「くそっ!見失ったか」
ヘンリーと
アグリアスは森の中できょろきょろと周囲を見まわす。
尾行はうまく出来ていたと思う、おそらく相手の方が1歩上だったか、何らかのアクシデント的な
事が起きたかのどちらかだろう。
特にアグリアスは悔しそうだ、ここまでの失態の数々は彼女を確実に追い詰め始めている。
何か結果を出さねばという思いが彼女を支配していた。
(相手が…敵が欲しい、でなければ私はもう剣を握れなくなる)
と、ヘンリーがアグリアスの肩を叩いて、右方向を見るように促す。
そこには何時の間に現れたのだろう、壮年の戦士がゆっくりと歩いている。
そのたたずまいから見て、かなり名のある戦士に違いない。
「標的発見だな、俺は左から、お前は背後に回りこんで…」
だが、アグリアスはヘンリーの言葉に首を振る。
「私1人で行かせてくれ、頼む」
いぶかしげなヘンリーへとアグリアスは理由を説明する。
「私は騎士だ、剣の上の屈辱は剣でのみ晴らされる、ここでお前の力を借りてあの男を
倒したところで、それは騎士の勝利ではない」
そう、文字通り彼女は自身の騎士のプライドをかけて、失われた誇りを取り戻すべく、
果し合いを挑もうというのだ。
「お前は決して手を出すな」
苦笑するヘンリーを尻目にそう言い残すと、アグリアスはそのまま男の正面へとゆっくり歩み寄っていった。
リバストは自身の今の状況に明らかに困惑していた。
あの戦いの最中、竜巻に巻き込まれたと思うと、何時の間にかここにいた。
「ここは…何処だ?」
行けども行けども森の中をさまよい、ようやくその出口らしき所に出られたと思った矢先だった。
自分の前方から1人の女性がこちらへと向かって来る、その剣呑な雰囲気からいって、
どうやら彼女はやる気のようだった。
「名のある剣士と見た、勝負を願いたい」
その女性はそう言うなり、自分の握った剣の切っ先を空に向け、自分の胸の前に構える。
それは騎士の礼法で言うところの決闘の儀礼。
剣を天に向け構えるのは、決して卑劣な行為を行わぬという神々への誓いの証。
それを見て、リバストの口から。ほうと感心の嘆息が漏れる。
まさか、この
ルール無用の戦場でこのような相手に出会えるとは、早速リバストもそれにあわせて
返礼の構えを取る。
「良かろう、ならば戦うとするか、だが決闘における結末はただ一つであることを
もちろん承知であろうな」
「無論だ、この剣にかけて誓おう」
そして2人は同時に剣を腰で構え、アグリアスは中段から、リバストは下段から、
勢い良く手にした剣を抜き放ったのであった。
そのころ2人の戦いを横目に、ヘンリーはつまらなさそうに呟いていた。
「騎士の誇り…か、下らん」
風をきる刃の音と、それに遅れて火花が散る。
お互いの息使いさえ聞こえてくるようなつばぜり合いの中、先に動いたのはアグリアス、
自分の体重をわずかに横方向にずらし、リバストの身体のバランスを崩そうと試みる。
しかしそれを察知したリバストは、背後に飛び退く、そこを間髪いれずアグリアスは追撃の刃を振るうが、
すでにリバストは間合いの外にいる、さらに踏みこみ剣をなぎ払うアグリアス、しかしそれも紙一重で、
リバストに受けとめられていた、しかしそれでも休むことなくアグリアスは攻勢を続けていた。
一見するとアグリアスが優勢のように思える、だが表情には出さないがリバストには余裕がある。
アグリアスの剣はリバストに言わせるとあまりにも基本に忠実過ぎた。
そう、教科書の模範解答をそのまま繰り返してるかのごとき、ただ相手を効率良く倒すためのみの、
まるで面白みの無い剣術だ。
例えば、わざと小手に隙を見せると、アグリアスはそのまま小手に斬り込んで来る、
ただその太刀筋がすばらしく正確にして、強烈であるために反撃に出れないというだけのことだ。
確かに剣を振るう技術のみなら、彼の倒した
レオンハルトよりもアグリアスの方が優れている、
だが、どうしてもリバストにはアグリアスがレオンハルトより強いとは思えなかった。
レオンハルトは、太刀筋こそ荒削りであったが、体術を織り交ぜた傭兵剣術でリバストを散々苦しめた。
出会ったのが戦場でさえなければ、よき剣友となってくれていたであろう。
(あの男のためにも負けるわけにはいかぬな、強敵(とも)なのだから)
(何故だ、これほどまでに攻めているのにどうして勝負がつかない)
一方のアグリアスは自分が攻めているのではなく、攻めさせられているという事に未だ気がついていない。
その時、リバストの胸元のガードがわずかに下がった。
(今だ、ここで決めてやる!聖剣技は使えなくとも)
肘を引き、剣先を相手の心臓に定めると気合と共に突きを繰り出す、スピード、パワーともに申し分が無い。
必殺の突きがリバストの心臓を捉えるはずだった、しかしそれを待っていたかのようにリバストは姿勢はそのままで
軸をずらすように回避する。
結果、剣は虚しく空を切る、何故?と驚愕の表情のアグリアスの額を霞めるように、
リバストの剣が通過する。さらにそれを合図にして、今度はリバストが攻勢を開始した。
急激に静から動へと変化したリバストの剣をアグリアスは完全に捌き切れず、ずるずると後退を始める。
しかしそれでも崩れそうになる体勢を必死で押し止め、アグリアスは反撃を試みる。
