池松叢雲SS(エキシビジョン)

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エキシビジョン 池松叢雲

名前 魔人能力
伝説の勇者ミド おもいだす
池松叢雲 統一躯
陸軍一佐フジクロ 八咫鴉

採用する幕間SS
なし

試合内容

すでに、完全な包囲であった。
 東京タワー。
 現在はスカイツリーの竣工に伴い、この施設の運営権利は日本電波塔株式会社の手を離れ、
 港区《知恵の実》教会本部に移譲されて久しい。

 もっとも、この場の東京タワーは「女神」を名乗る能力者によって創造された、イミテーションに過ぎないが。
 平時なら観光客で賑わう昼下がりだが、今日はそうした人影はなく――、

 ――代わりに、黒い公安部の軍服に身を包んだ、数十名の小隊がタワーの麓を包囲していた。
 今回のトーナメントの規定に照らし合わせれば、明らかな違反であった。
 が、それを制止すべきジャッジも、完全であるべき「女神」の空間がどのようにして
 外界とつなげられたのか、それを解説する者もいなかった。

 あるのはただ、公安部の部隊が数十名の群れを為し、東京タワーと、
 それを背にする形の池松叢雲を包囲している事実であった。

「null hod.(なるほど)」

 池松叢雲は、鳥面の奥の瞳を細め、包囲の一群を眺めた。
 そしてそれに対するのは、一本足の異様な烏を肩に止まらせた、もう一人の男。
 こちらはダークスーツに身を包み、陰鬱に沈黙している。

「やけに動きが盛んだと思ったら、お前たちか。公安部」
「……きみは、本当に池松叢雲か?
 《あのとき》とは、雰囲気が違うが」
 ダークスーツの男、すなわちフジクロ陸軍一佐は、静かに声を発した。
 明らかに、異常なレベルの警戒が見て取れる。

「いや、あれはまだ――先のことか。いずれにしろ、ここで仕留めておけば終わりだ。
 SLGの会、《一撃》池松叢雲」

 自分の素性と、所属が割れている。
 池松叢雲は、冷静にその事実を受け取った。
 この男が何者か、どのような理由かは知らないが、始末せねばならない。
 池松の思考はすぐさまそこに着地した。

「そして」
 フジクロ一佐は、わずかに視線を動かし、タワーの上方へ向けた。
「渡葉 美土。どちらも、《現在の》我々にとっては迷惑極まりない。
 ここで消えてもらう。――このトーナメントはここまでだ」
「俺と本気で戦いたいと言うのなら、それはcome one(構わん)。 だが」
 池松は周囲を囲む黒衣たちを一瞥した。周囲に緊張が波のように流れる。

「こいつらは? 観客ではなさそうだな」
「――。」
 フジクロは答えなかったが、池松には見当がついていた。
 空間を操り、遠く隔たる出口と入口をつなげる能力者が、この大会にも存在している。
 そして時間を超えて現れているかのような物言いの、この男。
 あの男は、時間すらも操る術者ではなかったか?

(だとしたら)
 池松は即座に結論に至る。これがこの男、フジクロ陸軍一佐の『本気の戦い方』なのだ。
 集団戦闘。多対一。あるいは多対多。それでこそ指揮官の最大のポテンシャルである。
 望むところだ。

「SLGの会。お前との接点」
 フジクロは一歩、近づくのではなく、後退した。
 おそらくは、何かの罠だ。銃器で武装した部下に囲ませ、
 格闘技が苦手と見せているが、それは見せかけだけだ。
 そのくらいのことは池松にもわかる。

「すべて、お前の記憶からいただくとしよう」
「そうか。それを聞いて安心した」
 池松は、静かに全身から力を抜いた。脱力。
「俺たちを探ろうとするお前を、いま、ここで始末できるからな」

 池松は鳥面の下で笑みを浮かべた。
 と、同時に跳躍している。
 後退したフジクロのいる前方ではなく、東京タワーのそびえる後方へ。
 当然、そちらも公安部の黒衣が抑えているが――

(数は――)
 池松は高速で飛び出しながら、周囲をかこむ軍服の数を数えた。
 およそ三十名。いずれも拳銃で武装。おそらくは対魔人訓練を積んだ、特殊部隊。

「Coooo――」
 池松の肺から、冷めた風が流れる。
「いい。彼の移動を無理に塞ぐな」
 フジクロの冷静な指示が聞こえた。
「時間をかけても確実に仕留める。……頼むぞ」

「喝ッ(cut)!」
 池松の放つ掌底が、進路から退避しそこねた軍服をふたり、正確に吹き飛ばした。
 銃火で反撃する暇もない、迅速な左右へのdack-eye(打開)掌打であった。
 ついでにもう一人、叩き伏せようとしたが、その瞬間、鋭い殺気が背筋を這った。
 常人のものではない。おそらくは魔人。

「了解だ。攻撃を開始する」
「……いきます」
 殺気は二種類あった。左右からだ。
 耳元で鈴の音が響いた、ような気がした。
 池松は咄嗟に地面を蹴り、体をひねり、東京タワーのエントランスへ転がり込むように跳躍する。
 突き刺すような衝撃が左の肩を。
 鋭利きわまりない斬撃が、右の手首を斬り飛ばしている。

 池松の右手首から先が、血の花が咲いたように虚空に渦を巻いた。
 手首を切断したのは、ひとりの少女であった。
 片手に握った小太刀を、外科医のメスのごとき冷静さで一閃させている。
 もうすこし回避行動が遅ければ、首に届いていただろう。
 打拳で刃の軌道を逸らそうとしたが、一瞬、致命的に遅れた。
 左肩の弾丸もそうだ。こちらは確実に心臓を狙っていた。

(見事な射撃術…… そして、on-sinn……!)
 深い痛みの中で、池松は相手を賞賛したくなった。

 自分の左肩を打ち抜いたのは、感触からして、拳銃の弾丸であろう。
 それも相当な遠距離――池松が殺意の英語を感知できないほどの。
 どこから撃たれたのか、その方向を確認している暇はない。

 また、右手首を斬り飛ばした少女。
 こちらは斬撃の瞬間まで、池松に殺気をつかませなかった。
 on-sinnといい、和訳すれば「隠身」ともいう。
 気配を殺す技術のことである。
 この小太刀の少女のそれは、先日交戦した熊野ミーコを凌駕している。

 そしてさらに、小太刀による追撃がくる。
「――吹(foot)ッ!」
 池松は上段足刀で斬撃の軌道をそらす。
 たたき落とすつもりだったが、うまく力を逃された。そしてタワーの中へ。
 なおも追いかけようとした、小太刀の少女の足が止まった。
 その太腿に、矢のような何かが突き立っている。

「いそいで! こっち!」
 聞き覚えのある少女の声。池松はそちらへ飛ぶように駆けだした。

 ――悪くない展開だった。
(時間をかけてもいい、か)
 池松は身体操作により、右手首を止血しながら、いっそ凄絶な笑みを浮かべた。
(それが本当だとしたら、こちらの勝ちだ。 たとえ、俺がここで死ぬとしても)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「すみません。外しました」
 櫛故救世は、小太刀の血を拭った。
 その顔に、表情らしき表情はない。右足に刺さった矢は抜かれ、止血が済んでいる。

