黒の皇女と白の頑張り屋
「……殺し合い、ね……馬鹿なことを」
とある古びたホテルの一室。
そこでは、黒髪の少女がベッドに腰かけていた。
「……私は、こんなことをしている場合じゃないのに……」
どことなく理知的な雰囲気を与える彼女は、かなりの美少女といってよく、すらりとしたスレンダーな体型はまるでモデルのようにも見えた。
男だったらもやしと馬鹿にされたかもしれないが、女なので問題ない。もっとも、胸の方は……げふんげふん、女の子には言ってはいけないことがあるのです。
ともかく少女は、しばらくの間頭に手を当てて何事かを考えていた風であったが、少しして立ち上がり、窓越しに外を眺める。
周囲に人はいないようだ。
警戒は怠っていない。殺し合いの場でうっかりなどしていれば、すぐに命取りになる。
少女には、それがよく分かっていた。
「……ここにはあの子がいるのかしら?それなら一刻も早く探し出して助けないと……車椅子の人間なんて殺し合いじゃ絶好の標的に決まってる!」
思い出すのは弟の顔。
血を分けた、たった一人の大切な弟。少女は弟のために全てを捨て、世界さえも滅ぼす覚悟を決めていた。
こんなところに弟まで連れて来られているのなら、あの主催者を絶対に許すわけにはいかない。
「……許さない、許さないわっ!次に会ったときは命はないと思いなさい!」
だいたいなんなんだ、あの主催者は。殺し合いをするかと思えば突然―――
とある古びたホテルの一室。
そこでは、黒髪の少女がベッドに腰かけていた。
「……私は、こんなことをしている場合じゃないのに……」
どことなく理知的な雰囲気を与える彼女は、かなりの美少女といってよく、すらりとしたスレンダーな体型はまるでモデルのようにも見えた。
男だったらもやしと馬鹿にされたかもしれないが、女なので問題ない。もっとも、胸の方は……げふんげふん、女の子には言ってはいけないことがあるのです。
ともかく少女は、しばらくの間頭に手を当てて何事かを考えていた風であったが、少しして立ち上がり、窓越しに外を眺める。
周囲に人はいないようだ。
警戒は怠っていない。殺し合いの場でうっかりなどしていれば、すぐに命取りになる。
少女には、それがよく分かっていた。
「……ここにはあの子がいるのかしら?それなら一刻も早く探し出して助けないと……車椅子の人間なんて殺し合いじゃ絶好の標的に決まってる!」
思い出すのは弟の顔。
血を分けた、たった一人の大切な弟。少女は弟のために全てを捨て、世界さえも滅ぼす覚悟を決めていた。
こんなところに弟まで連れて来られているのなら、あの主催者を絶対に許すわけにはいかない。
「……許さない、許さないわっ!次に会ったときは命はないと思いなさい!」
だいたいなんなんだ、あの主催者は。殺し合いをするかと思えば突然―――
突然―――
「……っ」
目の前で行われた恥辱を思い出し、意識せず顔が赤に染まる。
少女はその美貌故か、それとも人柄の良さ(あくまで世間的な)故か男性に人気があり、本人もそれを知り受け流していたために、そういうことには慣れているように思われているだろうが、実際はそうではない。
弟のことで頭がいっぱいの少女は、初恋を経験して以来恋愛経験なんて皆無なのである。
「あ、あんな下品なことを目の前でするなんて……、あの子が見ていたらどうするのよ……いや、目は見えないだろうけど……何言ってるのよ私……」
あらぬ方向に思考を巡らせ、自分で否定したら少し落ち着いた。
少女は虚空をにらみながら、今後について考える。
(……落ち着かなきゃ。……私がすべきことは、何としても日本へ戻って、ブリタニアに復讐すること。そして、あの子を守り抜くことよ。……そのためには、他の人間に犠牲になってもらうしかないわね。……幸い、私にはギアスが―――あの危ない魔法使いからもらった神の力がある―――使いどころを考えて駒を見つけないとね)
目の前で行われた恥辱を思い出し、意識せず顔が赤に染まる。
少女はその美貌故か、それとも人柄の良さ(あくまで世間的な)故か男性に人気があり、本人もそれを知り受け流していたために、そういうことには慣れているように思われているだろうが、実際はそうではない。
弟のことで頭がいっぱいの少女は、初恋を経験して以来恋愛経験なんて皆無なのである。
「あ、あんな下品なことを目の前でするなんて……、あの子が見ていたらどうするのよ……いや、目は見えないだろうけど……何言ってるのよ私……」
あらぬ方向に思考を巡らせ、自分で否定したら少し落ち着いた。
少女は虚空をにらみながら、今後について考える。
