琴吹家
斎藤「お帰りなさいませ、紬お嬢様」
紬「ただいま斎藤」
紬「~♪~♪」
斎藤「差し出がましいようですが、何か良いことでもあったのですか?」
紬「ええ。でも斎藤もお父様も人が悪いわ。やっぱり用心棒を雇っていたなんて」
斎藤「は、はぁ…」
斎藤(用心棒の件はお嬢様の猛反対もあり、結局無しになっていたと思いましたが…はて…?)
紬「でも、あんな可愛らしい用心棒サンなら私大歓迎よ♪」
斎藤(おそらくお嬢様の身を案じた旦那様がやはり用心棒を要請していたのでしょう)
斎藤(いつの時代も親は子を想うものでございます)
斎藤(この斎藤、旦那様の紬お嬢様に対する愛で涙が…)よよよ…
紬「あんな刺激的な体験…お父様からいただいたどんなプレゼントより素敵だったわ~♪」
斎藤「それはようございました。紬お嬢様」
翌朝 琴吹家
斎藤「本日のお帰りは?」
紬「今日はバイトもないのでいつもの時間には帰ってくるわ」
斎藤「左様で、ではご夕食の準備もいつもと同様の時間にいたします」
紬「ええ、ありがとう。今日はお父様は?」
斎藤「旦那様は本日お客様がいらっしゃるらしいので、ご夕食は一緒にはなさらないと仰っておりました」
紬「そう。お客様って?」
斎藤「わたくしは存じあげておりませんが…。旦那様にとって大切な方だと聞いております」
紬「お友達かしら?」
斎藤「紬お嬢様。そろそろお屋敷を出ませんと…」
紬「ええ、そうね」
斎藤「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
紬「いってきます」
同時刻 平沢家
憂「お姉ちゃん! 早く早く!」
唯「待って憂!!」
平沢父「唯はもっと余裕をもって行動しないとな…」
唯「あれ? お父さん、今日はお休みじゃなかったの?」
平沢父「ああ、報告のために今日だけ会社に行かなきゃならないんだ」
唯「へ~、大変だね~」
平沢父「働く者の義務だよ」
平沢母「唯の義務はとりあえずのところ、学校に遅刻しないで行くことね」
唯「うわっ!! そうだった!!」
憂「おね~~ちゃ~~ん!!」
唯「い、いってきます!!」
放課後
澪「今日は久しぶりにみんなで合わせることができるな」
梓「茜はまだ無理ですけどね」
茜「ご、ごめんなさい。足手まといの初心者で…」
梓「いや、そういう意味で言ったんじゃないからね?」
澪「茜にも音を合わせる楽しさを早くわかってほしいと思ってるよ」
茜「…はい。がんばります」
律「しっかし、ユーフォニアムっていうの? 私初めて見たな~」
唯「重そうだし、演奏も大変そうだよね~」
律「どれどれ…、って重っ!! ぜんぜん持ち上がらな…」
茜「さ、触らないで!!」
律「!?」ビクッ!!
茜「あ、す、すみません…デリケートなものですから…つい…」
律「い、いやいや…私も勝手に触って悪かったよ…あ、あははは…」
律(茜ってあんなに大声出せるんだな…正直メッチャビビった)
澪「こら律! このユーフォニアムは茜にとってすごく大事な物ってわかってるだろ?」
律「うん…ごめんね茜」
茜「いえ…私も怒鳴ってすみませんでした。でもこれからは充分気をつけてもらうと嬉しいです」
律「わかりました」
唯「あはは。りっちゃんなんだか素直~」
律(なんか、本当に怖かった…)
紬「じゃあ今日は茜ちゃんに私たちの演奏を聞いてもらいましょ」
梓「そういえば、まだ聞いてもらってなかったですね」
唯「じゃあ今日はデビちゃんのためだけのコンサートね!」
澪「そうだな、いいかも!」
律「よし! お詫びの印にいっちょやったりますか!」
~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
唯「じゃ~ん♪ っと」
梓「どう…だった?」
茜「す、すごいです…」
茜「私、こんなの初めてです!」
茜「こういうの初めて聴いたのに、みなさんの気持ちが伝わってくるようでした!」
茜「音楽って、ここまで人を感動させるものなんですね!」
紬「うふふ、よかったわ♪」
澪「いつか茜もそのユーフォニアムで人に感動を与えることができるんだよ」
茜「!?」
律「そうそう、茜のお父さんだってそうなったらきっと喜んでくれると思うよ」
律「重いユーフォニアムだけに想いも伝わる…ってか~」
唯「りっちゃんクッサ~……」
律「な、なんだとー!!」
茜「お父さん…想い…」
茜「そんな…私に…できるでしょうか?」
澪「もちろん!」
梓「それに一人じゃないよ。一緒にやった方がもっと楽しいんだから」
唯「そうだよ~デビちゃん。がんばって練習しようね」
梓「唯先輩ももっと練習してくださいね。さっきの演奏だって間違ったところが幾つか…」
唯「あぅ~…」
律「そうだぞ~唯。ほんとにお前はダメダメだな~」
澪「人の事言えるドラミングじゃなかっただろ!」ゴチン!
