静まり返ったルーヴルに、三人分の足音が響く。
「残り五騎ね」
塔&青騎士も、ロゼッタ・ガイドも、強敵だった。あと五騎か。果たして辿り着けるか。
「なんというか、悪趣味だな。完成しているものを破茶目茶に継ぎ接ぎして」
作者の意図なんて全部無視して合作を造る。とんでもない野郎に違いない。
「それは違うぜ、マスター」
何。実はこの特異点の作者はアーチャーの知り合いだったりするのか。
「そっちじゃない。合作の方だ。合作ってのは複数の人間が理解し合ったうえで一つの作品へと向き合うことだ。芸術幻霊なんてのは合作じゃない。ただの、ただの……なんだ? 表現ができねえ」
待て。いま何故僕はとんでもない野郎というのがいる前提で話をしたんだ。サモトラケのニケちゃんが元凶ではないのか
「ニケが芸術幻霊七番勝負って言ったからよ。天草四郎の名前も挙げてたし。まるでその裏に誰かいますってアピールしてるようじゃない?」
なるほど。じゃあ本人に訊いてみよう。
『なんで気づいたの?』
十数メートル先の何もない空間に、浮かび上がるようにニケちゃんが現れる。
別に、なんとなくだ。
『確かにあたし黒幕とかじゃ別にないわ。あれ、語順がおかしい。確かにあたし別に黒幕とかじゃないわ。これだね』
「へえ。そいつ紹介してくれないかしら」
『だめよ』
「どうしても?」
『だってあたし、その人知らないもの』
知らないのに、黒幕ムーブしてたのか。
『へへへ』
ニケちゃんは照れるように笑う。笑うと表現したけど、首の上に乗ってるのは水晶髑髏だ。表情は全く変わらないし、何か喋るたびにガチガチと歯が鳴っている。僕はしかし不思議と、悪い感想は抱かない。
「今のステルスは頭の方の宝具だな」
『うん! 『時代錯誤異物No.017』っていう宝具なの。ビームとステルスとサテライトカノンと、あといろいろ』
「マスター。あいつはやばい。さっさと倒すぞ」
アーチャーが音速で踏み込む。弓を携えた彼は彼女に突っ込み、そして心臓を貫く。
『ねえ付き合ってほしいな』
ニケちゃんは僕の隣にいた。隣! 脊髄反射でガンドを接射するが全く効かない。今まで目の前にいたのは空間投影された映像だったのか。おそらくオーパーツの宝具の効果の一つ。
ニケちゃんは僕を引っ掴み、そして宙に浮かぶ。
「マスター!」
「ニケ!」
『ちょっと上に行くから、耳がつんってなるかも』
天井があるのなんて全く意識していないような素振りで上昇し、それを突き破る。
屋根まで破壊し浮上したニケは、抱えた僕に言う。
『いい景色でしょ』
僕は下方百メートル先に、美術館を発見する。
コの字型の美術館と、ガラス製のピラミッド。なるほどいい眺めだ。しかしそれどころではない。
美術館以外のものが全く無かったのだ。
ただの何もない虚空に、ルーヴルの敷地だけが浮かんでいた。
僕は、まるで3D空間にモデリングされたオブジェクトのようだと思った。
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現状見取り図 |
マスター |
藤丸立香 |
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芸術のアーチャー |
エロイカ |
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芸術のキャスター |
ミロのヴィーナス |
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セイバーの芸術幻霊 |
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アーチャーの芸術幻霊 |
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ランサーの芸術幻霊 |
塔&青騎士 |
撃破 |
ライダーの芸術幻霊 |
サモトラケのニケ(with水晶髑髏) |
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キャスターの芸術幻霊 |
ロゼッタ・ガイド |
撃破 |
アサシンの芸術幻霊 |
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バーサーカーの芸術幻霊 |
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最終更新:2018年03月10日 00:14