まったく……この国には神様が多すぎて困るね
──────ある神父の言葉。
◆◆◆◆◆
──────僅かな薄曇がたなびく輝くばかりの蒼。
春の風見湾に吹いた柔らかい潮風にウミネコが鳴いた。
降り注ぐ太陽の恩寵がその島を白く染めて極東の国らしからぬ全貌を明らかにする。
聖ゲオルギオス────ケルディム────メタトロン。
数多の聖人や天使の彫像たち。
その恐ろしいほどの聖性を前にしては、見る者全てにヨーロッパの異郷を幻視させる。
若葉緑に刳りぬかれた石畳の小路はさながらラビリンス。
ヴェネチアを彷彿とさせる絢爛華麗な白亜に厳めしい赤煉瓦造りのアーケード。
糸杉の並木を辿れば現れる黄金の十字架──────磔刑のイエス様。
花崗岩と煉瓦で作られた大鐘楼はまるでお伽噺の城。
──────これぞまさに後期ルネサンス様式の王道。
──────そう、ここが東洋一の大伽藍、
国内唯一の教皇庁直轄教区──────聖カスティエル女学院。
過去、何人もの聖人たちを輩出した日本有数の全寮制ミッション・スクールである。
その学園で最も天に近いとされる場所……。
青銅の十二使徒が集う生徒寮の前には不純物といえるサーマルカメラと無水エタノールの消毒液。
その鉄扉の向こうは何も飾らない茜色の長い廊下と無機質な扉たちが延々と続く。
半ば越したとある扉に貼られた真鍮のプレート──────2564号室。
居室の置時計の刻む音。
歴史ある緋色の壁紙に巧みな意匠のマホガニー。
円卓テーブルに載せられているのは校内リストランテから宅配した焼きたてのカンパーニと熱々のゆで卵だ。
朝刊を広げつつ、彼のその片方しかない右眼は忙しく動き、スマホを弄りながら、ウェブニュースを眺めること。それがこの男の毎朝六時半から日課だ。
肘掛け椅子にまるで賢い犬のように座る彼は朝の鐘の音に置時計をチラリ見る。
二枚のカーテンの白い薄物を降ろした窓から強い日差しが差し込み、そのいかつい顔を更にいかつく強調された。
彼の名は城華獅郎──────聖カスティエル女学院常駐のプライベート・ポリスである。
彼の人差し指が左瞼を断ち切るように走る細い傷痕をつうとなぞり、朝刊第一面の優勝賞金五億円のゴシック活字に獅郎は首をかしげた。
『……ったく、この日本は一体どうなっちっまったんだ』
朝食をモグモグと噛みしめながら彼は今度開催される『イグニッション・ユニオン』に懐疑的な意見を洩らす。
『幾らが不景気だからってよぉ、大手の動画配信サービスがゴールデンタイムにデスマッチの生中継とかぁ、普通やる?これちょっとやり過ぎじゃない?』
エスプレッソを啜る彼の視線の先に少女の白い顔があった。
『大昔の王侯貴族たちはよく奴隷同士を闘わせて楽しんだというが……』
マグを傾ける少女の垂れた頭をあがる。
『別に良いではないか?手足をもごうが首を刎ねようが別に死にはしないし。鬼魅が悪いか?』
『悪趣味な道楽だよ。刃物・銃・向上薬、ミサイルに戦車って、どんだけ何でもだよ?二人鼻血出るまで、殴り合えっての。それが一番平和。大金も絡むんだからな、後腐れない』
そう言って彼は新聞を叩く。
少女の小さな黒目がち眼が見返す。
『コレに出るのは、ヤか?』
『いや、相手が戦車とか戦闘機とかだったらヤかな。思ってたのとなんか違うし』