アグリアスの剣が円を描くように旋回し、リバストの剣先を巻きこんでその軌道をずらし、カウンターを試みようとする。だが、カウンターは苦し紛れでは意味が無い、これもまた易々と払いのけられてしまう。
最も、アグリアスの技は今となっては全てリバストに予測されていた、先程までの苛烈なまでの攻勢の中で
彼女の剣技は全て丸裸にされてしまった、もはやいかなる大技を、例え聖剣技であろうとも、
もはやリバストにはカスリもしないだろう。
(バカな…)
ようやくアグリアスもそのことに気がついたのだろう…その顔が屈辱で青くなっていく。
だが、その時アグリアスは自分でも予想だにしていていない行動に出た。
「それでも私は負けるわけにはいかんのだあぁぁぁぁっ!」
彼女はリバストの両目めがけ自分の足元の土を蹴り上げたのだった。
それはいみじくも騎士を名乗り決闘を挑んだ者ならば決して行ってはいけない、卑劣極まりない行為だった。
断っておくが土を蹴り上げることが卑劣なのではなく、剣を捧げ、正々堂々を天上の神々に誓った、
騎士の行為としての話である。
「卑劣な!」
体勢を崩したリバストの言葉に一瞬アグリアスの動きが止まったかのように見えたが、次の瞬間には剣を構えなおし、
今、自分が持てる限りの力を投入し、最後の大技を試みる。
しかし、その最後の技は発動することは無かった、瞬間、彼女の懐に飛びこんだリバストの怒りの一撃、
そう、彼はアグリアスの踏みこみの癖を見抜ていた、が、
アグリアスの剣を弾き飛ばし、その手を深く傷つけていたのだ。
まさに鮮やかな逆転勝利、しかし、その行動も前半自重し、反撃の機会を待ち、
相手の癖を見抜いたがゆえのこと、まさに冷静沈着が呼びこんだ勝利といえるだろう。
さて、アグリアスだが自身の敗北が未だに認められず、地面に落ちた剣を拾おうとするが、
おそらく筋を傷つけられたのだろう、手が思うように動かない。
と、そこにリバストの剣の切っ先がアグリアスの喉元に向けられる。
「わ、私は本調子ではない…武器が…武器が短剣だったから、そ、そうだ…マトモな剣ならばっ」
「ほう…敗れた理由を得物のせいにするとは、とんだ騎士もいたものだな」
リバストの鋭い眼光に威圧され、そこから先は言葉にならなかった。
じりじりと後ろずさろうとするが、身体が動かない、蛇ににらまれたカエルのようだ。
(これが私の器なのか…)
「殺せ…」
やっとの思いでアグリアスは口を開く、その一言は彼女に出来る精一杯の虚勢だった、しかし。
リバストは表情を変えることなく無常にも言い放つ。
「騎士を騙る薄汚い野盗の類を斬るような刃は持ち合わせてはおらぬ、ましてこの剣は
わが強敵(とも)を斬った剣、ゆえに貴様ごときの卑しい血で汚すわけにはいかぬわ!」
その言葉を聞いた、アグリアスの顔面が屈辱とさらに恥辱で蒼白になる。
しかしそれには構わずリバストは悠然とその場を立ち去る。
その無防備な背中を睨みつけるアグリアス…握った拳がふるふると震える…そして。
その時であった、瞬間的だがまばゆい閃光と爆発がリバストを包み込む。
それを鮮やかに回避したリバストではあったが、予想外の攻撃にわずかに動きが鈍ったその瞬間、
リバストの肩にヘンリーの投じた斧が喰いこんでいた。
「ぐっ…」
それは決して致命の一撃ではなかったが、リバストはもんどりうって地面に倒れ、
肩の傷を押さえてはぁはぁと喘いでいた。
一方ではアグリアスがヘンリーにくってかかる。
「貴様ぁ!どうして手をだした!」
「おいおい、
命の恩人に随分失礼な言葉だな」
「私は名誉ある騎士だ、命を拾おうとは思わぬわ」
「騎士?騎士だと!?…ふふふふ、ふふっ、ははははっ」
騎士、という言葉がアグリアスの口から出た瞬間、ヘンリーは笑った、
それはまるで、茶番劇を演じる道化を見ているかのような嘲り笑いだった。
「ほう、それならこちらから聞くが、何故あのような真似をした?」
そう、ヘンリーはしっかりと先ほどのアグリアスの行った行為を目の当たりにしていたのである。
どうやら他にも覚えがあるらしい、アグリアスは力なくうつむく。
「あの男の言うとおり、もうお前は騎士ではない、俺と同じ、薄汚れた狩人だ」
ヘンリーはゆっくりとアグリアスに
マンイーターを手渡す。
「選べ、誇りとやらに最後までしがみつくか、それとも堕ちて汚く生を求めるか」
アグリアスは喘ぎながら、剣を構える…。
目の前には丸腰のヘンリー、そして右手には手負いのリバスト。
「私、私っ…わたしはあっ!」
果たして彼女が刃を向けた先は…
【ヘンリー 所持品:
ミスリルアクス イオの書×3
第一行動方針:とんぬら達を追う(遭遇すれば他のキャラも倒す)
基本行動方針:皆殺し
最終行動方針:全てが終わった後、
マリアの元へ逝く】
※現在ミスリルアクスは手放しております
【リバスト(負傷)
所持武器:
まどろみの剣
行動方針:特になし】
【現在位置:大陸中央北西の湖よりの森】
【アグリアス(負傷)@ホーリーナイト(アビリティ:時魔法)
所持品:
スリングショット なべのふた マンイーター
第一行動方針:ヘンリーに見捨てられないようにする
第二行動方針:
ティファを倒す
最終行動方針:元の世界に帰還する】
【現在位置:大陸中央北西の湖よりの森】
最終更新:2011年07月18日 02:02