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野試合 日谷創面

名前 魔人能力
池松叢雲 統一躯
日谷創面 アゲンスト・トーフ

採用する幕間SS
【日谷創面・実質エピローグ幕間】
(創面が英検を習得)

試合内容

『池松叢雲VS日谷創面』


「手芸とは」
 父が言葉を紡ぐ。
「日常の、ありとあらゆる物を」
 手には糸巻き。部屋には張り巡らされた、糸。糸。糸。
「いかに創意工夫し、いかに生かすか――」
 幼い創面はそれを、匍匐前進でくぐり抜ける。
「その一瞬の創造性が、生死を分ける。」

 今はもう諦めた、辛く苦しい修行の記憶。

◇ ◇ ◇

 トーフ化した壁から、創面が飛び出す。
 池松はそれを予期していたように、掌打を打ち込む。
 ひらり。と、創面の体がトーフ化し、素麺のようなしなやかさで、池松の攻撃を避ける。
 日谷創面の魔人能力『アゲンスト・トーフ』。触れた物の触れた部分をトーフ化するために最低1秒かかるそれだが、創面自身の肉体は、一瞬でトーフ化が可能だ。
 さらに創面は、突き出した池松の腕をつかみとり、あらぬ方向へおりまげる。

「悪くない(World cool night:「悪くない」という意味の英語)」
 池松の冷静な声。
「だが――」
 池松の放つ蹴りが、創面の脇腹を捉える。
「――ぐぅっっ!!」
 吹き飛ばされる。壁に激突した。
「ああッ!!」

 女神によって用意された異空間。ここは、英検会場の雑居ビルの一室だ。
「英検の極意は――」
 池松は折り曲げられた己の右腕に手を添える。
「一瞬・一閃・一呼吸。」
 ごきり。と筋肉の軋む音。曲がったはずの池松の腕が、元の形に戻る。
 池松叢雲の魔人能力『統一駆』。それは、心身の完全にして精密なる制御を可能にする。
「Ambushを仕掛ける場合は、特に呼吸に気をつけることだ。決めるなら、一撃だ。」

 池松叢雲との実践Lesson。もう何度も、創面は池松に殺害されている。
 そのたびにトーナメントの専属医によって蘇生され、Lessonをやり直す。
 池松には、創面を鍛える理由があった。そして、創面にもそれを受ける理由がある。

 壁によりかかる創面。
「く……はあ……!なるほどなぁ、確かに呼吸、乱れてたかもなぁ。」
 壁に激突する寸前、体内の骨を半トーフ化することによって、骨折を免れた。
「痛ぅ……。」
 しかしその分、骨はわずかにおかしな形で固定され、背中に激痛が走る。

「ハッ!(hat:帽子という意味の英語)」
 池松が創面に飛びかかる。
 ずぶり。壁にぶつかった時点から、創面はその壁をトーフ化していた。
 池松の攻撃を逃れるため、壁に侵入する。だが、
 池松が拳を構え――創面に届く距離ではない……
「――覇ッ!(hand:手という意味の英語)」
 それを突き出した。
 その腕が、本体の勢いと重なり、切り離される。
「――――な ああああああッ!?」
 創面が1回戦で熊野ミーコへ放ったRocketpunch(ロケットパンチ)。
 それと同じ技を、池松が繰り出したのだ。
 創面が壁にめり込む。その腹に、発射された池松の拳が突き刺さる。

「――っっ!」
 その衝撃で、創面の体が壁に押し込まれた。
 その先は、雑居ビルの外側。ここはビルの3階である。
 壁の破片と共にはじき出される創面。
 切り離された池松の腕は、意志を持つように創面の腹をぴょんと弾くと、開いた穴に捕まり、池松のもとへと戻る。

「ゲホッゲホッ……くっそぉ!」
 空中でくるくると回転。
 創面は実戦前に受けた池松の『英検』Lessonによって、わずかだが心身の精密制御を習得していた。
 2階の窓に手をかける。
 さらに『アゲンスト・トーフ』でビルの外壁に足場を作り出し、落下を免れた。
 ヤモリのように壁を器用によじ登る創面。
 その戦い方は、基本的に『奇襲』に落ち着いていた。
 二回戦で不動に負けたときのような、真正面から向かう戦い方。あのやり方で敵と向き合い、やられることを、創面は恐れていた。
 一度池松から離れ、体勢を立て直し、Ambush(奇襲)を仕掛ける。
「ああ……きっとそれしか、あの『先生』に勝つ手はねえ!」

◇ ◇ ◇

 池松は切り離した腕を付け直すと、廊下を歩き出した。
 『統一駆』によって研ぎ澄まされた聴覚は、創面の居場所を捉える。
「5階か……(Go kind cut:「カットされて、親切になります」という意味の英語)」
 階段へ向かう。
 既に何度も通った廊下。創面が池松に勝てるまで、この戦いは続くだろう。