律「あいてっ☆」
紬「うふふ」
茜(…私が…お父さんのユーフォニアムでみんなに感動を与える演奏を?)
茜(きっと…そんな資格なんて…ない…)
紬(…茜ちゃん?)
・ ・ ・ ・ ・
唯「デビちゃん、今日は購買いいの?」
茜「そういえば!? 行ってきます!!」
梓「毎日大変だね…」
茜「ううん。楽しい…よ?」
梓「そ、そう?」
茜「あの…それと、ムギ先輩ちょっといいですか?」
紬「なに?」
茜「この後…予定とかありますか?」
紬「特にないわね」
茜「じ、じゃあ…部活が終わったらあのハンバーガー屋さんにきていただけますか?
だ、大事な話があるので…」
だ、大事な話があるので…」
紬「ええ。わかったわ」
茜「それでは、失礼します」
唯「じゃあね~デビちゃん」
律「なんだ~ムギ。えらく茜と仲良くなってないか?」
紬「うふふ。ヒミツ」
唯「なになに? なんだかドキドキしてきちゃった!」
紬「茜ちゃんと私は赤い糸で結ばれてるのよ」
紬「だって、私の王子様みたいなものですもの」
律「ムギが澪みたいな思考の持ち主に…」
澪「おい…」
梓「でも、昨日くらいから傍から見ても2人が仲良くなってるのがわかりました」
唯「ねぇねぇ、何があったの~?」
紬「だから、ヒ・ミ・ツ」
澪(二人だけの秘密の……か。ふふふ…)
律(澪の甘々作詞フラグがきたな、こりゃ…)
マックスバーガー
紬「で、話って?」
茜「昨日のテロリストのアジトがわかったんです」
紬「そ、そうなの!?」
茜「はい、それでその事を依頼主、つまり琴吹社の社長に報告へ行こうと思ってたんですけど…」
茜「私との契約は表沙汰になると相手側に迷惑がかかる可能性があるので…」
紬「それで、私を通じてお父様に、って事?」
茜「…はい。電話も盗聴の可能性が捨てきれないので…」
紬「私、どうすればいいの?」
茜「今日は社長はご自宅に?」
紬「ええ…。あっ!? そうか。お父様の大事なお客様って茜ちゃんのことだったのね」
茜「……」
茜「はい…きっとそうだと思います」
紬「だから斎藤も詳しくは知らなかったわけね」
茜「ムギ先輩の屋敷まで、私をムギ先輩の友人として招き入れてほしいんです」
紬「わかったわ。それなら簡単ね。だって本当に友達なんですもの」
茜「そこで注意していただきたいのは
できるだけ屋敷の人間には会わないようにしていただきたいんです」
できるだけ屋敷の人間には会わないようにしていただきたいんです」
茜「ムギ先輩の屋敷の中にも裏社会に通じている人間がいないとも限らないので…
こういう職業柄、あまりそういう人目につくのは得策じゃないんで…」
こういう職業柄、あまりそういう人目につくのは得策じゃないんで…」
紬「ええ。そうね。確かに大きな会社になればそんな裏の面も受け入れなければいけないのも理解してるわ」
紬「じゃあ、こっそりとお父様の部屋まで茜ちゃんを誘導していけばいいのね?」
茜「はい…すみません。それから後は私にお任せいただければ…」
紬「うふふ。なんだか楽しそうね♪」
茜「そ、そうですか…?」
紬「でも、残念だな~。私、茜ちゃんに告白されちゃうかもって、ドキドキしてここまできたのよ?」
茜「こ、こくは…!?」
紬「うふふ。冗談よ。忘れて」
茜「は、はぁ…」
紬「それじゃあ、行きましょう」
琴吹家 紬父自室
平沢「いやはや、波乱に満ちた旅でしたよ」
琴吹「君には本当に感謝しているよ…奥方も元気かね?」
平沢「はい、妻は僕なんかよりもピンピンしてます」
琴吹「どの世界でも女性は強いな」
平沢「まったく…」
琴吹「ところで例の報告の件。聞こうか」
平沢「ええ…。やはり社長の睨んでいた通り
ある外国の企業がこのテロの引き金を引いていたみたいですね」
ある外国の企業がこのテロの引き金を引いていたみたいですね」
琴吹「やはりな…」
平沢「ただ、テロ組織もそこまで本気で企てる気はなかったようですが」
平沢「当面の活動資金のあてができたくらいの思いだったようです」
平沢「彼らにとっては日本の企業にテロを仕掛けてもあまり旨みはありませんからね」
琴吹「脅し止まり、というわけか…」
平沢「まだ日本は世界では舐められた立場にいます。脅せば腰が引ける
黒幕の企業もそう考えているのかもしれません」
