アットウィキロゴ
 

第一回戦第一試合 医死仮面

名前 魔人能力
裸繰埜闇裂練道 永劫
医死仮面 サナティック・アスクレピオス

採用する幕間SS
なし

試合内容

「裏1回戦第1試合会場はこちらの廃港と沿岸20mまでの海です。海中には人を襲うような危険な生き物もいるので、相手に負けるより先に餌にならないようご注意ください。」


「いい海だな…。」

裸繰埜闇裂練道は係船柱(よくマドロスが足を乗せているアレ)に足を乗せ、眼前に広がる大海原に思いを馳せていた。どこから持ってきたのかギターまで担いでいる。

夜の海は月に照らされ、岸壁に打ち寄せる波は銀の飛沫をあげて砕け散る。静寂に包まれた世界でその音は異様なほど大きく聴こえ、海風が汐の香を運ぶと共に練道の頬を優しく撫でる。

「見事な海、見事な夜だ。お前もそう思わないか医死仮…め…」

恐らく自分を背後から狙っているのだろう対戦相手に呼び掛けようとしたとき、彼が見下ろしていた海面が突然盛り上がり、そしてそこを裂いて異形の巨大な貌が飛び出して来た。

その動きは迅く、不意を突かれたこともあって、練道は回避も防御もままならぬまま、巨大な貌に空いた巨大な口に―呑まれた。

「…!」

試合開始直後に選手が食われるというあまりの事態に、見ていた者は皆一様に呆然となった。練道を食った怪物は海面からその長い首を突き出し、辺りを嘗め回す。ウナギのように細長い体(といっても胴回りは大木のようだが)をしているが、銀の鱗に覆われ、月光を反射してキラキラと輝き、その顔はワニのようだった。リヴァイアサン、デュポーン、ティアマト-神話の海龍を具現化したかのような、悍しくも美しい姿。

この生物はオオツキバイオ産業と希望崎学園生物部の合同研究により生み出されたミュータントである。ある日、事故によって水槽から脱走したこの海龍が現れたことが、この港が廃れた要因であった。

某巨大掲示板「ユキ使裏1回戦実況スレPART1」

138:実況魔人名無しさん:20XX/10/9(金)20:13:15:03 ID;hGlM3N
ちょwwwwwwwwマミったwwwwwww

152:実況魔人名無しさん:20XX/10/9(金)20:14:16:03 ID;Nw6e3k
丸呑みだからマミっては無いだろ

164:実況魔人名無しさん:20XX/10/9(金)20:14:16:03 ID;Nw6e3k
>>152
こまけえこたあ(ry

この怪物が某人気アニメのキャラクターにあやかって、ネット上で「シャルロッテ」と呼ばれることになるのは少し先の話になるが、以下文中でも「シャルロッテ」と呼称することにする。

「さようならおじさん…おじさんの剣…んあっ…」

1回戦で練道を下し、SEXに持ち込んだ伝説の勇者ミドは、自身を貫いた剛直の感触を思い出し、泣きながら股間を弄くり始めた。

「勝ったのか…私は…?」

練道がシャルロッテに丸呑みにされる様子を「オオツキ水産加工」の廃屋陰から見ていた医死仮面もまた、彼が死んだものと考えていた。

「裸繰埜選手の心拍数には大きな変化はありませんし、ギブアップもされていません。ですので、このまま試合を続行いたします。」

斎藤窒素の美声は表向き平静を装ってそう伝えるが、その実彼女を知るものにだけわかる悔しさがにじみ出ていた。シャルロッテのいるこの廃港を女神が試合会場として選んだとき、彼女は選手が「マミられる」様子を想像して自慰に耽ったものである。悲鳴1つ発さず丸呑みでは面白くもなんともない。

「そうか…。」

しかし、対戦相手は怪物の腹の中。どうすることもできない。というか、このまま練道が腹の中で息絶えるのを待っていれば結局何もしなくても自分の勝ちでは無いか。そう考えたとき彼は気づいた。海面から突き出たシャルロッテの頭が、陰にかくれたはずの自分を向いていることに。シャルロッテはヘビなどにある「ピット器官」を備えており、体温を感知していた。

口を大きく開けて、シャルロッテが突っ込んでくる。シャルロッテは歓喜していた。港が廃れてから久しく味わっていなかった人間(エモノ)が、今日は2匹もいる-!!

「ちっ…!(不戦勝かと思ったら何てことだ!)」

迫ってくる怪物の首を軽身功で躱しながら医死仮面は毒づいた。メスでシャルロッテの首筋を斬りつける。鉄の銛も通さない鱗が綺麗に切断され、パックリと切れた肉が露出する。が、この巨体相手にはかすり傷のようなモノで、シャルロッテの追撃は緩まない。医死仮面が隠れていた廃屋はシャルロッテの突進によって半壊した。

「(毒は…あの巨体の致死量に達するか…!?糸も…あの体を括るには奴の動きは疾すぎる…!未知の生物の経絡などわからん…!)」

眼前に迫るシャルロッテを前に、医死仮面は回避を止めた。それは諦めたというわけでは無い。彼の象徴であるアスクレピオスの杖、それをシャルロッテの眉間に向かってジャベリンの如く投げた。

