苔むした岩の上に少女が一人座っている。
よく見ればそれなりに整った目鼻立ちをしている少女だったが、その厭世した態度を可愛いと称する者は極稀にしかいないだろう。
少女の目は皮肉げにつり上がり、立てた片膝の上に乗っている顔を歪ませている。
掌の中で弄ばれている二個のクルミが、カリュッ、カリュッ、と乾いた音を響かせた。
少女はしばらく動くという行為を拒否していたが、やがて諦めたかのように言葉を吐いた。
よく見ればそれなりに整った目鼻立ちをしている少女だったが、その厭世した態度を可愛いと称する者は極稀にしかいないだろう。
少女の目は皮肉げにつり上がり、立てた片膝の上に乗っている顔を歪ませている。
掌の中で弄ばれている二個のクルミが、カリュッ、カリュッ、と乾いた音を響かせた。
少女はしばらく動くという行為を拒否していたが、やがて諦めたかのように言葉を吐いた。
「ねえ、これからどうなると思う?」
「一歩先の闇には黄金色の蛇が赤銅の逆鱗を煌々と輝かせているのです。
RAT-TAT-TATと軽快にその逆鱗をノックせしめれば人生とは即ち秀絶なる蛞蝓の如き残響であり、
這いずりし跡には敬虔なる苺の落とした金貨が……」
「わかったわかったわかりました。つまり『わからん』と。あんたはそーいうキャラなのね」
「一歩先の闇には黄金色の蛇が赤銅の逆鱗を煌々と輝かせているのです。
RAT-TAT-TATと軽快にその逆鱗をノックせしめれば人生とは即ち秀絶なる蛞蝓の如き残響であり、
這いずりし跡には敬虔なる苺の落とした金貨が……」
「わかったわかったわかりました。つまり『わからん』と。あんたはそーいうキャラなのね」
ウンザリしたような少女の声で、長々と発せられていた台詞が途切れた。
無駄という言葉を極限まで引き伸ばしたかのような言葉を作り出していたのは、シルクハットを被った初老の男。
「脇役ロワ」を完結させた、通称『感想の人』である。
無駄という言葉を極限まで引き伸ばしたかのような言葉を作り出していたのは、シルクハットを被った初老の男。
「脇役ロワ」を完結させた、通称『感想の人』である。
「クリック? クラック! 紅き刃は虹の外周を削り、紫の写本は死者の国への片道切符を破り捨てる。
祖は古来より続くホモ・サピエンスの情動、蠢く牙は地を這う者を喰らい、その身を赤薔薇へと変えるでしょう。
おお、なんと悲しきラグドール。人形は糸が切れてもダンス・マカプルを続け……」
「あーうるさい。それは拡大解釈じゃなくてただの装飾過多。というか意味がわからない」
祖は古来より続くホモ・サピエンスの情動、蠢く牙は地を這う者を喰らい、その身を赤薔薇へと変えるでしょう。
おお、なんと悲しきラグドール。人形は糸が切れてもダンス・マカプルを続け……」
「あーうるさい。それは拡大解釈じゃなくてただの装飾過多。というか意味がわからない」
岩の上に座り込んでいた少女は鬱陶しそうに吐き捨てると、腰を上げた。
付き合ってられん、ということだろう。
実はこの少女、以前もバトルロワイヤルに参加したことがあった。
アホな参加者と関わることでのネタキャラ化も、迂闊な行動による包囲網も、一通り知っている。
しかも、彼女の支給品はあろうことかクルミ。◆6/WWxs9O1s氏御用達の木の実である。
包囲網フラグが発動したかもしれず、彼女は割りと必死だった。
意味のない言葉を羅列し続ける怪紳士を置き去りにして移動しようとした少女は、ふと足を止めた。
付き合ってられん、ということだろう。
実はこの少女、以前もバトルロワイヤルに参加したことがあった。
アホな参加者と関わることでのネタキャラ化も、迂闊な行動による包囲網も、一通り知っている。
しかも、彼女の支給品はあろうことかクルミ。◆6/WWxs9O1s氏御用達の木の実である。
包囲網フラグが発動したかもしれず、彼女は割りと必死だった。
意味のない言葉を羅列し続ける怪紳士を置き去りにして移動しようとした少女は、ふと足を止めた。
