第14章 紐解かれるベール
「K隊長がきね…さん!?」衝撃を受けたすしが言う。「きねといえばあの伝説の…」桃ぽよも言う。
きね、かつてクムトと競い合うようにゾビッポン研究の最先端として君臨していた研究者である。
こちらもゾービの悲劇の少し前に姿を消し、当時は「ゾビッポン界の二大巨頭失踪!」と話題になった。
その記憶も新しいうちにゾービの悲劇が発生。関連が調査されていたが、二人とも発見されず、何もわからずじまいだった。
K、いやきねが告げる。「その通り。いかにも自分がきねだ。直に会うのは久々だね、ぞびぽん。」
クムトはゾビッポン研究者としてメディア露出も多く、自らもぞびぽんと呼ばれ親しまれていたのだ。
名は知れていてもメディアへの顔出しはほとんどしないきねとは対照的だった。
「さっきのあいつ、NZだよね?不完全とはいえ実現してしまうとは…」きねは問い詰めた。「やはり覚えていたか。いかにもあれはNZ計画を基に生み出した生物兵器だ。」
「NZ計画って結局なんなんですか?」ミキが尋ねた。「それは…」きねが語りだす。
NZ計画、ゾビッポンの研究初期、ゾビッポンのエネルギーを用いた兵器計画が思案されていた。それこそがNZ計画。しかし、まもなくゾビッポンの液体には対象をゾビッポンに変化させる働きがあると判明した。
一般には長らく秘匿されていたけどね。兵器が完成した場合その破壊力はすさまじいものになると予想された。結局この計画は凍結されてデータも抹消されていた…はずなんだけどぞびぽんは当時のデータを再現して復活させたんだろう。
ぞびぽん、クムトが答える。
そう、ゾビッポン帝国に入った時これはあの計画を再始動させる時と思い、あの時の記憶を頼りにNZを再現しようとした。
もっとも、あれは自分ときねさんに限らず様々な分野のスペシャリストも携わっていたからね。完全再現は無理だった。
そこで計画では機械の素体にゾビッポンのパーツを融合させる計画だったものをゾビッポンを素体により強化を図るものに変更したんだ。
ゾビッポンのことなら誰にも負けないからね。かなり完成度は高いつもりだったけど、まだ未完成だったね。
きねさんがNZ細胞凍結ビームを完成させていたことは完全に予想外だったけど。
きねが言う。今やこの2人の間には何物も立ち入れないオーラのようなものが感じられ、他の誰もが黙り込んでいた。
ゾビッポンが帝国を立ち上げたとなってはNZ計画に近いものを作ってくるかもしれないからね。完成させて損はないと思ってさ。
まさかNZそのものを再現してくるとは思わなかったけどね。
あとさ、最後にもう一つ訊いていい?
クムトは無言で頷いた。そこできねは言った通り、クムトに質問した。
さっきからずっと気になってたんだけど。
そのNKって子、どこかで見たと思ったら…もしかしてなかきいくん?
クムトはその疑問に答えた。
やはり気づいていたか。そう、あのゾビッポン少年だの未来のクムトだのと界隈に注目されたあのなかきいくんだ。
ゾビッポンのことが好きで、その愛が認められて自分やきねさんと話したこともあった。
ゾービの悲劇が起こった時、自分は一人で研究所にいた。
そこになかきいくんがやってきた。自分なら何とかしてくれると思ったんだろう。ゾービの悲劇を受けて心身ともにダメージを負っていた。
「なんで人とゾビッポンが戦わなくちゃいけないんだ!」そう言い残して完全に意識を失った。
もはや一刻の猶予もなかった。そこで私はかねてより計画していた人工オーバー化の処置を施した。
「勝手にそんな処置を!?」きねの声が厳しくなる。「未来ある命のためにはやむを得ない!彼には資質があった!二代目ぞびぽんの資質がな!それを失うことは、耐えられなかった!それだけだ!」クムトは同じく声を荒くした。「しかし、まだ未完成の技術で処置を行ったからかな。記憶や感情が完全に消えてしまった。そこで今はどうにかそれを取り戻させようと試行錯誤を重ねているんだ。これで全てに答えてあげたはずだ。また会おう」クムトはそういうと姿を消した。
帝国に戻ったクムト。クムトは帝国内でも反逆さえしなければ好きにしていい、というような立場を保証され特に疑われることもなかった。誰もクムトが人工のオーバーを作っていることなど気づいてもいない。用意された研究室に再び入り、呟いた。「まもなく例の日が来る。それまでに最終調整を終えねばな…」
AZA本部では改めてKがきねであることへの驚きを反芻していた。ゆび「それにしても、まさか隊長があのきねさんだったなんてなあ。」デビも「びっくりしちゃったよ。」きねは「あんまりいじらないで欲しいけど…まあいいやこれからも共に戦っていこう!!」
そんな中桃ぽよはふと気が付いた「そういえばさっき直に会うのは久々って言ってたけど…そうでなければ時々話してたのか…?話してたとして一体何を…?」ふと疑問に思うものの、「考えすぎか?」ひとまずその疑問はしまっておくことにした。
〜14章完〜
次回予告! 「流石AZAだな…」「まだ隠し玉が!?」「そろそろ決着をつけねばな…!」 次回!「
決戦への一本道」
最終更新:2021年07月24日 11:18