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準決勝第一試合 糺礼

名前 魔人能力
裸繰埜闇裂練道 永劫
糺礼 この胸にキミを抱きしめたい
意志乃鞘 HERO DESTINY

採用する幕間SS
なし

試合内容

二つの拳が交差する。
意志乃鞘の拳はむなしく空を切り、裸繰埜闇裂練道の拳は鞘の顔したたかに殴打する。
よろめき、たたらを踏む鞘の体に追撃の拳が叩きこまれる。
にぶく、思い打撃音。宙を舞った鞘の体が地面にたたきつけられる。

「……やはり、手加減と言うのは上手くいかん」

練道は不満げに自分の拳を見つめる。
鞘が起き上がりつつ練道めがけて蹴りを放つ。
顔を穿とうと鋭く放たれた蹴りは、しかしいとも簡単にかわされる。
カウンター気味に練道の拳が振り下ろされる。
起き上がりかけていたところに再び拳を喰らい、鞘は再度地面に張り付けられる。

「解せん」

倒れている鞘に対して踏みつけを繰り出しながら、練道はそんなことを口に出した。
鞘は地面を転がり練道の攻撃を回避する。
二人の間に少しの距離が生まれる。まともに戦うのならゼロに等しい距離だが、練道は間合いを詰めてはこない。
まるで、鞘の答えを待っているかのように。
鞘は立ち上がると、あくまで臨戦態勢を崩さぬまま練道に声をかける。

「解せん、ね。一体何がだい?」
「お前の行いが、だ」

きっ、と鋭い視線が鞘を貫く。だが、鞘は平然とたたずんでいる。

「まさか、実力差が分からないほど無謀でもないだろう。にもかかわらず、なぜ真正面から俺に挑んできた?」

相変わらず練道は鞘をにらみつけている。
それに対し、さやは実力差ね……と少し間をおいて。

「それは、あなたと渡葉美土ほど大きなものなのかな?」

瞬間、鞘は暴風にさらされたような感覚にとらわれた。

「……あの少女が勝利できたのだから自分も勝てる、とでも思ったのか?」

殺気を収めようともせず鞘に叩きつける練道。
だが、それにすら臆すことなく鞘は言葉をつづける。

「まさか、そこまで思いあがってはいないさ」
「なら、なんだ」
「あなたに勝った彼女は今、勇者と呼ばれている。彼女が勇者のやり方であなたと言う壁に打ち勝ったなら……私は、ヒーローのやり方であなたに勝つ」

練道は構えをとる。

「あの少女の戦術に匹敵するものが、今の貴様にあると?」
「ああ、そのつもりだ」
「そうか、ならば」

練道が消える。消えたと見まごう速度で、鞘との間を詰める。

「それを、見せてみろ!」

先ほどまでを完全に上回る速度での接近、そして、打撃。
今までの戦闘から考えれば、鞘には反応すらできないはずの攻撃だ。
だが――

「見せて、やるとも!」

練道の攻撃に鞘の拳が合わせられる。完璧なタイミングでのカウンター。
これ一つで試合が決まりかねぬ一撃は、達人を殺るには何歩も足りない。
鞘の体が吹き飛ばされる。
完璧なカウンターに対し、練道は冷や汗一つかかずさらに攻撃を合わせて見せたのだ。
しかし……
つ、と練道の頬に薄く血液がにじむ。
完璧にかわしたと思っていた鞘の一撃は、練道の肌をわずかにかすめていたのだ。

