第一回戦阿鼻叫喚地獄 二三一


名前 性別 魔人能力
二三一 男性 機械仕掛けの恋人(マシーナリーラヴァーズ)
千坂ちずな/きずな 女性 震える舌/天国まで百マイル
右手首の怨念 女性 右手首の怨念

採用する幕間SS

機械仕掛けの恋人
(三一が自分の能力をしる)

本文

二三一は戦場となる阿鼻叫喚地獄にいた。
周囲には古今東西あらゆる場所から集められた拷問器具の数々の姿がみえる。
「あれはファラリスの雄牛。あちらには鉄の処女。実に悪趣味ですね。ご主人様」
ゴーグルから声が聞こえる。三一の魔人能力により
「そうだね」
三一もそれにうなづく。
拷問器具とともにところどころに地獄の鬼たちに攻め立てられる亡者たちの姿が見える。
実際、見ていて気分のよいものではない。
「ですが、この地獄は利用できるかもしれません」
三一の能力は機械に愛される能力である。
ならば機械仕掛けのものもおかれているであろうこの戦場は三一にとっても都合がいい。
「もっとも、対戦相手の方もそうなのかもしれませんが」
対戦相手の片方の能力は不明だ。ここにある拷問器具を利用できるような能力かもしれない。
「どうでもいいや、ぶった切ろうぜ」
別の場所から声が聞こえる。ブレードだ。
「斬っていいんだろ。早く斬ろうぜ。早く」
このブレードも三一が作ったものであるのだが、余りも威力が高すぎて日の目を見ることがなかった。
今回自分が活躍できる機会ができて
「まったくあなたのような粗暴な考えでは生き残れません」
「うっせえあ。いつも三一と」
「二人とも喧嘩しないで」
これはいつもの部室と変わらないのではないか。いや離れられない以上もっと面倒な気がする。
そう思った時、目の前に一人少女の姿が見えた。白髪で毛先が髪に届くぐらいのおかっぱ頭。全身に無数の傷がみえる。歳は三一よりも年下。
参加者の一人であり対戦相手の一人である。名前はたしか千坂ちずなとかきずなと言ったか。
「お兄さん、私と一緒に遊びませんか?」
少女が言う。
「遊…?」
戦場に不釣り合いな少女の言葉に戸惑った様子を見せる三一。
その間にも笑みを浮かべたまま少女が近づいてくる。
「危ないです。ご主人様!!」
気がつくと少女が三一が接近している。いつの間にか少女の手には刃物。
そしてそれを三一の方にめがけて振り下ろそうとする。
「うわっ!?」
三一が横へ跳び、転がりながらこれを回避。
「オイオイしっかりしてくれよっ!お前が死んだら誰が私を使うんだよ!!」
ブレードも叫ぶ。
なお彼らの声は少女には聞こえていない。能力によるもので
「…何で逃げるの?」
不思議そうな表情を浮かべ、少女が言う。
「私と遊ぼう」
少女が三一に追撃の刃を振るう。
暗殺者として鍛え上げられた動き。
所詮一高校生にすぎなかった三一がよけ続けられ様なものではない。
「上です」
ゴーグルの声が聞こえる。その声に従い三一がブースターを起動し上空へと飛ぶ。
いくらきずなでもここまでは追って来れないだろうと考えたからだ。
ここから反撃に移ればいい。
「どうして遊んでくれないんですか」
少女が周囲にあった拷問器具の一つを持ちあげ
「早く生き返ってお姉ちゃんを殺したあいつを殺さないと」
力任せに三一に投げつけてくる。
「うわっ」
三一はこれも回避する。
「このままだとじり貧です。ご主人様、反撃を」
「う、うん」
拷問器具を回避した勢いのまままっすぐ少女の方に突っ込む。
そして急速接近し、少女に向けて刃をふるう。
自動車並みの速度だ。いかに少女の身体能力が優れていようとも簡単にはよけきれない。
そのまま振りおろし少女の左腕を切断する。
「ああああ…」
少女が嬌声を上げる。その顔に腕を切断された苦痛の色はない。
それどころかその恍惚とした表情は快楽に酔っているようにさえ見える。
「オイオイなんだよあれは」
「おそらく苦痛を快楽として認識しているのでしょう」
少女が右手で左手の切断面を弄り始める。なにか棒のようなものが見え始める。
少女の魔人能力か
その時何か嫌な予感がした三一は間一髪で再び上空に飛ぶ。
「鬼無瀬時限流 大目録…」
一瞬の静寂ののち
「雛菊刈り!!」
先ほどまで三一がいた場所に斬撃が走る。拷問器具が薙ぎ払われる。そこで責めたてられていた亡者と地獄の鬼も一緒だ。
もう少しその場にいれば三一も同じようになっていただろう。
彼女の全体重が乗せられた一撃。
これぞデイジーカッターにもなぞらえられる鬼無瀬時限流大目録雛菊刈りである。
「外れてしまいましたか」
姿を現したのはこの戦いのもう一人の参加者右手首の怨念である。隙を窺っていたのだ。
再び刀を鞘に戻す。
「まあよいでしょう。一撃虐殺こそ鬼無瀬時限流の真髄。望むところです」
「…鬼無瀬時限流」
七から聞いた事がある。「一撃虐殺」を標榜する流派だ。
表向きは途絶えたとされているが、影では伝えられており希望崎にも使い手が存在する。
「恐ろしい相手ですね」
「そうだね」
「一見それほどのものでないように見えますが、さらしで巧妙に課されていますね。隠れ巨乳と見ました」
「何の話なのっ!」
ゴーグルが冷静に分析結果を告げ、それに突っ込みを入れる三一。
「九十様とどちらが大きいでしょうか」
「どうでもいいよそんなこと!」
「巨乳剣士ですよ。ご主人さまは気にならないんですか」
「ここは戦場だよっ!」
さらに突っ込みを入れる三一。
なお周囲にはゴーグルの声は何も聞こえていないため一人でわめいて様にしか見えない。
きずなが傷口からとりだしたハンマーを怨念の頭部にふるう。空中にいる三一よりも攻撃しやすいと見たのだろう。
怨念が意識的に身体を非実態化させそれを透過させる。
そして反撃の体制に移る。
「鬼無瀬時限流初伝 …抜駆逐」!!
鬼無瀬時限流における初歩の抜刀術であり、文字通り「抜くと同時に駆逐する」ほどの威力を持つ技である。
怨念の剣が絆を斬り裂く。直撃。
だが、きずなはまだ戦闘を続行させる。
心臓や肺を打ち抜かれても数分は戦闘可能な程の生命力を持っているのだ。この程度では彼女は止まらない。
右手首の怨念に再びハンマーをふるう。
今度の攻撃は直撃する
右手の怨念は攻撃の最中は全身を実体化させているため、カウンターを防ぐことも出来ないのだ。
そのまま怨念の頭部が打ち砕かれる。
倒れ伏す怨念。
「さ…さあ、つ・・次はお兄さんの番だね」
きずなが告げる。快楽におぼれる顔は変わっていないが、苦しそうにも見える。
三一がブースターをフル稼働させ、きずなに特攻する。
今度はきずなの首を切断。
こうして勝利したのであった。


最終更新:2012年06月19日 10:48