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書き手ロワ第二十二話

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「一体、どうなってるのよ!」
月明かりの差す廃城の中庭に少女の叫びが木霊する。
ここは地獄の一丁目――もとい、残酷無比な殺戮の島。
弱肉強食のこの空間では、彼女のような只の小学生女児が生き残るのは不可能。
恐怖と混乱に震え、泣き叫ぶのは当然の事と言えた。
……尤も、彼女の叫びは怒りによる物だったし、
そもそも2chパロロワ関係者である時点で只の小学生女児とは言えなかったのだけど。

「この私をこんな場所に拉致してきて、その上殺し合えですって!
 ふざけるのも大概にしなさいよ、あの変態男!」
手にしたデイバッグを物凄い勢いで振り回しながら、主催者への怒りを露にする少女。
大暴れする体の動きに合わせて色素の薄い長髪が揺れ、
何処かの私立小学校の物なのであろう、暖かい色合いのブレザー制服のあちこちが冷えた空気を切る。
本人は納まりきらない怒りを体全体で表現しているだけなのだが、
その様は傍から見ると――いや、どう考えても駄々を捏ねる愛らしい少女にしか見えない。
彼女がアニロワで悪名高い……
そして、不当な乱立を続け、今や交流所を含む多数のパロロワ住人に悪名高い、あの“キャプテン”だとは誰が想像できるであろうか。

「そうよ、こういう場合こそ誰かが助けてくれるはずよ!」
そう、根拠の無い自信に胸を張るキャプテン。いや、今は愚弟だったか。
彼女の脳内ではヒロインがピンチに陥った時は、かならずヒーローが助けに来てくれるのだ。
……たとえ、ここが残虐で非情な殺戮の島で、この場に居る者の殆どに絶望的なまでに避けられてたのだとしても。
というか本人にその自覚すらないのかもしれない。
やがて……体全体を使い、一頻り怒りを露にした少女は、疲れ果てたのか石でできた壁に背中を預け座り込んだ。
(助けを待つ、とは言っても……私も戦わないわけにはいかないわよね?)
脳裏に浮かぶのはこれからのプラン。
そう、彼女が求めるのはただ守られているだけのお姫さまでは無い。
少女が夢見るのは沢山の王子たちに守られながらも、自らの足で立ち、巨悪へと立ち向かう健気なヒロインなのだ。
「そうだ、武器……確認しなきゃ」
小さくそう呟いて、愚弟は未だに右手で握り締めていた、デイバッグを開けた。

「これは……!」
鞄の中身を確認した少女。その第一声は驚愕に彩られていた。
中から出てきたのはロワではお馴染みの通常支給品の数々……そしてそれに紛れるように入った……
「ル、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの杖じゃない!」
彼女に支給された武器、それは彼女の大好きな作品『ゼロの使い魔』のヒロイン、ルイズ・フランソワーズ・ル(ryの杖だったのだ。
もちろん、虚無の魔法が使える訳でもない彼女には、完全なハズレ武器である。
だがそれを見た瞬間、少女の顔には笑みが浮かんでいた。別に気が狂った訳ではない。
それを見た瞬間、少女は自身のすべき事を即座に理解したのだ。
愚弟はルイズ・フランソワー(ryの杖を手に取ると、目を瞑って軽やかに謡い始めた。



「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ……」

それは、王子の去来を願う少女の声。

「神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!」

それは、純真な(?)少女の一番の願い。

「私は心より求め、訴えるわ」

自身と確信に満ちた顔で少女は高らかに呪文を唱える。

「我が導きに…答えなさい!!」



愚弟がそう唱える終わるのとほぼ同時。少女の体を激しい衝撃と痛みが襲う。
撃たれた? 刺された? 殴られた? 否、降ってきたのだ。
突如落ちてきた物に、押しつぶされるような状態で倒れる少女。
地面が芝生だったからいいものの、もし硬いアスファルトだったら少女は死んでいたかもしれなかった。
(な、何が起こったの? 私の上に乗ってるのは、何?)
その生暖かい感触に恐る恐る目を開けると……そこには、一人の青年が居た。
(ほ、ほんとに来た!)
地面に手をつき、徐に立ち上がる青年。
それを見つめ、驚愕と歓喜に震えながら……愚弟はその言葉を口にした。
「貴方が、私の……使い魔、なの?」


時間は数十分前に遡る。
廃墟と化した城が見える森の中で、一人の青年が佇んでいた。
通常の日本刀の倍はあろうかという獲物……俗に物干し竿と呼ばれる刀を手にした男は小さな小さな呟きを漏らす。
「敵は、何処だ?」
着流しに袴という一見三文文士のような姿には、似つかわしくない言葉。
だが、それを言った瞬間、男の周囲からは濃厚な殺気が溢れ出し……彼が素人などでは無いことを表していた。
彼の名は◆A.IptJ40P.――戦闘に命をかける男。(いや、もしかすると戦うしか能が無いのかもしれないが)
「俺の死合うべき、強者は何処だ」
再び言葉を口にすると同時に、男の姿がその場から掻き消える。
彼が求めるのは強者との死合い。それが出来るのならば、この身がどうなろうといい。
ただ、それだけを望み、願い、求め続け、ついにそれは空間を捻じ曲げるまでの境地へと至る。
彼は自らの能力――“強者による死合いが発生しそうな場所へと空間を跳躍する力”を最大限に発動し、跳んだ。

「!?」
突如感じた違和感に、◆A.IptJ40P.は微かに驚きの表情を作る。
同時に力の残滓が弾け、重力が体に絡みつき、彼は物理法則に従って自由落下を開始した。
(跳ぶ距離が短い? ……制限か)
能力制限。それは彼が嫌いな物の一つである。
幸い、下に柔らかい物体があったので怪我は無かったものの、内心舌打ちをしたい気分になった。
(何故、わざわざ力を押さえ込む? 全力を持って強者と殺し合う。それが俺の望みだというのに)
そんな事を考えながら立ち上がり……彼は目の前に少女が居ることに気がついた。
おそらく、自分の下敷きになったのは彼女なのだろう。そんな事を考えながら、少女を観察する。
仰向けに倒れた、月明かりに照らされた少女。
しかし、その上半身は肘を支点に起こされ、驚愕の表情をこちらに向けている。
そして、月明かりを背に佇み、少女を眺める自分。
(ん? この光景、何処かで)
と、不意に少女の口が開き……
「貴方が、私の……使い魔、なの?」
その言葉で理解する。そして、◆A.IptJ40P.は少女の言葉に答えるべく、言った。

「こちらこそ問おう。お前が俺のマスターか」


【開始三十分後/C-3】

【愚弟@アニロワ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ルイズ(ryの杖
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:死にたくないので敵と戦う
1:貴方が私の使い魔?


【◆A.IptJ40P.@アニロワ】
[状態]:健康
[装備]:物干し竿(Fate)
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:強者と死合う
[備考]
※“強者による死合いが発生しそうな場所へと空間を跳躍する力”が制限を受けています。
  空間跳躍は出来ますが、目的に着く前に効果が切れます。

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