「あの距離での奇襲で殺しきれなかったのは、こちらのミスです。
 時間外報酬の要求は取り消します。すみません」
「いや。構わない。池松叢雲の右手首を落としたのは大きい」
 フジクロは地面を這おうとする池松の手首から先を、ブーツで踏みつけていた。
 靴底に仕込まれた刃が、その手のひらの中心を貫き、縫いとめている。

「とにかく、急がないことだ。以前はそれで痛い目にあった」
「――以前というのが何か、よくわからんが」
 糺礼が、フジクロの背後から近づいてきている。
 池松の左肩を狙撃した射手は、彼女であった。

 池松が謎の人物とまるで訓練するかのような交戦をしていた間、
 フジクロがかき集めることができた協力者は、櫛故救世と糺礼、そしてもう一名であった。

不動昭良が転校生化し、離脱したのは痛いな)
 フジクロは考える。
 池松との交戦経験もあり、なにより、彼を一度は退けた。
 ここで、確実にミドと池松を仕留めるには若干の不安がある。

 だが、魔人同士の戦いに100%など存在しないし、
 いっそ状況は不利なほうがフジクロのポテンシャルはむしろ高まる。
 そう評価したのは、ほかならぬ彼が敬意を持つ上司であった。

 そして、このメンバーが最大戦力ではあった。
 ほかのメンバーは公安部に味方するようなタイプではないか、
 あるいはこのような作戦を躊躇なく、共同して遂行するのに向かない。
 それがフジクロの判断だった。

「フジクロ一佐、本当に生死は問わんのだな?」
「死体から情報を引き出すことのできる能力者に、心当たりがある。
 このトーナメントの運営側は沈黙させた。自由にやってくれ」
「やつら――SLGの会といったか。連中は未来で何をやったのだ?」
「それは絶対に言えない」
「ふん」
 糺礼はつまらなさそうに鼻を鳴らす。

「タワーに逃げ込ませたのは、失敗ではなかったか?
 追い詰めたとはいえ、やりにくいぞ。向こうには渡葉がいる。
 なにか仕掛けてくるんじゃないか?」
「仕掛けというのは、すべてタネを割ってしまえば、それだけのことだ。
 逆にいえば、それまでは恐ろしい。よって、正攻法でゆく」

 フジクロは周囲の――過去の自分の、直属の部隊を見回す。
 早速、2名が減っていた。残り三十八名。
「犠牲を出しながら、正面から攻める。やがて、手詰まりになるまで」
「あの男は使わないのか? やつのポータルデバイスならば――」
「戦闘にまで参加する契約ではないからな。それに」
 フジクロは左手首の時計を一瞥した。

「手遅れだろう。先ほどさらに十名の増援を要請したが、応答がない。
 ポータルデバイスか、一夜に何かあったと判断しよう」
「まさか! この仕掛けに気づいたとして、対策など」
「さあな。だが、そうなった以上」
 フジクロは肩をすくめた。虚空に視線をさまよわせるような表情になる。
 烏との視覚共有の際には、このような表情になることを、礼は知っていた。

「――時間をかけて攻めようと思ったが、方針を変更しよう。
 やつらが何か話し合っている。よくないな。
 動く気配がないということは、時間稼ぎも狙いなのかもしれん」
「なるほど。集音マイクが使えんのは面倒だな」
 熟達の英検士を相手に、盗聴などという戦術は愚行だ。
 マイクごしの英語といえど、それだけで昏倒、最悪は死亡もありえる。

「よし」
 フジクロは小さくうなずいた。
「速攻に切り替える。櫛故くん、動けるか?」
「運動能力は5%ほど低下していますが。戦闘に支障ありませんね」
 沈黙していた櫛故は、軽く足を屈伸させてみせた。
 礼はシグ・ザウアーを外套の内側から引き出した。
「この作戦の指揮はお前に委ねた。侵攻経路を指定してくれ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「すみません、東京タワーオナニーしていたもので」
 勇者ミドは、心の底から申し訳なさそうに謝った。
 池松はおおげさに肩をすくめた。
「What?」
「いえ、ですから……東京タワーオナニーをしていたので……
 あ、東京タワーの頂上で東京タワーに犯されている妄想でするオナニーのことですけど……
 すこし、助けに向かうのが遅れてしまって……」
「それはcome one(「構いません、気にしていませんよ大丈夫です」という意味の英語」)。
 だが、ドイツ語はさっぱりわからん。英語か日本語で頼む」

 Onanieはドイツ語であり、純粋なバイリンガルである池松の言語領域には、
 そのような単語は一切存在しない。

「はあ……じゃあ、あの、マスターベーションしていました……」
「難しい発音だが、よく覚えろ。Masturbationだ」
「Masturbation」
「違う。Masturbation」
「――Masturbation!」
「もう一度。Masturbation」
「――Masturbation!!!」
「よろしい」
 頬を蒸気させて叫ぶミド。
 池松は小さくうなずき、その場に座り込んだ。ダメージが少なくない。

 東京タワー、中層展望台跡地、獣人教会礼拝堂である。
 地上のフットタウンとは中央エレベーターと、東西二つの階段通路でつながる、
 いまでは蛇人たちの日本最大の聖域の一つであった。

 かつて売店や博物館的な資料が設置されていたこのフロアは、
 いまや《知恵の実》の王、スティーブ・ジョブズを崇拝する
 彫像と祭具が多数存在する、荘厳な空間となっている。
 アップル社製品特有の、シンプルで直感的なデザインが生かされた、
 あなたのクリエイティブなセンスをまったく革新的に刺激するような内装である。

「でも、トーナメントはこれで中止ですね」
 勇者ミドは憂鬱げにつぶやいた。
「残念です。私、池松さんとしたかったんですけど……」
「生き延びたならば、いずれ」
 池松は鳥面の奥で微笑んだ。
 生き延びたならば。
 すでに、この戦闘はセーフティのあるイベントではなくなっている。

 そういう戦いに関して、フジクロは恐ろしく強いだろう。
 そして、「勇者」という対魔王専門の暗殺者であるミドも、
 英語検定四十段の池松も言うまでもない。
 フジクロに手を貸す、数名の魔人もそうなのだろう。

「時間を稼ぎたい」
 池松は端的に目的を告げた。
「ひとり、無事にこのeventから逃がしたい男がいる。
 日谷創面という。
 すでに包囲されているであろう会場近辺から、彼が脱出するまで、
 連中の目を引きつけておきたい――できるか?」
「……それ、私たちの無事は目的に入ってないんですね?」
「それは困る、か?」
「いえ。だったら色々と方法はあります」
 ミドは自信ありげにでも、不安げにでもなく、ただ淡々とうなずいた。

「状況を整理しましょう。敵の頭はフジクロ陸軍一佐。
 なんとなく未来から来たような男で、
 こっちの能力はすべて割れていると考えていい」
「何者か知らんが、実践経験豊富な相手だ。おそらく本人も強い」
「強いだけなら、池松さんの方が強いです」
 ミドは断言した。