黒幕の企業もそう考えているのかもしれません」
斎藤「旦那様、お茶をお持ちいたしました」
琴吹「入れ」
斎藤「失礼いたします」
平沢「やぁ、斎藤さん。憂がお世話になったみたいで」
斎藤「いえ、憂様の気丈な振る舞い。この斎藤も感服いたしました」
斎藤「将来はこの琴吹家政婦サービスへの就職もこちらからお願いしたいくらいでございます」
平沢「確かに憂はメイドをやらせたらなんでもこなすでしょうね」
斎藤「はい」
平沢「しかし問題は長女の方でして…」
琴吹「紬からよく話を聞いてるよ。元気でとても楽しい子だと」
平沢「ええ。それだけが取り柄というか、何と言うか…」
平沢「なにぶん妹が出来る子なので、家事など女らしいことはなにも…」
平沢「しかも僕も妻もあまり家にいることが少なく、たまに帰っても甘やかしてばかりなので…」
琴吹「私も一緒だよ、どうしても娘には甘くなる」
平沢「やはり、どこの家庭でも同じですね」
琴吹「ああ。親の職業が会社社長でも、スパイでも。な」
平沢「ははっ、娘に関しては職業も何も関係ありませんね」
琴吹「ところで、先程の話の続きだが…。日本には実力行使は無いと思っていいのかね?」
平沢「ええ。それはあり得ないと思います。人員もそうですが
武器などもこの日本に持ち込む事は難しいですからね。日本の警察も有能です」
武器などもこの日本に持ち込む事は難しいですからね。日本の警察も有能です」
平沢「なにも危険を承知でやってくるほどあちらさんからとっては
それほど今回のテロの件は重要でもないらしくって」
それほど今回のテロの件は重要でもないらしくって」
琴吹「なるほど…では、この件はもう問題視しなくてもよいと?」
平沢「それが…、実は彼らも一枚岩ではないようで…」
琴吹「と、言うと?」
平沢「調べて行く内に色々興味深いことが出てきましてね」
平沢「組織の本部とはまた違う末端の小さなグループで色々と厄介なことがあるようで…」
平沢「僕もこういう人間なので、必要以上に深入りしてしまいまして…」
琴吹「だから今回はヤツらに捕まって連絡が取れなかったと…」
平沢「はい、お恥ずかしい限りで…。その点はご迷惑をお掛けしました」
平沢「しかし、おかげで面白い人物から話が聞けたんです」
平沢「…いや面白いと感じるのは僕だけかもしれませんが」
琴吹「ほほぅ…話してくれるかね?」
平沢「10年程前にこの会社が関わった中東でのテロ。覚えていらっしゃいますか?」
琴吹「ああ…あれは忘れられるわけがない…」
琴吹「我が社の行った人道支援。地元の人間に護衛を頼んだのがいけなかったのだ…」
平沢「ええ。テロ組織と内通してる者がいて裏切りにあい、そしてほぼ全滅した」
琴吹「地元の人間にも多数犠牲が出た。孤児もたくさん生まれたと聞く…」
平沢「しかも、地元の人間はそれがこの会社の仕業だと信じて疑わない者もいます」
琴吹「…そうか」
平沢「そしてまさにこの会社が悪だと教え込まれた子供達が今回のテロ騒動の一員になっているんです」
平沢「親の仇と信じて疑わない子供たちが」
琴吹「では…」
平沢「ええ、その子供達が日本へ乗り込んでくれば必ずここを狙ってくるはずです」
琴吹「子供が…しかし、キミは先程日本の警察が優秀だから武器などは持ち込めないと…」
平沢「それが、そうでもないんです」
平沢「その子供は現地でも恐れられるくらいの実力の持ち主でして」
平沢「しかもその武器はまったく武器に見えないので平然と持ち運びできます」
平沢「だから日本への持ち込みもおそらく簡単にしてくるでしょう」
琴吹「うむ…。で、その武器というのは…?」
平沢「はい…ユーフォニアムという管楽器を改造したものだと聞きました」
・ ・ ・ ・ ・
紬「ところで茜ちゃん。なんでユーフォニアム持ってきたの?」
茜「雇い主の社長への報告の後、テロの連中へ対して親の仇を討ちに行くんです」
茜「だから、お父さんにも見ててほしくって」
紬「そう…でも、あまり無茶しないでね…」
茜「……」
紬「いいわよ。誰もいないわ。今のうちに」
茜「はい…」
・ ・ ・ ・ ・
紬「お父様の部屋までもうすぐよ。
誰にも見つからないようにってなんだかドキドキするわ♪」
誰にも見つからないようにってなんだかドキドキするわ♪」
茜(お父さん…もうすぐ……!!)