少女の顔をまじまじと見た獅郎はため息を一つ吐く、
『まぁ……とりあえず毒味は俺。指図には従う。一回でもチョンボや抜けがけはナシ。したら、それきっりだぞ』
『了解。でも、全部食べないでよ?』
彼女こそ、この城郭の主────“鬼宿桐”。
創立一三五年の歴史を有する聖カスティエル女学院、初の飛び級。
その血胤も財閥と、字義通りの子爵令嬢。
鉄の教師陣たちすら自ら道を空けて歩くそのプレッシャーとオーラには、聖カスティエル標準装備である純黒のセーラー服も数段映える。
黒々した濡羽色のロングストレート。すらりと伸びた鼻梁。
青白い肌に、それだけぽつんと浮かんだ唇は紅い花弁。
四肢と胴の作りも生々しい。その気になれば化粧一つで、超一流の娼婦にも、氷のような貴婦人にも変身するだろう。
あまりにもあんまりなスタイリッシュで完璧すぎる16歳の外貌は何処をどう観察して見てもお姉様といわれてもまったく疑問がないほど。むしろ女子大生である。
この烈女が学院に降臨した当初も上級生とのトラブルが度々あったものの、事の顛末は相手側の両親たちが彼女の靴の裏を舐めに実家まで赴いたそうな。
終戦後、彼女に跪いた上級生たちが自棄でつけた渾名は“十六夜様”。
それは紛れもなく彼女が誇り高い帝王の血統の証明であった。
『ところで、桐。この大会の放送料。単価幾価だ?お前知ってるだろ?』
獅郎は頤に指をあてて考えている。
彼の頭の中で電卓を弾く作業は、桐の一言が即座に中断させる。
『まっこと悪いタイミングだったが……4600万ドル。東京オリンピックの中止で少々アレだったが、まぁまぁ。ネット配信も────』
少女はくすりと笑って俯き、甲斐甲斐しい仕草で不謹慎に笑った────その時だ。彼女に異変は起こった。
『中止って、おいおい。冗談でも怖ぇこと言うな……おい? ?何?』
獅郎は直ぐに彼女の異状に気づいた。
彼女の手にするマグの中身がグツグツと沸騰する音が鳴りはじめていたのだ。
獅郎は、あ、まずい。と思った時にはもう時すでに遅し。
次の瞬間、桐の衝撃に上体を持っていかれてしまう。
『痛痛……』
テーブルごとひっくり返された獅郎が両手を動かそうとすると、びん、と手首が引っ張られ動かせない。
眼に見えぬ巨大な力に手首を凄まじい力で握られ、彼の全身が硬直する。
すぐさま腹の上に乗られると彼女の下半身が重しになって、獅郎は身動きが取れなくなった。
『……おい、まさか……早すぎる』
桐は彼をギュッと抱きしめ、顔中にキスをする。
そして彼女のその美しい線指が伸びかけのヒゲを撫でていく。
高熱で意識が朦朧としているようだが、桐は嬉しそうにクスクスと笑う。
『はぁ、はぁ……獅、郎……』
彼女は制服のスカートをめくりあげた。
発情のせいで朱に染まる頬。その下着の色は黒。
それを指で引っかけそっと降ろせば、すでに下肢から滴らせる愛液が、縦スジに沿って下着にいやらしい沁みをつくらせている。
『……ぁぁ……抱いてたもう』
──────しかし、彼女は世間巷に溢れてる変態破廉恥漢やレイプ魔、偏屈な欲求不満女たちとは違う。
『コイツも……もう納まりそうにない……』
──────その答はスカートの中から現れる血管が浮き上がりほど剛直した曲線にあった。
その硬度────色────形。申し分なし。
──────なんということだ!