「どうですか、私のセフ……いえ、パーティーの武道家枠になりませんかっ?」
「進軍経路は主に三つか。中央のエレベーター、東西の階段」
「……空中ということも一応ありますけど」
 完全に無視された形になり、ミドは仕方なく話を続けた。
「エレベーターが使われることはないでしょう。対処しましたから」
 ミドが『対処した』と言うのならば、池松に異論はない。
 池松は戦うための頭脳を、すべてこの少女に任せることに決めていた。
 よって、速やかに意識からエレベーターの経路を消す。

「ならば、東西の階段を封鎖するところか」
「そうですね。池松さん、東側をお願いできますか?」
「俺はcome one(「大丈夫です、問題ありません」)。
 が、西はひとりでなんとかなるか? フジクロ以外に、手練れの魔人が二人いる」
「大丈夫です。セフ……じゃなかった、仲間を呼んであります。
 ミスター・医師仮面、ご存知ですよね?」
 ミドはアップル社純正のiPhoneを掲げてみせた。
 生前のスティーブ・ジョブズが最後まで出荷を担当した、ラスト・ワンである。
 もともと、この施設は電波塔であった。
 そして外界とつながっている今、iPhoneの高性能な通話機能が万全に作用していた。

「池松さんも、どうぞ。持っていてください」
 ミドが手渡すiPhoneを受け取り、池松はうなずいた。
「なんとか右手首を取り戻したい。左手での操作は不便だからな。
 ――向こうは時間稼ぎに付き合うつもりはあると思うか?」
「間違いなく速攻できます。
 こちらの会話は盗聴はできないでしょうが、
 こちらが話し込んでいる光景は見えているはずなので、その狙いも」

「null hod(なるほど)」
 池松の目が、窓の外に向けられた。烏が一羽、じっと窓枠からこちらを見ている。
 瞬間、池松の左手が迅速に動いた。
「――疾(shick)!」
 潰れた弾丸が、窓ガラスを打ち抜いた。左肩から自力で摘出した、糺礼の銃弾である。
 それは一本足の烏の眉間を正確に狙撃している。
 回避する暇すら与えない、神速の一弾であった。 烏は鳴き声もあげず落下する。

「お、お見事……」
 明らかにミドはドン引きしていた。池松は無視して立ち上がった。
「まず一羽だ。はじめるとしよう。この戦いはお前に任せる。
 勝ち目はあると思うか?」
「まあ、そうですね――」
 ミドはこともなげにうなずいた。

「八割方は、なんとかなるでしょう」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(なにがどうなってんだ!)
 日谷創面は路地裏を駆けながら、あっというまに展開したこの状況を考える。
 いや、考えている暇もない。
 路地の表通りは黒衣たちに封鎖され、交通制限に苛立つドライバーのクラクションが響いてくる。

(大会スタッフとか、小野寺塩素とも連絡がつかない)
 創面は、重たい体を無理に動かし、静かに、手芸者特有の歩法で移動する。
 つい一時間ほど前まで続けていた、池松とのLessonの疲労、ダメージが抜けていない。
 「見つかってはいけない」。
 先ほど、池松叢雲から届いたメールには、流暢な英語でそう書かれていた。

(実際やばいことなのか? 池松先生ひとりを捕まえるためだけに、
 これだけの数の警察が動員されてるなんて……)
『アアー……おい。こりゃあ、アレだな。
 イベント会場周辺をまるごと包囲されちまってる』

 ロクロの声が脳裏に響く。
『空でも飛べないと、突破するのは難しいぜ。
 ソメン、特にお前が見つかるのは最悪だ』
(わかってるよ)
 こちらは、暗殺を企てている身だ。
 イベントに参加した者同士の関係を洗われると逃れようがない。
 創面と池松の接点を知る者は、どうにか捕まらずに包囲を抜けねばならないだろう。

(でも、ぜんぜん隙がない……!)
 創面は密かに路地裏を移動していた。隙が見つからない。
(強行突破は――)
『アホか』
 ロクロの小馬鹿にするような声が響く。それはそうだ。
『そんなんで強引に押し通るのは、池松とか練道とかのバケモノのやり口だぜ。
 フッフッフ。まあ、俺に体を貸すなら、それも――』
(アホか)
 今度は創面が冷たく答える番だった。

(よし――)
 創面は意を決して、傍らのビルの壁面に手をかけた。
《アゲインスト・トーフ》。
 指を軟化させた壁にめりこませ、登攀をはじめる。

(池松先生は逃げろと言った)
 時間稼ぎをするつもりだとも、言っていた。

(そのくらいやってやる。
 俺はあのウルワシ製薬総帥を暗殺するんだからな)

 創面の逃避行が、静かに進行する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「東側階段、異常なし」
 小声で報告を行い、櫛故救世は足音もなく階段を昇る。
 エレベーターは駆動機関部破壊されていたため、東西にチームを分けて制圧することになった。
 糺礼は西。櫛故は東であった。フジクロは「万が一の保険」と称していずこかへ消えた。
 櫛故に預けられた公安部の十名は非魔人ではあるが、さすがに精鋭であった。
 彼女と同様に階段を昇りながら、足音はほとんどないといっていい。

(とはいえ)
 池松叢雲には、接近を気づかれているだろうと思う。
 強力な相手だ。
 しかし、《転校生》というわけでも、スティーブ・ジョブズのような超人でもない。
 適切な対処をすれば、決して太刀打ちできない相手というわけではないだろう。

(でも、ちょっと割に合わない任務……)
 櫛故は己のチームのリーダーのことを思う。
 なんでもかんでも請け負ってくるというわけではない。
 むしろ依頼は慎重に選ぶ男だ。
 だが、あえて彼女の神経が擦り切れそうになるような仕事を持ってくるのは、
 もしかしたらある種の性癖なのかもしれない、と最近は思い始めた。

(これが終わったら、しばらく休暇をとろう)
 このトーナメント自体、突拍子もない仕事ではあった。
 この追加受注には辟易したが、よほど条件のいい報酬があったのだろうか?
(旅行に行きたい。こういうヤバイことのない場所で、
 沖縄とか、沖縄とか、沖縄とか――)

『……西側! 遭遇だ!』
 櫛故の思考を断ち切るように、鋭い糺礼の声がインカムから響いた。
(……何の音?)
 能力の性質ゆえか、櫛故の聴力は異常に発達している。
 礼の声の背後から、銃声のような音が聞こえた。

 現状、公安部の対魔人部隊に携帯許可されている装備は、口径9mmまでの片手拳銃である。
 だが、その銃撃に混じった何かの射撃音は、それとは異質であった。
(金属の射撃音。刃物? ミドの――飛び道具?)

