アットウィキロゴ
 

速川いずみ(はやかわ いずみ)

設定

セーラー服にショートカットの、陰鬱な目付きの気弱そうな少女。
生まれつき吃音持ちで、他人とまともに会話をすることができない。
かつてその魔人能力で残虐な殺人を繰り返した、連続殺人鬼である。

父親もまた殺人鬼であり、幼少時からの教育で歪んだ価値観が精神に根付いている。
よって理論的に戦うタイプではなく、殺戮本能に従った直感的な戦闘を行う。
格闘技等のセオリーではなく、ほとんど本能的にその場の環境を使いこなし、
柔らかな身のこなしで、意表を突いた致命的な一撃を与える戦闘スタイルである。
裁縫を趣味とする少女らしい一面もあるものの、その技能すらも殺人に活用される。

「身体スキル」:【手先が器用Lv.3】【身のこなしLv.3】
「知的スキル」:【殺戮本能Lv.4】【非社会性Lv.-2】
「固有スキル」:【東亰チェヰンソウマサクゥル[魔]】【凶器攻撃Lv.4】
「オプション」:【リボン一巻(6m)Lv.2】【ソーイングセットLv.2】

特殊能力『東亰チェヰンソウマサクゥル』

接触した物体上の半径2m圏内に、回転する「チェーンソーの刃」を生やす能力。
同時にいくつでも生やすことができ、刃の大きさもある程度調節できる。
「チェーンソーの刃」は実物同様の強度と切れ味を誇り、回転数の増減も自在。
発生するエンジン音や振動も、実物のチェーンソーと同様。

プロローグ

月の見えない曇天の夜の下、少女の白いシルエットはあまりにも寂しげだった。
足を進めるたびに、暗室の植物じみてふらふらと揺れる体。
歩道橋の下から時折届くヘッドライトが、その陰鬱な目を不規則な間隔で照らす。

目的があるのかどうかも分からない少女のその足取りは、歩道橋の中ほどで止まった。
彼女は伏せていた目を上げ、道路の反対側から階段を登ってくる、一人の男の影を認めている。

「こんばんは」

制帽のつばを人差し指で押し上げ、にこやかに挨拶する。
交番勤務の警察官なのだろう。まだ若く、態度には新人らしさが漂っていた。

「どうしたのかな、こんな時間に。
 一人じゃあ危ない。お父さんのところに帰らないと」

「……あっ、あの、あの、し」

何か言葉を発しようとした少女の言葉は、しゃくりあげるようにして途絶えた。
唇を震わせながら警官の顔を見上げ、深く頭を下げる。
ショートカットの黒髪が、お辞儀に合わせて揺れた。

「は、速川、いずみと、申します。よ、よ、よろしく……お願……」

「知ってるよ。いずみちゃん」

警官が笑う。

「こ、この度は……お、お父……さんが、ふ、不徳を……いたし、」

「知ってるよ」

「……」

「お父さんの事は、本当に残念に思っているよ……
 彼は数少ない、僕の理解者だった」

一歩、二歩と後ずさるいずみに対して、警官は同じ歩調で距離を詰める。
歩道橋のちょうど中程。少女は怯えているが、恐らく逃げきることはできないだろう。
竦むような高さを隔てて、バイクの轟音が通り過ぎていった。

「一つ言い訳しておくけれど、僕は犯罪が本当に嫌いなんだ。
 特に、酔っぱらいの暴行とか、家庭内暴力とかね。
 そういう、汚らしい小悪党どもは、大嫌いだ」

「す、すいません……すいません!」

「責めているわけじゃあない。むしろ君のお父さんの凄さを褒めているのさ。
 芸術だよ。ゲスな犯罪者じゃ駄目だ。彼のような人がいなくてはならなかった……
 警官と殺人犯。理想的な共生関係だった」

にこやかに笑う警官。
笑いながら、拳銃を取り出し撃鉄を起こす。ごく当然のように。

「でも君が、そのお父さんを殺してしまった」

「……」

「すると僕のことまで、誰かに言ってしまうのかもしれない。
 もしかしたら僕を殺すつもりなのかも。
 人を殺すような子供は、信用できないなぁ~」

「や、や、やめて……やめて……」

いずみは両手で顔を覆い、懇願の声を上げる。
銃口を向ける警官は、初めて『自ら』手を下す昂揚に興奮を抑え切れない。
頬が殺戮の愉悦に歪む。

「お父さんのところに帰るといい」

一発。二発。銃声は、車のエンジン音にかき消される。
少女の小さなシルエットは、ゆっくりと倒れて――

「………………。
 私は……嫌」

地面から聞こえた残響のようなか細い声に、警官は眉を顰めた。
歩道橋の柵が作る影で、倒れたいずみの体は暗く隠れている……

彼女の頭を守るように、銀色の何かが生えているのは気のせいだろうか?
例えば、チェーンソーの刃のような。それが体から生えて、銃弾を防ぐ盾となっている。
先程から響くエンジン音は異様に近い。道路を走行する車の音ではあり得なかった。

(魔人能力)

警官の判断は素早かった。拳銃を地面へと、倒れ伏すいずみへと向ける。
その体が消えた。
否、恐るべき速さで――足音ではあり得ない『駆動音』が、背後へと回り込んでいた。
数瞬前まで確かに倒れていたはずの姿勢から。

「い、嫌……嫌なの……」

振り向いた時には既に、

「え?」

いずみは警官の眼前数cmの距離に迫っていた。

その腕から生えたチェーンソーの刃は警官の頭蓋を致命的に割り砕き、
彼の意識と生命を、赤黒い内容物と共に橋上にぶち撒けていく。

空中からの恐るべき強襲を終えたいずみは恐るべきエンジンの轟音と共に5m滑走し、止まる。
ガリガリガリガリ、と地を削る音。靴の軌跡には複数列の黒い焦げ跡が煙を上げて、
訓練を積んだ警官ですら成す術なく死に至った、彼女の『速度』を雄弁に語っていた。

「嫌。あなたは、嫌い――」

靴の下にキャタピラのごとく設置された、チェーンソーの刃――
倒れた状態から一瞬で警官の背後に回りこんだ異常な機動の正体はそれである。
触れた箇所から『チェーンソーの刃を生やす』。それが速川いずみの魔人能力。

「……。さようなら」

少女は切断された死体に向けて、深く頭を下げた。
吃音はなかった。もはや生命を持つ人間ではないからだ。
寧ろ、薄い微笑みすらその可憐な唇に浮かぶようにすら見える。

「ごきげんよう」

「……また、会いましょう」

束の間雲間から現れた青白い月明かりが、橋上に散ったまだらを照らす。

眼下を行き交う、無数のエンジン音。
それらに紛れこむように、チェーンソーの音は夜闇に響く。
他のエンジンを停止させるためだけに稼働する、獰猛にして小さなエンジン。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年12月03日 01:18