彼女の黒い紐の食い込む薄めの翳りの下には、お腹につくほど反り返らせ逞しく屹立する生殖器官があったのだ。
まさに賢しらな二次の薄い本的願望なんて吹っ飛ぶ激しい劣情。
なんていやらしくも美しい造形だろうか。
先端の鈴口やカリ首があるが、男のモノとも違う名器である。
『舐めて治して欲しいなぁ……♥️』
鬼宿桐──────彼女はαだ。
♂ ♀
──────それは、神様も知らない。
──────男と女。
たった二つだけだった事柄が、どうしてこのような最重要かつ難しい状況の頂点に達するに至ったかは誰にも度しがたく説明しがたい。
──────時は2010年。
性科学者アダム・グラス博士と異常心理学の権威エリック・クリプキとの共同研究によって、人間は二次性徴に達して性成熟を迎えると、ある変化が起こることが発見された。
この世紀の大発見により世界の性は男・女から更にアルファ、ベータ、オメガへと区別されるようになったのだ。
────“α”
千年王国────ハーレム────帝王の絶対君主。
人の上に立ち、権力を行使する使命を持つと言われている人類生態系の頂点。
皆、中学の保健体育の授業で聞いたことはあっても、実際に御目にかかるなんて事はまずないだろう。
────“β”
これを通常の人間とする。人類社会の歯車。
殆どの魔人たちも例外なくここに入る。
────そして、“Ω”
繁殖に特化し、それ故に蔑まれる人種。
α専用の家畜。公衆便所。総受けであるのが通例。
世の中まだまだ分からないこと知らないことたくさんあるが、要するに世の中は大多数がβで、そこに一握りのαと、そして一つまみ程度のΩが居る。
『オメガバース』────それは、性の第三世界。
それは、つまり、そう。
この『DANGEROUS』でも変わりなく存在するのだ。
◆◆◆◆
まるで業火に包まれているような、山吹色の輝き。
それは彼女の解き放つ闘気の幻炎だ。
これがこの惑星の生物種の頂点に立つ霊長類の姿なのだ。
──────鬼宿桐。
彼女は性が成長途中で変化してしまう世界でも稀な変異型αだった。
例え魔人と生まれていても、αとβ、そしてΩは全く別者。別の生き物だ。
この破壊力も実は性欲から来ている。
故に。偶然か運命かこの少女にはある鬼の血が流れていた。
彼女のその能力も精も────正も────生も────性も。
『──────熱いよ』
──────能力“鬼子母神大殺界”。
鬼子母神とは、お釈迦様によって改心した人喰いの女鬼のことである。
彼女は神へと昇天する前に沢山の子供を成していた。
その内の一鬼が彼女の先祖であったのだ。
元来、神というのは善い面と悪い面両方持っているのが普通。遍く両儀的なもの。
故に、誇張なし。文字どおり神。真の神。
彼女の内には我慢することのない暴力とセックスが同居し、彼女に尋常ではない発情期を引き起こさせるだ。
だが、当人の望まぬ発情は目も当てられない悲劇的結末を必ず迎える。
どうしても彼女を満足させて、他の人間に迷惑をかけさせない者が要るのだ。
──────そして、αと性交できるのはΩだけ。
──────そう、此処に居る城華獅郎だけだった。
『ちょっ、ちょっと…やめろ…お前今から学校に行くんだろ!?……は、放せ』
『ヤダ』
彼女の大胆な舌が入ってくる。
柔らかく優しいながら、濃密で執拗で、貪欲に快楽を求める舌使いは彼の唇をふさいで言葉にならないその言葉さえ食い尽くす。
唾液をを指で掬い、顔にかかる乱れた髪を整えて微笑む。
『今日は休む……』
意志を喪い欲情に濡れた瞳には妖しい光が七色に光る。
『飛び級と留年両方するつもりかよ……!?』
彼女はαの本能で完璧に正気ではなく、這って逃げようとする獅郎に取り押さえるとまるで紙のようにシャツを破いてしまう。
『別に、いいわよ……構わないわ』
懇願の混ざる強い眼差しは切なさを増した。
彼女の中のαの本能がΩの彼を抱きたい、孕ませたいと訴えて彼女の脳内でとぐろを巻いているのだ。
『抱いてたもぅ……抱いてたもっ……』
何故なら、それかαという生き物だからだ。
裸の胸や肩を無言で撫でられ、彼はくすぐったさに身を捩りながら呆れる。
『……ちょっとだけだぞ。さっさと脱げ』
熱に淡く浮かされた瞳がのろのろと彼を見て、きっと混濁している意識のままに、頷いた。
