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第五十八話:湯気に紛れて

第五十八話:(湯気に紛れて)


未「・・・全く、わかってない。全くわかってない」

わたしは文句を言いながら移動していた。
温泉って言うのはゆったりと浸かって疲れを癒すもの。
そしてその間はまったりと雑談をするものであってあんなにギャーギャー騒がれるなんてあり得ない。
それにあんなに大人数で入ったら個人のスペースが狭くなってしまってくつろぐことが出来なくなる。
人数の点はまだ妥協しても良いけど、他の点だけは絶対に譲れない。

未「実はみんなに言ってない所に温泉見つけたんだよね~♪」

帰り道に偶然見かけた場所。
スピアはその時グッタリしながら歩いてたから気付いてなかった。
あそこなら静かに温泉に浸かれるはず・・・♪

未「ここここ♪」

静かだな~。
これならくつろげそう。

未「さてと・・・♪」

温泉に入る為、そこに近づく。
…あれ?

未「あなたは・・・」
「!!」

この前の人だ。
二日前にあったあのわたしの知らないポケモンの。

「き、キミは・・・」
未「あなたも温泉?」
「う、うん」
未「そう。じゃ、一緒に入らない?」
「え!?」
未「さすがに一人だけじゃつまらないもん。ね?」
「い、いや、それは・・・、わかるけどね・・・」
未「早く入って」

わたしが促すと、その人はかなりゆっくり温泉に浸かった。
わたしもすぐに温泉に浸かる。

未「はぁ~・・・、気持ちいい~・・・」
「・・・・」
未「ねえ、あなたの名前は?」
「・・・き、キリク・・・。キリク・アルファータ・・・」
未「キリクかぁ。わたしは未歩っていうの」
キ「そ、そう・・・」

キリクはわたしの方に背を向けている。
キリクの長い毛がお湯の中でユラユラと揺れている。

キ「・・・やっぱりいいや、自分はもう上がるから」

キリクが湯船から出ようとする。
それをわたしは押しとどめた。

未「まだ良いでしょ?今入ったばっかりなんだから」
キ「・・・わ、わかった・・から・・・、ちょっと離れてくれる・・・?」
未「うん」

キリクはわたしの方を絶対に見ようとしない。
何故だろうか?

未「キリクも温泉好き?」
キ「ま、まあ、ね」
未「わたしも温泉大好きなんだ。やっぱり気持ちいいよね」
キ「・・・そうだね」
未「特にこうゆう二人だけで入ってるとか、そうゆう時ってなんか仲が良い感じがしてさ。キリクみたいに何度か会ったことのあるだけの人でも」
キ「・・・そう」
未「でもさぁ、そうゆうのわたしの兄ちゃんわかってくれないんだよね。やっぱり男の人にはわからないのかな?」

キリクは一瞬こっちを振り向きそうになったがまた元の方を向いた。

キ「・・・わかる人もいるよ」
未「そうかな?」
キ「・・・自分も好きだし」
未「キリクは違うでしょ?」
キ「え?」
未「キリクは男じゃないし・・・」
キ「・・・・」

キリクの様子が若干変わった。
痙攣したように時折ピクピクと動く。

未「やっぱり女にしかわからないこととかあるよね」
キ「・・・(ボソボソ)ない」
未「?」
キ「・・・・」
未「???」

何か言ってたみたいに聞こえたけど・・・。
気のせいかな?

未「それにしても、また会えるだなんて奇遇だよね」
キ「・・・そう、だね」
未「わたし達波長が合うのかな?」
キ「・・・かもね」
未「ねえ、どうしたのさっきから?」
キ「・・・な、なんでもないから」
未「何か悩み事?わたしで良いなら言ってみて。女同士力になれることが・・・」
キ「違う!!!」
未「!」

キリクが急に叫んだ。

未「な、なに?どうしたの急に?」
キ「違う違う違う!!!」
未「何が違うの?」
キ「女じゃない!!」
未「は?」
キ「自分は!!女じゃ!!無い!!!自分は男だ!!!!」

…冗談だと言って欲しかった。


最終更新:2009年01月25日 20:02
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