(……落ち着かなきゃ。……私がすべきことは、何としても日本へ戻って、ブリタニアに復讐すること。そして、あの子を守り抜くことよ。……そのためには、他の人間に犠牲になってもらうしかないわね。……幸い、私にはギアスが―――あの危ない魔法使いからもらった神の力がある―――使いどころを考えて駒を見つけないとね)
少女が考えることは、その外見にはふさわしくない極めて危険で邪悪な思考。
しかし、彼女はここに来る前から、自らの前に立ちふさがる人間や敵はことごとく排除し続けてきたのだ。今更、人を殺すことに抵抗などない。
(あとは、仲間との合流。弟は最優先だけれど、親友のあいつや黒の騎士団のメンバーがいるなら協力したい。……もっとも、騎士団は場合によっては私のために死んでもらうことになるけど。でも、ここに誰がいるか分からない以上過剰な期待はできない―――知り合いが誰もいない前提で考えた方がいい。私もできればあの二人には殺し合いに巻き込まれてほしくないし。そうなれば―――)
「よし、とりあえず支給品を確認しましょう」
彼女は思考とは別の言葉を発しながら、自らの手元にあったディパックを開封する。何故このようなことをするのか?
答えは一つ、彼女はここに飛ばされたあと、考えたからだ。
ここでの光景は、あの男女二人組に見られているのではないか、と。
あの二人はどう考えてもあの女が殺されること(そして犯されること)を楽しんでいた。
殺人、または相手を支配し独占するという行為に快楽、さらにいうなら性欲を覚えるタイプではないか、と。
単純にして、いちばん厄介なタイプ。おそらく説得に応じる類の人間ではないだろう。本能のままに生きているならそれもまた当然。
そしてそれならば―――この殺し合いを覗いてにやにやしているに違いない、彼女はこう推理したのだ。実に胸糞の悪い話ではあるが。
もっともただの可能性の一つには過ぎないが、わずかでも正しいかもしれないのなら疑わないわけにはいかない。
それならば、ずっと黙ってぼうっと立っていては主催者に反逆しようとたくらんでいると思われるかもしれない。故に、彼女は思考を巡らせながら殺し合いへの『意思』を見せようとしたのだ。
―――もっとも、素直に従うつもりなどなく、ここから脱出できたのならあの二人に自害を命じる心づもりであったのだが。
(―――しばらくは、人を殺すことを好まない善良な人間の陰に隠れておいた方がいいわね)
「これは……懐中電灯?あとは、食料と……水……」
もちろん彼女は、口にした支給品はちゃんと把握している。考えていることと全く別のことを同時に口に出せるのは、彼女のすぐれた頭脳故だろう。
「あとこれは……紙?……何も書いていないようだけど……素材が特殊ということもなさそうだし……まあいいわ、今は保留にしておきましょう。とにかく武器ではなさそうだしね」
謎の白紙には首をひねるが、ひとまず置いておく。
きっとこれも支給品の一つであることには間違いない。考察情報のメモにでも使えということなのかもしれない。
もしくは、他の人間には別の何かが書かれた紙が支給されているのか。ゲーム感覚の殺し合いだとしたら、そういう遊びがしこまれていても不思議ではない。
どちらにせよ、自分一人では今のところ分からない。
(できればある程度単純で正義感が強く、しかし冷静な判断も下すことのできる人物が理想と言ったところかしら。そうそう上手く会えるかどうかは分からないけどね)
何も書かれていない紙をディパックに押し込み、少女は次の支給品に手をかける。
「そして……これは……?」
(可能な限りギアスは温存して、どうしようもない時だけ使う。……それにしても、あの魔法使いは何してるのよ。共犯者のくせに私が拉致されるのを黙って見てたっていうの?……ふん、知らないわよ)
後半はやや共犯者たる拘束衣の男の愚痴になりつつ、少女はよく見えないそれに触れ―――
しかし、彼女はここに来る前から、自らの前に立ちふさがる人間や敵はことごとく排除し続けてきたのだ。今更、人を殺すことに抵抗などない。
(あとは、仲間との合流。弟は最優先だけれど、親友のあいつや黒の騎士団のメンバーがいるなら協力したい。……もっとも、騎士団は場合によっては私のために死んでもらうことになるけど。でも、ここに誰がいるか分からない以上過剰な期待はできない―――知り合いが誰もいない前提で考えた方がいい。私もできればあの二人には殺し合いに巻き込まれてほしくないし。そうなれば―――)
「よし、とりあえず支給品を確認しましょう」
彼女は思考とは別の言葉を発しながら、自らの手元にあったディパックを開封する。何故このようなことをするのか?
