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第九十一話:雨のち霰

第九十一話:(雨のち霰)


結局グリードはついてきた。
あたし達の大分後ろでゆっくりとみんなを眺めながら。

ア「進さん、大丈夫かな・・・」
ス「さあ・・・」
ペ「僕だって・・・、歩美がさらわれただけでこんなに悲しいんだ、進はEVのこともあるし・・・」
サ「・・・・」

進もあたし達から遅れがちだ。
相変わらず無気力で、死んだ魚のような目をしている。

フ「・・・トイシタウン、見えてきたわね」

フィーネはとりあえず現状報告。
みんなそんなことぐらいわかっているが話を変えたかったんだと思う。

キ「ふぁぁぁ・・・、ねむ・・・」
未「今の状況でよくそんなこと言えるね・・・」
キ「自分には関係ないし・・・」

キリクはまたあくびした。
怒りたい所だったけど、今そんなにコロッと切り替えられない。
わたしだって姉ちゃんがさらわれてショック受けてる。

花「じゃあ、私達ポケモンセンターの部屋借りてくるわ。みんな自由にしてて良いわよ」
一「気分転換してきなよ」

トイシタウンは小さな町だが色んな施設がある。
ポケモンを戦わせる為のコロシアムや、ポケモンも人間も使える温泉など。
さすがのわたしでも今温泉に浸かる気分じゃない。
後で行くことは行くけど。

ミ「あそこに行ってみようよ」
フ「闘技場?」
ペ「ちょっとニュアンス違うと思う」
ス「早く行ってみよ」

スピアはこの暗い雰囲気に耐えかねた様子だ。
兄ちゃん達はそのままコロシアムに向かったが、キリクが別の方へ行ってしまったのでわたしはキリクを追いかけた。

未「キリク、どこ行くの?」
キ「関係ない」
未「勝手に進んじゃダメだよ」
キ「何で自分には関係ないあの暗い中にいなきゃいけない?ごめんだよ、あんな所」
未「何でさっきからそんなに関係ない関係ないって!関係あるでしょ!」
キ「無いよ。自分と進さんは赤の他人、好んであの中にいなきゃいけない理由は?」
未「友達じゃないの?」
キ「・・・そうかもね。だけど、他人は他人」

キリクはまたあくびした。
わたしはだんだん腹が立ってきた。

未「友達なら!何で慰めようとしてあげないの!?何でそんなに無関心でいられるの!?」
キ「・・・雨のせいかな」

キリクはそう言うとサラサラと降る雨を見つめた。
わたしは意味がわからず、でも腹が立ってキリクに詰め寄った。

未「誤魔化さないで。何が雨のせい?キリク、逃げてるだけでしょ!」
キ「・・・はぁ・・・」

ため息を吐いたあと、空を見上げて呟いた。

キ「【霰】」

雨はみるみる凍り付き、空からは氷の粒が降ってくるようになった。

キ「自分が逃げてる?それは違う」
未「?」

口調がさっきまでと違う。
雰囲気も変わった。

キ「考えたことある?自分が尊敬してる人が急にダメな奴になったらって」
未「え?」
キ「自分はそうなったらもうそいつのことは尊敬出来ない。ダメな奴を尊敬してたらこっちまでダメになる」
未「な、何言ってるの?」
キ「歩美さんとEVさんがさらわれる前までは自分は進さんを尊敬してた。みんなだってそうだ。アイクもスピアも進さんのこと尊敬してる。みんなの為に頑張ってる、時々変な所もあるけど、だけどそれが進さんの良い所だった。なのに今は?」

キリクはわたしを見た。
目つきは鋭い。
氷のような冷たさまで感じる。

キ「全く生気が感じられない、死んだ魚のような目をしてる。直って貰えるなら直って欲しいけど、それは無理。二人はギャラルの所にいる。取り返すなんて出来っこない。そうでもしなきゃ直らない進さんのことを心配してやるだけ無駄なんだよ」

わたしはまくし立てられて呆気にとられていたが、言葉の意味を全て理解した瞬間キリクの頬をぶった。

キ「!?」
未「黙って聞いてれば・・・、なんて事言うの!?少なくともそんなこと尊敬してた相手に思ってても言える事じゃない。そんな事言う人わたし絶対に許せない!わたしの兄ちゃんなんだよ?凄くわたしのこととか姉ちゃんのこと大切にしてくれる、凄く大切な人!その人にそんな事言うなんて絶対許せない。大切な人をそんな風に言われてわたしが良い気分すると思う?謝ってよ!わたしにも兄ちゃんにも!」

わたしが言い返すと気に障ったらしくキリクはわたしを突き飛ばして押し倒した。
さっきの兄ちゃんとグリードのような状態だ。
キリクの方がわたしより一回り大きいが。

キ「うるさい!何で謝らなきゃいけない!謝って欲しいのはこっちだ!何で進さんはあんな風になっちゃったんだよ!何で進さんは自分が尊敬出来るような人じゃなくなったんだ!愚痴だって言いたくなるよ!」
未「愚痴言う前に行動して!直って欲しいんでしょ?尊敬出来る人にさ」
キ「・・・うん」
未「こんな所で愚痴なんか言って、本当にダメな奴になっちゃうの、キリクなんだよ?自分が動かないのに相手のせいにして、逃げてるんだよ」
キ「・・・・」

キリクはわたしから離れるとわたしに背を向けてポツリと言った。

キ「・・・ゴメン・・・」

わたしは頬笑んでから空を見上げた。
さっきから霰がどんどん大きくなってきている。


最終更新:2009年01月25日 21:59
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