・ ・ ・ ・ ・
琴吹「もう日本に来ているのだろうか…?」
平沢「つい最近まで僕は捕まってましたのでその辺りの情報は定かではありませんが…」
平沢「それと、もう一つの情報としてそのユーフォニアムの使い手は日本人の女の子です」
平沢「下手すると、もう入り込まれている可能性もあります」
琴吹「なんという事だ…」
平沢「しかし防ぐ手立ても考えてあります」
琴吹「そうなのかね?」
平沢「ええ。それについて社長に会わせたい人がいるんです
少し衰弱していたのであちらの病院で入院されていたのですが
昨日退院したとの連絡が入ったので、日本まで来ていただきました
もうすぐこちらへ到着すると思いますが…」
少し衰弱していたのであちらの病院で入院されていたのですが
昨日退院したとの連絡が入ったので、日本まで来ていただきました
もうすぐこちらへ到着すると思いますが…」
琴吹「そうか…では、その方が来るまでキミの今までの海外のみやげ話でも…」
斎藤「どうでしょうか?そのお話と共に、このあたりでお食事にしては…」
琴吹「ああ。それがいい。キミも食べて行きたまえ」
平沢「ちょうど僕もお腹が空いてきたなと思ったところです」
斎藤「それでは準備をしてまいりますので、少々お待ちを…」
・ ・ ・ ・ ・
紬「ほら、ここがお父様の部屋よ」
茜「ゴクリ…」
ガチャ
紬茜「!?」
斎藤「これは紬お嬢様、お帰りなさいませ。旦那様なら今はお客様のご相手を…」
斎藤「おや? そちらの方はご学友ですかな?」
紬「え、ええ…そうなのよ」
茜「……」
斎藤(あの楽器は…!! まさか!!)
斎藤「お嬢様!! その方からお離れくださいっ!!」
紬「へっ?」
茜「…動かないで」
斎藤「ぐっ……!!」
紬「茜…ちゃん…? いったい、なにを…?」
茜「今、私がこのユーフォニアムを吹いたらこの方は木っ端微塵になります」
茜「わかりますね?」
斎藤「……どうぞ穏便にお願いいたします」
紬「えっ? 何を言ってるの? 茜ちゃん?」
茜「ムギ先輩…その扉をゆっくりと開けて中へ…」
茜「あなたは下がってください」
斎藤「……かしこまりました」
紬「ねぇ? 何がどうなってるの!?」
茜「あなたを殺しにきました」
紬「!?」
紬「でも、私を助けてくれたじゃない…」
茜「ハンバーガーショップであなたを襲った彼らは私と仲間です
私をあなたに信じ込ませることでこのチャンスを伺っていました」
私をあなたに信じ込ませることでこのチャンスを伺っていました」
紬「そんな…!!」
・ ・ ・ ・ ・
prrrrrrrrr…
平沢「おっと失礼…妻からです
僕が家族に内緒で美味しい食事をすることを恨んでいるかもしれないな」
僕が家族に内緒で美味しい食事をすることを恨んでいるかもしれないな」
平沢「もしもし…」
妻『あなた!! 大変なの!!』
平沢「どうしたんだい? そんなに慌てて」
妻『唯の学校に来たっていう転校生、気になって調べてみたんだけど…』
\お嬢様!! その方からお離れくださいっ!!/
琴吹「ん? なんだ? 騒がしいな…」
妻『その子が、例の日本人テロリストなのよ!!』
平沢「なん…だと…!?」
琴吹「どうしたのかね、平沢くん」
平沢「社長! 大変です!! 思ったより事態は……!!」
ガチャ
紬「お、お父様……」
琴吹「つ、紬……」
茜「……」
平沢「き、キミはっ!? そうか、もうすでに……!!」
茜「やっと……。私が…この日をどんなに待ちわびたことか…」
琴吹「紬を離してやってくれないか…?」
茜「お断りします」
