デスピサロと
ライアンは地下通路から神殿に向かっていた。
ジタンと合流する必要もあったし、
ハーゴンという人物を見定める必要もある。
その両者は既に亡き者だが、さすがのデスピサロもそれを知ることはできない。
そんなわけで、二人の目的地は神殿だった。
戦闘の後だったが、二人の状態は悪くない。
セフィロスとの戦いで多くの命が奪われたが、二人とも無傷だったし、
逆にガウのホワイトウィンドが疲労を回復させていた。
デスピサロは満点に更に上乗せした結果を出せたことに満足し、
ライアンはガウたちの犠牲を無駄にしてはならぬと思っている。
そんな二人の足取りは軽かった。
地下通路を進んで暫くして。
デスピサロは不意に足を止めた。
「どうしたので
ござるか?」
「いや…確か、この辺りかと思ってな」
怪訝そうなライアンに、デスピサロは苦笑のような微笑を漏らす。
「知り合いに会えるかも知れぬぞ」
クラウド、
アリーナ、
バーバラの三人は休息を取っていた。
基本的にクラウドとアリーナは傷を抱えているし、バーバラもこれまでずっと動き回っていた。
全員が疲労困憊だった。近くをジタンが通って、バーバラも来たことが何を意味するのか、考えることも出来ないくらい。
それでも、気配に気付いたのは経験か、訓練の賜物といったところだろう。
「起きろ…誰か、くる」
クラウドは近付いてくる気配に、眠りこける少女たちを呼び起こす。
ガンブレードを手に取り、すぐに立ち上がれる状態を取るクラウドに、
少女たちはハッと我に返ると、臨戦態勢を取った。
「ほう、生きていたのか」
「デスピサロ…え、ライアン!?」
デスピサロの隣りにいるライアンの姿に、驚くアリーナ。
それはライアンも同じだ。
「アリーナどの、無事で何よりでござる!」
「ライアン…どうして!?」
どうして、という言葉に首を傾げる。はて、自分は何かおかしなことをしているだろうか。
そんなライアンを横目に、デスピサロは冷笑を浮かべた。
「彼は私に協力している。だから同行しているのだ」
その言葉に、アリーナの表情が凍った。全身が震え、程無く爆発する。
「どういうことよ!何で魔族なんかに!」
アリーナは魔族嫌いだった。ブライ老の教育の結果に加え、サントハイムの悲劇が拍車をかけている。
それ故に、アリーナの中では魔族=悪であり存在そのものを認められない異物なのだ。
そしてそれは、ライアンがもっとも嫌う考え方だった。
「アリーナどの、魔族だからというのは理由にならないでござるよ。
悪しき人もいれば、心優しき魔物もいる。種族の違いだけで全てを拒絶するのは些か短慮でござろう。
そして、こんな状況だからこそ、一致団結する必要があるのではござらぬか」
「だけどっ!」
不満げなアリーナにライアンは更に言おうとしたが、デスピサロが遮る。
「よせ。人も魔物も簡単には変わらぬ。この場合、お前のほうが特殊だ」
「む…」
「それに彼女とは一戦を交えているのでな。交渉は決裂済みだ。
私に協力するつもりはさらさらないだろうし、私とて背中を預けるのは御免こうむる」
「当り前じゃない、あんたのせいでどんな目にあったのか!」
片目を押えながら憎々しげに唸るアリーナを、デスピサロは一瞥する。
「ならば、ここで
決着をつけるか?」
全員の間に緊張が走った。
彼がそれを実行に移したら、一瞬で終わる。
それはアリーナもわかっていた。わかっていたから…答えられない。
「はい」と答えれば自分の気持ちは守れるが、クラウドは死んでしまう。
だからといって「いいえ」と答えて命乞いをするのは彼女のプライドが許さなかった。
さすがにライアンも黙っていられず、彼等の間に割って入る。
「ピサロどの!」
「邪魔な芽は早めに摘まないと後になればなるほど悪影響を及ぼす。
無害であるのならば放置しても良いが、彼女の牙は鋭すぎる。
あの男…セフィロスのようにな」
「セフィロスだと!?…アイツがいるのか、この近くに!?」
思わず声を上げるクラウド。
「正確には『いた』だ。我々が奴を倒した」
「そんな、信じられない。あの男が…死んだ、なんて」
クラウドはガンブレードを取り落とした。それぐらい、彼は呆然とした。
「だが、その犠牲はけして小さくはなかったでござるよ…」
「また…誰か、死んだの…?」
怖々と訊ねるバーバラに、ライアンはうむ、と肯く。
「10人がかりで挑んで、生き残ったのは我ら二人と、
ティーダどのに
エアリスどのだけ…」
「待って!待ってくれ!エアリス、エアリスって言ったのか!?」
クラウドは思わず立ち上がった。セフィロスが死んで、エアリスが生き残った?