答えは一つ、彼女はここに飛ばされたあと、考えたからだ。
ここでの光景は、あの男女二人組に見られているのではないか、と。
あの二人はどう考えてもあの女が殺されること(そして犯されること)を楽しんでいた。
殺人、または相手を支配し独占するという行為に快楽、さらにいうなら性欲を覚えるタイプではないか、と。
単純にして、いちばん厄介なタイプ。おそらく説得に応じる類の人間ではないだろう。本能のままに生きているならそれもまた当然。
そしてそれならば―――この殺し合いを覗いてにやにやしているに違いない、彼女はこう推理したのだ。実に胸糞の悪い話ではあるが。
もっともただの可能性の一つには過ぎないが、わずかでも正しいかもしれないのなら疑わないわけにはいかない。
それならば、ずっと黙ってぼうっと立っていては主催者に反逆しようとたくらんでいると思われるかもしれない。故に、彼女は思考を巡らせながら殺し合いへの『意思』を見せようとしたのだ。
―――もっとも、素直に従うつもりなどなく、ここから脱出できたのならあの二人に自害を命じる心づもりであったのだが。
(―――しばらくは、人を殺すことを好まない善良な人間の陰に隠れておいた方がいいわね)
「これは……懐中電灯?あとは、食料と……水……」
もちろん彼女は、口にした支給品はちゃんと把握している。考えていることと全く別のことを同時に口に出せるのは、彼女のすぐれた頭脳故だろう。
「あとこれは……紙?……何も書いていないようだけど……素材が特殊ということもなさそうだし……まあいいわ、今は保留にしておきましょう。とにかく武器ではなさそうだしね」
謎の白紙には首をひねるが、ひとまず置いておく。
きっとこれも支給品の一つであることには間違いない。考察情報のメモにでも使えということなのかもしれない。
もしくは、他の人間には別の何かが書かれた紙が支給されているのか。ゲーム感覚の殺し合いだとしたら、そういう遊びがしこまれていても不思議ではない。
どちらにせよ、自分一人では今のところ分からない。
(できればある程度単純で正義感が強く、しかし冷静な判断も下すことのできる人物が理想と言ったところかしら。そうそう上手く会えるかどうかは分からないけどね)
何も書かれていない紙をディパックに押し込み、少女は次の支給品に手をかける。
「そして……これは……?」
(可能な限りギアスは温存して、どうしようもない時だけ使う。……それにしても、あの魔法使いは何してるのよ。共犯者のくせに私が拉致されるのを黙って見てたっていうの?……ふん、知らないわよ)
後半はやや共犯者たる拘束衣の男の愚痴になりつつ、少女はよく見えないそれに触れ―――
『……なっ!?』
「へぇあ!?」
それが突然悲鳴を上げたことに驚き、自らも情けない声を出してしまった。
「へぇあ!?」
それが突然悲鳴を上げたことに驚き、自らも情けない声を出してしまった。
ここで一つ、少女・ルルーシュ・ランペルージはミスをした。
主催者の監視に警戒し、ディパックの中身を確認してしまったため、外への警戒を怠ってしまっていたこと。
もしここで尚外を見ていれば―――この建物に近づく人間の姿に気づいたであろうに。
もっとも、これが『うっかり』と言われる所以なのかもしれないが。
主催者の監視に警戒し、ディパックの中身を確認してしまったため、外への警戒を怠ってしまっていたこと。
もしここで尚外を見ていれば―――この建物に近づく人間の姿に気づいたであろうに。
もっとも、これが『うっかり』と言われる所以なのかもしれないが。
※
森の中をさまよう、一人の少年がいた。
目深に白い帽子をかぶり、その身体も白く長いシャツが覆っている。
顔立ちは幼く、まだ10代前半頃。
無邪気な笑顔が似合う穏やかな少年、と言った雰囲気だ。