琴吹「キミの目的はこの私だろう…」
茜「…いえ…あなたを殺してしまうなんて、そんな楽なことしません」
茜「それよりも…目の前で娘の死を見た方がよっぽど苦しいと思いませんか?」
紬「!?」
茜「大切な人を殺されて…生きていく方が…辛いと思いませんか?」
琴吹「お、お願いだ…やめてくれ…」
茜「父も…そう言って死んでいったのかもしれません
いえ……違います。父はそんなに腰抜けではありませんでした」
いえ……違います。父はそんなに腰抜けではありませんでした」
平沢「三浦茜さん…だね…。お父さんは、元傭兵」
茜「やはり…知っている人は知ってるんですね…。用心していたかいがありました」
茜「10年前、あなたの会社が人道支援だと謳いながらも、私たちの村を滅茶苦茶にした」
茜「安物の機械ばかりを持ってきて不具合で爆発を起こし、村の人がたくさん死んだ
そしてその失態の口封じのために父を…みんなを殺した」
そしてその失態の口封じのために父を…みんなを殺した」
茜「世間には表に出てないけど、私は一生忘れない!!」
平沢「違う! それは間違いだ!」
茜「うるさい!! こんな裕福な国に住み、私腹を肥やすヤツらに何がわかる!!」
紬「お父様…本当ですか…!!」
琴吹「確かに…起こった事柄はおおよそその通りだ」
紬「じ、じゃあ…!!」
茜「くっ! やっぱり!!」
琴吹「しかし、その娘が言っていることは事実ではないっ!!」
茜「だ、黙れ!!」
平沢「社長…あまり彼女を刺激してはいけない…」
平沢(こちらにはとっておきの切り札があるが…間に合うか…!?)
紬「茜ちゃん…」
茜「……!?」
紬「私、あなたがそんな思いで日本にきてたなんて思いもしなかった…」
紬「だって、あなた、私たちと一緒に居るとき本当にとても楽しそうに見えたのよ」
茜「……」
紬「でも、もし私を殺すことで、あなたの気持ちが晴れるなら…」
紬「私を殺してください」
茜「!?」
琴吹「つ、紬!!」
平沢「馬鹿なこと言っちゃいけない!!」
紬「いいえ、お父様。不幸の連鎖はどこかで断ち切らなければいけないのです」
紬「だから、私が死んでも。茜ちゃんを恨まないでやってほしいの」
紬「それが…娘からの…最後の…願いです…」
紬「さぁ…茜ちゃん。そのユーフォニアムを吹いてちょうだい」
紬「その音色と共に私は消えてなくなるのね…」
紬「でも。忘れないで…私と食べた牛丼の味…」
紬「ウルトラデラックス特盛り牛丼 税込1500円 私は並盛300円」
紬「あなたが食べた分だけで私の時給約2時間分…」
茜「……」
紬「あと、あなたのお母様へのお持ち帰りはゴージャストロトロ角煮丼
国産の最高級ブランド豚を贅沢に使った本格派。それを一日かけてじっくり煮込んで
調味料類も一級品ばかりを惜しみなく使った自慢の逸品」
国産の最高級ブランド豚を贅沢に使った本格派。それを一日かけてじっくり煮込んで
調味料類も一級品ばかりを惜しみなく使った自慢の逸品」
紬「あのお店では一日3品限定。あの日は運良く残っていたのよ
ちなみにお値段は高級品をふんだんに使っているせいか 2500円」
ちなみにお値段は高級品をふんだんに使っているせいか 2500円」
茜「……ゴクリ」
紬「うふふ。実は隠しメニューなの。りっちゃんが教えてくれたのよ?」
茜(だからか…お母さんだけ…ずるい…!!)
紬「あら?やっぱり茜ちゃんもそっちの方がよかった?」
茜「は、はい……って!?」フルフル
平沢(さ、さすが琴吹家ご令嬢! あちらのペースを乱している!!)
