奇妙は常に、奇跡は常に。
僕は自分の名前が嫌いだ、小学生の頃はずっとそれでイジメられてきた。
だからこそ『普通』になろうと努力した、普通じゃない名前に対抗しようとしたのだろうか、今思えば何か間抜けな話だ、でも『私』は必死だった。
でも一人だけ、そんな私の名前を良いと言ってくれた人がいた。
その人は私の好きなヒーローのようで、正義の人だった、すぐに私たちは親友と呼べる間になった。
それから友達も増えて、名前でからかってくる人も少なくなっていった。
中学から親友と一緒に姫代学園に転校になり、初めて会う学友の前でも私は普通である事を貫いた。
例えば、修道着を着た女の子にたこ焼きクーポンをを渡され怪しい宗教への勧誘をされそうになったが断る。
普通だ、得体の知れない宗教に誰が入るのだろうか。
例えば、『初めての斧無料体験セット』を無理矢理押し付けられたが、修学旅行の木刀よろしくタンスの横に放置している。
普通だ、だって斧とかよくわからないし……。
例えば、卓球の新必殺技の練習を手伝いをする。
普通だ、しかし最近の卓球は人が吹っ飛ぶほど進化しているのには驚いた。
例えば、チェリオ買って来いと脅され、しぶしぶ買ってくる。
普通だ、私だって電気で痺れたくはない。
例えば、長々と君主論の素晴らしさを聞かされる。
普通だ、そもそも私以外聞いてる人がいなかった、泣きそうな顔で言われては断れない。
例えば、ヒーローショーの裏方の手伝いをする。
普通だ、決してヒーローに興味津々というわけではない、人手不足だからだ、そう人手不足。
例えば、毒の研究の手伝い。
普通だ、危険があるのなら、誰だってそれを取り除きたい、それに私の場合多少の致死量の毒でも無理矢理緩和できる方法がある。
例えば、労働に疲れて休む。
普通だ、疲れたら休む、当たり前。
例えば、休日のゾンビ映画を見に行く。
普通だ、そういえば優しいと評判のあの子はゾンビ映画をいつもニコニコして見ていた。
そうやって、普通の学園生活が続くと思っていた。
でも事件が起こってしまった、
生徒会と
部長会で争いが始まるらしい。
きっと親友は争いに巻き込まれるだろう、こういう事態には一番敏感だ。
私は心配だった、聞いた話では『
転校生』まで絡んでいると聞いた、このままでは私もこの争いに巻き込まれるだろう、日常とは違う争いに、魔人の能力も使う事になるだろう、痛い思いをするだろう、血だって見る事になるだろう。
だから・・・私は走った、親友の拳条朱桃けんじょうしゅももに会うために、これは普通の事だ。
最終更新:2017年07月22日 00:40