彼は、ただ森をひたすら歩き続ける。
その手に、一丁の銃を握り締めて。
時折何かを呟きながら、時々辺りを見回しながら、素早く、しかし慎重に歩く。
しかし。
ぴたりと、少年の足が止まる。
「……」
それは、一件のホテルの前だった。
明らかに寂れており、
「……○○」
少年は聞き取れないくらい小さな声で何かを呟いて……そのホテルに足を踏み入れた。
そして、カウンターの前でしばらく立ち止まっていたが―――やがて自分の直感が正しいことを確信し、少年は。
ゆっくりと、階段を登って行った。
目深に白い帽子をかぶり、その身体も白く長いシャツが覆っている。
顔立ちは幼く、まだ10代前半頃。
無邪気な笑顔が似合う穏やかな少年、と言った雰囲気だ。
彼は、ただ森をひたすら歩き続ける。
その手に、一丁の銃を握り締めて。
時折何かを呟きながら、時々辺りを見回しながら、素早く、しかし慎重に歩く。
しかし。
ぴたりと、少年の足が止まる。
「……」
それは、一件のホテルの前だった。
明らかに寂れており、
「……○○」
少年は聞き取れないくらい小さな声で何かを呟いて……そのホテルに足を踏み入れた。
そして、カウンターの前でしばらく立ち止まっていたが―――やがて自分の直感が正しいことを確信し、少年は。
ゆっくりと、階段を登って行った。
黒い拳銃が、ぎらりと光った。
※
『つまり、ここは殺し合いの場、ということですね』
「そういうことになるわね、分かってくれて助かったわ」
(何かと思えば喋るタコ……なんてね。驚いたけど、魔法使いや神の力があるんだもの、喋れる動物がいてもおかしくない)
場所は戻り、ホテルのとある一室。
そこに、一人の少女と一人の……否、一匹のクリーチャ―が存在していた。
端的に言えば、いや端的に言わずとも、たこ。
桃色をした見事なたこである。イヤホン?が付いていることと髪が生えていること、喋ることを除けばごく普通のたこである。……まあ要するに普通のたこじゃあないんだけれども。
一番少女が驚いたのは、これが支給品、武器の代わりだということだ。
(くそ、役に立ちそうにない……仕方ないわね、もしもの時は非常食にでもすればいいかしら)
考えていることはあまりにもえげつない。
『元はボーカロイドというロボットですので、人間と同じ思考は可能です』
そのたこは男性声でそう話す。名前はたこルカというらしい。
「そう、それはよかった。……それでたこルカ、貴方もここに来た経緯と初めの場にいた男女二人に心当たりはないのね?(ロボットなのになんでタコ型?作った人のセンスを疑うわ)」
『はい、ありません。話を聞いた以上マスターでも仲間でもないようですし、心当たりなどまるでありません』
「そう、ありがとう(使えないわね……)」
「そういうことになるわね、分かってくれて助かったわ」
(何かと思えば喋るタコ……なんてね。驚いたけど、魔法使いや神の力があるんだもの、喋れる動物がいてもおかしくない)
場所は戻り、ホテルのとある一室。
そこに、一人の少女と一人の……否、一匹のクリーチャ―が存在していた。
端的に言えば、いや端的に言わずとも、たこ。
桃色をした見事なたこである。イヤホン?が付いていることと髪が生えていること、喋ることを除けばごく普通のたこである。……まあ要するに普通のたこじゃあないんだけれども。
一番少女が驚いたのは、これが支給品、武器の代わりだということだ。
(くそ、役に立ちそうにない……仕方ないわね、もしもの時は非常食にでもすればいいかしら)
考えていることはあまりにもえげつない。
『元はボーカロイドというロボットですので、人間と同じ思考は可能です』
そのたこは男性声でそう話す。名前はたこルカというらしい。
