ゾーマは玉座に1人佇んでいた。
しかしそこにいたのはいつもの威厳に満ちた巨体ではなく、かなり小柄な姿のように感じられる
そのゾーマだが、先程からしきりに自分の手を気にしているようなしぐさだったが
やがて鏡の前でゆっくりと自分の身体を包む衣服を脱ぎ捨てていき、一糸まとわぬ姿となる。
そして鏡に映し出されたその姿は、大魔王とはとても思えぬ美しい少女の姿だった
しかし良く見るとその白い肌の至るところに無数のひび割れが生じているのが見える
まるで今にも崩れ、砂になってしまいそうな古ぼけた陶器のようだ・・・・
「やはり、もう長く保ちそうに無いようだな・・・・・」
その唇から発せられたのは荘厳さに満ちたいつもの声だった。
いかに魔族と言えども、この世界における絶対の理・・すなわち滅びから逃れる事は叶わぬ
それは無限の魔力を誇る大魔王とて例外ではない
魔力ではその精神を繋ぎとめることは出来ても、永遠に肉体を維持することは不可能なのだ
しかし、方法が無いわけでもない、他人の肉体を奪いその中に自らの精神を移植させる
遥かな太古に失われたこの邪法によって、ゾーマは文字通り悠久の時を生きてきたのだ
だが、誰でもいいわけではない、大魔王ともなれば、その絶大な魔力を余すことなく
受けとめられるそんな肉体の持ち主を選ばなくてはならない・・・・
そう・・・ゾーマしか知らぬこの戦いの目的は一つ、戦いを潜り抜け生き残った者を依代にし
また再び新たな肉体を手に入れるためのものだった。
しかし正直飽きた・・・・・
もはや自分が元々何で誰だったのかすらも思い出せない
まさか最初から大魔王であったはずではないだろうが・・・・・
ゾーマは皮肉っぽく唇を歪めて1人ごちる
「のう、
エビルマージよ、我もかつては貴様と同じだったのかもしれんな・・・・」
彼が玉座を狙っていることなど、とうに承知していた、果たしてどんなやり口で来るのか
それはもはや脅威ではなく期待にすらなっていた。
「だが、ただでこの玉座くれてやるつもりは無いがな・・・心して挑むが良い」
何時の間にかゾーマは衣服をまとい、すでに普段の姿へと戻っている
その視線の先の巨大な水晶に、戦場の様子が着々と映しだされる
彼ら1人1人の姿を見ながら、ゾーマは静かに呟いた。
「あるいはそなたたちが我に終焉を与えることになるのであろうかな?・・ふふふ」
最終更新:2011年07月18日 08:19