ザックスと
スコールはそのまま素手の殴り合いに移行した。
元々剣使いである二人にとって格闘術は専門ではなかったが、それでも素人の
リノアが立ち入れる領域ではなかった。
超近接状態でザックスが拳を繰り出せば、スコールはそれをしゃがんでかわし、そのまま足を払う。
綺麗に転倒したザックスはお手本どおりの受身を取り、そのままで蹴りを放つ。
最初はかわしかわされの攻防も、次第にお互いの攻撃が決まり始めて動きが止まる。
こうなると、負傷しているスコールの方が不利だ。顔面を殴られ、尻餅をついたところにザックスが馬乗りに圧し掛かる。
「これで、終わりィッ…!?」
スコールの動きを封じようとして自分の動きも止まる、そこに付け込む隙があった。
リノアは背後から
妖精のロッドを思い切りザックスの横顔に叩き込む。
それ自体の威力はたいしたことは無いが不意をつかれてザックスは倒れる。
「スコール!」
その脇を抜けて、リノアはスコールの手を取る。
はぁ、はあ、と息を切らすスコールに人間味を感じて、リノアは少し嬉しくなった。
「行こう」
スコールの手を引いて駆け出すリノア。それに黙ってついていくスコール。
そんな二人の足音が遠くに消えた時、ザックスはダルそうに上体を起こした。
「ちェ、そう言えばそうだったな…あの子は、あいつを」
すぐにまた、地面に倒れる。ヒリヒリと頬が痛んだが、それ以上に胸がムカついた。
「これじゃ、道化師じゃねーか。クソッ」
ザックスが追ってこないことを確認したリノアとスコールは走るのをやめた。
ただ、手は繋いだままだった。繋いだ、と言ってもリノアがスコールの手を掴んでいるというのが正確だろうが。
スコールと離れたくない、ということもある。それ以上に、離したらどこにいってしまうかわからないことが不安だった。
人気のない洞窟の中を進む。何度も迷いながらもさしたるトラブルもなく、出口近くまで来ることができた。
そこで彼等はその男に遭遇した。
暗くてよく見えないが、体格のいい男性である。腰には剣が下げられていた。
向こうはこちらのことに気付いていないようだけど、どうすればいいのだろう…とリノアは迷う。
スコールは迷わなかった。
「あっ!」
リノアの手を振り払い、その男めがけて疾走する。
殺到してくるスコールに気付いた男、だが彼が反応する前にスコールは彼の脇に入り、腰の剣に手をかける。
剣を半ばまで抜いたところで、スコールの腹に、男の筋骨隆々とした肘がめり込んだ。
弾き飛ばされるスコール。その拍子で男の腰から剣が抜け、地面に落ちた。
「スコール!」
男はリノアのほうをちらりと見た。そしてすぐに、スコールに視線を戻す。
スコールはふらつきながら落ちた剣を拾い立ち上がる。男はそれを冷ややかに見つめていた。
「賢しいな、小僧。そうやって人を騙して生き抜いてきたか」
重い、大人の声が洞窟に響く。それを断ち切ろうとスコールは一歩前に出ようとした。
その前に、男の足が前に出た。スコールは前に出るのをやめて、一歩退いた。
もう一歩、男が前に踏み出す。それにあわせてスコールは後退する。
「どうやら、性根が腐っているようだな。親に代わって私が仕置きしてやろう」
男が前に進めば、スコールは下がる。男に向けた剣の先が揺れ、スコールの頬に一筋の汗が伝う。
緊張を断ち切るように、スコールは男から奪った
アイスブランドを振るう。
男はかわそうともしない。アイスブランドはかわすまでもなく空を斬るのみ。
「小僧、覚えておくがいい。戦場では闘気の勝るほうが勝つ」
スコールの目に、その男が大きくうつった。これまで出会ったことのない、強い力とそれを固める年齢を重ねた大人の存在が、果てしなく大きく見えた。
「腐抜けた魂と曇った気合、体だけで振ったそんな剣が、この
パパスに通用すると思うな!」
刹那、スコールは殴り飛ばされた。顔面の骨格が歪むかのような強烈な一撃。
剣を取り落とし、洞窟の壁に叩きつけられる。そこに、追い討ちをかけるパパス。
リノアは呆然と目の前で繰り広げられる惨劇を見ていた。
一撃一撃がスコールの中の何かを削り取っていく様を、呆然と見ていた。
そして、スコールが完全に抵抗をやめ、成すがままにされているのに気付いて、ようやくリノアは我に返る。
「やめて!」
なおも拳を振るおうとするパパスと、ほとんど自力で立っていないスコールの間に飛び込む。
「お願いだから…止めてください。私たちが悪かったです、だから」
「だから、何かな。お嬢さん」
だから…言葉を続けようとして、リノアは口篭もる。だから…私は何をしたいんだろう。何が出来るんだろう?何が…
そんなリノアをパパスは射るような視線で見ていたが、すぐに見切りをつけて視線を外す。
床に落ちたアイスブランドを再び腰に戻すと、物影のほうに何か合図を送る。
物影から出てきたのは、一匹の犬である。近くまで来たことを確認すると、パパスは口を開いた。
「子供と青年を探している。青みがかった髪の、10ぐらいの双子と、茶色の髪の20ぐらいの青年だ」
「…解りません。でも、奥に男性がいます。その人なら何か知っているかも」
「そうか。では会いにいくとしよう」
パパスは犬の
トーマスを伴い、洞窟の奥へ歩いていく。威風堂々としたその姿には一片の揺るぎもない。
直後、スコールは力無く倒れた。地面に触れるところで慌ててリノアが抱きとめる。
「スコール…」
スコールはボロボロだった。これが、自分の弱さを隠すために人を殺めてきた報いなのだろうか。
自分より強いものに成す術もなく嬲られ、まもるべき人に逆に助けられる。
なんて、惨め。…何時しか、スコールの瞳から涙が零れ落ちた。
【ザックス 所持品:
バスターソード
第一行動方針:エアリス・ティファの捜索
基本行動方針:非好戦的、女性に優しく。】
【現在位置:ロンダルキアの洞窟5F(移動してるかも)】
【スコール(気絶)
所持品:
真実のオーブ
第一行動方針:なし
最終行動方針:リノア以外は殺す】
【リノア 所持品:妖精のロッド
月の扇 ドロー:アルテマ×1
基本行動方針:スコールに着いていく】
【現在位置:ロンダルキアの洞窟6階】
【トーマス 所持品:
薬草×10 鉄の爪 手紙 碁石(20個くらい)
第一行動方針:パパスについていこうと思っている
基本行動方針:生き残る
最終行動方針:トム爺さんの息子に一言伝える】
【パパス 所持品:アイスブランド
第一行動方針:奥の人物(ザックス)と接触
第二行動方針:
バッツと双子を捜す
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【現在位置:ロンダルキアの洞窟6階】
最終更新:2011年07月18日 00:39