「そう、それはよかった。……それでたこルカ、貴方もここに来た経緯と初めの場にいた男女二人に心当たりはないのね?(ロボットなのになんでタコ型?作った人のセンスを疑うわ)」
『はい、ありません。話を聞いた以上マスターでも仲間でもないようですし、心当たりなどまるでありません』
「そう、ありがとう(使えないわね……)」
頭の中とは違うことを口にしながら、少女はたこに矢継ぎ早に質問を投げかける。
「それで、貴方は知らないのね?ブリタニアや、イレブンや、エリア11のこと」
『貴方の話で初めて聞きました。……私は生まれは日本です、ブリタニアという国に支配されているなんて知りません』
見た目はたこだが、なかなかに聡明なようだ。自分はバイリンガルだと主張していたことだし、それも事実なのだろう。
しかし、まさか異なる世界のものだとは思わなかった。
たこが言うには日本という国はまだあり、ブリタニアなどという国も存在しない、という。
これを異世界と言わずに何という。
(……確かに、あの場には妙な格好の人間が何人かいたわ)
普通にエリア11で暮らすにはやや奇抜すぎる格好の人物。彼らはこのたこルカと同じように異世界の人間なのか?
……信じられないが、C.C.という悪魔の存在を知る彼女は否定しきれない。
「それで、貴方は知らないのね?ブリタニアや、イレブンや、エリア11のこと」
『貴方の話で初めて聞きました。……私は生まれは日本です、ブリタニアという国に支配されているなんて知りません』
見た目はたこだが、なかなかに聡明なようだ。自分はバイリンガルだと主張していたことだし、それも事実なのだろう。
しかし、まさか異なる世界のものだとは思わなかった。
たこが言うには日本という国はまだあり、ブリタニアなどという国も存在しない、という。
これを異世界と言わずに何という。
(……確かに、あの場には妙な格好の人間が何人かいたわ)
普通にエリア11で暮らすにはやや奇抜すぎる格好の人物。彼らはこのたこルカと同じように異世界の人間なのか?
……信じられないが、C.C.という悪魔の存在を知る彼女は否定しきれない。
(……まあいいわ、今のところはこの考えを肯定する材料も否定する材料もない……このたこからだけじゃ不十分ね、もっといろんな人間から話を聞いて考えないといけないわ……もしかしたら、C.C.のようにギアスの聞かない人間もいるかもしれないもの)
彼女はピザをむさぼり食う魔王のことを思い出しながらわずかにげんなりした。
彼女はピザをむさぼり食う魔王のことを思い出しながらわずかにげんなりした。
とにかく、今はこのたこルカからしぼりとれる限りの情報を絞り取ろう。
戦闘力はないようだが、盾くらいにはなれるかもしれない。弟と生き残るためには当然利用させてもらう。たこだろうとロボットだろうと。
世界を壊す―――そう決めた自分が、こんなとこで死んでいいはずがない。
戦闘力はないようだが、盾くらいにはなれるかもしれない。弟と生き残るためには当然利用させてもらう。たこだろうとロボットだろうと。
世界を壊す―――そう決めた自分が、こんなとこで死んでいいはずがない。
「そう……もしかしたら、私と貴方の来た世界は違、」
彼女がたこルカに問いかけた、その時。
彼女がたこルカに問いかけた、その時。
ガタン、と。
彼女の背後から―――音がした。
彼女の背後から―――音がした。
それは紛れもなく、人間の足跡。
「……っ!?」
『……誰ですか!?』
ルルーシュとたこルカが振り返ると、そこには少年が立っていた。
年齢はおそらく彼女よりも年下であろう、白い帽子に白い服を纏っている。
その表情は髪に隠れて見えないが……手に握られている銃は、その少年を危険人物と判断させるには十分だった。
(やばい、油断した―――!)