彼女は獅郎の拘束を解いた。
『……なんて』
すぐさま彼はダイニングに置かれた電気ケトルの熱湯を浴びせかけ、更に追い打ちと銀のフォークで桐の太ももを刺した。
が、庇いもせずに熱湯を浴びた顔には火傷の一つも負ってはいなかったし、刺したフォークは刺さらず折れた。
『ええいっ、クソッ!どんだけ硬くなってやがる……ッ!』
『阿保……』
取っ組み合いは振り出しに戻った。
彼女の鬼手からは何人も簡単には逃れられないのだった。
この平日朝の逆レイプまがいの情事は傍目には殺し合いにしか見えず、されど命懸けの闘い。
彼らαとΩには安全なセックスなど存在しないのだった。
『……捕まえたぁ』
再び組み敷かれた獅郎の鼻先に触れるくらいに近づく生殖器。
ぐいぐいと顔面へと押しつけられたそれは精を吐き出すこと無く、先走りに濡れビクついている。
獅郎の鼻先に絡みつくのは、もう誤魔化せないほどに濃くなったαの匂い。
しかし、喉につかえそうになる肉棒を彼はギリギリ頬へと逸らして、受け入れを拒む。
『逃げるな。ねぇ、もういいでしょ?……舐めてよ』
桐の指が彼の頭を後ろからがっちり掴み、ジワジワと握りしめた。
甘えるように言われ、獅郎にフェラチオを強請る桐。
『舐めろ』
我慢の限界を越えた彼女の瞳の奥で暗い炎が点火する。
今度の桐はもはや一切の遠慮は無用八つ裂きにしても構わないと彼に傷が鋭利な爪を突き立てた。
普通なら頭蓋骨が卵の殻のようにグシャグシャに砕ける凄まじい握力でだ。
『……チィィ』
その圧力に負けて頭皮は裂けて血を流しはじめた。
流血は獅郎の徐々に視界を汚していく。
『ク……ソっ……このっ……もがッ!』
最後の抵抗をする獅郎の口を割って桐は生殖器の侵入を成功させる。
嘔吐く彼はみるみる湧きあがる涙と自らの出血で紅く濡れそぼつ。
今、屈強な中年男性が女子高生に口を犯されている。
桐はその様を見て、笑い、興奮した。
『あぁ!獅郎!やっぱりお前の血の香は昂る……♥️』
男性としての当然の刺激に脳髄に甘い痺れが走る。
彼の手を引っ張り、自分の乳房に押し当てる。
『ンんゥ~~っ』
獅郎が乳首を弄くるのに反応して桐が更に身体をくねらせた。
『あっ、…いいよ……もっと……』
誉めるように獅郎の髪を掻き抱く。既にその両手は彼の真っ赤だった。
そしてまた淫らに腰をくねらすから、獅郎の悲鳴が喉の奥から生まれる。
叫びは次第に大きくなり抑えられなくなっていく。
口から引き抜いた亀頭へ頬に唾液混じりの腺液を拭う。
すかさずもう一度咥えこんで、頭を桐の股間へ突き出す。
ずるり、と唇を突き抜けた屹立が喉にまで届く。
『…ッん、ぅ……っ、あ゛ぁ゛……』
桐の抜き挿しの度に口腔に当たる角度が変わってぞくぞくする。
彼の口元からもねっとりと涎が糸を引き、彼女はねっとりとした快楽の底へと呑み込まれた。
『は────っ、は────っ、は────っ、は────っ!』
頷くように頭を振って、何度も口腔へ燃える陽根を打ちつけては獅郎の喉を貫く。
男の犯すのはふたまわり年下の少女なのに、その腰つきは女を誑して食い物にする悪い男のように狡猾で淫靡だ。
『ダ……メっ……だめぇ……っ……もうっっ!』
はちきれそうな亀頭。
彼が唇を引けば、唾液にぬらぬらと光る竿がグロテスクに痙攣する。
『アっ……ぁ……あァ……はァ…ィィ♥️……ぁ……ア──────』
限界を迎え、彼女の胎内で陰嚢が脈打ち痙攣する。
αは女性でも、発情期に入ると精子を造り、勿論射精もできる肉体構造だ。
『ん────んっ、ふぅぅっ……!』
喉の最も深い場所を犯した先端から、濃く濁った種がびゅくりと噴き出す。
獅郎は無心に唇を吸い立てて、果てのない射精を喉奥に受け入れた。
『はぁっ、あぁ……っン、んぁ、あはぁぁッ……!』
まだ射精の続いている逸物を桐は制御出来ず音をたてて口から外れ飛び出した。
『うわぁ……!』
逸物が大きく反り返ると獅郎の額から旋毛までザーメンが汚した。
白く糸を引いたどろどろと粘る泡まみれの撒液は寒々しくも艶のある音であった。
『うぁ……アっ、ハハハ……』
──────その時である。
彼女のフェラチオの興奮に達った瞬間、彼女の拘束が弱くなったのだ。
『よし……ッ!』
素早く獅郎は桐の顔面騎乗を潜り抜ける。
──────説明しよう!