「ふ、ふふ……やっと、一発だ」

ゆらり、と鞘が立ちあがる。

「あなたは強い。強敵……いや、高すぎる壁だ」

その姿は、肌に血がにじんだような騒ぎでは済まない。
全身から血が流れ、おそらく、ひびが入った骨も一本や二本では済まないだろう。

「対する私は……渡葉のように策も持っていない」

足元はふらふらとしておぼつかず、口の中を切ったのか唇の端からはだらだらと血が流れている。

「絶体絶命、だが……」

練道の目に映る鞘の姿は

「戦いの中で成長し!その壁を越えてこそのヒーローというものだろう!」

彼を高ぶらせるには十分すぎるほど、頼もしいものだった。
くつくつ、と練道が笑う。

「今、この場で、俺を超えてみせると言うのか」

鞘は答えず。拳を構えるだけだ。

「面白い、ならば……やってみせろ!」

獰猛な笑みを浮かべ、鞘に襲いかかる練道。
いく度目かの交差。しかし、これまでと違い、鞘の瞳は練道の動きを完璧にとらえている!
お互いに全霊の攻撃を叩きこもうとする二人。
しかし、二人の戦闘に対し邪魔が入る。
傍らにあった粗大ごみの山から、ごろごろと音を立てドラム缶が転がってくる。
ドラム缶が二人を直撃する軌道にあることを悟り、鞘と練道はそれぞれ回避を行う。
みれば、ドラム缶からは何か液体がまき散らされている。
臭いの強いその液体は、オイル。
ドラム缶が転がってきた元を見れば、粗大ごみの山の上に立つ女性の姿が見える。
タバコを咥えた彼女は、ライターに火をともすと地面にそれをこすりつけ。
炎が上がる、それはドラム缶の軌道を追うように燃え広がり、鞘と練道の元まで火の手がやってくる。
炎から逃げる二人に、自分から注意がそれた事を悟り粗大ごみの山の上から女性が駆け下りてくる。
彼女は、練道にとっては初対面であり、鞘にとってはすでに何度か言葉を交わしたことのある女性。
糺礼だ。
礼の手に拳銃が握られているのを見た鞘は、射撃を防ぐためにクーゲルシュライバーで迎撃を試みる。
だが、状況が悪かった。
一手先に礼が放った威嚇射撃。
拳銃の射程外から放たれた銃弾は鞘の体をとらえることはなかった。
だが、体をかすめる銃弾の圧力に、ぼろぼろになっていた鞘の体は耐えきれなかった。
引き抜こうとしたクーゲルシュライバーは取り落とされ、ころころと地面に転がる。
対し、あくまで練道はどこまでも冷静であった。
射手を視界に収めていれば銃弾をかわすことは困難ではない。
ならば、間を詰め『永劫』から格闘戦に持ち込めば問題なく対処できる。
駆けだす練道。
『永劫』の射程は拳銃よりも短い、一発は銃弾をかわす必要があるだろう。
だが、そこまでだ。
一合、射撃を交わせばあとは練道の攻撃の番だ。無粋な奇襲者は彼の拳の餌食となるだろう。
拳銃の射程に練道と鞘が入ったことを把握し、礼は足を止める。
そして、一発、練道に向けて銃弾を放つ。
礼との間を詰める練道は速度を落とさずそれをかわす。
礼は改めて練道に照準を合わせ射撃を行おうとする。
だが、もう遅い。
その位置は既に

――――『永劫』!

バンッ――!

響く、銃声。
何が起こったか理解できず、練道はとっさに回避を行う。
練道と礼の間が再び開く。
見れば、礼の服の胸部に小さな穴があき、そこから煙が上がっていた。
何らかの方法で『永劫』の効果時間中に射撃が行われたのは確かだ。
だが、練道の付近に着弾した形跡はない。
練道がはねるように鞘の方向を向くのと、礼が止めの射撃を行うのはほぼ同時であった。
ぼろぼろになった意志乃鞘の体に銃痕が二つ。
そこからだらだらと血液が流れている。
鞘は、動かない。
練道は礼の方を向く。礼は銃を構えたまま、練道をにらんでいる。
射撃をすぐに行わないのは、下手な射撃が無意味であると悟っているからか。
それとも、練道の殺気に押されてか。

「ひとつ、聞かせてもらう」
「なんだ」

練道の問いに、礼はあくまで拳銃を向けたまま応える。

「今の射撃……おそらく『反射』か何かを使ったものだろう。見事なものだ」
「……よく一瞬でみぬけるものですね」

練道の推測の通り、先ほどの射撃は反射……人体に備わっている基本的な性質を利用したものだ。
人体は腱の付近を刺激させられると、意志とは関係なく自動的に筋肉が収縮する性質がある。
如何に意志が『永劫』により「動けない」という認識にとらわれていようと、意志の外にある反射までは抑えきれるものでない。
礼は、推測される『永劫』の射程に入った瞬間自分の手首にナイフを突き刺した。
それにより『永劫』が発動しても反射により手が握られ、引き金を引くことが出来た、というわけだ。

「あのトリックを使えば、俺を撃つことが出来たかも知れない。なのに、なぜ意志乃を狙った」
「………一つは、移動する標的よりもあなたの能力で動きが止まっている標的の方が狙いやすかったから」