 二人の共通の敵、ウルワシ製薬。
 闇の違法薬品を開発するその企業は、豆腐屋である日谷の生活を脅かす。
 そして、SLG(弱能力者)の会・会員である池松叢雲もまた、同胞を薬品の糧として食い散らかすその企業を、放置しては置けなかった。
 ウルワシ製薬の主、雲類鷲殻(うるわし かく)。
 池松を倒せるほどでなければ、創面は殻に手も足もでないだろう。

「ソーメン。貴様はいつになったら、このInstall actionに合格できる……?」

◇ ◇ ◇

 創面は5階の一室へ侵入する。英検会場らしく、そこはパイプ椅子と横長の机が並んでいた。
『アァー……、まだアイツに勝てねえのかよ、ソメン。』
 脳内に響き渡る声。創面に憑依した手芸者・ロクロだ。
 正体不明のロクロだが、創面は彼との半ば強引な交渉の末、ロクロの手芸者としての技術を借りうける約束を取り付けた。
 もっともそれは、創面が池松に受けた『英検』による肉体強化によって、はじめて実現可能となった技術である。
「今度こそ、勝つ。だから、力を貸せ。」
『……ちっ、俺に命令するんじゃねえ。……マァー、俺もちょっと楽しくなってきた所だ。アレほどの武人は、手芸者にもなかなかいねぇぜ?』
「そうだろうよ、だからこその『先生』だ。」

 今の創面は全裸に濃紺のエプロン。頭に三角巾をかぶっている。
 エプロンのポケットから、豆腐屋の笛を取り出す。
 壊れて音がでないが、そのために潜伏時の呼吸穴として使うこともできる。
 その笛に、トーフ化し細く加工した机の鉄部品を通す。
 鉄の部分を取っ手にして、笛はカラカラと音を立てて回転する。
 これで、簡易の『糸巻き』が完成した。

 手芸者が、何故脅威とみなされ、恐れられるのか。それは、身体能力や魔人能力によるものだけではない。
 創面は優秀な手芸者である父『日谷頭夫(ひや とうふ)』の言葉を振り返る。
 ――日常の、ありとあらゆる物を、
 いかに創意工夫し、いかに生かすか

「……その一瞬の創造性が、生死を分ける。」
 例えば第二回戦での不動との戦い。ただまっすぐ向かってくる創面へ、ティッシュペーパーという日常品を利用し、見事勝利した不動。それに対して、何の抵抗もできなかった情けない自分。創面は、自分に足りないものを確信する。

『フッフッフ。アァー……、その通りさ。「臨機応変――変幻自在」どんな状況にあれ、活路を見出す。それこそが手芸の「極意」……ってなァ。いくら『英語』なんてもんをやろうと、ソメン。主芸者としてお前はまだまだ未熟者だ。さあ、早くしろ。力を貸してやる。そのかわりさっさと試合を終わらせて、トーフをたらふく食わせるんだな。』
 少し前までは創面の体を乗っ取る気だったロクロだが、その意思を捨てたわけではない。
 ただ、『英検』を習得した創面の精神はより強固であり、ロクロはそれに仕方なく従わされているにすぎない。……現時点では。

 余った鉄を加工し、まち針を創りだす。
 そして創面は、エプロンから高速の手さばきで糸を紡ぎだした。
 瞬く間に、糸の塊ができあがる。
 これが、『英検』と組み合わさった『ロクロ』の力である。
 創面のエプロンには、創面の姉・奴子の魔人能力『豆腐を粗末にする奴は豆腐に頭をぶつけて死ね!』がかかっている。創面の『アゲンスト・トーフ』とは逆に、柔らかいものの柔軟性を維持したまま、頑丈にする能力だ。

「うっし、これを使って……。」
 と、そこに、
 突如、ひび割れる床。
「――――――っ!!」
 床から伸びた池松の腕が、がばりと創面の足を掴む。
「―――――っ!マジかよっっ!?」

◇ ◇ ◇

 池松が掴んだ創面の足は、足首から先がなかった。
「……ふむ。」
 創面は自分の足首をトーフ化し、トカゲの尻尾のように切り離したらしい。
 ……と、ぐにゃり。と足を持つ池松の手がトーフ化した。
 創面の『アゲンスト・トーフ』は、体から切り離された後も1分間だけ効果が発揮される。
「ふん。」
 池松は創面の足を投げ捨てる。
 上階から物音が聴こえる。
 やや間があって、ずぼりと、やがて創面が天井の隅から姿をあらわした。
「来たか(Kit-kat)。」