なんだ、それは。
「そう言えば、エアリスどのは人を探すと言っていたが」
「………俺、なのか?」
クラウドは視界がクラクラと揺れているのを感じた。
乗り物によって気絶する前とよく似ている。気を抜いたらイッてしまう、そんな感じ。
唐突に精神不安定になったクラウドを横目で見ながら、デスピサロは自分の発言を続ける。
「この先に何があるのかは私にもわからぬ、なればこそ不安要素は排除しておきたい…」
と、そこで。デスピサロは言葉を止めた。
視線の先には…
「え…な、なに?」
突然見つめられて、驚き戸惑うバーバラ。
「………」
「あ、あの?その…」
デスピサロはじっとバーバラを見つめた後、つかつかとバーバラの側まで歩み寄る。
「顔を上げろ」
「え?は?」
「目を逸らすな」
「は?はぁ?」
「…なるほどな」
デスピサロはにやりと笑うと、アリーナたちに言った。
「気が変わった。この娘を寄越すなら見逃してやろう」
「………………」
場の空気が凍りつく。バーバラはなんとなく、周囲を見回した。
ライアンはコチンと硬直し、不覚に陥っていたクラウドは途端にギギッと顔を上げる。
アリーナは唖然とした後で、大きく息を吸い込んだ。
「な、な、な、ナニ破廉恥な事いってんのよ!」
「そういう趣味だったのでござるか…?」
「ロリ…いや、ペドか…」
男たちの独り言に、デスピサロのコメカミが微妙に張る。
「貴様等…恐ろしく無礼千万な想像をしているな…」
まるっきり状況がわからなかったバーバラだったが、それで大体状況を察したようだ。
顔を真っ赤にしながら、たずねる。
「あのー、どゆこと?」
「言葉通りだ。お前が我々に協力するなら、この場は彼らを見逃そうというのだ」
デスピサロはヒソヒソとなにやら話し合っているクラウドとアリーナを視線で威嚇しながら答える。
「でも、何で…あたしなの?」
「我々は故あって、魔法使いを集めている。この馬鹿げたゲームを覆すためにな」
「なるほどね…そんな事だと思った」
あの時見ていたのは魔法の力、あるいはカルベローナの血なのだろう。自分ではない。
まずほっとして、それからちょっと…ほんのちょっぴり残念だとバーバラは思った。
「私が行けば、二人に手出ししないんだよね?」
「約束しよう」
と言いながらも、デスピサロはアリーナたちに殺気のこもった視線を向けている。
先程の冷徹なものではなく、随分と生々しいけれど。
「わかったわ。一緒に行く」
「ちょ、ちょっと!?」
「大丈夫だよ。アリーナたちの考えているような事はないから。多分」
「絶対だ」
即座に言うデスピサロにバーバラは、あはは、と軽く笑う。
アリーナが言うほど悪い人じゃないみたい。そう思ったから。
こうしてデスピサロとライアンはバーバラを加えて神殿に向かう事になった。
「今回は見逃そう、だが次はないを思え」
デスピサロは約束を守り、二人に何もしなかった。
後にはまた、クラウドとアリーナが残った。
「あの子、大丈夫かな」
「利用価値があるうちはあの男が守るだろうさ」
「なくなったら?」
「………」
クラウドは答えなかった。ただ、彼等がやってきた東のほうを見る。
東の地で、彼等はセフィロスと死闘を繰り広げ…そして彼女は生き残っている。
「クラウド?」
「なんでもない。それより場所を移そう。ここは、人が通り過ぎる」
「…うん」
【デスピサロ 所持品:『光の玉』について書かれた本
第一行動方針:魔法使いを探す
第二行動方針:腕輪を探す・偵察
最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【ライアン 所持品:
大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
第一行動方針:デスピサロに同行する
第二行動方針:ソロを探す
基本行動方針:来る者は拒まず、去るものは追わず】
【バーバラ(負傷)
所持品:
果物ナイフ ホイミンの核 ペンダント
メイジマッシャー
第一行動方針:デスピサロに同行する
第二行動方針:レナの遺言を果たす】
【現在位置:地下通路(大陸中央付近)】
【アリーナ(軽傷、一晩休めば体力は回復・片目失明状態)
所持品:イオの書×3
リフレクトリング ピンクのレオタード
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める
最終行動方針:ゲームを抜ける】
【クラウド(軽傷、一晩休めば体力は回復・錯乱状態から回復・記憶はあり)
所持品:ガンブレード
第一行動方針:次のフィールドまで身体を休める?
最終行動方針:責任を感じアリーナを最後まで守る】
【現在位置:地下通路(大陸中央付近)】
最終更新:2011年07月17日 22:48