「終わりですか?」
フォーリナーが歩いてくる。
「じゃあそろそろ止めを刺しちゃいますね。ていうかここはどこなんですか? サーヴァントってどういうときに呼ばれるんでしたっけ」
満身創痍のアーチャーとミロビちゃんを見下しつつ、火の神の名を冠するものは呟く。
「聖杯? みたいなの手に入れられるんですよね? だったら生き返ったりとかもできるんじゃないですか。人間に仕返しができるんならうれしい。あ、でもこの体で、でになるのかな。うーんできれば木の方がいいですけど、選べるんですかね」
ミロビちゃんがアーチャーに囁く。
「ちょっとだけ隙を作ってちょうだい。最後の切り札をやるわ」
「……了解。決めてくれ」
ミロビちゃんの作戦で一発逆転をやるしか勝ち目がない。どちらに転んでも、次が最後だ。
しかし、これ以上の何かを持っていたのか。隠していた第二宝具でもあったのか?
「聞け、プロメテウス!」
アーチャーが響く声で名乗る。
「俺は楽聖の子、名もない音楽! 神木よ、何故人になった!」
フォーリナーは大きな目を見開く。
「人が憎いからです。人に殺されたからです。それ以上の理由がありますか」
「サーヴァントは人を護るもの。人の剣となるもの。お前の言葉を先から聞けば、人と共にあろうと考えているようには思えない。俺もいろいろなサーヴァントを見たが、お前程人に悪意を持つものはいなかった」
時間稼ぎだ。何やら格好いいことを言って最低限の体力を回復する時間を稼ごうとしている。
「いや、ロボのやつがいたかな。あ、そういう狼がいて……。まあ彼はおいておいて……」
しかしアーチャーは喋るのが下手なので今ひとつ決まっていない。
「お前は赤子だ。生まれたばかりの赤子だ。だから直感的に、とりあえず人を憎んで動くことしかできないんだ」
「……」
「俺達はカルデアという場所から派遣されてきた。特例として数多の、古今東西の英雄達が集められている。カルデアに来てみろ。先人に学んで、分別をつけて、それから考えればいい」
フォーリナーはため息を吐く。
「嫌ですよ。だって全員最近の奴らなんでしょ。私よりガキじゃないですか」
領域外の生命。誰よりも長く生きた賢者は、誰よりも愚直だった。
「時間稼ぎはもういいですか? 次で決着です」
「マスター。宝具いくぞ」
アーチャーが発光する。何度も見た、頼もしい光だ。
「聞け! 俺は歴史の彩りにして歯車」
真名開放。彼自身が弾となる、光速の変ホ長調ビーム。
「だから、効きませんよ。そんなの」
先程は弾かれてしまったが、もう一度だ。
「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの息子にして、藤丸立香のサーヴァント」
輪郭が融ける。
「千年後まで響く」
一筋の線になって彼は駆ける。
「『ある偉大なる人の思い出に捧ぐ』」
放たれる必殺の突撃。
しかしフォーリナーの双眸は彼を逃さず補足している。
そこからの攻防は一瞬だった。
彼に炎や熱は効かない。それは彼女も学習している。だから彼を受け止めるのに手にしている木の枝を使った。
一直線に飛来する細い光に向けて、枝を振り抜く。実体のない炎は貫通する彼だが、枝には防がれてしまう。
そして彼の宝具は軌道を曲げられない。枝を避けるのは不可能。
そこで彼は、棒に接触する直前で、宝具を解除する。
人の姿に戻り、背骨が悲鳴を上げる速度で姿勢を変え枝を躱し、慣性で彼女までの距離、約一メートルを詰める。
「何!」
アーチャーは彼女にダメージを与えられない。宝具が弾かれるのだから、弓の攻撃力なんてとても足りない。
でも今はそれで大丈夫。隙を作ればいいのだから。
「どうだ、名演だろ」
アーチャーはフォーリナーの顔面に、宝具の速度を乗せた渾身の力で右腕を叩きつける。
彼女には全く効かない、傷つくどころかよろめきもしない。
しかし怯んだ。千切れて潰れ、顔にへばりついた右腕の血と骨片と筋繊維が、目潰しくらいにはなったから。
「痛え。後はよろしく」
「準備オーケー。マスター、行くわよ」
そこで、ミロビちゃんの必殺技が炸裂する。
身構えた僕を、足で射出した。
+
|
現状見取り図 |
マスター |
藤丸立香 |
不在 |
芸術のアーチャー |
エロイカ |
|
芸術のキャスター |
ミロのヴィーナス |
|
セイバーの芸術幻霊 |
ID藤丸立花 |
|
アーチャーの芸術幻霊 |
九相図眼球譚 |
脱落 |
ランサーの芸術幻霊 |
塔&青騎士 |
撃破 |
ライダーの芸術幻霊 |
サモトラケのニケ |
|
キャスターの芸術幻霊 |
ロゼッタ・ガイド |
撃破 |
アサシンの芸術幻霊 |
ブレイクタンゴ |
脱落 |
バーサーカーの芸術幻霊 |
キュビズム・フォーヴィズム |
撃破 |
芸術のフォーリナー |
プロメテウス |
|
芸術のアサシン |
ベルフェゴール |
|
|
最終更新:2018年09月03日 21:42