 右足を失った創面は、義足のようにパイプ椅子のパイプを足首から先に取り付けている。
 さらに、エプロンだったはずの物は、マフラーのように首に巻き付けられていた。
「…………。」
 創面は無言で池松を一瞥すると、壁に手をつけ、壁を高速で這い始めた。
 それは、ヤモリのように――いや、違う。これは匍匐前進だ!
 しゃかしゃかと、蛇のように壁を滑りながら移動する。
 それは、『アゲンスト・トーフ』の力と『英検』で強化された創面の魔人握力によって初めて実現された技。創面は、壁に指を差し込み移動しているのだ。

「『英語』と『豆腐屋』……。さながらこの技術は、『統一駆』に並ぶ『豆腐流(トーフル)』といった所か……。」

 ナメクジの這ったような、壁にきらめく赤い跡。
 ――さらに腹をトーフ化し、摩擦を減らしているのか……?
 池松が観察する。いや、それだけではない。
 創面が咥えている『糸巻き』状のものから、細い糸が天井に伸びている。
 それは天井を貫き、上階まで続いているようだ。
 その糸が、創面の体を支えているのか。
 ……何かおかしい。
 創面が部屋を一周する。
 その糸は長さを変えずに、天井をまるでトーフのように切り裂き……
「……これは……!」
 池松が飛ぶ。
 円状に切り抜かれた天井が、部屋の中央へ落下した。



 創面のもつ糸。
 いかに頑丈な糸とはいえ、それ自体に天井を切り抜く程の威力は無い。
 創面は己の肉体をトーフ化、ペースト化し、糸に絡ませることで、糸に1分間だけ『アゲンスト・トーフ』の力をもたせた。
 ただの糸なら、その効果で糸自体ももろくなるはずだが、創面の糸は特別だ。
 創面の姉・奴子の能力によって守られたその糸は、創面の認識と衝突し、トーフ化を防いでいた。
 姉弟の能力が合わさったそれは、何もかもを切り裂く、強力な万能糸となる……!



 天井を避けた池松に創面が襲いかかる。
「う……おおおおおぉっ(W…all)!!」」
「発音が――」
 『統一駆』。
 池松はその動きに瞬時に反応する。
「――甘い(am I:「私は?」という意味の英語)。」
 背中を蹴り上げられ、創面が吹き飛ばされる。
「――――――――――っああああ!!」
 創面はそのまま壁にぶち当たり――その壁が、トーフのように崩壊した。
「――?」
 池松が疑問を感じる。
 壁が瞬時にトーフ化した?
 あれほどの質量を完全にトーフ化するには、最低10秒は必要だろう。
 創面がビルの外まで吹き飛ばされる。
 鳴り響く不気味な物音。
「―――そうか。」
 池松が合点する。
 創面は腹を半トーフ化していた。それは、摩擦を減らすためだけでは、無い。
 壁にこすりつけられた腹の粒子。それは、『アゲンスト・トーフ』の効果を保ち、
 部屋の周囲壁一面を、トーフ化したのだ。




 轟音を立ててビルの4階が潰れる。




◇ ◇ ◇

 吹き飛ばされても、創面はその『糸巻き』を離さなかった。
 糸にぶら下がり、落下途中で停止する。
「よっ……っと!」
 糸を糸巻きから取り外し、着地する。ぎりぎり場外には至らない。いや、そもそもこの戦いにそういったルールなど、あって無いようなものだ。
「――痛ぅぅっ!」
 もはやマフラーとなったエプロンから、新しく糸を紡ぎだす。
「ああ……くそぉ……。」
 腹を削り、足を失くし、全身に激痛が走る。既に創面は満身創痍だ。
 痛みを我慢し、ビルの壁をよじ登る。
 試合が終わらないということは、池松はまだ生きている。
 潰れた4階。おびただしい量の煙が立ち込める。
 壁をトーフ化し、侵入した。




「ハ……ア、嘘……だろ。マジかよ……。」
 崩れ落ちる破片。立ち込める煙。瓦礫の山。

「今のは良いAmbushだ。さあ、Lessonを続けるぞ。」

 その煙の中、池松叢雲は、無傷で立っていた。




◇ ◇ ◇

「今のままでは」
「……。」
「お前は『殻(KAKU)』に勝つことはできない。」
 創面は足元に落ちていた自分の足首を拾い上げる。
 しばし睨み合った後、創面は侵入した壁から撤退した。
「フッ――!」
 池松の攻撃は間一髪、トーフ化が解除された壁に阻まれ失敗する。



「あ、ありえねぇ!強すぎるだろ!」
 創面が毒づく。
『だから言っただろう。あいつは、強い。』
 ロクロの声。
 外壁へ飛び出した創面は更に壁をよじ登る。
「ちくしょう……どうすれば……。」
 創面に勝利した不動でさえも、池松には場外勝ちしており。真にスペック差でうち勝ったわけではない。おそらく今大会で、池松叢雲は誰よりも強い。

