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第一回戦天界 天地信吾


名前 性別 魔人能力
天地信吾 男性 アクセル
神無月狂輔 男性 神のご加護
戸次右近大夫統常 男性 母より受け継ぎし覚悟

採用する幕間SS

なし

本文



「なんじゃこりゃああああああああ!?」
戦場に飛ばされた瞬間、天地信吾は驚きの声を上げた。

それも無理は無い。事前の説明では戦闘は地獄で行われると知らされていた。
しかし今、天地の眼前に広がる光景は、それとは程遠いものだったのだ。
それは例えるなら、まるで・・・
「まるで天国見てえじゃねえか、こりゃあ・・・」

そう、それはまさに天国。
ある所には、この世のものとは思えないような美しい色合いを持つ花が咲き誇る庭園が。
ある所には、下界にはないような、荘厳な建物が。
ある所には、贅の限りを尽くした料理とそれに見合うだけの美酒が。
そして至る所に、絶世と言う表現すら憚られる様な美女が居た。

普段の天地ならば、欲望の赴くままに美女と料理を食らっただろう。だが、今の天地にはそんな余裕は無い。
「ウギギギギギ・・・この状況を満喫したい・・・が!流石にそりゃあ無理・・・!相手の能力も分からんし・・・不意打ちで敗退なんて最悪だからな・・・!」
泣く泣く料理と女を諦め、敵の探索に乗り出した天地。
ところどころで、料理や美女につられそうになる天地だったが、
幸いなことに、敵はすぐに見つかった。大槍を持った、大柄な魔人が隠れもせずに歩き回っている。戸次右近大夫統常だ。
(よし、まずは交渉だ。三つ巴戦だし、味方を作るのは基本だよな!)
三つ巴の基本は同盟を組むこと。そう考えた天地は早速統常を味方につけようと、交渉を開始した。
「よう!お前は・・・えーっと、戸次右近大夫統常だったな!確か!三つ巴戦だし、折角だから手を組もうぜ!」
早速、統常に声を掛ける天地。
だが、統常にその声は届いていなかった。その時彼の頭にあったのは、これでようやく闘えるという、狂気にも似た喜びだけだったのだ。
「やっぱさあ、ここでお互い潰しあうってのは悪手だと思うんだよ。まずは手を組んでもう一人を殺してからだなあ・・・」
そんな様子にも気付かず、天地が話を続けようとした、次の瞬間!

「母上、我が武ご覧じ候え」

十数メートルはあった筈の両者の距離が一瞬で詰り、天地に向かって大槍が突き出される!
あまりの速さに、天地は反応できない!そのまま槍は振り抜かれ、肉を裂き、骨を砕き、天地に致命傷を負わせる・・・はずだった。
だが、実際には違った。圧倒的な速さで繰り出された突きは天地の服を切り裂き、そして、そこで止まっていた。
「・・・びっくりしたじゃねえか、チクショウ。」
天地の魔人能力、『アクセル』によって強化された肉体は、統常の渾身の一撃を無傷で受け止めたのだ。
しかしそれにもかかわらず、統常は動じない。
「ぬえええええあああああああああ!」
一撃で通らぬなら、通るまで攻撃するまでだ。そういわんばかりに、追撃を加えようとする。
それがまずかった。

再度突きを繰り出すため、一度槍を引こうとする総常。だが、その動きが終わるよりも早く。総常の体に天地の拳が叩き込まれる!
恐らく、総常自身にも何が起こったかはわからなかっただろう。総常の体は吹き飛ばされ、二十数メートルほど地面を転がり、そこで静止した。
無論、魔人といえどこれほどの衝撃を受けて生きていられるはずは無い。
また、この瞬間総常の魔人能力『母より受け継ぎし覚悟』も発動していたのだが、
天地の一撃を受けた体はもはや人の形を成しておらず、能力をもってしても動かすことは不可能であった。
戸次右近大夫統常、リタイアである。

「あーあ、交渉決裂か。少しでも楽しようと思ったんだけどなあ・・・」
ぽりぽりと頭をかきながら、少し残念そうに天地は呟く。
「ま、しかたねえ。俺一人で残った奴をやるかな。」
そして、もう一人の敵を見つけ出すため、天地は探索を再開した。

―――――――――

天地と総常が戦っていた場所から、およそ100mほど離れた物陰。
そこに、もう一人の対戦相手、神無月狂輔はいた。
彼の周囲には誰もいない。にもかかわらず彼はまるで、誰かに話しかけるように声を発した。
「神様、貴方の言うとおりまずは様子を伺いました・・・次は、どうすればいいでしょう?」
もちろん、それに答えるものがいるはずが無い。
だが、神無月には確かに聞こえるのだ。自分の声に答える、自分にしか聞こえない“神”の声が。
そう、この神無月も総常とはまた違ったタイプの狂人だったのだ。
そして、神無月はこの神を絶対的なものとして信じ込んでいる。それゆえ、先程の問いに対する答えに、神無月はひどく絶望した。

ーそうだな。とりあえずお前に勝ち目は無い。おとなしく、ギブアップしな。

「な・・・!?」
うろたえる神無月を無視して、“神”は続ける。

ー冷静になって考えて見ろ。槍を持ってたほうは、確実にお前より強かった。少なくとも攻撃力に関してはな。
そんで、もう一人のほうだが・・・あいつに魔人能力を使ったそぶりは無かった。つまりあいつは素で、あの攻撃を無傷で受けたことになる。俺らがあいつに傷を負わせることは不可能だろう。

ーもちろんお前も、俺の力があれば攻撃は効かない。だが、それも時間制限がある。お互い決め手が無い以上、やり合えば、やられるのはお前のほうだ。
「そ、それでも、探せば何か、武器になるようなものがあるかも・・・」
ーそれも無い。見たところ、ここには人に害があるようなものは何も無かった。多分、ここはそういうところなんだよ。
厳しい試練や、苦しみ、修行を求めるものに対して、幸福を与え続ける地獄。だから、ここに武器になるような物は無い。
「そんな・・・でも、だけど・・・神様なら、何とかできるでしょう!?今までだってずっと、僕を導いてきてくれたんだから!」

答えを聞いてもなお“神”にすがる神無月。それを諭すかのように“神”は少し、優しげな声で神無月に告げる。
ーいいじゃねえか、負けたって。周りを見てみろよ・・・地獄とは思えない、まさに天国じゃねえか。こんなところで負けれるなんて、むしろラッキーだぜ?
「でも、でも・・・」
ー心配するな。俺が言うんだから、間違いねえ。今までお前を導いてきた俺が、言うんだからな。
「うぐ・・・うう、うぅぅぅぅぅぅぅ!」
頭を抱え、その場にうずくまる神無月。
彼はしばらくそうしたままだったが、やがて顔を上げ、口を開いた。その目には、一種の覚悟のようなものが宿っていた。
「・・・神の言葉に従い、僕は・・・神無月恭介は、ギブアップを宣言します・・・!」

――――――――
こうして、天界での戦いは終わった。
余談ではあるが、勝者であるはずの天地は試合後、
「あいつが勝手にギブアップするから料理食い損なったじゃねえかー!クソがー!」と、勝者の中では最も怒り狂っていたという。

〈終わり〉


最終更新:2012年06月14日 23:36