「―――!!!」

杖が眉間に深く突き刺さると、シャルロッテは攻撃をやめ、ゴロゴロとのたうち回る。人間ならば絶叫しているだろうが、シャルロッテに発声器官は無いらしい。文字通りの「声にならない叫び」であった。そして数十秒後、シャルロッテは動きを止め、その場にゴロンと横たわるだけになった。

「(死んだか…。裸繰埜闇裂練道はまだ生きているのか?)」

窒息死か、杖の先端が脳に達していたのかはわからないが、とりあえず目の前の脅威は去った。ジョン・スミスが仮面の下で息をついた瞬間。シャルロッテは体を跳ね上げ、再び彼に向かって突っ込んできた。

シャルロッテはマッコウクジラのように筋肉に酸素を蓄えることが出来、浮力無しでも自重を支えられるほどの強靭な筋肉と骨格を誇る。そのために陸上でも長時間の活動が可能であり、そして初めて出会う強敵に対して「死んだフリ」で油断を誘うほどに、その知能は高かった。

「なっ…!」

驚愕の声を漏らしながら医死仮面もシャルロッテに呑み込まれた。

「ちっ…!…し、失礼しました。なんと医死仮面選手までシーサーペントに呑み込まれてしまいました。しかし、裸繰埜選手の心拍数もまだ停止はしていません。もしかすると体内での戦いがこの後繰り広げられるのかも知れませんが、我々からは確認できません。」


「食われてしまった。まずい…色々とまずいぞ…!」

シャルロッテの口の中、歯は退化しているようで、咀嚼されることは無い。練道は生きているらしいので、人間がいてもある程度生存可能な環境ではあるのだろう。が、シャルロッテの長い舌は口腔内を舐め回しており、医死仮面は舌を躱すのに必死だった。

そして獲物を2匹とも食らったシャルロッテが海中に戻り、沿岸から20m以上離れれば、自分の負けは決定する。頭に近い位置の自分の方が、20mラインを超えるのは先だろう。

巨体がズルズルと動いているのを感じる。海中に戻るつもりか!そう思った瞬間、突然動きが止まった。それは単に移動が止まったというわけでは無い。舌の動きも、肉体全て、時が止まったかの如く静止している。

「……!(息が吸え…いや私も動かない…!これはまさか…!)」

練道の魔人能力「永劫」。そう思った瞬間、食道の奥から、ネコ科の猛獣が可愛く見えるような勢いで、練道が突っ込んできた。

「よお!お前も食われるとは。お互い運が悪いな。いや、真に悪いのは-お前か。」

練道の体には胃酸によるものと思われる炎症跡があった。突進の勢いをそのままに練道が跳び上がり、飛び蹴りを放つ様が、ブーツの裏が迫ってくる様が、脳内ホルモンの過剰分泌で「ワンミニットエクスタシー」時に匹敵する集中力を得た医死仮面には酷くゆっくりと見えていた。が、指先1つ動かせない。「永劫」の如き刹那。

30cmの両足が医死仮面に砲弾の如く直撃する。人体同士の衝突とは思えぬ轟音。肋骨が砕ける音。医死仮面が真っ先に感じたのは顔面を蹴られなかったことへの安堵だった。

大きく開いた口から勢い良く飛び出す医死仮面。

「(体が動く…!)」

地面に叩きつけられる直前、「永劫」が解けた医死仮面はギリギリで受身を取ることに成功した。とはいえそのまま落下するよりはマシという程度で、咳き込むと口から血が噴きだした。

「(肺に肋骨が刺さってはいないようだが…このままでは勝てない…。使うか…。ワンミニットエクスタシー…!)」


医死仮面が口から飛び出した一瞬後、練道も続いて口腔内から脱出する。追撃をかける前にやるべきことがある-!!

直接受けた分、医死仮面よりわずかに早く永劫が解けたシャルロッテは、口から飛び出した両者を今度こそ食らってやろうと、まずは目の前の練道に狙いを定めた。一度目と同じように、大きく口を開けて突っ込む。

「フンッ…!!」

巨体に似合わぬ軽やかな跳躍でシャルロッテの攻撃を躱し、上空を取る。ジャンプの最高点に達すると、棒高跳びの選手より流麗な動きで体を反転させる。満月と重なるその姿はまさしく月面宙返り(ムーンサルト)!!
そして、空中で右脚を高く上げる。狙うのは眉間に突き刺さった医死仮面の投げた杖。

ヒィッ!!-ゴアッ!!

落下の勢いを乗せた渾身の踵落とし。その衝撃に髑髏の装飾は粉々に砕け、半ばまで刺さっていた杖が完全に埋まるほど打ち込まれる。その先端は脳に達し、シャルロッテを絶命させた。

その場にしゃがみ込み、たった今息絶えた命に手を合わせる。

「すまんな…俺たちがここに来たばかりに…。偽善かも知れんが、残さず食ってやるから成仏…ん…?」

プシュー…

何かが漏れ出すような音。それは自分の足元、杖が打ち込まれた傷口から聞こえてくる。

「なんだ?何が漏れて…んあっ……これ…は…」

医死仮面の「アスクレピオスの杖」。その頭についた髑髏の口からは麻酔ガスが噴射できるようになっている。髑髏が砕けたことで弁が外れ、露出した噴射口からガスが勢い良く噴き出す。それをもろに吸い込んだ練道の意識は-遠い世界へと飛び立っていった。


最終更新:2011年10月28日 10:39