 屋上まで登りつめた。
「むぐ。」
『お……おい、お前ェ……。』
 創面は回収した自分の足首をトーフ化し、食べ始める。
「もぐ……うぅ……はぁ……。」
 トーフは麻薬めいた効果をもち、創面の痛みを麻痺させる。
 これは、トーフ中毒である手芸者・ロクロが創面に憑依しているためだ。

『フ……フーッハッハッハ!!ソメン!自分の足を!喰うなんて!フーッハッハ!お前もわかってきたじゃあないか!いいぜぇ。ソメン。お前ェ、面白いな!フーフッハッハッハッ!!』
 なおも創面は、己の足を食べ続ける。

「ハァ……。おい、ロクロ。お前、魔人能力とか無いのか?」
『アァー?ああ……、言ってなかったかぁ?……まあ、俺は確かに魔人だ。
俺の魔人能力は『輪廻の轆轤』。死後、好きな時代の好きな人間に憑依できる。それだけの能力だ。ちょいとばかり、憑依先を間違えて後悔しているがな。残念ながら、今お前に貸せる能力じゃあねえよなァ?フーフフフ!』
「なんだそりゃあ。お前は、それで俺の体に……。」
『だが……。』
「……?」

『そうだなぁ、ソメン。今のお前なら使えるかもしれねぇ。
 手芸者ロクロの≪トーゲイ≫技術――――

◇ ◇ ◇

「池松先生は今、何しているのかな。」

 学園近くの小さな山中。
 『SLGの会』会長・鈴木三流が大久保に話しかける。
「わかりません。仲間を二、三人、勧誘してくるとおっしゃっていましたが。」
「そう。」
「GYAAAAAAAAAAAAHHH!!」
 鈴木の後ろに立つ巨大な類人猿が、鈴木に腕をふるう。
 鈴木はそれを、片手の三叉槍でカシャン。と防いだ。

 池松が鈴木に贈ったオランウータン・ボルネオは、鈴木の快刀乱麻な推理劇によって遂に正体を見破られ、見事鈴木のペットとなった。
 ボルネオはSLG(弱能力者)では無い。池松はSLGの基準を勘違いしている節があり、普通の能力者をSLGの会に勧誘することがよくある。しかも、鈴木はそれをあまり気にせずに受け入れてしまう。彼女にとっては、仲間が増えればそれだけで嬉しいのかもしれない。

「ボルネオ、お座り。」
「OOOOOOHH!!」
 叫び声をあげ、ボルネオはその場に座った。ただし鈴木への攻撃は止めない。
「GYAAAAAAAAAHH!!」
「痛っ!ちょっとボルネオ、じゃれつかないでよ。」
「じゃれている……のか?」
 鈴木の制服はボルネオの爪によって引き裂かれ、所どころ血と共に肌が露出している。
 どう見ても、本気で殺すつもりで鈴木に攻撃を仕掛けているように、大久保には見える。

「何故先生は、こんな『怪獣』を贈ってきたんでしょうか。」
「大久保、発音が悪いわよ。正しくは『KAIJU』ね。」
 ボルネオと槍での攻防を行いながら、鈴木が楽しそうに話す。

 ――会長はどうしてこんなに機嫌が良いのだろう。いや、そうじゃなくって……
「『怪獣』は英語じゃ無いのでは?」
 池松は鈴木の英語家庭教師だった。そのためか、鈴木は時たま英語の発音に対してきびしい。もっともそれは、今のように機嫌が良い時に冗談交じりで言ってくるだけだ。

「知らない?『KAIJU』は今や立派な『世界共通語』。例え日本発祥だろうと、英語は英語。それは『英検』の対象になる。」
 振り向かずに鈴木が語る。
「いやむしろ、日本人である我々には『日本発祥の英語』のほうが、身体になじむかも。」
 そう言うと鈴木は、向きを変えずにボルネオから後ずさり、槍を深く構えた。
「―――カイジューッ!!:(KAIJU「怪獣」という意味の英語)」
「GYAAAAAAAAAOOOOOOOHH!!」
「こんな感じにね。」
 槍を受け止めたボルネオが飛んで行く。まるで手加減というものを知らない。

「池松先生って、日本人なんでしょうか?」
「普段はね。」
「……普段?」
「私にもよくわからない。」
「……。」
「でも、先生がどんな国の人だろうと、先生の『英語』は最強だから。」
 振り向いた鈴木が髪をかきあげ、珍しく笑った。
「『英語』だけで先生に勝てる人は、この世にはいないでしょうね。」

◇ ◇ ◇

 池松の聴覚は、2階に創面の存在をみとめる。
「……ほう。」
 階段を降りると、狭い廊下一面にびっしりと「トゲ」が詰まっていた。
 さらに廊下の中ほどには、糸によってつくられた蜘蛛の巣のような壁。
「小癪な……。(Call shark now:「小癪だな」という意味の英語)」
 その先に創面はいた。
 彼は床に手を当てると、素早い手さばきで瞬く間に「トゲ」を創りだす。
 これこそが、手芸者ロクロの真骨頂――『回転加工』技術である。
 トーゲイクラン(流派)であるロクロは、無駄のない動きで物体に回転を加えることで、加工の速度を倍加させることができた。これもやはり、創面が池松のLessonによって『英検』の精密な肉体制御を会得していたからこそできる技である。