少女は自らがミスをしていたことを悟った。支給品に突然たこ型のクリーチャ―が出てきてそれが喋り出したことで、そちらにばかり注意がいっていたのだ。
(っ、たこルカに見せたくはないけど仕方ない……もしものときはギアスで―――)
「……い」
少年が、何かを呟く。
「……っ!?」
『……誰ですか!?』
ルルーシュとたこルカが振り返ると、そこには少年が立っていた。
年齢はおそらく彼女よりも年下であろう、白い帽子に白い服を纏っている。
その表情は髪に隠れて見えないが……手に握られている銃は、その少年を危険人物と判断させるには十分だった。
(やばい、油断した―――!)
少女は自らがミスをしていたことを悟った。支給品に突然たこ型のクリーチャ―が出てきてそれが喋り出したことで、そちらにばかり注意がいっていたのだ。
(っ、たこルカに見せたくはないけど仕方ない……もしものときはギアスで―――)
「……い」
少年が、何かを呟く。
殺す、か?
ルルーシュとたこルカの緊張は高まる。
ルルーシュとたこルカの緊張は高まる。
少年は銃をこちらに向ける気配はない。
しかし、その背後からただようオーラは只者ではなかった。
例えるならそう―――何かを『捕らえる』ような―――
背筋が凍る。
(冗談じゃない―――私はこんなところで死ぬわけには―――)
しかし、その背後からただようオーラは只者ではなかった。
例えるならそう―――何かを『捕らえる』ような―――
背筋が凍る。
(冗談じゃない―――私はこんなところで死ぬわけには―――)
少年が、一歩一人と一匹に歩み寄る。
(……ああもう、やむを得ない……ギアスをかけるしか!)
少女は立ち上がり、少年に視線を向ける。
そこで見たものは―――
(……ああもう、やむを得ない……ギアスをかけるしか!)
少女は立ち上がり、少年に視線を向ける。
そこで見たものは―――
「……は、はうううううううううう!!たこさんかあいいよおおおおおおお!おっもちかえりいいいいいいいいいいいいい!」
ゆかにちょこんと置かれたたこルカに頬ずりする少年の姿だった。
※
「ぼくは竜宮玲於奈。皆からはレナって呼ばれてるから、レナでいいよ」
「女の子みたいな愛称だね……」
「えへへ、そう?ぼくは気に入ってるけどね」
「女の子みたいな愛称だね……」
「えへへ、そう?ぼくは気に入ってるけどね」
少年と情報交換を終えたルルーシュは、疲れていた。
何故ならこれまでのやり取りがこうだったからである。
何故ならこれまでのやり取りがこうだったからである。
Q何でこの建物に入ったのか?
Aかあいいものの気配がしたから
Q何で銃を持っていたのか?
危険な人がいるかもしれないと思ったから
Q殺し合いには乗っていないのか?
A乗っていない。仲間がいるなら仲間を探してここから脱出したい。
Q……可愛いの、それ?
Aとってもかあいいよ!
Aかあいいものの気配がしたから
Q何で銃を持っていたのか?
危険な人がいるかもしれないと思ったから
Q殺し合いには乗っていないのか?
A乗っていない。仲間がいるなら仲間を探してここから脱出したい。
Q……可愛いの、それ?
Aとってもかあいいよ!
(……なに、この子……能天気すぎるんじゃない……?)
