に触れた瞬間、身体がその気配と言うか、時計が持つ雰囲気を感じ取った。俺は彼女に悟られない様にし、何事もなかったかの様に広いあげ手渡した。
「はい、落とし物だよ」
「あ、本当にすみません!!」
「良い時計だね」
「はい、これはお守りなんです」
「御守り?」
「はい、この時計を持ってると安心するんです(照)」
「そっか、そう言う事って有るもんな、無くさない様にしなよ?」
「はい!!」
彼女は深々と頭を下げ、踵を返す様に急いで走りだした。
「(殺人様、彼女のお持ちになられていた時計は・・・・・・)」
「迷宮時計とは違ぇーけど、銀時計からはヤバい雰囲気がするね」
「(あの制服は希望崎学園でしょうか?)」
「かも知れねぇーな・・・・・・」
少しずつ遠くなる後ろ姿、彼女が抱える学生鞄に付けられた名札に見覚えの有る名前が書かれていた。
「山乃端・・・一人・・・・・・」
【プロローグ終】