「ハッ!」
 池松は躊躇なく足を踏み出したかと思うと、跳躍。
「ハッ!ハッ!ハッ!」
 天井に足をつけ、さらに跳躍。跳躍。跳躍。
 蜘蛛の巣状の糸の前まで来ると、
「ウオォッ!(Wall:「壁」という意味の英語)」
 両壁に腕を突き刺し、壁に取り付けられた糸をたるませる。
 上部にできた、僅かな隙間。
 池松は体を横にすると、回転しながらその隙間をすり抜ける。

「――――――っ!?」
 回転も、素麺のようなしなやかな動きも、創面だけのものではない。
 心身の完全制御が可能な池松の『統一駆』は、創面のそれを遥かに上回っている。

「セイヤッ!(Say year)」
 池松はそのまま創面めがけ蹴りを繰り出す。
 創面はトーフ化し、しなやかな動きでそれを避ける。
「――む……。」
 床に叩きこまれた脚。
 あらかじめトーフ化されていたその床は、今は固まり、池松の脚を捉えていた。

「ハァ……ッくらえッ……!!」
 そこへ、創面が創りだした『まち針』を投げつける。
「呼吸が乱れている。」
 池松はそれを片手で掴み取ると、創面に対して投げ返した。
「――うおっっと!?」
 トーフ化し避ける創面。
「フッ!!(Foot:「足」という意味の英語)」
 その瞬間、池松は自由な方の脚で床を叩き壊す。
 無数の礫が飛び散り、トーフ化した創面の肉体に突き刺さった。
「くっ……あああああああっ!!」
 痛みで転げまわる。

「……トーフ化の弱点は自明。トーフ化の際の『防御力』の低さにある。例え軽い石ころであっても、それは凶器になり得る。ドゥー・ユー・アンダスタン?
(理解できましたか?)」

「……くっ!」
 池松が床から脚を取り出すその隙に、創面が部屋へ逃げ込んだ。

◇ ◇ ◇

 今回の創面と池松の試合は、一部関係者のみがモニターできた。
 創面の双子の姉、日谷奴子もその関係者の一人だ。
「あ、あいつったら……ずっとこんな試合を続けてきたっていうの……?」
 完全な蘇生能力者がいるとはいえ、弟がこんな無茶をしている理由が、奴子にはわからない。
「まさか、『日谷の敵』と関係があるってこと……?」
 事実創面は、日谷家を守るためにこの修業に挑んでいる。
 学校にいた奴子は、父からの電話を受けてこの大会会場へやってきた。

 ――創面が、何故かTVに出て戦っている。

 手芸の修行を放棄し、戦いから逃げていたはずの創面が……何故。
 創面のことだ、元はおそらく自分の意志ではなく、誰かに頼まれてやっていたことだったのだろう。それがいつの間にか、自分から意志をもって行動するようになったのだ。創面のとる行動なら、奴子は簡単に推測できる。
 そして、モニターに映る創面がこれからとる行動も、大方予想がついた。
 奴子はエプロンから「豆腐屋の笛」を取り出す。創面の笛と違い、壊れていない。
「パ~~~~~フゥ~~~~~~~~」
 奴子は人目も気にせず、笛を吹き鳴らした。

 ――頑張りなさい創面……!あんたはこの試合で、きっと勝てるから……!


「パ~~~~~~~~フゥ~~~~~~~~~~~ッ!!」


◇ ◇ ◇

 鳴り響く回転音。
 池松が部屋に入る。
 そこには糸の先に刃物を取り付け、義足となった右足を軸にして、独楽のように高速回転する創面の姿があった。
「今度はどんなAcrobatic(曲芸)だ……?」
 回転する創面は、もはやエプロンの色だけが目立ち、濃紺の物体となっている。
 これもまた、ロクロによる『回転技術』の一つだ。
 回転する糸の先の刃物。それより危険なのは、『万能糸』となっている部分自体だろう。そこに触れれば、どんな物体であれ切り裂かれる。そのため、池松が跳躍して中心の創面に近づくにはリスクが高い。
 だが、
「――遅い(All so it:「遅い」という意味の英語)」
 『英検』を極めた池松の『統一駆』にこのような「スピード勝負」は通用しない。
 池松は回転する刃物を安々と見切ると、二本の指でそれを止めてみせた。