『礼君。状況を。相手は?』
 かすかな櫛故の思考を、今度は静かなフジクロの声が遮る。
『――二人だ! 渡葉美土、そして――これは――なんだ?
 クソ、池松叢雲なのか? まずいな』
『落ち着いて。見たままを教えてくれ』
『わからん。報告できない、それに――チッ。手ごわい。
 一気に三人やられた! 本当に池松ならヤバい、切るぞ!』

 糺礼はすぐに通信を切った。妥当な判断だ。
 英語使いを相手なら、マイクごしの英語を常に警戒しなくてはならない。

『――二人か。こっちの速攻に対応して、突破をかけてきたか?
 強行突破。池松叢雲を使うなら、確かにその手の正攻法は面倒だ。
 ――いや。だが、面倒なだけに過ぎない。むしろ――僕なら――』
 礼の怒声にかわって聞こえるのは、フジクロの独白のようなつぶやき。
 櫛故は足を止めた。

「フジクロさん。私も西側に回りますか?
 二人とも東側を突破しようとしているのなら、そちらを」
『――いや。違う。報告できない。
 礼君がそう言ったのなら、本当に相手の正体を報告できないんだ』
 フジクロは即座に言葉を返した。
『能力者だ! 増援がいたか。出入口の烏の監視をどうやって――。
 櫛故君、なんとかする。持ちこたえてくれ』

 通信は唐突に切れた。
 そして櫛故は耳にする。風のうなるような音であった。

「Coooooooo――――」

 階段の上方である。櫛故はほんの一瞬だけ混乱した。
(池松叢雲? しかし、西側で遭遇したはず――いや)
 そんな仮定や推測は、能力者同士の戦闘では捨てなければならない。
 櫛故は小太刀を下段に構え、後ろに続く公安部隊に「停止」のサインを示した。
 『持ちこたえろ』と、それがフジクロの依頼となった。
 迎撃する。

(私と池松叢雲の能力は、相性がいい)
 櫛故には勝機があった。
 《鈴具輪久》の鈴の音を、最大音量で自分と部下の聴覚に流し、池松の英語を遮蔽する。
 万全とまではいかずとも、致命打を回避する程度の防御は可能となるはずであった。
 間違いなく、池松叢雲は初撃に最大の英語を放ってくるだろう。

(迎撃はあんまり得意じゃないけど)
 フジクロが「なんとかする」まで時間を稼ぐことならば。
 櫛故は静かに能力を起動した。公安部隊にはあらかじめ、この能力の今回の使い方だけは伝えてある。
 聴覚を圧倒するほどの鈴の音が聞こえてくる――だが、櫛故にとっては慣れ親しんだものだ。
 公安部隊は少し戸惑ったようだが、戦闘に影響は出ないだろう。

 ゆえに、櫛故救世はその英語を聞き逃した。
 鈴の音で聴覚を防御していたために、そして、足にわずかな負傷を追っていたために、
 回避の動作もほんの少し、だが決定的に遅れた。

「exhaust(いくぞ)」

 池松叢雲の英語が、階段すべてを震わす威力で響いた。

「抜 山 蓋 世 ( but, than guy say )――」

 ばっ! と、蜘蛛の巣のような亀裂が階段を、壁を、天井を走った。

(――!?)
 英語そのものは、鈴の音で防御した。
 だが、この振動、この破壊の感触は――。櫛故は退避しようとした。
 太腿部の痛みが、それをコンマ数秒ほど阻害した。
 「抜山蓋世」とは、「垓下の歌」の一節である。
 楚漢戦争において、西楚の覇王項羽が詠んだ英語詩とされている。
 この詩は、後にこう続く。

「―― 騅 不 逝 (sweet who say)!」

 破壊が決定的なものとなった。
 壁、天井、階段、すべてが一斉に崩れ落ちる。

「池松……!」
 櫛故は、降り注ぐ瓦礫のさらに上方に、その男の姿を見た。
 鳥面の男。片手に何かを握っている。それもまた仮面?

「すまないが」
 池松叢雲は、白い――ヴェネツィアのカーニバルで用いられるようなその仮面を、
 無造作にこちらへ落下させた。
「こちらは手負いだ。まともな勝負は勘弁してくれ」

(なにあれ? でも、なにか危ない。とにかく迎撃――)
 足場が崩れ、すでに回避はできない。瓦礫を払いながら、その仮面を小太刀で――
 払いのけ、斬ったと思った瞬間、それは脈絡もなく爆発した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 爆音が響いた。
 その男、かつて医師仮面と呼ばれた男はどこか意識の遠くで聞いた。
 かつての自分が砕ける音でもあった。

「下がりましょう。次の踊り場まで」
 ミドが静かに指示を伝えてくる。銃声。
 医師仮面は沈黙のまま、彼女の移動に続く。
 それぞれの踊り場ごとに、ちょっとした罠が仕掛けてある。
 致命的なものではないが、進軍をためらわせるくらいの効果はあった。

 作戦はおおむね、うまくいっている。
 医師仮面が隠していた能力、《メモリーズオブユー》。
 彼の素顔を再度隠した瞬間、対象はその素顔に関する記憶を消失させる。

 これにより、彼は糺礼とその部下に、「池松叢雲らしきもの」として、
 注意を惹きつけることができていた。
 最初は英語を警戒させる呼吸と、そこからのメス射撃の奇襲で何人かは倒せた。
 三人を立て続けに仕留め、ミドがまた一人を潰して、すでに四人を沈黙させている。
 さらにうまくいけば、この報告を受けた櫛故もこちらに誘引することができたはずだが――

「なかなかうまくいかないですね」
 ミドは医師仮面の内心を代弁したようにつぶやいた。
 彼女は、何の部品をどう改造したものか、クロスボウに似た武器を手にしていた。
 もとはエレベーターの巻き上げ機構だったと本人は言っていた。
 とても勇者の特技とは思えないが、これと同様の罠をいくつか作っていた。

「罠を仕掛けた踊り場は、あと三つです」
「そうか」
 医師仮面は短く答えた。階下で単発の銃撃音。罠が破壊された。
 まもなく、やってくる。
 糺礼の攻め手は、その振る舞いと逆に極めて堅実であった。
 突撃はしてこない。人数を利用して、歩くような速度で攻めてくる。
 そして、踏みとどまられれば、こちらはただ後退するしかない。

 だとしても、である。
 医師仮面は考える。関係はない。
 やるべきことをやる。

「医師仮面さん。……次、お願いできますか?」
 ミドは、やはりこちらの考えを読んだようだった。
「言われずとも」
 そのつもりであった。
 この状況下での散る順番、ということを、医師仮面は正確に認識していた。
 ミドが頭脳であり、自分と池松叢雲は両腕にすぎない。
 足止めにどちらかを使うというのなら、それは自分が先だ。

「――あの、ちょっと、あんまり関係ない純粋な疑問なんですけど」
 ミドが不意に尋ねてくる。救援を頼んできたのはこの少女である。
 いったいどのようなネットワークを築いているのだろう。
「医師仮面さんはなんでSLGの会に入ろうと思ったんですか?」
「……知らん」

 事実だ。自分でもよくわからない。
 もともと、いままでの人生で、自分で何かを決めたことなどなかった、という気がする。
 組織があり、自分はそれの一部だった。

 だからかもしれない。
 これが初めて、自分の意思で、何かを達成しようと挑む経験であった。
「強いて言うならば、友人の頼みだ」
「友人? それって、セ、セフ……」
「来るぞ」
 医師仮面は発情しかけたミドを黙らせた。
 いくつもの静かな足音。だが、医師仮面はそういった足音を判別することに慣れている。

