「おおわが友ダンジョーよ!とうとう我々の力を示す時がやってきたな!」
「ああ」
「それにしても鏡の世界というのはそっけない場所だな。大イベントであるからにはもっと華々しい舞台でやるものだとばかり思っていたのだが」
「予選だからな。凝った舞台は本戦まで出さねえだろう」
「ところでダンジョーよ。なぜおれはぐるぐる巻きにして拘束されているのだ?」
「おまえにちょこまか動かれると激しく邪魔だからだ」
「ダンジョー!なぜそのようなことを言うのだ!おれと肩を並べて戦ってはくれぬのか!我々の友情はその程度のものだったのか!おれはお前の盾になることすら辞さない覚悟だというのに!おれの『抹茶ボカン』を活かすつもりはないのか!」
「それ使ったら負けだろうがこの自爆バカ!」
予選用のそっけないのっぺりとした空間「鏡面闘技場」の一角で言い争っているのは二人の男たちであった。
一人は太刀を担いだ長身の男。ボケかツッコミかで言えば天性のツッコミスト特有の苦労人オーラを纏っている。彼の名はダンジョー。『七巻半』ダンジョーの異名を持つ魔人剣豪である。
もう一人は緑の髪に緑のサングラス、服装も全身緑で固めたイケメンであった。天性のボケ特有の残念なイケメンオーラと謎の爽やかな香りを全身から振りまきながら全身ロープでぐるぐる巻きにされて転がっている。彼の名はヒラグモ。見ての通りのアホであり、困ったら自爆をする癖があるアホである。ちなみにダンジョーの意見を聞かずに勝手にコンビとしてイグニッション・ユニオンにエントリーしたのも彼である。
「ダンジョー!何故だダンジョーオオオオ!!!俺を戦わせてはくれぬのか!いくらお前でも魔人同士の戦いで一人は危ないぞ!」
「自爆する気満々のお前を連れて行く方が危ないわ!そこで寝ててくれマジで!頼む!」
「うおおおおおお!ダンジョーオオオオ!!!」
大絶叫するヒラグモを置いてダンジョーは戦いに向かった。
「あー、待たせたな。相棒がアホでよ」
「いや、構わないよ。一人だけでいいのか?」
「二対一で構わん。そっちだって後ろのお嬢ちゃんはあまり荒事が得意なようには見えないが?」
「それもそうだな…ゆきは下がっててくれ」
「は、はい…!」
ダンジョーが対面したのは『運命の機織り達(フェイトウィーバーズ)』。ダンジョーは目の前の二人組が何者かは寡聞にして知らなかったが、剣を持った男が前衛で、後ろに控える少女が何らかの魔人能力で支援を目論んでいる、というのはわかった。その上でダンジョーはゆきを狙うようなことはしない。正面から挑み、正面から打ち破る。それが魔人剣豪、『七巻半』ダンジョーの流儀だ。
ダンジョーと竜也が各々の得物を構える。ダンジョーは太刀を中段の構え。竜也は右手に長剣、左手にナイフ。ゆきがいつでも能力を発動できるように構える。
「あー、チーム『ダンジョー&ヒラグモ』、万足流剣術皆伝、『七巻半』ダンジョー」
「…『運命の機織り達(フェイトウィーバーズ)』、我流、糸霧竜也」
いざ、尋常にー
「「勝負!」」
ダンジョーの太刀がうなりを上げて襲い掛かる!竜也は素早く能力を発動。
『運命の糸切り鋏(シザーズ・オブ・モイライ)』。虚空でダンジョーの太刀が弾かれる!
「む、防御系の魔人能力か。ナイフを動かしていたな。それがトリガーか?」
更にダンジョーの連撃!恐ろしく速く、鋭い!竜也はからくも剣で受け、能力で弾く。
(なんてパワーだ!強化系の魔人能力か!)
驚嘆する竜也に対してダンジョーは言い放つ。
「俺の魔人能力は『君は七巻、俺は八巻』。必ずおれの戦闘力は敵を上回る…!おまえもなかなかやるが相手が悪かったな糸霧ィ!」
敵に対してその戦力を上回るようにパワーアップする魔人能力。放火魔だろうが忍者だろうが悪魔だろうが鬼神だろうが正面から力で上回ることが可能となる、恐るべき魔人能力!
(クソッ!予選からこんなのに当たるなんて!)
竜也が歯噛みするが、不運を嘆いても仕方がない。竜也には仲間がいるのだ。
☆ ☆ ☆
「ぐっ!」
とうとう太刀が防戦に徹していた竜也をかすめる。
(竜也さんが危ない!)
ゆきの危機感に呼応して、『無限葉の白詰草(インフィニット・クローバー)』が蠢く。が。
(あれ?ここで発動させたら何が起きるんだろう?)
ゆきは周囲を見た。予選用の何もない「鏡面闘技場」。なにもないのっぺりした床。天井なのかなにもないのかも判然としない、天候などという概念がなさそうな空。向こうの方に行けば場外を示すラインがあるのだろう以外は本当に何もない。落下物も飛来物も悪天候も自然災害もありそうにない。
が、しかし。
『無限葉の白詰草(インフィニット・クローバー)』は極めて強引に「不運」を呼び寄せた。
「むっ!」「むむむ!」
竜也の『運命の糸切り鋏(シザーズ・オブ・モイライ)』が横から伸びてきた糸を絶つ。
ダンジョーの太刀が横から来た謎の存在を切り捨てた。その正体は!
