友の言葉

「こんな雨の中ですまんが…。」
リバストはそう呟きながら、目の前のこんもり盛り上がった土の塊に、墓標代わりに銅の剣を突き立てる。
その下に眠っているのは……こんな言い方をしていいのかは、リバストには分からなかったが…彼の友だった。
名前はレオンハルト。彼がどんな人間だったかは剣を通してしか分からなかった。彼がどうして死を望んだか?本当の理由を聞く事は出来ない。
ただ…少なくともその最後を看取ったリバストには、彼が“死ぬべき”人間だとは思えなかった。
ベクタを囲む山脈の中で最も高い山…恐らくは、この大陸でもっとも空に近い場所に、レオンハルトは埋葬された。

(さて、これからどうするか…)
リバストは雨に打たれながら、思考の海へと沈んでいく。
もともと、最後の戦いが終わったら死ぬつもりだった。今の彼は生き延びる事に…正確には他者を押しのけてまで生にしがみつく事に…執着はなかった。
なにしろ、自分は一度死んでいる。心躍る戦いと言う望みを果たした今、これ以上何の望みがあるというのだ?
…リバストはゆっくり目を開いた。ヘットバンドにささっている真っ白な羽が、雨の勢いに負けて地面に落ちていた。
リバストは無言で、ソレを元の位置に戻し、放りだしたまどろみの剣を手に取った。
(レオンハルト。向こうでもう一度戦ろう…!)
リバストは手にした剣を振りかざし、己の腹に向かってそれを振り下ろした!

……ばきっ!

その手が、ピタリと止まる。背後で、何かが折れる音がしたから。
リバストは驚き、振り返る。
背後には、彼がたった今作ったレオンハルトの墓がある。その墓の墓標代わりの銅の剣がぱっきりと折れていた。何の衝撃も、無かったのに。
安物の銅の剣が、まるで伝説の勇者の剣みたいに見えた。地面に突き刺さったままの刃も、地面に落ちた柄も、とても誇らしくその存在を誇示していた。
何もなかったのに折れた?それに、今のタイミングは、まるで…。
「お前が止めたのか?レオンハルト…。」
そうとしか思えなかった。都合がいいとも思ったが、とにかく…。
「…わかった。」
リバストは頷き、立ち上がった。
リバストは、ゆっくりとした足取りで山を下り始めた。しっかりとした足取りで。
レオンハルトが死ぬなと言うのなら、もう少し生きてみてもいいだろう。
ただ…それにしがみつこうとは、やっぱりこれっぽっちも思わなかったが。

【リバスト 所持品:まどろみの剣
 行動方針:今のところ無し】
【現在位置:ベクタ周辺の山脈】


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最終更新:2011年07月18日 01:59
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