 と、そこへ創面の腕が床から飛び出す。回転物体はDummy(ダミー)だ。
 池松の足を狙う。
「――フッ!!」
 だが、それすらも――
 池松は予期していたように、創面へ震脚(sing-cat)を繰り出す。
「―――――っくッ!!」
 とっさに腕でガードするも、トーフ化された床ごと、どさり。と創面は階下へ叩き落された。
「――ああああッッ!」


 ……部屋の中央で回転していたはずの物体は、もはや止まっていた。
 それは、パイプ椅子を組み合わせて、エプロンを取り付けたまがい物である。
 池松の動体視力は、その偽装を安々と見抜いていた。


◇ ◇ ◇

≪――今のままでは
 お前は『殻(KAKU)』に勝つことはできない≫

 自分が殻を倒すことを、池松は何故期待しているのだろうか……?
 自分が手芸者だから?日谷の息子だから?
 あるいは『殻』という名前通り、雲類鷲殻は何らかの魔人能力で、核シェルター並の防御力をほこっているだとか、そういった理由かもしれない。
 創面の『アゲンスト・トーフ』なら、それも破れるだろうか。
 だが、そのためには創面が手芸者として成長することが不可欠だ。

 もっと先のことだと思っていた。
 姉や自分が魔人化したこともあって、最近の日谷家はしばしの平穏に包まれていた。
 自分が手芸者になる必要など、無いのだと。

 だが、今しかないのだ。
 創面が手芸者に成長するとしたら、いくら死んでも蘇生される。このフィールドで成長するしか、機会は無い。

「サンキュー(ありがとうな)、小野寺。」

 創面は、この機会を用意してくれた小野寺塩素に感謝した。

◇ ◇ ◇

「波ッ!」
 池松が階下へ降り、追撃を仕掛ける。
 創面はとっさに針のついた糸を大きな机へ絡ませる。体を机に引き寄せ、その攻撃を避けた。
 転がり、壁に手をつき、体勢を立て直す。
「……はぁ!……はぁ!ロクロ!力を借りるぞ!」
 『英検』による心身制御。創面はロクロの力を引き出す。
『アァーーーーッ!?まァだ諦めねえのかよ!!』
 創面は当然だ。とばかりに返答もしない。
『フーッフッフッフ!「絶体絶命――剣が峰」と言った所か!……さァソメン、意地汚くあがいてみせな!』

 エプロンを捨てた創面は、もはや全裸に三角巾を身につけるのみだ。
 三角巾から素早く糸を紡ぎだし、糸巻きへ巻きつける。 ついに完全なる全裸を遂げた。
 古来より、強い手芸者ほど裸体に近くなると言う伝承があるが、創面は特にそれを意識したわけではない。
 糸巻きを口に咥え、創面は高速匍匐前進を開始。
 創面が父から受けた手芸者の修行は、基礎訓練だけだ。その中でも特に、匍匐前進は苦手だった。ロクロの手芸者としての地力に、創面は今さらながら感心する。
 池松が身構える。
「――征波ッ!」
 跳びかかり、創面へ回し蹴りを叩きこむ。
 もはや人間の姿を捨てた創面は、蛇のようにぐにゃぐにゃと動きまわると、シャチホコの姿勢で跳躍!――池松の攻撃を回避!回転!着地!
「―――――ッ!」
 さらに創面は床を、壁を、天井を高速で動きまわる。
 創面の意識は、ロクロを取り込み、煮こまれたトーフのように混濁した状態へと変貌する。
 目に捉えるのも難しい創面の動き。
 跳躍し、回転し、ブリッジの姿勢のまま天井を這い、池松の周囲を動きまわる。
「…………。」
 池松が慎重に動くのは、壁面や天井のトーフ化を警戒しているためだ。
 だが、創面の狙いはそこにはない。

 見回すと、部屋中に糸。糸。糸。

 『アゲンスト・トーフ』で器用に張り付けられた糸が、部屋に張り巡らされる。
 創面は己の肉体をつかみとり、糸へと絡ませる。
 万能糸の効果は、一分間しかもたない。
 しかし糸は増え続ける。池松が下手に動けば、万能糸に触れる可能性がある。
 このままでは、やがては完全に身動きがとれなくなるだろう。
「………………ああ、悪くない。」
 池松が動く。
「――――……。」





「だが、この程度で身動きできない『英語』だと。……貴様は「本気」でそう思ったのか?」





 池松が床を蹴る!
 その動きは、一切の躊躇の無い――――「創面への突撃」
 鳴り響く、地響きのような足音、それは、本気の突撃を示していた。
 池松は姿勢を崩さず、しかし急所に当たらない正確な動きで、巧みに糸を回避する。
 これこそが『統一駆』!流暢な英語を話すための、完全なる肉体の制御!
 とは言えそれも完全ではない。
 ブシュッ と音をたて、万能糸が池松の脚を切断した。
 だが、糸から抜け出たその脚は、元通りつながったまま――
 序盤に見せたRocketpunch(ロケットパンチ)と同様、池松の手足を切断した所で、それは何の効果ももたらさない。

 英検の段位には『道』の選択を迫られる。池松の選んだ道、《晴天道》――――
 池松は「あえて」糸に当たっているのだ。決して立ち止まらず真っ直ぐに、敵へ突き進み、前進すること。それが池松の『英語』であると、創面に教示しているかのように……!