紬「あと、みんなには黙っていたけど部活に持っていってるお菓子」
紬「あれ最近は全部私の自腹なの」
茜「!?」
紬「バイト代はほとんどそれに消えていったわ」
茜「そ、そうだったんですか……」
紬「以前なら我が家へ訪問に来るお客様はなにかしらお土産を手に来てくださったのだけど…」
紬「最近じゃ折からの不況でめっきり減っちゃってね…」
紬「さすがに、ストックもなくなってきちゃったのよ」
紬「ほら、今いるお父様のお客様もどうやら手ぶらでいらっしゃったようだし」
琴吹「……」
平沢(……ごめんなさい)
紬「しかも、夕食まで食べようとしていらっしゃったのね?」
平沢(唯…お前の友達はとてもすごい人だよ…あの危険な空気を一変させてしまった…)
紬「ただでいただくディナーはさぞかし美味しいことでしょうね」
平沢(しかし…あまりにも辛辣すぎる…)グサグサ
茜「す、少し黙っててください…」
紬「はい」
茜(あれっ?)
紬「……」
茜(な、なんで急に…)
紬「……」
平沢(うまいぞ…これで時間が稼げる)
茜「牛丼は美味しかったです。でもそれとこれとは話しが違います」
平沢(くっ…やはり10年もの私怨は簡単には…!!)
茜「あなたを殺したら今度は自分でゴージャストロトロ角煮丼を注文に行きます!!」
平沢(そっちか…!!)
紬(やっぱり…ダメなの…!!)
「やめるんだ! 茜!!」
茜「!?」
茜父「もう、やめるんだ…」
茜「お、おとう……さん?」
平沢(間に合った!!)
茜「な、なんで……?」
茜父「そこの平沢さんに助けていただいてね」
茜父「キミは組織に騙されているんだよ
あの爆発はお金に目が眩んだ何人かの村の者が仕掛けたんだ」
あの爆発はお金に目が眩んだ何人かの村の者が仕掛けたんだ」
茜父「欲に負け、テロリスト共に利用されたんだ…」
茜父「日本の機材は質も良く高値で売れる。そうやって、たらし込まれたのだろう」
茜父「貧しい国だ…そうなってしまうのも仕方がないかもしれない…」
茜「まさか、お父さんのユーフォニアムを私に渡してくれたあのオジサンが…!?」
茜父「そうかも…しれない…」
茜「……くっ!!」
茜父「真実を知ってしまった私だったがヤツらには抵抗のしようもなかった…
何故なら茜や妻が人質のようなものだったからね…」
何故なら茜や妻が人質のようなものだったからね…」
茜父「その後、私は収容所のようなところに入れられ強制的に働かされていた
生かさず、殺さずに…ね 」
生かさず、殺さずに…ね 」
茜父「なんども逃げ出そうと…皆に真実を伝えようと思った…」
茜父「しかし人間の扱いをうけない私たちはいつからか無気力になってしまってね」
茜父「最初の1年で諦めてしまったんだ…」
茜父「それからは奴隷のような日々が待っていた…」
茜父「同じようにして捕らえられた仲間も何人も死んでいった…」
茜父「だが、最近になってそちらの平沢さんが捕まって私たちの収容所へ入ってきた」
平沢「そう、そして10年前の真実を知った僕は何とかしてこの事実を知る人達を救い出そうとした」
平沢「琴吹インダストリーの力を借りてね」
茜「そんな…じゃあ私は…」
茜父「ヤツらはお前の殺し屋としての才能に気づいた…
そしてなんと言ってもそのユーフォニアムを扱える唯一の人物」
そしてなんと言ってもそのユーフォニアムを扱える唯一の人物」
茜父「組織はそれを利用しようとしたんだろう…だから憎ませることで強くしようとした」
茜「じ、じゃあ、私の…私の10年は…いったい…」
茜父「そのユーフォニアムはお父さんが戦争で殺してしまった人への鎮魂歌を戦場で
奏でるために自分で武器として改造したものなんだ…」
