パタパタとドアの向こうの廊下から足音が聞こえ、ドアが開いた。
入ってきたのは大体10歳ぐらいの女の子だ。
ヘアピンで留めた長い髪が薄青いワンピースに映える。
彼女が瑞輝らしい。
瑞輝は腕に何か抱えている。
「あ、その子起きた?」
瑞輝は腕から持っていたものを降ろす。
それはイーブイのぬいぐるみだった。
完成度は進からしてみれば微妙だった。
「どう?可愛いでしょ?」
「そ、そうですね~」
ルナは引きつった笑みを浮かべながら言う。
無論、人間にはルナが鳴き声を出したとしか聞こえない訳で、なんと言ったのかはわからない。
しかし、ちょっとした声のうわずりはわかったらしい。
「可愛くないかな?」
「可愛いけど数が多いんですよ」
ヒュドールは瑞輝から顔をそらしつつ言う。
瑞輝は聞こえなかったようだ。
「キミには似てないかな?」
瑞輝は進に言う。
人形には似てない。
率直に言った。
「人形になんか似てるもんか」
瑞輝に不快感が届いたらしく苦笑している。
そのイーブイの人形をベッドに置き、進の前に来る。
その場に座って進と視線を合わせる。
「どこも悪くない?」
心配そうにしながらも瑞輝は笑顔で訪ねた。
言葉を伝えるつもりが無いので表情で伝えた。
「まぁ、な」
「良かった。何ともないみたい」
瑞輝は立ち上がるとドアを開けた。
「お腹すいてるでしょ?おいで。ご飯用意してあげるから」
まあ、空腹なのは事実なのでそこは瑞輝の好意に甘える事にした。
正直一人で食料を見つけろと言われても進には万引きぐらいしか方法が見つからない。
瑞輝を追いかけると進は固まった。
「・・・え?マジかよ・・・」
目の前にあったのは進が出来れば絶対食べたくないと思っていたもの。
普通のポケモンにとってはそうでないけれど進は普通のポケモンではない。
「どうしたの?」
「ポケモンフードなんか食えるか!」
「嫌いなのかな・・・。どうしよ・・・」
瑞輝は困った様子だ。
進は人間用のテーブルの上に飛び上がった。
その上にある果物が置かれている篭の中からリンゴを引っ張り出してかじる。
瑞輝はそれを見て安心した顔をする。
何か食べたので調子が良いとわかったのだろう。
進はリンゴを芯を残して食べ終わると芯を残飯入れの中に放り込む。
瑞輝は感心した声を出した。
「頭の良い子。凄いなぁ」
「ゴミ捨てるのは当然だろ」
言ったが当然伝わるはずがない。
伝える気がないのだから。
最終更新:2009年05月03日 13:39