可能性

「トルネ・・コ・・」
と言う声を最後に、音が消失した。ほんの一瞬だけ。
この広いアリアハン大陸全土に響き渡る演説をおこなった、尊敬するべき女性は、死んだ。

その瞬間、王子クーパーは顔を青ざめ、王女アニーは「あ…。」と、声にならない声を上げる。
バッツは自分の右腕をぎりっと握りしめた。
ただ一人、そこらの岩に腰掛けたパパスだけは表情も変えず、どっしりと構えたままだった。少なくとも、表面上は。

アリアハン西の湖畔から少し北。彼らはそこで死を認識した。

「…死んだ…のかな…?」
クーパーが震えた声を上げた。声だけではなく、全身を震わせて。
誰も答えなかった。分かり切った事に答えるなど。愚かな人間のすることだ。少なくともこの状況下では。
「ねえ…パパスおじさま…助けに行った方が良かったんじゃ……っ!」
半ば悲鳴と化したアニーの声。
全くその通りだ。自分たちが護衛にでもついていたら、ゲームを抜ける人達を集める事が出来たかもしれない…からだ。
座っていたバッツはゆっくりと立ち上がった。遅すぎるけれど、あの塔に行くために。

「バッツ殿…。」
それを引き留めたのは、他の誰でもなくパパスだった。
「パパスさん…。」
バッツは、そう呟くしかなかった。
足下で、ごくりと息をのむ音が聞こえてきた。
クーパーとアニーがいつの間にか自分の隣に立っていた。ついてくるつもりだったらしい。
耐え難い沈黙。風が、太陽の白に染められた空間を撫でた。もうそろそろ、つぎの“舞台”へ移る合図があるかもしれない。
「やけっぱちでなく、一人でも行くというのなら止めはせん。」
パパスの言葉は、静かだが強かった。
「……。」
バッツは鞘からブレイブブレイドを抜き、地面に思いっきり突き立てた。
パパスもクーパーもアニーも、バッツから聞いていた。その剣が勇気を力にする剣である事を。
剣の刀身は、くすんでいた。だが、パパス達と出会った時よりはずっと、美しく煌めいているようだった。
「クーパー、アニーを守ってやれよ。アニー…みんなで、生き残れ。」
双子の頭を撫でてそう言うと、バッツは剣を鞘に納めた。
「さっきは助けてもらって、本当に有難うございました。やっぱり…あの塔はほおっておけないんです。」
バッツはそう言って、塔が見える方に向き直った。そして、多少の迷いを残して、歩き出した。

歩き出したバッツの紅いマントを誰かがぐいっと引っ張った。
引っ張ったのは、アニー。
「…アニー?」
「ヤダよ…知らない所でバッツお兄ちゃんが死んじゃったらヤダよ!」
とうとう泣き出したアニーの後ろで、クーパーが天空の盾を構えた。
「ボク…勇者…だから。怖くなんか…ないもんっ!」
涙をポロポロ流しながら言う二人を見てから、バッツはパパスを見返した。困ったように。
パパスはふっ…と笑うと、バッツ達にならって立ち上がった。
「危険と同程度の可能性がある。ならば、可能性に賭けてみるかね?」
全員が、力強く頷いた。

【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法) 所持品:ブレイブブレイド
 第一行動方針:塔へ移動
 第二行動方針:レナとファリスを探す
 基本行動方針:非好戦的だが、自衛はする
 最終行動方針:ゲームを抜ける】
【パパス 所持品:アイスブランド
 第一行動方針:塔へ移動
 第一行動方針:子供達の両親さがし
 基本行動方針:子供達の安全確保
 最終行動方針:ゲームを抜ける】
【クーパー 所持品:天空の盾とマンゴーシュ(王女の支給品)
 第一行動方針:塔へ移動
 第二行動方針:両親さがし】
【アニー 所持品:なし
 第一行動方針:塔へ移動
 第二行動方針:両親さがし】
【現在位置:アリアハン西の湖畔より北】


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最終更新:2011年07月18日 02:05
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