「―――――くぅ!……っそぉおおおおおおおおおおおッ!!」
 もはやAmbushなど諦めた。
 しゅるり。と、素麺のようなしなやかさで、
 創面は突撃する池松に対し、蛇か、あるいはナメクジのようにまとわりつく。
 捨て身の攻撃。
「――『豆腐』が。」
 池松はそれを正確につかみとると、ゴミ雑巾のように投げ飛ばした。
「ダッッ!(Dust:「塵芥」という意味の英語)」
「あああああああッッ!!」
「――『津波』に勝てるとでも……?」
 不可解な問いかけ。創面はそれに答える余裕も無い。

 吹き飛び転がり、万能糸に脚を取られる。
 ブツリ、と創面の左脚が切断され、宙を舞う。
「はぁッッ!!」
 壁へたたきつけられる。
 吹き飛ばされた左脚が回転し、部屋の隅に転がる。
「――ッあ…ああああ…あああ…あ!!」
『おいおいソメン!こりゃあ、また死ぬなァ……?』
 吐血。
 呼吸が乱れる。
 失った左足から血が吹き出る。

「ゲホッ!まだ……まだだ!……俺はまだ、生きている。」
 創面が顔をあげる。
 死んでもやり直しはきく。
 だんだんと死生観が麻痺してくるこの状況で、
 一回戦で小波が見せたような、賢い引き際というものを、創面は知らない。
 ボロ雑巾のように意地汚く這いずりまわってでも、創面はまだ、死にたくなかった。

『フ……


 フ……フッフッフ。……ソメン。だったら俺からも「インストラクション」――だ。手芸の極意を忘れるなよ。「身近なもの」を死ぬまで利用し続けるのが、手芸者ってェもんだぜ――



◇ ◇ ◇

 跳躍。
 匍匐前進。
 縫合。
 父に受けた手芸の基礎訓練を、創面はほとんど忘れていた。

 あの日は、丁度こんな糸だらけの部屋の中。
 昔の創面の精神は、今と比べると豆腐のように繊細で、
 学校ではいつも姉に守ってもらうほど気弱だった。
「手芸とは。」
 父が言葉を紡ぐ。
「日常の、ありとあらゆる物を」
 手には糸巻き。部屋には張り巡らされた、糸。糸。糸。
「いかに創意工夫し、いかに生かすか――」
 幼い創面はそれを、匍匐前進でくぐり抜ける。
「その一瞬の創造性が、生死を分ける。」
 初めて見る異様な部屋。
 少しでも動きを間違えれば、糸が身体を傷つける。
 創面は匍匐前進で、部屋を周回させられていた。
 ――どうしてこんなことしなきゃいけないんだ……。
 姉は手芸者の訓練を受けていない。日谷の女は、豆腐を扱う技術だけを教わる。
 母と姉を守るため、手芸者になるのだと、父が言う。
 ――嫌だね俺は!何で俺が姉貴を守らなきゃならないんだよ!
 あの頃から創面は、素直な男ではなかった。

 母が『敵』の刺客に殺害されたのは、その少し後のこと。
 姉の奴子はそれがきっかけで魔人となり、魔人能力『豆腐を粗末にする奴は豆腐の角に頭をぶつけて死ね!』が使えるようになった。
 そのおかげが、『日谷』の戦力は大幅に増強され、『敵』からの攻撃は弱まることとなる。
 創面はそれ以来、手芸の修行をすることは無くなった。

 あの頃はまだ、創面が豆腐を粗末に扱っても、姉が怒ることはなかった。
 姉なりに、母を失った弟のことを気遣っていたのだろう。
 それがいつからか、今のように豆腐を投げ合う関係になったのか……。

 裁縫をする姉の姿。
 ――私が手芸者になるよ。
 それで家を守るから。姉はそう言ったが、創面が身に着けていた綻びだらけのエプロンをみればわかるように、姉に手芸の才能は無かった。
 ――無理だよ。姉貴には。
 創面が否定する。 ……何故。
 ――やめておけよ。
 何故。
 あの時……言えなかったのか……!?
 自分が手芸者に、なるのだと。仇をとるのだと。父を超えるのだと。