「――なるほど。お前が医師仮面。それが素顔なのか」
 コツ、コツ、と、糺礼が階段を昇ってくる。
 先行する公安部隊は四人。もう二人が背後を固めている。

「タネは割れたぞ、手品師」
 糺礼。
 彼女について、医師仮面は思考を巡らせる。
 いびつな戦闘意欲と圧倒的な敵意。少々、手に余る相手だ。

「撃て」
 糺礼は片手を伸ばした。銃口。他の六人も、整然とそれに倣った。
 ――つまり、やるしかないのだった。

「Co――」
 医師仮面は、これを《ワンミニット・エクスタシー》と名づけている。
 魔人能力ではない。すでに薬物投与は終えていて、『効いてくる』時間帯であった。
「Cooooooooooo――wooooo!」
 四肢に異常な力のみなぎりを感じた。視界が跳ねる。
 いや、自分が跳躍したのだ、階下の一団に向かって。

「ち――捨て身か」
 糺礼とその部下の銃撃は、寸前で回避している。
 舌打ちとともに、彼女の胸部が蠢く。この能力は医師仮面も知っている。
 タネさえわかってしまえば――この状態の自分には、急所を外して受けることは難しくない。

「うぅッ」
 二つの弾丸が腹を打ち抜き、獣じみた唸り声が医師仮面の喉から漏れた。
 かわしたつもりだったが、三発の弾丸のうち、二発は跳弾した。
 それでも痛みはなく、その運動能力に減退はない。

 医師仮面のてからメスが投擲され、彼女の前衛に立っていた公安部隊が二人、同時に倒れる。
 別のもう一人が、ミドの放ったクロスボウもどきの矢に射抜かれてよろめいた。
 そいつの首をねじりきって、三人目。

「後退しろ。このバカバカしい状態は長続きしない」
 糺礼は医師仮面を銃撃で牽制しながら、すでに下り降りる構えをとっている。
 だが、その銃撃を受けることを前提に、医師仮面はさらに跳躍している。

「あ」
 最後の四人目の前衛が、後退しかけて間の抜けた声をあげた。
 一瞬にして頚動脈を切断され、血が吹き出る。

 医師仮面は迅速に退避していく糺礼と、残りの二人の背を見送りながら、拳をふりあげた。

「Coooooooooooo――」
 バイリンガルではないが、医師仮面はネイティヴスピーカーである。
 そして、池松の英語を受け、気づかされた。
 英語は、力であるということを。
「打ッ(dat)!」
 打ち付けた拳は、階段の一部を破壊した。さらに立て続けに、二度、三度と叩き込む。

「なんだと? くそっ」
 糺礼は振り返り、銃撃によってこちらの意図を阻止しようとした。
 だが、医師仮面の拳は止まらなかった。
 叩きつける拳が加速し、階段を、壁を、破壊していく。あたりが地震のように震える。

(たとえこれで命が尽きるとしても)
 糺礼と、その部下の銃撃が、医師仮面の胴体に食い込んだ。
 頭部への着弾だけは回避している。
 そして足を止めて撃つということは、反撃の機会を許すということだ――
 医師仮面のメスは、糺礼の両隣の公安部隊を同時に射抜いている。

(これで、糺礼のチームは全滅。役割は果たした――
 他の誰かの代替でも、命令でもない、私の役割)

 銃撃を受けながら振り下ろす拳が、階段を完全に破壊した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「――そうか。わかった」
 フジクロは、暗がりのなかでその報告を聞いた。
 不機嫌な糺礼の声がノイズまじりに響く。

『くそっ。魔人め。SLGだと?
 あんなふざけた手品師に……!』
「あまり気にするな。
 あのレベルの魔人命懸けとなれば、ある程度はどうしようもない。
 それより、想定外の戦力を潰せたことが重要だ」

『しかし、階段を破壊された。ここから攻めるなら、補修が必要だ。
 すぐに、というわけにはいかん』
「仕方ないな。礼君は一旦下がってくれ。
 櫛故君はどうだ? 動ける状態なのか?」

『……戦闘行動に支障はありますが、不可能というレベルではありません』
 かすかに呼吸の乱れた声だった。
 櫛故は階段を転げ落ちながら、爆破の威力を減退したようだった。

 フジクロは残りの戦力を計算する。
 公安部の部隊が十八名。
 外にいるはずの矢塚一夜とは連絡がとれないため、ひとまず戦力からは外す。
 ならば――

「櫛故君は援護だけで構わない。
 あの《鈴》の能力で、池松の英語さえ防御してもらえれば」
『それだけならば、なんとか』
「よし」

 フジクロは、暗い頭上を見上げた。
「こちらの準備はできた」
『おい。フジクロ一佐。私たちを陽動に使ったな?』
「医師仮面がいなければ、片はついていたと思う。
 これで多少は有利になる」

 多少。
 フジクロの認識に油断はない。
「反撃を開始しよう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……無事ですか?」

 ミドは全身に銃創を穿たれた、医師仮面の裸体を興奮とともに眺めた。
 ダメージは致命的であった。
 即座になんらかの処置が必要であったが、医師仮面のその手際は卓抜していた。
 ただし、可能な限り速やかに、輸血は必要であろう。
 《ワンミニット・エクスタシー》の反動もあり、戦闘はおろか、身動きもできない。

「処置は完了……したが、銃弾を喰らいすぎた……な」

 銃撃は、ある程度は防ぐことができていた。
 医師仮面のコートの内側には、デザインにすぐれたいくつかの小さな板が仕込まれていた。

 ――iPhone 4 and 4Sケースである。
 Gショック以上の対衝撃性を持つこの携帯電話とケースは、
 バイクのヘルメット用のモデルとして作成され、
 その構造を軍部でも採用されるほど防弾性をも持ち合わせている。
 言うまでもないが、デザイン性も優れていた。
 これが医師仮面の命を致命傷から救ったのである。

「あの、私、すごく元気になる治療方法を知ってるんですよ。
 つまりセッ」
「sumart night(「すまない 」)。 すぐに病院に運びたいが」
「気にするな……」
 池松と医師仮面はミドが言葉を続けるのを完全に無視した。
 医師仮面は虚ろな呼吸で声を発する。

「それより、ここを……どう乗り切るか……だ。
 時間稼ぎは、まだ十分ではない……だろう」
 池松は無表情にうなずいた。
「向こうがうまくやってくれるまで、
 一分一秒でも長く、こちらにフジクロの目をひきつけたい」

 医師仮面をここまで搬送したのは池松である。
 負傷した彼を放置しなかったのは、単なる感情的なものだけではない。
 池松自身、死者を蘇生させて操る能力者を何人か知っているからだ。

 かつて、上層特別展望台と呼ばれていたフロアであった。
 これより上のフロアは存在しない。
 いまでは、スティーブ・ジョブズの偉業をたたえる、ただホワイトに塗装された、
 なにひとつオブジェクトのないのスペースとなっている。