先ほどまで男根を咥えさせられていたこの男は決して彼女の性奴隷でもましてや肉便器でもない。
犯しても犯しても倒れない。プライベート・ポリスの名は伊達じゃない。
『ゲホッゲホッ……オエェッ!』
絨毯を蹴って立ち上がり、彼は飲み干した全てを吐き出した。
彼女がエクスタシーに目を剥いたのもつかの間、精液を飲まずに吐き出した獅郎に発情中の桐は著しく気分を害していた。
『朝っぱらから……あぁ、シンド────フゥゥゥゥ』
気息を巡らし翳す黐手────極限まで高まる氣。
────森羅万象。
もとより視力で捉えられる類のモノではない桐のサイキック・フォースはいわば殺気の飛礫だ。
無色無形のものではあるものの存在は確かにそのに在る。
それは余すことなく獅郎に存在を告げた。
この斬気。次の套路も、既に決まっている。
『ハアァァァァァ……ッ!』
拍手一閃。彼はその無限の腕をその尽く払いのけた。
流麗に舞うが如き手過は、桐のPKに尽く応じてみせる。
この男はなんと超能力と素手で鍔競り合っているのだ。
続く念波の閃きを血の雫ではね返しながら乱れ飛ぶフォースと入れ違いに、繰り出す抱排手。
『……六十四手か、まぁまぁ』
肉薄する彼のその脚許は血の海。
あっけなく裂け、血塊が現れる。
──────獅郎の手刀が陰茎を切開した。
だが、美しい外科手術的正確さで繰り出される執刀術には彼女は悶え苦しみ絶叫も放つこともない。
身体が、ビクンと震えるも言わずもだ、鬼宿桐。
朱い鮮血の絨毯の上に膝を落とす。
トドメに彼は空気圧注射を引っ張り出すと銀のカートリッジ式アンプルを装填して案山子のように棒立ちな彼女の首の静脈へと押し当てる。
乾いた破裂音と、シュッという音をさせてそれは役目を終えた。
中身は勿論、通常なら15人殺せる致死量の鎮静剤。
流石に不意打ちの発情にどうしようもなく波立っていた気持ちもいくらか落ち着いてくる。
『……はアっ……はっ……』
だらしなく開けた口の端から一筋の唾液が流れ、空ろな焦点の定まっていない表情の桐の眼に陶酔の薄膜が懸かる。
さっきまで勃っていた彼女の陽根は萎えて、子供のそれのように揺れた。
どうやら彼女の発情は収まったようだ。
前のめりに倒れる桐の肩を彼は押し留めると、獅郎は嘆息した。
『……ぁあ…?…獅、郎……?』
桐は許しを乞うように彼の肩に顔を埋めた。
『……とりあえず、パンツ穿こ?遅刻するぞ』
獅郎は出来得る限りの笑顔を作って桐に言った。