が、これは半ば言い訳だな。と前置きをし

「もう一つは……殺せる時に殺しておかないと、ヒーロー補正が乗りきる前に倒しておかないと、あいつは非常に恐ろしいから、だ」

分からないか?と礼は問い返すが、練道は答えない。
かわりに、小さな笑い声が練道の口からもれてくる。
漏れる笑い声はいつの間にか哄笑へとかわる。

「面白い!今日は何と面白い日だ!俺を超えられると言う未熟者と、そんな未熟者が俺より脅威だと言う奴、そんな奴らと一度に会えるとはな!」

天を仰ぎ笑う練道を、礼は呆然と見つめていた。

「さあ、あいつは俺を楽しませてくれたぞ。お前はどうするんだ?」

にたり、と笑う練道に、自分をとりもどした礼は口の端を釣りあげ答える。

「そうだな。こうしよう」

そういって礼は練道に向けて数発の銃弾を撃つ。
無論、そんな攻撃が練道にあたったりはしない。
だが、回避のために多少の隙は出来る。
その隙に、礼は踵を返し逃げ出した。
一瞬呆然とした練道だが、楽しそうに口の端をゆがませると礼を追い始めた。
粗大ごみの山の頂上を越えたところで、礼の姿が突然消える。
追う練道が下を見ると、山の斜面を一気に飛び降りた礼の姿が見えた。
距離は一気に離れてしまったが、練道も飛び降りるような愚は犯さない。
射撃武器相手に身動きの取れない空中にでることなど自殺行為以外の何物でもない。
それに、練道の身体能力を持ってすれば、この程度の距離はすぐに詰められる。
銃弾が数発飛んでくるが、軽くかわす。
いまだ炎の消えない山の斜面を駆け降りる練道。
ぐんぐんと、礼と練道の間の距離が詰まっていく。
あきらめたのか礼が立ち止り練道の方を向いてさらに一発銃弾を放つが、当たらない。
あと数歩で永劫の射程内にはいる。
そんな時、練道は礼のシャツの裾からなにかロープのようなものが伸びていることに気付いた。
ロープは練道の方向、燃え盛る粗大ごみの山に続いている。
おそらく、何らかの罠。
考えてみれば、練道と鞘が闘っている間礼にはずっと時間があったのだ。何か仕掛けを作っていてもおかしくはない。
相手がロープを胸の方の手で握って分かりづらくしていたのもあるが、それを差し引いても戦闘の高揚で油断していたな。
と練道は心中で舌打ちをする。
練道がさらに一歩足を進めると、礼は全身を使ってロープを引っ張った。
炎で崩れやすくなっていたのか、粗大ごみの山の斜面がガラガラと音を立てて雪崩を起こす。
背後から、重量物と炎による打撃。
流石の練道も走りながらかわすことは出来ないと判断し、足を止め回避に専念する。
だが、今度は礼の方から間合いを詰めてきた。
しかし、これはある程度練道の予想の範疇にある行動だ。
いくらなんでも相手もこれだけで自分を倒せるとは考えていないだろう。奇襲を仕掛けてくるのは当然だ。
だが、射撃ならともかく格闘戦なら練道に分がある。なにより、相手の判断は練道を有利にするものだ。
視界の端に礼を収め、瓦礫をかわしながら距離を測る。
『永劫』の範囲内に入った瞬間能力を発動すれば、相手は瓦礫の雪崩に巻き込まれるだろう。
そうなれば、無事では済むまい。
能力を発動するタイミングをはかる練道。
その時、礼はポケットから何かを取り出し練道の方に投げつけてきた。
飛んできたのは、不自然に膨らんだタバコの箱だった。
タバコの箱は練道に当たらず炎の中に落ち。
爆発した。

「――ッ!銃弾を詰めて!」

タバコの箱に詰められた銃弾は、熱され暴発しでたらめな方向に飛ぶ。
それを瓦礫に加え銃弾をかわそうとする練道。
その一瞬、練道の警戒から礼は外れる。
しまった、と練道が思ったときには、礼は地面を踏みきり練道に向かってフライングタックルを放っていた。
飛んだ礼の体に炎が落ち、銃弾が当たる。だが、礼は苦痛に耐え捨て身の一撃を練道にあてようとする。
飛んでくる相手には慣性が働く、『永劫』は無意味。
しかし、落ちてくる瓦礫と暴発する銃弾と礼をすべて同時にかわすことは出来ない。
礼と練道は衝突し、もつれ合い地面に転がった。
だが、すぐに練道は体勢を立て直し礼の体を蹴り飛ばす。
礼の体が地面にたたきつけられる。
礼は、動かない。
立ちあがる練道。
だが、その左胸には深々とナイフが突き刺されている。
血を吐き、地面に練道が倒れる。

礼は……起き上がった。

「は、ははは。捨て身で、賭けに出て、それに勝ってもこのざまか」

審判が礼の勝利を告げる声が響く。
だが、礼はそれを無視して1人ごちる。

「これだから。魔人は嫌なんだ」


最終更新:2011年11月11日 05:44