「でも、これで少しは時間を稼げるはずです!」
 ミドは努めて明るく発言した。
「階段を壊しましたし、無理に飛び越えようとすると罠があります。
 ちょっと次の手を考えさせてください」
 ここまでの展開は、ミドがデザインした通りのものだった。
 彼女の手には、iPadが握られていた。

 その画面にはこのタワーの内部図が展開され、
 ミドのトラップ配置がコメントつきでカラフルかつ見やすく表示されている。
 シンプルで直感的な操作を可能とするこの最新鋭のタブレット端末は、
 使い手のイメージとパフォーマンスを結びつけ、最高水準に引き出してくれるのだ。

「これ以上は上のフロアに逃げられないので、なんとか踏みとどまらないと。
 屋上っていうか、屋外でフジクロ一佐と戦いたくありませんし」
「迎撃の方法か。任せる。俺は無理だ」
 池松はあっさりと断言した。
 ミドは苦笑いを返さざるをえない。
 片手でiPadを操作しながら、思考を進める。

「ですよねー。なんとかしましょう。
 プランはあります。でも、いまひとつフジクロさん相手には通じるかどうか。
 池松さん、たとえば、このフロアを英語で破壊したりできないですか?」
「右の掌底。それが俺の最大の一撃だ。
 あいにく俺は未熟でな。フロアを破壊するには、最低でも、それが必要だ」
「そうですか…… なんとかならないかな。いや、でも――」
「hum...(感嘆詞。特に意味はない)」

 池松はかすかに唸り、不意に視線をミドの背後に向けた。
 そこには、直通エレベーターのドアがあった。

「少しは時間を稼いでみるが、一刻も早く頼む」
「え? あの、あれ? マジですか?」
「マジだ」

 池松は立ち上がり、ミドと医師仮面を庇うような自然体に構えた。
「くるぞ」
「ウソ……!」

 ミドが表情を引きつらせたと同時、甲高い電子音とともにドアが開いた。
「エレベーター、巻き上げ機とか動力部とか、ちゃんと壊しておいたのに!」
「伏せろ」
 銃声が、連続して二度響き、それは二人を庇う池松がかかげた右腕に着弾した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(防いだか)
 フジクロはH&Kの射撃の直後、ドアから転がり出て、池松叢雲の反撃を回避する。

「――疾(shick)!」
 びすっ、と鋭い音が響き、エレベーター内部の壁に金属片が突き刺さる。
 メスだ。
 医師仮面が使っていたものだが、その投擲威力は銃弾にも匹敵しているようだ。

(だが、ここが勝負だ)
 フジクロは呼吸を落ち着けることに全力を注いだ。
 この状況の池松は、一体一のときほど恐るべき相手ではない。
 まずは背後にミドと、医師仮面がいること。彼らを庇わなければならず、動きが制限される。
 あの立ち位置を迂闊に動けないだろう。

 そして右腕。
 手首から先が失われ、さらにいま、二発の弾丸を打ち込んだ。
 《統一躯》によっていくら自身を制御できるとはいっても、
 断裂した筋肉、砕けた骨の分だけ威力は鈍る。
 むろん接近からの直撃は驚異だが、左手でおこなうようなメスの投擲はできまい。

 つまり、遠距離から徹底して削るのが最善だ。
 ――時間を稼ぎながら。 そのためのタネは仕込んである。

「烏の巣作りを見たことがあるか?」
 フジクロは起き上がり、銃を握り直し、池松とミドに声をかける。
 案の定、池松は動かず、追撃してこない。

「彼らは驚くほど器用でね。特に私の烏はきわめて賢い。
 部品さえ代替できるなら、精密な機械の修復も可能だ」
 フジクロはゆっくりと歩く。池松に近づきも、遠ざかりもしない。
 いまはこの間合いだけが、彼の身を守る盾だった。

「とはいえ、限界はある」
 フジクロの背後で、ばきん!と、鋭い破壊音が響いた。
 かなり上のほうから聞こえた音だ。何かが決定的に砕ける音。
「昇り、一回分をもたせる程度の応急処置でね。
 つまりこれできみたちの退路が消えたことになる」
「お前の退路も、だな」
 池松は会話に乗ってきた。やはり英会話者だ。
「いいのか? 一人で俺たちを相手にできる自信はあるか?」
「きみたちは手負いだからな」
 フジクロは意味ありげに、銃を持っていない片手を掲げてみせた。

「――池松さん。あれ」
 ミドがかすかな声をあげている。

「これか?」
 フジクロはH&Kの銃口を池松とミドの間で往復させ、
 左手に掴んだその物体を差し出す。
「池松叢雲の右手首。これは英会話業界の大きな損失だな。
 未来を変えてしまうおそれがあると思っているよ」
 池松の鳥面の奥の目も、それに据えられていた。
 やはり、乗ってくる。あとは引き伸ばす。
「返した方がいいかな?」

「池松さん。私と、医師仮面さんのことは気にしないでください」
 ミドがフジクロの言葉をまったく無視したように告げた。
「全力で。思い切り。やっちゃってください」
「――いいんだな?」
「勇者は指揮官です。指揮官を信用してください」

「――I eye saw(「アイアイサー」「了解」という意味の英語)」

 池松に、火が点いたように思った。
 sing-cat(震脚)である。白い床のタイルに蜘蛛の巣状の亀裂が走り、
 その体が矢のように飛び出してくる。

(前に、出てくるか)
 フジクロは時間稼ぎという目論見が外されたのを感じた。
(だが、そのリスクも)
 フジクロは能力を起動させる。《八咫鴉》。
(想定済み――だ。行け!)
 フジクロが乗ってきたエレベーターの、天井にわだかまる闇が蠢いた。
 そこにいる。十羽の烏が飛び込んでくる。
 彼らの一本足には、みな一様に、軍用ナイフが掴まれていた。

「吹(foot)ッ!」
 池松の脚がかすむほどの速度で動き、飛翔して攻める烏の一羽を撃ち落とした。
 連携して繰り出される、空中からの刃もかわし、あるいは捌く――
 だが、その全てを完全に防ぐには至らず、一撃か二撃は肩で受け、
 さらには動きを封じられる形になった。

(ここだ)
 フジクロは銃撃を二度。方向は池松叢雲。
 池松が反射的にそれを迎撃しようとした瞬間、一羽の烏が動いた。
 ナイフの角度をわずかに傾け、フジクロの弾丸を弾く。

 跳弾。
 その狙いは池松ではなく、ミドであった。
 最初から、フジクロにとっての撃破優先対象はミドだった。
 厄介な頭脳と、思いもよらぬトリック。あるいはフジクロ以上の。
 読み合いならば恐ろしい――ゆえに、それを発揮できないところで、確実に仕留めたかった。

「で、ですよねー!」
 それでもミドはこれを読んでいたらしい。転がって弾丸を回避する。
 このくらいは想定していた。SLGの魔人は総じて身体能力が高い傾向がある。
 フリースキル、と呼ばれる、魔人能力の威力を高めるための潜在能力に
 ほとんどキャパシティを割いていないためだ。
 そして渡葉美土ほどの判断力があれば、跳弾の狙いくらいは読みきっていただろう。