 強くなって、家を、姉を、守るのだと。


「パ~~~~~フゥ~~~~~~~~」


 どこか遠くで、
 豆腐屋の笛の音が、聴こえた気がした。


◇ ◇ ◇

 目を開く。
 創面は視界の左側、切り離された己の左足に目をやる。
 糸のついた針を投げ、その足に突き刺す。
「――――ッと……!」
 それを、まっすぐに向かってくる池松の進路に向けて、放り投げる。
 足の残骸は池松の硬く厚い胸板にぶち当たると、跳ね飛ばされてしまった。
 《晴天道》を歩む池松。
 例え『アゲンスト・トーフ』の効果があろうと、障害物にすらならないそれを、池松は避けたりはしない。椅子も机も、棚も何もかも破壊し、ただ真っ直ぐに突き進む。
「Coooooooooooo――――――――――」
 彼はこれまでに溜めた力を、この一撃に解放するつもりなのだ。

 創面はこれまで、Ambush(奇襲)にこだわってきた。
 だが、それだけでは駄目だ。
 それでは、池松には勝てない。
 自分にできて、池松にできないこと。
 ――『統一駆』に並ぶ『豆腐流』を、ここで完成させる必要がある。

≪臨機応変――変幻自在≫

 整える呼吸。
 手芸者の心得。
 ロクロは言った。最も「身近な物」とは……。
「ハアアアアアアアーッ」
「oooooooooooo――――――――――」

≪決めるなら、一撃……≫

 迫り来る池松の手刀。
 流血する右足。軋む肉体。
 池松はこう言った。「一撃で決めろ」と。

≪その……一瞬の創造性――ッ!≫

 創面は膝をつき立ち上がる。――血が吹き出る、不安定な義足で……!

「姉貴――ッ頼む!!俺に――力をくれッ!!」

 その肉体。その「腕」こそ、最も身近な――「日用品」に他ならないッ!
 創面は右腕に、「糸」を巻きつける。
 <<トーフ化の弱点は自明≫
 回転する――己の「腕」ッ!
 ≪トーフ化の際の『防御力』の低さにある≫
 その肉と骨と爪が伸び、
 ≪即ちそれは、『加工』が可能ということ≫
 できあがるのは、細く、長い、「針」となった、創面の「腕」……!
 迫り来る池松。創面は前に踏み出すと、

「――シッッ――ッタアアアアアアア ア ア アッ!!(Sister:「姉」という意味の英語)」

「oooooo o o o――――――――――――――――――
 その腕を、池松向けて 真 っ直ぐに突き出す。
 ――――――………ッ!!」

 グサリ。と、
 投げつけた左足。その『アゲンスト・トーフ』の効果が重なり、
 その針が、池松の強靭な肉体を、胸を、心臓を、貫き通す!
 波のような血しぶきが、創面に降りかかる。
「…………ッ!!」
 池松は、しかし――
「な――――――」
 なおも――
「う――嘘だろ――何故だッ!」
 創面の絶叫。
「……何故なんだあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――ッッ!?」
 ここまで来て、創面は真に恐怖の表情を浮かべる。
「………。」




 なおも、足を踏み出す。池松の肉体は……………………………「止 まらな い」




「…………!!……!………!!!」
 踏み出される足
 ――肉体を制御する池松の『統一駆』
 池松の目が光る
 ――まさか!
 その手刀が
 ――池松叢雲は!
 創面めがけ――
 ――心臓を失っても、 なお……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 Sploo o o o o o o o o o oosh……
 波音……
 (ばかな……)
 創面は幻視する。
 大きな水の固まりを……何もかもを飲み込み押し寄せる。その濁流の姿を……!
 その巨体にいくら銛を打ち込もうとも、それは『Beat the air(豆腐に鎹)』
 死してなお、決して歩みを止めぬそれは、そう、

 ――――――――『T S U N A M I』

 『TOFU』と同様、「日本発祥」の『世 界 共 通 語』――――――――――!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「止まれ――止まれ……止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止 ま
れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――――――――――――――ッ!!」

 創面の"銛"はただの"銛"ではない。
 その銛は『TSUNAMI』をも『TOFU』へと変貌させる。
 突き刺した針の腕、天へ向け力を込め、
『アゲンスト・トーフ』でトーフ化した池松の体を、その頭を、創面の腕が両断する!

「うぁぁあああああああああ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ  あ  あッ!!」

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 パシュンッ

 Sploo o o o o o o o o o ooshhh!!!

 津波のような血しぶき。
 池松の手刀が、創面の眉間にゴツン、と当たる。
「なっ……………………。」
 創面の身体は鮮血に染まり、
「……。」
 目の前には、
 海が割れるように、仮面と共に左右に両断された池松の顔。
 死んだはずのその男の、
 その口が、わずかに動く。
 ――そして、
 創面は、確かに聞いた。

 池松の―――その言葉を。









「――――合格だ(Go KAKU down:「ゆけ。そして、殻を倒せ!」という意味の英語)」

◇ ◇ ◇

 ドサリ。と、
 試合終了の合図と共に、倒れこんだ二人の身体が現実世界へと転送された。
『日谷創面』―― Lesson合格


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最終更新:2011年11月08日 00:04