「貴方みたいに感想をつける人がいれば、カオスロワはもっと盛り上がっていただろうな……」
「鍵穴は一つしかないのです。自らの鍵を振りかざすだけでは、宝物庫の扉が顕現することなど大海の底の耳飾り。
故に貴方は砂漠を彷徨う旅人にならなければならないのです。苦なるかな、悲なるかな、それが現実という名のポートピア殺人事件……」
「『人に頼るな』と、そういうことか……」
「鍵穴は一つしかないのです。自らの鍵を振りかざすだけでは、宝物庫の扉が顕現することなど大海の底の耳飾り。
故に貴方は砂漠を彷徨う旅人にならなければならないのです。苦なるかな、悲なるかな、それが現実という名のポートピア殺人事件……」
「『人に頼るな』と、そういうことか……」
溜息を吐いた少女は、そのまま質問を重ねた。
「ところで、貴方はどういうスタンスなんだ? 脱出派か? マーダーか? それとも大石刑事みたいに逮捕に勤しむのか?」
「劇の台本とは宝石にして軽石。かの吟遊詩人は言った。『さあ、物語を詠おう。ただし、歌詞は詩を腐らせる。故に歌のない歌を謡おう』。
これぞ真理にして道化の戯言。痩身の木偶は舞台の隅に転がり、その役割はエデンの毒蛇……」
「長すぎ。三行でまとめて」
「劇の台本とは宝石にして軽石。かの吟遊詩人は言った。『さあ、物語を詠おう。ただし、歌詞は詩を腐らせる。故に歌のない歌を謡おう』。
これぞ真理にして道化の戯言。痩身の木偶は舞台の隅に転がり、その役割はエデンの毒蛇……」
「長すぎ。三行でまとめて」
冷たい言葉に、感想の人はしばし考え込む。
そして、ゆっくりと口を開いた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「私の出典は『脇役ロワ』。脇役に徹しますよ。
皆さんの物語に影から感想をつけさせてもらいます。
ただし――物語にならぬような輩は、この手で排除させてもらいますがね」
皆さんの物語に影から感想をつけさせてもらいます。
ただし――物語にならぬような輩は、この手で排除させてもらいますがね」
きっちり三行。
“本来の口調”に戻った感想の人がシルクハットをかぶり直す。
と同時に、轟、と木の葉が舞い上がった。
視界を埋め尽くすほどの木の葉が感想の人を覆い、やがてその姿を完全に包み隠した。
数秒後、木の葉の渦が収まったときには、当然感想の人の姿はなかった。
その様子を一歩も動けずに眺めていた少女が、苦虫を噛み潰すように言葉を搾り出した。
“本来の口調”に戻った感想の人がシルクハットをかぶり直す。
と同時に、轟、と木の葉が舞い上がった。
視界を埋め尽くすほどの木の葉が感想の人を覆い、やがてその姿を完全に包み隠した。
数秒後、木の葉の渦が収まったときには、当然感想の人の姿はなかった。
その様子を一歩も動けずに眺めていた少女が、苦虫を噛み潰すように言葉を搾り出した。
「ジョーカーだったか……」
【ゲーム開始数分後/多分C-4辺り】
【◆qSSOg86y8s氏@カオスロワ】
[状態]:健康
[武装]:クルミ×86
[所持品]:支給品一式
[思考]:
1・とりあえず仲間(まともな人間)を探す。
[備考]:見よう見まねクルミ投げが出来ます。
【◆qSSOg86y8s氏@カオスロワ】
[状態]:健康
[武装]:クルミ×86
[所持品]:支給品一式
[思考]:
1・とりあえず仲間(まともな人間)を探す。
[備考]:見よう見まねクルミ投げが出来ます。
【感想の人@脇役ロワ】
[状態]:健康
[武装]:不明
[所持品]:支給品一式
[思考]:
1・物語を傍観し、感想をつける。
2・物語にならないと判断した参加者(空気キャラや地味なキャラ)は自らの手で殺す。
[備考]:ジョーカー。能力は不明。
[状態]:健康
[武装]:不明
[所持品]:支給品一式
[思考]:
1・物語を傍観し、感想をつける。
2・物語にならないと判断した参加者(空気キャラや地味なキャラ)は自らの手で殺す。
[備考]:ジョーカー。能力は不明。