奏でるために自分で武器として改造したものなんだ…」
茜父「許されることではないことはわかっている。でも生きることで必死だった」
茜父「でも、茜にはそのユーフォニアムを戦場で響かすのではなく
ステージで人を感動させる楽器として使ってほしかったんだ…
想いを伝える道具として…」
ステージで人を感動させる楽器として使ってほしかったんだ…
想いを伝える道具として…」
茜「人を…感動…音楽を…奏でる…想いを…伝える……!!」
茜「私…今までも…これからも…こんな生き方しかできないって…思ってた…」
茜「でも、日本に来て…軽音部の皆さんに会って…こんな世界もあるんだって…」
茜「本当は…私だってムギ先輩達と一緒に…演奏がしたい…普通に生きてみたい、って…」
茜「いつも……笑って過ごしてみたいって……!!」
茜「でも、お父さんが殺されたって…ずっと…ずっと、そうやって教えられてきたから…」
茜父「そうだね、でもお父さんはこうやって生きてるよ
茜ももう普通の女の子に戻っていいんだよ。今まで辛かったね」
茜ももう普通の女の子に戻っていいんだよ。今まで辛かったね」
茜「お父さん……お父さん……」
茜父「さぁおいで、成長したキミを抱きしめさせておくれ」
茜「お、お父さ~~~ん!!!!」
茜父「よしよし、大きくなったね…本当に大きくなったね…有り得ないくらい大きくなったね」
茜父「……正直あの国で何を食べたらそんなに大きくなるんだい?」
紬「良かったわ…クスン…」
茜「すみません! 私……ヒドイことを……」
紬「ううん。いいのよ、本当言うと
あなたから私を殺すような感情は伝わってこなかったもの」
あなたから私を殺すような感情は伝わってこなかったもの」
茜「…はい…私、とても迷いました。復讐した後どうしようって…」
茜「ゴージャストロトロ角煮丼を食べた後どうしようか…って!!」
紬「……」
茜「それに、このお父さんのユーフォニアムで人を殺したことないんです…」
茜「本当はわかっていたんです。お父さんもこんなこと望んでないって…」
紬「やっぱり…茜ちゃんがそれで人を殺すなんてできないって思ってたわ」
茜「はい…今までは専ら素手で殺してましたので…」
紬(あれっ!? もしかして結構危険だった!?)
茜「私…本当に過ちを犯さなくって…よかった…」
紬(本当によかった!!)
茜父「琴吹さん。この通りです…娘を、許してやってください…!!」
琴吹「……」
紬「お父様!! 私からもお願いします!!」
琴吹「しかし、紬…お前は殺されそうになったんだぞ?」
紬「悪いのは騙した人たちです!」
琴吹「紬…、娘が危険な目に会ったのにそれを簡単に許すなど…
私はそこまで出来た人間ではないのだよ…」
私はそこまで出来た人間ではないのだよ…」
紬「そ、そんな!!」
琴吹「三浦さん、あなたの娘さんの犯した罪は大きい…」
茜父「はい…わかっています…。子供の罪は親の責任です…」
茜父「全て私が償います…。どんな罰だって甘んじて受けます!!」
茜「お、お父さん!?」
琴吹「……わかった。ではその言葉通り罪を償っていただこう」
茜父「……!!」
平沢「し、社長!!」
琴吹「ユーフォニアムを…」
茜父「えっ…?」
琴吹「ユーフォニアムを吹いてはくれないか?」
茜父「あの…しかし…」
琴吹「どうした? どんな罰でも受けるのではなかったのかな?」
琴吹「そのような病み上がりの体でユーフォニアムを吹かねばならないのは
想像以上に重い罰だとは思うがね」
想像以上に重い罰だとは思うがね」
平沢(うわ~…人情劇だな~…)
紬(お父様…昔からそのような邦画が大好きでしたものね…!!)