(だから)
 フジクロは床を蹴って直進する。
 だからこその、接近戦である。
 池松叢雲は烏の群れが抑えている。 このタイミングしかなかった。
「――!」
 弾丸を転がって回避したミドの頭上に、駆け込んだフジクロの踵が振り落とされる。
 単純きわまりない、格闘メソッド。
 ミドはこれを左腕で受けるしかなかった。
 めき、と、確実な破壊の感触が足に伝わる。折った。

「まだ……!」
 痛みに顔をしかめたミドの右腕には、いつのまに持ち替えたのか、
 伝説の剣『まるごし』が握られていた。
 振り回されてくる。
 だが、フジクロはこの剣の間合いと、使い方を見切っていた。
 刃があると見せかけて存在せず、そしてその実、ナイフが握りこまれており――

「一度だけの武器だ。それは」
 そして、その間合いの見極めに気をとられれば、投擲される剣の回避が遅れる。
 フジクロはそれを完全に認識しており、飛来する「まるごし」に隠れたナイフの刃を容易く回避した。

 そして、その次に飛んでくる、死角からの医師仮面のメスの投擲も、H&Kを盾に防御している。

「む……!」
 医師仮面が呻くのが聞こえる。
 まだ動けたのは驚きだが、その奇襲は殺気を隠せず、精彩を欠いていた。
 使えなくなった拳銃はそのまま捨て、武器をすべてなくしたミドへ、再びかかと落としを放つ。
 今度は靴底の刃が、かすかな金属音を響かせて突き出される。

 そのときフジクロは、ミドの肺から漏れる、奇妙な呼吸に気づいた。

「コオオオォォォ――――ォォッ」
 バイリンガルの呼吸であった。

(渡葉 美土――英語検定有段者か? そんな情報は。
 ハッタリ。いや。この少女ならば――!)

 フジクロはその可能性に遅れて気づいた。
 ミドは床を踏み鳴らし、起き上がりながら、フジクロの踵落としを迎撃した。
 右の掌底を、まっすぐ叩きつける一撃。

 ――一撃、である。
 その英語は、ミドの能力《おもいだす》が可能としたもの。
 ミドは、池松の発した英単語を心に刻み込み、己のものとしていた。

 ミドの完全な言語記憶能力。
 英検四十段の池松による発音Lesson。
 そしてi-padによるクリエイティブで斬新な直感の刺激。

 それらが一体となり、ミドに必殺の英語を撃たせる。

「――Masturbation (マスターベーション)!!!」

 フジクロは振り下ろす踵から、鋭い衝撃が走るのを感じた。
 骨が――筋肉が、神経が、焼けるように鋭い英語!

 視界が明滅した。 悲鳴さえあげていたかもしれない。
 フジクロは一瞬、自分自身の制御を失い倒れこむ。
 《池松叢雲の右手首》が、その手からこぼれ落ちる。

「池松さん」
 ミドがそれを拾う。池松に放り投げるのが他人ごとのように見える。
 烏の制御もままならず、それを見送るしかない。


(――だが)

 フジクロはこわばる左手を、必死で上着の内側に伸ばした。

(――想定内)

 池松が右手首を受け取り、それを切断面に接合する。
 瞬間。
 フジクロは上着の内側で、起爆の信号を送るスイッチを押した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 池松叢雲は自分の右腕が爆砕するのを見た。
 半径30センチをふきとばす爆弾。わずかな破片が仮面を砕き、額を、頬を裂いた。

(すでに――右手首の中に仕込んでいたか)
 池松は冷静な思考でその事実を受け止める。
(俺が間抜けか)

「ここまでだ」
 フジクロは床に片膝をつく、ミドのこめかみに銃口を突きつけていた。
「投降は受け付けている、ミスター池松」

「お前がその引き金を引く前に」
 池松叢雲は、自然体を崩さないままであった。
 吹き飛んだ右腕からは、即座に血が止まっている。

「俺の英語が届くかどうか、試してみるか?」
「いいや」
 フジクロは首を振った。
「きみには万が一ということがある。それが怖いから撃たないのさ。
 ――この人質ごっこは単なる時間だ」

 フジクロと、池松の周囲を烏が羽音もなく旋回する。
 チカ、と、窓の外で光がまたたいた。

「制圧完了だ」
 フジクロの言葉と同時、窓ガラスが一斉にくだけた。
 黒衣の公安部隊が、そろって飛び込んでくる。そして糺礼。櫛故。

「階段もエレベーターも、使用不能。
 破壊された階段を迂回して壁を登るのは苦労したが――
 ともあれこれで、本当に言わせてもらおう」
 フジクロはゆっくりとミドから後退する。
「きみたちに逃げ場はない」

「まったく、本当にだ」
 糺礼は不機嫌そうに呻いた。
「このうえ、豚のような悲鳴だけは聞かせてくれるなよ。
 おとなしく投稿するか、速やかに死ね」
「――やれやれ」

 池松は彫りの深い、ローマ人のような素顔に、自嘲的な笑みを浮かべた。
「最悪の方法を思いついたぞ。未熟だな、俺は。
 本当に。一撃を極めるには程遠い」
「おい。何を」
 糺礼がシグ・ザウアーを構えようとした。

「池松さん」
 ミドが声をあげた。立ち上がろうとしている。
 その傍らに、投げ出されたiPadがある。
 その液晶は彼女の手を離れても煌煌と輝き、スケジューラのような画面を表示していた。
 これがiPadの電源保持能力。そして鮮明な表示能力の本領である。

「準備完了、です! 自由にやっちゃってください!」
「I eye saw(「アイアイサー」「了解」という意味の英語)」
 池松はうなずいた。

(まずい)
 フジクロはそのiPadの画面が意味するものを知っていた。
 彼のいる未来でもまだ色あせず愛好されている機能。リアルタイム・マルチスケジューラである。
 複数のメンバーのスケジュールをリアルタイムで同期させる、グループワークのための機能だ。

 これにより、さらにスマートな進捗管理、
 まったく新しいパースペクティブからの統括的なタスク・スケジューリングが可能となる。
 さらにはメンバー以外に対しては、スケジュールに自動的な暗号化がかけられ、
 完全な秘匿性をもったプロジェクト管理が実現されているのだった!

 そしていま、『S』と記されたチームの進捗率が100%に達していた。
 おそるべきはiPadの進捗管理アプリケーショn。
 そしてこのアプリとガジェットを自在に使いこなす、勇者ミドのプロジェクトマネージメント能力!

