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気がつくと、僕は立っていた。
白い空間だ。何も見えないし、広さもわからない。無限に続いているように見える。
地平線も、境界も、本当に何も見えない。瞼が白になったみたいだ。
視線を下に向けると、自分の手と身体が見える。
眩しい。あたり一面のホワイトは発光しているわけでも何かを反射しているわけでもなく、ただ白いというだけの白だった。僕の語彙が足りず表現しきれない。
しかし目がチカチカする。瞼を閉じる。
落ち着いた。今までの顛末を思い出した。
ルーヴルにフォーリナーがやってきて、アーチャーとミロビちゃんは彼女に歯が立たず、僕は何もないところへ落下した。
時間を確かめる術はなかったが、少なくとも十五分くらいは落ち続けていたと思う。もしくはもっと長く。
その空間の底へ着地したのか、あるいは別の場所に行き着いたのか。
何はともかく、生きていたのか。よかった。
ルーヴルに戻らないと。

「マジで最強なんだな、お前」

目を開けると、五メートル程前に一人の男が現れる。
そしてその男は、とんでもなく嫌な感じがした。
不吉、こいつと会話などしてはいけないと本能が悲鳴をあげる。
フォーリナーとは違うイメージ。フォーリナーは異物であるような、場に合っていないような、つまり浮いている感覚だったが、こいつはもっとシンプルな、嫌な奴というか、触れたくない厄のような感じ。

「なんで落ちて詰んじゃって最初に出てくるのが『戻らないと』なんだよ。生きてる、とか、ここはどこだ、とかあるだろ」

彼を見てはいけない。彼の話を聞いてはいけない。
認識するだけで作用する攻撃だ。確信をもって言える。
僕は能力は人並みだが、一応人理修復を見届けたマスターではある。その経験から生まれた勘で判断できる。

「まあ性別はおいといて、話してやる。面倒臭くて仕方がないが」

危険だ。

「危険じゃない」

どうして。

「存在してるレイヤーが違うから」

この白い空間は、ルーヴルの一部なのか?

「そうともいえるし、そうでないとも。ルーヴルが芸術の一部なんだ」

はあ。

「ここは、全ての創作が集う場所。時を超えて集まる場所。名をつけるなら、『超美術館空間』もしくは『芸術の座』。ここ、というのはさっきまでのルーヴルも、この白い空間も、両方を含めてだ」

はあ?

「先程までいたルーヴルは、その多次元空間の中の、ルーヴルという一つのフォルダにすぎない」

急に電波になってきたぞ。正気を保て。
しかし、ルーヴルがただそれだけ浮かんでいるという奇妙な光景を、俯瞰して確認したのも事実だ。下に落ちたし。
言われたことを聞くしかない。一旦ここは受け入れるとしよう。
この気味の悪い男の話を信じるのも恐ろしいが、そうせざるをえない。
つまりここも、さっきまでいた場所も、地理的に存在する場所ではなく、やはり仮想空間?



+ 現状見取り図
マスター 藤丸立香
芸術のアーチャー エロイカ
芸術のキャスター ミロのヴィーナス
セイバーの芸術幻霊
アーチャーの芸術幻霊 九相図眼球譚 脱落
ランサーの芸術幻霊 塔&青騎士 撃破
ライダーの芸術幻霊 サモトラケのニケ
キャスターの芸術幻霊 ロゼッタ・ガイド 撃破
アサシンの芸術幻霊 ブレイクタンゴ 脱落
バーサーカーの芸術幻霊 キュビズム・フォーヴィズム 撃破
芸術のフォーリナー 不明



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最終更新:2018年05月14日 00:07