茜父「そのようなことでよろしいので…?」
琴吹「ああ、以前から一度はこんな大岡裁きみたいな真似事をするのが夢だったんだ」
斎藤(旦那様…ようございましたな~…)よよよ…
茜父「そ、それでは…」
茜「お父さん…大丈夫なの…?」
茜父「茜、キミにはまだ言ってなかったが、傭兵になる前は
このユーフォニアムの奏者を目指していたんだよ」
このユーフォニアムの奏者を目指していたんだよ」
茜父「しかし家庭の事情もあり結局は傭兵にならざるを得なかった…」
平沢「傭兵にならざるを得ない状況っていったい…」
琴吹(スパイという職業もどうかと思うぞ、平沢くん…)
茜父「スゥ~~~……」
~♪~♪~♪~♪ ~♪~♪~♪~♪
~♪~♪~♪~♪ ~♪~♪~♪~♪
~♪~♪~♪~♪ ~♪~♪~♪~♪
紬「……素敵」
この部屋にいる誰もがその透き通った音色に聞き惚れていました
しかし、この演奏は誰よりも茜ちゃんへと向けられたものであったことは間違いありません
私たちの感じるこの空気の震えは、茜ちゃんが感じているそれとはまた違ったものでしょう
その音色は親子の10年という溝を埋めるのに充分であろう素晴らしいものでした
きっと茜ちゃんにもお父さんの想いは伝わったと思います
しかし、この演奏は誰よりも茜ちゃんへと向けられたものであったことは間違いありません
私たちの感じるこの空気の震えは、茜ちゃんが感じているそれとはまた違ったものでしょう
その音色は親子の10年という溝を埋めるのに充分であろう素晴らしいものでした
きっと茜ちゃんにもお父さんの想いは伝わったと思います
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紬「ってことが昨日あってね」
澪「わ、私たちの知らないところでそんなハードな展開が…」
律「あ~私もその場に居たかったな~。ドラマみたいじゃん!」
梓「律先輩! もしかしたらムギ先輩本当に殺されたかもしれないんですよ!」
茜「…ご、ごめんなさい」
梓「あっ!? ち、違うよ! 茜のこと悪く言ったわけじゃないから…」
紬「そうよ、私と茜ちゃんの絆は一層深まったのよ♪」
茜「////」
唯「なるほど~、今の話しを纏めますと……」
律「お! なんだなんだ?」
唯「なんで牛丼私も誘ってくれなかったの~!!」
澪「なんでそうなるんだ!!」
梓「ところで、さっきの話。はっきりしない人物が1人いましたね」
律「ムギのとーちゃんと一緒にいた人な」
紬(唯ちゃんのお父様からは黙っててくれって言われてるのよね…)
紬(いずれ自分から話すからって仰ってらしたけど…)
茜「なんでも、スパイらしいですよ」
紬(あ、茜ちゃん!?)
澪「す、スパイ!?」
梓「本当にそんな職業あるんでしょうか…?」
律「まぁ、傭兵がいるくらいだから別にいいんじゃね?」
紬(そうよね…誰もそのスパイさんが唯ちゃんのお父様だって気づくはずないわよね)
唯「スパイ……」
紬「ゆ、唯ちゃん!? いったいどうしたの!?」
唯「そのスパイって…まさか…!?」
紬(ま、まさか…気づいちゃった!? 唯ちゃんって結構鋭いとこあるし…)
唯「梅干作ってる人?」
澪「もうツッコまないぞ……」
唯「すっぱ~い!! えへへ…なんちゃって」
律「はいはい…」
紬「……」
梓「寒いです…」
唯「ええ~…」
茜「……」
茜「ブフッwwwwwwww!!」
一同「!?」
・ ・ ・ ・ ・
澪「しかし、私も茜のお父さんの演奏聴いてみたかったな~」
紬「とっても素晴らしかったのよ♪ ね。茜ちゃん」
茜「はい…とても///」
律「じゃあさ、今ここで茜に吹いてもらおうよ!」
茜「えっ…でも…、私本当にユーフォニアム吹いたことなくって…」
律「この軽音部にいる限りはいつか吹かなきゃいけないんだしさ」
梓「そうだよ茜。今日が初めて音を出す日にしたらいいんだよ」
茜「で、でも…」
唯「デビちゃん。その体の中には凄い演奏をしたお父さんの血が流れてるんだよ
きっとデビちゃんにもその才能が受け継がれているはずだよ!」
きっとデビちゃんにもその才能が受け継がれているはずだよ!」
律「お!唯、良いこと言った! 先程の失態は取り消すぞ」
唯「はは~っ、ありがたき幸せ」
澪「うん、吹いてみてよ茜」
梓「聴いてみたいな~」
茜「あ、あの……」
紬「がんばって、茜ちゃん」
茜「……」
茜「はい、わかりました!」
唯「うわ~い!!」パチパチパチパチ
茜「では……」
茜「すぅ~~~~っ……」
茜「プワッ♪!!」
律「おおっ!!」
カッ!!!!
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律「ケホッ…ケホッ…」
澪「な、なにがどうなったんだ…」
唯「あはは~。澪ちゃん髪の毛チリチリ~」
澪「お前もな…」
茜「すみません…ユーフォニアムの演奏モードじゃなくて
武装モードで吹いてしまいました…」
武装モードで吹いてしまいました…」
律「なんじゃそりゃ……」
紬「私、爆発でドリフみたいに頭がチリチリになるの夢だったの~♪」
梓「ムギ先輩の夢は果てしないですね……」
茜「ご、ごめんさない……」
澪「だめだこりゃ」
律「次行ってみよ~」
唯「ちゃんちゃん♪」
おしまい