「うむむ、どうも不気味な場所だな…」
「クェ」
チョコボは、
オルテガの感想を肯定した。
地面に張られた2対の鉄の棒。その上にある、車輪のついた長方形の物体。
おそらくはこの鉄の上を走る乗り物なのだろう。車輪は荒れた道には弱いが、このように硬くて平坦な上を進むのは向いている。
それはわかるのだが、これだけ大きなものをどうやって動かしているのかはわからない。
人、あるいは動物の力に因らないシステムは、オルテガの文明では『神秘』と呼ばれる。
これもそう言った類いのものなのだろう。
オルテガはこの物体……『列車』……について考えるのをやめた。
自分は学者ではないから『神秘』に付いて考察しても仕方がない。
あるモノをただ受け入れるだけだ。なぜかを追及するのではなく、どうするのかを追及すべきだ。
ともあれ、これは移動手段なのだろう。
オルテガは列車の中に乗り込んだ。チョコボも、少し狭そうではあるが後に続く。
埃まみれの車内を移動して戦闘の方まで来ると、そこにはレバーやスイッチがあった。
「む、これか」
スイッチを押す。レバーをまわす。
が、何も起らない。オルテガは首をかしげる。これは乗り物ではないのだろうか?
乗り物である。しかし動かないのは当然だった。
この列車は壊れて破棄されたのだから。ここは、壊れた列車の、墓場だった。
最終更新:2011年07月17日 21:22