総勢十八人の戦士たちは、部屋の奥へと向かった。
周囲には魔物の気配はおろか、物音一つしない。
完全な静寂の中を、足音だけが響き渡る。
今のところ何もないが、いつ何があってもいいように、
覚悟をしながら慎重に先へ進む。
不意に。それは唐突に起った。
「え……?」
周囲の空気が変わったかと思うと、景色が反転する。
それは一瞬の事だった。城内の広い廊下を進んでいた筈の一行は、
次の瞬間には星空の廃墟にいた。
いたる所に転がる瓦礫と漂う光の塊が、幻想的な雰囲気をかもし出している。
「ザナル……カンド?」
「ふん、つまらん趣向だ」
ティーダは呆然と呟き、
アーロンは吐き捨てるように言う。
これまであった事を話し合った後、覚悟を決めて先に進んだ先に広がっていた光景。
かつてティーダたちが体験したことが、そっくりそのまま再現されたのだ。
デスピサロは足元の瓦礫の欠片を蹴飛ばした。
カラン、カランと音を立てて転がっていく。
「確かにな。自身の力を見せつけているつもりか。小賢しい」
「ですが、これほどまでの広域結界を張るとは、やはり侮れません」
「そうかな。私には単に悪あがきをしているように思えるが」
サマンサの感想に素っ気無く答える。
「でも、物悲しい光景ね……ここも、昔はきっと立派な街だったのに」
「栄枯盛衰か。国が滅び、人が去るということはこういうことだな」
ティナと
エドガーはどこか遠い目でボロボロの街並みを見る。
自分たちの世界に訪れた、今なお深い傷痕を残す崩壊とこの廃虚を重ねたからだ。
ティーダは唇を噛んだ。
ザナルカンドは自分の故郷だ。例え幻想であったとしても、夢であったとしても。
その光景をこんな、戯れに使われたことに、どうしようもなく腹が立った。
だから、そして瓦礫を蹴って駆け出した。
「ティーダ!?」
その後を
アルス、アーロン、
リュックが追う。
少し遅れて、残りの面々も後に続いた。
瓦礫に埋まったメインストリートは一本道に伸びている。
その奥に見えるのは、半ば崩壊したドームだ。
迷うことなく、ドームの中へと駆け込む。
ドームの中は、外観とはかけ離れた、整然とした広間になっていた。
二対の祭壇が左右に配置され、奥にズラリと並べられている。
ここはもう、ザナルカンドではない。
「ここは……!」
今度はアルスが速度を上げた。
一度だって来たことがないはずの場所だ。
けれど確かに来たことがある場所である。この先に、倒すべき闇がある。
祭壇の間を抜ける度に、祭壇に火が灯る。
暗闇に浸されたドームの中が徐々に照らされる。
その一番奥に、それはあった。
「ようこそ
参加者諸君。些か数は多いが、まずは歓迎しよう」
最終更新:2011年07月16日 22:40