第八十九話:(追い火)
あたしがみんなに追いついた時は既に森を抜けかかっていた。
というよりもみんなあたしと進を待っていたみたい。
サ「みんなゴメンね、遅くなっちゃって」
未「どうしたの兄ちゃん?」
サ「あたしが連れて行こうとしたら一緒に襲われたのよ。それで進だけ気絶しちゃって」
フ「襲われたって、誰に?」
グ「この俺にだよ、お嬢さん?」
サ「!グリード!?」
いつの間にか現れた。
オバケかあんたは。
サ「あんた何しに来たの?やる気?」
あたしは身構えた。
グ「まさか。一つ思ったんだ、まあ、小さな提案というものだ」
サ「提案?」
グ「そうだ」
グリードは少しめんどくさそうにみんなを眺めた。
グ「・・・全く・・・、このデメリットの多さ、我ながら信じられない・・・」
サ「はぁ?」
グ「サラ、キミは言ったな。“みんなのいる場所が自分の場所”と。つまりそこの・・・、そいつ達がいれば良い訳だ」
グリードは一歩くんと花歩ちゃんで目を留めた。
グ「・・・この際美しくなかろうが人間だろうがどうでも良い」
サ「何が言いたい訳?はっきり言いなさいよ」
グ「そうしようか。俺がキミ達に同行しよう」
サ「はぁ!?」
グ「何か問題でも?」
サ「大ありよ!」
冗談じゃないこんなのについてこられたらあたしの身が持たない。
なんとしても追い返したい。
グ「俺のどこが問題だ?」
サ「どこって全部!あんたがいるだけで不快よ!」
シ「それは言い過ぎじゃないですか?」
サ「全然言い過ぎじゃない!大体虫が良すぎるのよ!最初あたし達を殺そうとしといて今は“キミが欲しい”だなんていい加減に・・・」
ガシッ チュ~・・・
全「え!?」
サ「ぷはっ!このバカ!何すんのよ!!」
グ「うるさいその口を塞ぎたくてな」
サ「ふざけんじゃないわよ!!」(ガブッ!)
グ「ぐっ・・・」
あたしは本気で怒っていたのでグリードの首に噛み付いた。
さすがのグリードも少し応えたようだ。
サ「このまま食いちぎってやっても良いのよ」
グ「・・・やってみろ。キミには出来ない」
若干息が苦しいようで声が少しおかしい。
サ「それはどうかしら?」
グ「・・・キミはためらってる。眼がそう告げている。誰だってそう、ためらい、恐怖、怒り・・・。そういった負の感情は目が一番よく教えてくれる。キミの眼には俺に対する怒り、こうやって俺を殺せる状況においている事へのためらい、さらに俺を殺してしまったと考えた時の恐怖。それが見えるんだよ」
サ「・・・・」
図星だ。
全て言い当てられた。
でも進に心の内を言い当てられた時と違って冷ややかな気持ちだ。
グ「・・・まあ、キミは今でも勘違いをしているようだが」
サ「?」
グ「いつだって、キミは俺に生かされている。今だってそうだ」
サ「寝言は寝て言いなさい」
グ「離れてくれるか?せっかく見つけたんだ、殺したくない」
サ「嫌よ。離したらあたしの事諦めるなら考えても良い」
グ「それは無理だな」
サ「じゃあ離さない」
フ「それじゃ堂々巡りでしょ・・・」
ス「そうだよ、さっさと進まないと」
サ「うるさいわね!これは女のプライドの問題なのよ!」
キスされるだけされてストーカーまでされるなんて適わない。
絶対追い返してやる。
グ「・・・【ウゥルデッドリー】!」(ジュゥゥゥ・・・)
サ「うあっ!」
未「サラ!」
グリードの身体から緑色の炎が吹き出した。
炎なのにあたしがもらい火出来ない。
グ「意地というものは実に醜い。俺は美を求めてるんだ、そんなもの俺に見せるな」
サ「あ、あんたの意見なんか聞くもんですか!」
グ「・・・そこまで俺が嫌いか?」
サ「当然!」
グ「・・・そうか。ならば、誰かの手に渡り口惜しい思いをする前に今ここで消してしまおう」
サ「やってみなさい!」
グリードの尻尾がユラユラと揺れ始めた。
木々の間をする抜けて落ちてくる雨粒がグリードの身体に触れる前に蒸発して消えていく。
きっとあたしの事もあんな風に消すつもりなんだろう。
でも、そう簡単にやられるつもりはこれっぽっちもない。
最終更新:2009年01月25日 21:44