「NPCジャナイデンガナ!アー!NPCジャナイデンガナ!」
「あれは…『NPCじゃない太郎』!?なぜここに!?」
浮遊国家エプシロン王国に生息するNPCじゃないいきもの!NPCじゃない太郎!NPCじゃないのでNPCがいないはずの鏡の世界に現れるのはおかしくはない!おかしいがルール違反ではない!
『無限葉の白詰草(インフィニット・クローバー)』による因果関係無視不運誘因によって次々と現れてはダンジョーと竜也に襲い掛かる!一体一体は弱いが量が多い!
「小癪な!」
「「「NPCジャナイデンガナ!アー!」」」
太刀に次々と切り捨てられるNPCじゃない太郎!
「あぶなっ!」
「「「NPCジャナイデンガナ!NPCジャナイデンガナ!」」」
『運命の糸切り鋏(シザーズ・オブ・モイライ)』で次々と逸らされるNPCじゃない太郎!竜也に向けた攻撃を無力化されたNPCじゃない太郎が矛先を次々とダンジョーへと変える!運営の手抜き地形が生み出した攻防一体のコンボ!圧倒的な個人戦力に対して物量で対抗する!
「おおっ!これは好都合だ!いいぞゆき!」
「は、はい!」
続々と湧き出してはダンジョーに襲い掛かるNPCじゃない太郎!しかし!
「残ッ!」
「「「NPCジャナイデンガナ!アー!」」」
まとめて叩き切られるNPCじゃない太郎!
「念ッ!」
「「「NPCジャナイデンガナ!アー!」」」
蜘蛛の子を散らすように吹っ飛ぶNPCじゃない太郎!
「だったなあ!」
「「「NPCジャナイデンガナ!アー!」」」
ことごとくシリアルキルされるNPCじゃない太郎!鎧袖一触!恐るべし!『七巻半』ダンジョー!圧倒的!
「俺の『君は七巻、俺は八巻』は敵対者の数を問わない…!敵が増えれば増えるほど俺は強くなるぞ!」
「嘘!?」
「マジかよ!」
「正直俺も驚いている!」
どれほどのNPCじゃない太郎をけしかけてもダンジョーの打倒は不可能!むしろどんどんとダンジョーはパワーアップしていく!
そしてダンジョーが跳んだ!NPCじゃない太郎の群れを軽く飛び越えて竜也を襲う!
剛剣一閃!かろうじて受けた竜也が吹き飛ばされる!もはや対抗は不可能!
「悪いな!予選で当たってしまった不運を―」
竜也に太刀が突き付けられたその時!
「うおおおおおおおおおおおおダンジョーオオオオオオオオオオオオ!!!!!!君の友ヒラグモが助けに来たぞおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「帰れえええええええええええ!!!!!!というかどうやって縄を抜けたァ!!!!」
「いざというときのために縄抜けを練習してい「「「NPCジャナイデンガナー!」」」うおおおなんだこいつらー!?」
「何しに来たんだお前!!マジで帰れ!!!!!」
現在進行形でわらわらと増え続けるNPCじゃない太郎に追い回されるヒラグモ!逃げ足は速いが戦闘力はあまりない!そしてそのアホの視界に入った!
ゆきが!
「なんだか知らんが貴様だなああああ!おれの『抹茶ボカン』を喰らえ!」
NPCじゃない太郎をトレインしたままゆきに向かっていくヒラグモ!その身体から放たれる謎の爽やかな香りが強まる!
「これは…お茶の匂い!?」
ヒラグモの魔人能力『抹茶ボカン』は全身を抹茶に変え、そして体積を瞬時に大量に増加させる…つまり抹茶爆発を起こす能力である!すなわち自爆!殺傷能力は、抹茶なのであんまりない!24時間たてば元に戻るが、イグニッション・ユニオンのルール的には当然戦闘不能!自爆である!躊躇なくそれをしようとしている!アホだ!アホである!爆発すれば何とかなると思っている!爆発オチ原理主義者!
「「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」
竜也とダンジョーは同時に駆けだした。片や、相方を守るために。片や、相方をぶん殴って止めるために。
勝負は突如として風雲急を告げる!此処は今、DANGEROUS!
ダンジョーがヒラグモの横にたどり着いた!『君は七巻、俺は八巻』で強化された身体能力は瞬間移動と見紛うほどの高速移動を可能とする!そのまま拳を固めて殴り飛ばさんとする!
「こんの、バカやろ―」
そこではたと気が付いた!
(今の俺のパワーでぶん殴ったら…ヒラグモが死ぬ!)
当然手加減ができないわけではない。しかし、今までにない強化状態にあるダンジョーは、そのかつてない力の制御に、一瞬、ほんの一瞬戸惑った。
その一瞬。
『運命の糸切り鋏(シザーズ・オブ・モイライ)』!
その、糸を、意図を断つ!
ダンジョーの拳は!虚空で弾かれた!『抹茶ボカン』阻止失敗!
そして!
抹 茶 爆 発 !
ボカーン!
抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶
抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹抹茶抹茶抹茶NPCジャナイデンガナ>(‘ω’)抹茶抹茶
抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶
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抹茶抹茶抹茶抹茶(; ・`д・´)<ゆきー!大丈夫かー!抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶
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抹茶抹茶抹茶抹茶( ゚Д゚) <NPCジャナイデンガナ抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶抹茶
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こうして運命の機織り達(フェイトウィーバーズ)は抹茶まみれになりながらもなんとか本選進出を決めた。
ヒラグモは相手の強さを褒め称えた。
ヒラグモがこんな感じなのはいつものことなのでダンジョーは諦めたのだった。
最終更新:2021年06月13日 19:40