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プロローグ side:K


田舎の町の小さなラーメン屋。
そんな俺のバイト先に、あの人がやってくるようになったのはつい数ヶ月前の事だ。

実は初めてあの人に会った時の事はよく覚えていなかったりする。
散歩がてらにふらりとやってきた。そんな風貌で、特に印象には残らなかったんだ。
ただ、一瞬だけ目が合って何故か少しドキドキしたのは覚えている。

俺はあの人の事が嫌いだった。
さゆりさんがあの人を好きだと言ったから。理由はそんな単純なもの。
さゆりさんがあの人の事を語る度に苛々したし、さゆりさんとあの人が笑い合うのを見る度に目を逸らした。
だけど、それはあの人が悪い訳じゃないって分かってる。本当はあの人を嫌なヤツだなんて思った事はなかったんだ。

あの人への気持ちが変わり始めた時、俺はあの人の抱えているものが、思うほど単純なものじゃない事を知った。
さゆりさんにも店長にも俺にも――誰にでも同じ顔で笑うあの人。あの人が小説を書き続ける理由。そして、あの人の左手の薬指に光る銀の指輪。
その意味を全て知った時、俺はあの人の事が好きなんだと気が付いた。

「忘れられない人がいるんだ」

あの人の心に残るその誰かを消す為なら、俺はどんな事だって出来るのに。


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最終更新:2009年12月09日 23:42