銃を持ち歩いていたということは、いざとなれば自衛はする覚悟はあったということなのだろうが、それにしても能天気すぎる。
ここが殺し合いだと分かっているだろうか。
たこルカをつついて恍惚に浸っている場合では間違いなくないと思う。
というかまず玲於奈、もといレナは趣味が悪い。
あんなうねうねした軟体動物のどこが可愛いというのだ。
銃を持ち歩いていたということは、いざとなれば自衛はする覚悟はあったということなのだろうが、それにしても能天気すぎる。
ここが殺し合いだと分かっているだろうか。
たこルカをつついて恍惚に浸っている場合では間違いなくないと思う。
というかまず玲於奈、もといレナは趣味が悪い。
あんなうねうねした軟体動物のどこが可愛いというのだ。
「ルルーシュさんも仲間を探しているんだよね?なら、ぼくと一緒に行動しない?……た、たこルカと一緒にいたいから……だってこんなにかあいいし……」
『……まさかこの姿で可愛いと言われるとは思いませんでしたが……』
戸惑っていながらまんざらでもない様子のたこルカに苛立ちながら、ルルーシュはずきずきと痛む頭を押さえた。
『……まさかこの姿で可愛いと言われるとは思いませんでしたが……』
戸惑っていながらまんざらでもない様子のたこルカに苛立ちながら、ルルーシュはずきずきと痛む頭を押さえた。
前途多難だ。
こんなところでとろとろしていて、もし弟が殺し合いに巻き込まれていたらどうなるのだろう。
それを思うと、ルルーシュは自らの不幸を嘆かざるを得なかった。
「……そ、そうね……一緒に仲間を探しましょう」
口元がひきつるのを隠すように、ルルーシュはにっこりと笑って見せた。
こんなところでとろとろしていて、もし弟が殺し合いに巻き込まれていたらどうなるのだろう。
それを思うと、ルルーシュは自らの不幸を嘆かざるを得なかった。
「……そ、そうね……一緒に仲間を探しましょう」
口元がひきつるのを隠すように、ルルーシュはにっこりと笑って見せた。
※
そして、もう一つ、彼女のうっかりがここに存在する。
(ひとまず、この子は積極的に殺し合いに乗るつもりじゃないみたいだからついていってもいいかな、でも―――)
それは。
あまりに幸せオーラをふりまく少年・玲於奈を、単純な人間だと勘違いしてしまったこと。
(……気は抜けない。悪い人じゃないとは思いたいけど……優しいふりをして皆を騙す人もいるかもしれない。部活メンバ―を傷つけるようなら……)
彼は、どこまでも仲間想いだった。
だから本来の彼は、ルルーシュとどこか似た思考の持ち主でもある。
それは。
あまりに幸せオーラをふりまく少年・玲於奈を、単純な人間だと勘違いしてしまったこと。
(……気は抜けない。悪い人じゃないとは思いたいけど……優しいふりをして皆を騙す人もいるかもしれない。部活メンバ―を傷つけるようなら……)
彼は、どこまでも仲間想いだった。
だから本来の彼は、ルルーシュとどこか似た思考の持ち主でもある。
ここに飛ばされる前に、あの会場に仲間の姿を見た―――気がした。
それは勘違いかもしれないし、本当かもしれない。
しかし、この場に仲間がいる可能性がいる以上、玲於奈の目指すことは一つだった。
皆で運命を打開して、雛見沢に戻りたい。
そのためには―――彼らに害を成すものは殺さなければならない。
幸せの一歩を、踏み出すのだ。
リナも鉄平も始末した。仲間たちは全員自分を許し、隠しごとはしないことを約束させられた。
自分は一人ではないと―――そう何度も教えられた。
だから、きっと、また自分が人を殺せば、仲間たちは悲しむだろう。
それを思うと心臓が締め付けられる想いだったが、それでもやらなければ。
殺し合いなどということに巻き込んだあの男女を許さない。
そして、―――自分を受け入れ救ってくれた、仲間がいるならば、そして仲間が命の危機にさらされているなら―――何としても助け出すと。
それは勘違いかもしれないし、本当かもしれない。
しかし、この場に仲間がいる可能性がいる以上、玲於奈の目指すことは一つだった。
皆で運命を打開して、雛見沢に戻りたい。
そのためには―――彼らに害を成すものは殺さなければならない。
