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「私に勝ってください。ホモ・サピエンス・サピエンスなんかには負けませんけど」

フォーリナーとの戦いは熾烈を極めた。
僕が復帰してくるまでの間にアーチャーとミロビちゃんはかなり消耗しており、傍から見ても防戦一方だった。
単純に火力が違う。ミロビちゃんの蹴りも、様々な道具も効果はなく、アーチャーに至っては宝具さえ防がれたのだ。受け止めるだけで手一杯。
相手は手を軽く振るだけで時には鞭のように、時には剣のようにレーザーを飛ばし、そのうえ武器の枝に頼らずとも、雑に振り回す手や脚がそれぞれ必殺の重さを持つ。
相手の真名がわかったとしても、全く弱点がわからない。木なんだから火に弱いはずだろ。なんでそれを武器にしてんだよ。

「こちらも限界よ」

ミロビちゃんの八連リボルバー・スカッドミサイルが螺旋状の軌道を描き飛んでいき、光線のミキサーにかけられる。

「こちらも限界よ。いくらあなたの付属品として、この空間自体から魔力を供されていたとしても、バルブはこれ以上開けないから」

あ、全部知ってたんだ。流石。

「私だからよ。アーチャーは知らないわ。気をつけて、ちょっとごめんなさいね」

ミロビちゃんが左足の指先で僕の上着の裾を掴み、ぐいと二十センチメートル程引っ張る。僕の腕があった位置を炎が舐めていく。

「こういうときは頭を使わないと。なんであの子は私達を一息に倒さないのかしら。いつでもできるはずなのに。手加減を感じる。なんでだと思う?」

アーチャーが枝で強かに殴りつけられ、また吹き飛ばされてきた。僕の足元に転がる。

「あいつ、遊んでやがるんだ。ムカつく。俺の攻撃なんて、完全に舐めてて、避けたり避けなかったりする」

血の塊を吐き捨ててアーチャーが立ち上がる。

「全部避ける、でも、全く避けない、でも、避けられないときがある、でもない。避けたり避けなかったりするんだ。一応避けてあげるけど面倒なときはいいや、って態度だぜ。殺してやる」
「ふふふ」
「笑い事じゃねえ。なんか知らんがこっちの何も通らない。炎で防御もしてたりしてなかったりする。本当はあいつ、何も効かないんだ。これが遊ばれてるんじゃなければなんなんだよ。舐めやがって」

光の速さの赤い線をアーチャーは透過する。

「でも俺は名曲だから冷静なんだ。考えられる。あいつ、元が樹木だから、サーヴァントの、というか人間の身体に慣れていない。身体に、でもないな、そもそも運動をした経験がない」

アーチャーとスイッチして、ミロビちゃんがフォーリナーに突っ込んでいった。そのまま膝蹴りを打ち込むが肘で受けられる。

「通常サーヴァントは戦い方とか、宝具の使い方とか全部インストールされて召喚される。エリザベート・バートリーは槍の扱い方を知ってるし、ドラゴンブレスも吐き方を知ってるだろう。俺もモデルが人間だから、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンも英雄といえば人間だと思ってたはずだから、そこはクリアしてる」

ミロビちゃんは脚を絡め、背面にフォーリナーを投げ捨てる。脚と体重移動だけで投げ技を敢行した彼女は更に腕を極める。寝技! サーヴァントの寝技。初めて見た。


「フォーリナーは度を超えてる。与えられた知識に追いつけてないんだ。もしくはそういうデメリットスキルでもあんのかもな。赤子のようなものだ」

普通に失敗して撥ね飛ばされてる。サーヴァントの膂力に対して体重とかないに等しいからな。アーチャーが雑にコントラバスを投げつけて呟く。

「こういうときは気持ちで負けたらだめなんだ。遊ばれてるんじゃねえ、ガキに遊んでやってるんだよ」



+ 現状見取り図
マスター 藤丸立香 不在
芸術のアーチャー エロイカ
芸術のキャスター ミロのヴィーナス
セイバーの芸術幻霊 ID藤丸立花
アーチャーの芸術幻霊 九相図眼球譚 脱落
ランサーの芸術幻霊 塔&青騎士 撃破
ライダーの芸術幻霊 サモトラケのニケ
キャスターの芸術幻霊 ロゼッタ・ガイド 撃破
アサシンの芸術幻霊 ブレイクタンゴ 脱落
バーサーカーの芸術幻霊 キュビズム・フォーヴィズム 撃破
芸術のフォーリナー プロメテウス
芸術のアサシン ベルフェゴール



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最終更新:2018年09月03日 21:43