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『このまま飛んでいったらどこに辿り着くんだろね』

果てしなく続く空間の先は全く何も見えなくて、真っ黒で平面的に見える。
電源を入れていないディスプレイのよう。

『やっと二人になれた』

ニケちゃんは腕の中の僕に語りかける。

『人理を救ったマスターなんでしょ。すごい。一回会ってみたかったの。でも、ああ、時間がない』

表情は変わらないが、なんだか彼女は悲しんでいるような気がした。

『あたしサーヴァントになるって、もっとワクワクするような冒険かと思ってたの。でも違ったわ』

彼女の顔が間近に見える。お姫様抱っこって呼ぶんだっけ、こういうの。

『でもなんか声に言われて。あなたをやっつけろって。それからあたし、なんだかおかしいの。頭ができたのは少し楽しかったけど』

翼の先が僕の頬をくすぐる。サモトラケのニケの翼は現実の鳥類のものに沿っておらず、飛行するのは不可能な形状であると、以前耳にしたことがある。

『ほんとはあたし勝利の女神のはずなのに、こんなの変ね。まるで、人間みたい』

羽撃きはゆったりとしていて、彼女はまるで糸で吊られた人形のよう。
骸骨が僕の頬に口づけをした。
冷たくて硬いキスだと思った。当たり前だ、水晶なんだから。

『頑張ってね。ここは変なとこだけど、あなた見つけられるよ。答えをね』

下方に鋭い光が見えた気がした。

『ミロビちゃんによろしくね。へへ、まあこれで死ぬ気はないんだけど』

一条の閃光が、彼女の右眼孔に突き刺さる。
ガチッ。そんな音がした。水晶の破裂する音だ。
アーチャーだ。直下から彼に狙撃され串刺しにされた彼女は、ちょっとだけ止まって、やがて落下をはじめる。重力加速度の導きに従って。
撃墜。さよならだ。彼女の手が、一緒に落下する僕を離す。
何もない空間でも重力は働いているのか。これでルーヴルに落ちなかったら僕はどこへいくのだろう。永遠に落ち続けるのかな、などと考えつつ僕は頭から落下し、ミロビちゃんの伸ばした手にキャッチされる。



+ 現状見取り図
マスター 藤丸立香
芸術のアーチャー エロイカ
芸術のキャスター ミロのヴィーナス
セイバーの芸術幻霊
アーチャーの芸術幻霊
ランサーの芸術幻霊 塔&青騎士 撃破
ライダーの芸術幻霊 サモトラケのニケ
キャスターの芸術幻霊 ロゼッタ・ガイド 撃破
アサシンの芸術幻霊
バーサーカーの芸術幻霊



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l05 超美術館空間 ルーヴル l07

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最終更新:2018年03月15日 01:41