木立の影で、導士の少年は目を覚ました。
「……?」
状況がわからないのか、それとも寝ぼけているのか。
ぼんやりと、視線を宙にさまよわせている。
「……そっか、あのバケモノから逃げようとして、ここに隠れてたんだっけ」
いつの間に寝ちゃったんだろう? そんなことを考えながら、辺りを見まわす。
雨はすっかり上がり、薄霧の向こうに見える朝日がとてもキレイだ。……って、朝日?
「しまった! 放送聞き逃しちゃった!」
その事実に気付き、オロオロしていると、遠くで誰かの声が聞こえた。
『――たすけ……』
「?」
ドコかで聞いた声だ。頭の中で危険信号が点灯するが、無視してその方向へ行ってみる。
すると、一人の男が、何故か橋の上でうずくまっているのが見えた。
「……
デッシュ? デッシュじゃないか! 久しぶり!」
知己の姿に、少年は喜んで駆け寄ろうとする。
しかし、デッシュは顔色を青くし、首を横に振る。『こっちへ来るな』というように。
「どうしたのさ?」
さらに一歩近づく。向こうはもっと青ざめ、首を振るスピードを上げた。
逆に、一歩下がってみると、ちょっとだけ顔色が良くなる。
(……ちょっと、おもしろいかも。)
などと思ってしまったが、そんな面白がっている場合ではなさそうだ。
少年がそっと橋のたもとまで降りてみると、橋桁に無数のヒビが入っているのが見えた。
なるほど、こんな状態じゃ、ちょっとの衝撃が加わるだけで橋は簡単に崩壊してしまうだろう。
「ちょっと待ってて、誰か呼んでくる」
事態を把握した少年は、踵を返した。その時。
こつん、と音がした。
『…………(汗)』
振り返ると、少年の持つ
天罰の杖の先が、橋桁に思いっきり当たっていた。
それに反応するように、グラグラピシピシと橋が揺れる。無数の破片が濁流に落ちていく……
「うぉおおおおおおお!!」
デッシュが跳んだ。
その弾みで、橋は完全に崩壊する。
導師の少年は、慌てて杖を差し出した。
だが、わずかに届かない。このままでは、デッシュは橋と同じ運命をたどるだろう。
「デッシューーー!!」
濁流に消えて行くデッシュの姿を想像し、少年は叫んだ。
――その時、杖の先端から、竜巻のような風の渦が巻き起こった。
宙空のデッシュの身体が、渦の中心へと引き寄せられる。
彼の手が、杖の先端を握り締めると同時に、風は消えた。
「しっかりして!」
物凄い勢いでデッシュをさらおうとする水の流れ。
少年は手近にあった木をつかみ、必死で杖を握り締める。
何があっても、この杖を離すわけにはいかない――
その身体が、不意にぐいっと動いた。真後ろに。
それに合わせて、デッシュの身体が、勢いよく陸へと上がる。
「大丈夫か?」
ぼーっとしていた少年が振り向くと、そこには壮年の剣士が立っていた。
「くそっ、荷物は全部パァか」
「仕方ないよ、あんな状況じゃ」
荷物が流された、それで済んだだけでも十分幸運だ。
「大丈夫だよ、食料なら
パパスさんも少し分けてくれるって言ってたし、
僕のもまだまだあるからね」
「そういうわけじゃないんだが……」
言いかけて、デッシュはふと何かに気がついたかのように、少年を見つめた。
「……なぁ、おまえ、何のジョブについてるんだ?」
「え? やだなぁ、このネコミミフードでわからないの?」
わからねーよ、と心の中でツッコむデッシュ。
「導師だよ。ど・う・し」
聞いたことはある。確か、白魔道士系最高のジョブだ。
当然、白魔法に関する知識は、並みの魔導師を遥かに凌ぐはず。
「そうか。……実は話があるんだが」
デッシュは単刀直入に話を切り出した。
エドガーや首輪のこと。研究の成果。
そして、自分達が魔法使いの助力を求めている事。
「無理にとは言わないが、良かったら協力して欲しいんだ」
「いいよ」
デッシュが拍子抜けするほどあっさりと、導師の少年は承諾した。
「……本当にいいのか? 運営側に狙われる
可能性もあるんだぜ?」
「だって、このまま隠れ続けるのも限度があるだろうし」
それに、腕輪を持っていったバケモノ。あんな奴に勝ち目なんかあるもんか。
首輪が外せるんだったら、とっとと外して逃げるに限る。
「……ありがとよ」
デッシュの言葉に、少年は少し照れたように、そっぽを向いた。
「お世話になりました」
二人は
旅の扉の傍に立つパパスに礼を告げる。
「行くのか?」
デッシュがうなずく。
「そうか……気をつけてな」
パパスの隣で、
トーマスが別れを惜しむように、くぅんと鳴き声を上げた。
「……また、会えるといいですね」
できれば、首輪の解除方法が見つかった後で。
導師の少年はそう思いながら、扉をくぐった。
【導士 所持品:天罰の杖
第一行動方針:エドガーに会う
基本行動方針:なるべく戦闘は避ける】
【デッシュ 所持品:
ミネアの首輪
第一行動方針:エドガーとの合流
第二行動方針:首輪の入手
最終行動方針:首輪の解除】
【現在位置:新フィールドへ】
【トーマス 所持品:
薬草×10 鉄の爪 手紙 トム爺さんの分の食料 碁石(20個くらい)
第一行動方針:パパスについていこうと思ってはいる
基本行動方針:生き残る
最終行動方針:トム爺さんの息子に一言伝える】
【パパス 所持品:
アイスブランド
第一行動方針:跡地の旅の扉にて限界まで待つ
第二行動方針:
バッツと双子を捜す
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【現在位置:封魔壁跡地】
最終更新:2011年07月18日 00:37