仮眠

バッツの真っ赤なマントとクーパーの真っ青なマントが、山間の岩の辺りでこんもりとうずくまっていた。
その下にはバッツと、今だ眠るリディアと、あまりの衝撃に動く事すら出来ぬクーパーとがいた。
「魔法剣…ファイア!」
ぼんっ、と言う音と共に手にしたブレイブブレイドが炎を纏う。
「…っく。」
ほとんど消耗し尽くしたバッツの魔力を無理矢理絞り出した炎は、倒木とマントで作った簡単な屋根の下で赤々と燃え上がった。
…これでいい。魔法剣は唱えてしまえばかなりの時間安定する。その間動かなければ多少の魔力回復は見込めるだろうが…。
バッツは紅いマントの屋根をつっと見上げた。マントの表面積はあまり広くなく、リディアとクーパーを雨の冷たさから守るためにバッツの半身は雨を浴びっぱなしだった。
それでなくても、マントにしみこんだ雨水がぽつぽつと落ちてきて、クーパー達を冷たい手で愛撫する。
…早く町に行かなくちゃいけない。こんな簡易テントで雨をしのぎ続けられる訳もない。
事実、柱代わりの倒木は今にもマントの重みで折れてしまいそうだ。
だが…動きたくても動けなかった。クーパーが居たから。

あの忌々しいゾーマの放送。
ソレが終わった時、バッツはクーパーの歩みが止まったのを確認した。
なんでだ?という思いはなかった。だいたい予想は付いた。誰か知り合いが死んだのだ。
誰が死んだかもすぐに知れた。「母さん…母さん…。」というクーパーの虚ろな呟きを聞いて分からないヤツがいたら、ソイツは相当な馬鹿だ。
それっきり、クーパーは自分の意志で動いてはいない。バッツに引っ張られて、簡易テントの真ん中にリディアと座らされて、それっきり。
バッツは燃える剣を地面に突き刺して焚き火代わりにすると、ザックの中からパンをとりだして囓った。体力のある今の内に何か食べておかないと…。
だが、ソレを一口囓っただけでバッツはザックにパンをしまい込んだ。食欲がない。パパスと居る間にちょこちょことった仮眠のおかげで、眠気はないが。
「…クーパー?」
ふと、問いかけてみた。返事がないのは、分かり切っていたが。

バッツ兄ちゃんが、ボクに問いかけてくる。
返事をしなくちゃ……でも…でも…。
ごめん、って心の中で謝るだけで、結局返事は出来なかった。凄く疲れてる訳じゃない。何か…心が、重い。
……“死んだりしない”って思ってた。
誰が死んでも…ピエールは、ピピンは、父さんは…母さんは、死なないと思ってた。
だって、大魔王だって倒したんだよ?あの、邪悪そのもの…大魔王ミルドラースだって。
…ボクが子供だったんだと思う。ここでは、死ぬって言うのは誰にでも…ボクにでも…来るんだ。
心の底から怖い。動きたくない。ここでいつまでもじっとしていたい。
…ボクって嫌なヤツだ。アニーだって怖がって…ひょっとして死にそうになってるかも知れないのに。
…ボクは勇者だぞ!怖がっちゃ…いけないんだ…ボク…は。

どうやら眠ってしまったらしいクーパーを見て、バッツはほっとした。
眠れるのなら、大丈夫だ。
バッツはブレイブブレイドをいつでも引き抜ける体勢で、座り込んでいた。


【バッツ@魔法剣士(アビリティ:時魔法、魔力消耗)
 所持品:ブレイブブレイド
 第一行動方針:パパス、アリーナ、アニーとの合流
 第二行動方針:レナとファリスを探す
 基本行動方針:非好戦的だが、自衛はする
 最終行動方針:ゲームを抜ける】
【クーパー(睡眠) 所持品:天空の盾、ロングソード
 第一行動方針:父親、アニーとの合流】
【リディア(幼児化、睡眠) 所持品:なし
 第一行動方針:???】
【現在位置:封魔壁前の砂漠北側とアルブルクの町の中間地点】


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最終更新:2011年07月17日 13:10
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