(『S』だと? 別働隊がいたのか?
 彼らが待っていたのは――いや、増援――それよりも)
 フジクロの高速の「読み」の進行を、ミドがただ見逃すはずもない。
 ミドの折れているはずの「左腕」が動いた。
 袖口から何かがこぼれ落ちる。

(これは――)
 フジクロは発砲しながら後退する。弾丸は、転がるミドをわずかにはずれた。
 ミドの袖からこぼれたのは、小さな瓶。医師仮面の所持品であったか。
(――毒ガス!)
 瓶は床に激突して破裂し、無職の液体をまきちらした。
 刺激臭――粘膜に激痛。
 それでも一瞬のことで、フジクロは後方に飛んで影響を抑える。

 まだだ。フジクロには烏たちの《視点》がある。
 自然な流れで能力に意識を傾ける。

「ゆくぞ」
 池松が身をかがめた。
 みし、と、その全身が軋むような音を響かせた。

「櫛故くん! 防御を!」
「――了解」
 全身のあちこちに包帯を巻き、血をにじませた櫛故が応じる。
 鈴の音が響き始める。間髪をいれず、フジクロは銃口を池松に向けた。
 糺礼も、公安部隊もそれに倣う。

「射撃開始」
 銃声が連鎖して響いた。 弾丸が池松の体に吸い込まれる。
 が、なにか硬質な――いっそ金属的でもあるような、弾ける音が響いた。

「……すこし……空を飛ぶことについて考えた」
 池松の全身から、凄まじく何かが軋む音が響いていた。
 建物が壊れるような――あるいはまったく別のものに組み変わるような。

「やはり翼が一番だな。参考になった。
 思えばこいつの同類は――鳥取の砂丘で、毎日のように見ていた」
「ち……!」
 フジクロは舌打ちをしながらさらに射撃。やはりはじかれる音。
 彼は池松の伏せた顔に、ウロコ状の何かが浮かび上がったのを見た。

(これは!)
 弾切れがやってきた。フジクロはリロードをするべきかどうか、一瞬だけ逡巡した。

「これは――本当の、最悪の手段だ。
 なにしろ、自分が――何者だか――忘れることになると思う」
 池松の体が膨張した。
 細胞レベルでの身体制御。いや、DNAレベルの制御であっただろうか?

「英語も――SLGの会のことも」

 とにかく、池松の肉体は劇的な変化を遂げていた。
 背中が盛り上がり、翼が突き出した。コウモリの皮膜に似ていた。
 みるみるうちに力強く膨張し、ドラゴンのようなそれになる。

「だからミド、医師仮面、鈴木三流には伝えておいてくれ。
 池松叢雲は行方不明になったと」

「化け物め……!」
 糺礼が銃弾を放つが、当然のことのように、池松の全身に生えたウロコにはじかれた。
 ドラゴンの鱗を破壊できる武装があるとしたら――フジクロは考えた。
 逆鱗弾。矢塚一夜はどこだ? 連絡が途絶えている。

「See you again(「また会いましょう」という意味の英語)」

 それを最後に、池松叢雲は決定的に変化した。
 全身が三倍にも四倍にも膨張し、天井に達するほどの巨躯となる。

『AHHHHHHHHHHHHHHHGRAAAAAAAAA!!!』

 破壊的な英語が響いた。
 もはやそれは英語の体を、文法をなしていなかった。
 ただ、池松叢雲の名残の発音があるのみだ。
 櫛故の能力で防御していなければ、それだけで卒倒していかもしれない。

 それはドラゴンであった。
 深緑色の鱗を、海のような光沢に輝かせる、片腕の竜である。
 もとは池松であった彼は、翼をうち広げて飛んだ。

「――くそ!」
 フジクロはこの局面ではじめて焦った。
 烏を繰り出す。そのうちの何匹かは、体内に爆弾を仕込んである――
 だが、池松はぐるりと丸太のような首を巡らせた。

『GHAAAAAAAAAAAAAAAAA――AAAHHH!』

 視界の眩むような、激しい火炎が池松の顎から吐き出され、
 フジクロの烏と、それらが体内に仕込んだ爆弾を誘爆させた。

(魔人ならともかく……!)
 フジクロは床に伏せ、陽炎と豪火の彼方に池松を見る。
(正真正銘の化け物が相手とは、たまらんな!)

 飛翔する池松は片腕で勇者ミドと、医師仮面を抱え上げた。
 咆哮が轟き、その炎をこぼす口元の自嘲気味な歪みが、
 かろうじて池松叢雲のようにみえた。
 もしかすると、ほんの少しでも理性はあるのかもしれない。

 それを証明するように、勇者ミドと医師仮面を抱えた池松は、
 むしろ穏やかに翼を動かし、窓ガラスを砕いて、東京タワーから飛び出していく。
 東京タワーの敷地から抜け出る瞬間、その全身が虹色に輝き、ゆがんだ気がした。


 もはや英語の体をなさぬ、意味不明の咆哮が長く尾を引いていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「――ドラゴンか」
 路地の暗がりで、その男、闇裂練道はそれを見上げていた。
「珍しいな。こんな都会に」

 彼の足元には、十人余りの黒服の男たちが倒れている。
 公安部の制服であった。
 そして、一本足の烏の死体も一羽。

「まあ、なんというか、あれや」
 矢塚一夜は倒れた男たちの上に腰掛け、ごく軽い調子で話しかける。
「これだけ豪勢なイベントだったわけやし、
 花火的なもんと違うかな。運営側のサービスで」
「さて……どうかな」
 闇裂練道は一夜の気楽な物言いに、首を振った。
 片手でiPhoneを握っているが、その画面に表示されているタスクスケジューラでは、
 「M」と記されたチームの進捗率がちょうど100%になったところであった。

「俺はそろそろ行く。やつらも脱出に成功したようだからな。
 義理立てもこれで十分だろう。――が、お前はどうする?
 公安部からは違約金を請求されてもおかしくないな」
「そんなん踏み倒すわ」
 一夜は明るく笑った。
 公安部からの依頼を裏切ったことなど、気にも止めていない素振りだった。

 買収。
 それがこの男を降す、もっとも手っ取り早い手段であると、闇裂練道は知っていた。
 より正確に言えば、それはミドからの依頼であった。

「前金はもらっとったし、あんたから報酬もいただいて、
 まあこっちは大黒字ってとこやな。
 あとは、そう――まあ、また関西や未来や過去にでも帰郷してもええ」
 関西はいまもって滅亡から立ち直ろうとしているところであり、
 なおも中央政府の目の届かぬ暗黒地域であり続けている。
 そこに潜れば、容易には捜索されぬであろう。

「いずれにせよ、これでイベントは終了というわけか。
 だが――」
 闇裂練道は矢塚一夜に背を向け、歩き出す。

「この件は、ほんの始まりというところだな。
 二十年代において、SLGの連中がどうなっているのか興味はあるが――」
 一瞬だけ、練道は視線だけで一夜を振り返った。
 彼はすでにそこにいない。空間転移で去ったか、あるいは時間転移か。

「それは、俺たちが進めなければならない話か」



【フジクロ陸軍一佐:烏を全損。未来へ生還。】
【糺礼:翌日から現場復帰。沖縄にて別任務を開始。】
櫛故救世:入院。その後、沖縄旅行へ。】

【勇者ミド:生還。成功報酬で沖縄旅行へ。】
【医師仮面:半日の入院と応急処置の後、行方不明。
 沖縄でその姿を見かけたという情報あり。】
【池松叢雲:行方不明。
 沖縄上空を飛ぶドラゴンの目撃証言あり。】

【闇裂練道:行方不明。沖縄で目撃?】
【矢塚一夜:行方不明。沖縄?】
日谷創面:沖縄に行きたい?】



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