幸せの一歩を、踏み出すのだ。
リナも鉄平も始末した。仲間たちは全員自分を許し、隠しごとはしないことを約束させられた。
自分は一人ではないと―――そう何度も教えられた。
だから、きっと、また自分が人を殺せば、仲間たちは悲しむだろう。
それを思うと心臓が締め付けられる想いだったが、それでもやらなければ。
殺し合いなどということに巻き込んだあの男女を許さない。
そして、―――自分を受け入れ救ってくれた、仲間がいるならば、そして仲間が命の危機にさらされているなら―――何としても助け出すと。
自分は既に殺人を犯した身だ、怖くない、悪人を殺すことは。
むしろ、自分がやらなければいけないのだ。
他の仲間たちには手を染めてほしくない。
(危険な人間は―――ぼくが殺すしかない)
許されないかもしれない、それでも。
皆でただ、幸せになるために。
(ルルーシュちゃん、貴方がいい人だって信じてるよ)
「はううう、たこルカかわいいよおおおお、お持ち返りしたいなああああ」
その笑顔の裏で、玲於奈は策略をめぐらせる。
この同行者が、仲間を痛めつける悪人ではないことを祈りながら。
むしろ、自分がやらなければいけないのだ。
他の仲間たちには手を染めてほしくない。
(危険な人間は―――ぼくが殺すしかない)
許されないかもしれない、それでも。
皆でただ、幸せになるために。
(ルルーシュちゃん、貴方がいい人だって信じてるよ)
「はううう、たこルカかわいいよおおおお、お持ち返りしたいなああああ」
その笑顔の裏で、玲於奈は策略をめぐらせる。
この同行者が、仲間を痛めつける悪人ではないことを祈りながら。
【E-4/ホテル跡/深夜】
【東京都:テレビ局跡付近】
【ルルーシュ・ランペルージ(♀)@コードギアス反逆のルルーシュ】
【状態】健康
【装備】たこルカ(♂)@VOCALOID
【持ち物】基本支給品、ランダム支給品1~2
【思考】
基本:生き残るためには手段を選ばない。どんな人間も利用して元の世界に帰る。
1:弟や親友、黒の騎士団の仲間、C.C.が来ていないか気になる
2:たこルカ、玲於奈を利用する
【東京都:テレビ局跡付近】
【ルルーシュ・ランペルージ(♀)@コードギアス反逆のルルーシュ】
【状態】健康
【装備】たこルカ(♂)@VOCALOID
【持ち物】基本支給品、ランダム支給品1~2
【思考】
基本:生き残るためには手段を選ばない。どんな人間も利用して元の世界に帰る。
1:弟や親友、黒の騎士団の仲間、C.C.が来ていないか気になる
2:たこルカ、玲於奈を利用する
【備考】
※参戦時期は一期のどこかです。
※盗撮されているのではないか、と考えています。
※たこルカと情報交換をして、「自分とたこルカは別の世界から来たのではないか」と考えていますが、まだ確信はしていません。
※参戦時期は一期のどこかです。
※盗撮されているのではないか、と考えています。
※たこルカと情報交換をして、「自分とたこルカは別の世界から来たのではないか」と考えていますが、まだ確信はしていません。
【竜宮玲於奈(♂)@ひぐらしのなく頃に】
【状態】健康
【装備】トンプソンM1短機関銃@現実
【持ち物】基本支給品、ランダム支給品1~2
【思考】
基本:仲間と合流して、運命を打開する
0:たこルカおっもちかえりいいいいい!
1:ルルーシュちゃんと協力しようかな?かな?
2:悪人は殺すこともやむを得ない、ぼくがやらないと……
【備考】
※参戦時期は罪滅し編の途中(リナ・鉄平殺害、埋葬後)からです。
※玲於奈が転送前に見たのは雛見沢の知り合いかもしれないし、そうでないかもしれません。
【状態】健康
【装備】トンプソンM1短機関銃@現実
【持ち物】基本支給品、ランダム支給品1~2
【思考】
基本:仲間と合流して、運命を打開する
0:たこルカおっもちかえりいいいいい!
1:ルルーシュちゃんと協力しようかな?かな?
2:悪人は殺すこともやむを得ない、ぼくがやらないと……
【備考】
※参戦時期は罪滅し編の途中(リナ・鉄平殺害、埋葬後)からです。
※玲於奈が転送前に見たのは雛見沢の知り合いかもしれないし、そうでないかもしれません。