ミロビちゃんに足で射出された僕は、前方からの風圧を感じながら飛ぶ。
必殺技というか、正直賭けのようなものだ。
この賭けを通さなければ、僕達はフォーリナーに遊びで焼かれて死ぬ。
鉛の沸点はおよそ1700度。炎を通り抜けるまでの一瞬に弾丸は残らず消えているので、最低でもそれ以上。プロミネンスと彼女は言ったが、実際の太陽のそれの温度は数万度。
そんな高温のものが間近にあったらば、周囲のものもただではすまない。何もかも蒸発してしまうはずだ。
おそらくあれは炎ではなく、炎状の高温。結界を振り回しているのに近いだろう。僕の見立て、というか、希望的観測では。
その結界を破ることができたならば、それまでコントロールできていた熱が漏れ、フォーリナーごとどころか、美術館全部が一瞬で焼けてしまうだろう。勿論僕やアーチャー、ミロビちゃんも。
例えるなら、フォーリナーはビニール袋に入った水を振り回しているのだ。
ビニール袋に穴を開ける。
僕は、ミロビちゃんに蹴飛ばされてからフォーリナーの懐に突っ込むまでの一秒間に、僕の真名を思い起こす。
ID藤丸立香。
もう一つあるはずなんだ。僕は剣を使って何かしたことなんて今までにない。
セイバーになるなら、セイバーたる所以が必要。
アサシンは人理を切り拓いたとかのたまわっていたが、あんなのはただの言葉遊びで、何かあるはずなんだ。
僕は何かしらの剣の幻霊と融合されている。
塔と青騎士。
ロゼッタ・ガイドはロゼッタ・ストーンとガイドブック。
キュビズム・フォーヴィスム。
ニケちゃんはクリスタル・スカル。
僕も芸術幻霊なのだから、彼らと同じはず。
この身の片割れの「剣」を取り出せ。
僕は落ち着いて、息を吐いた。眼前にフォーリナーの無表情が迫る。
見つけろ。僕の剣を。
聖剣エクスカリバー。魔剣グラム。カラドボルグにデュランダル。
今までの旅の中で、様々な武器に出会ってきたが、イメージできた剣は一つだった。
必要になった際には自然に名前が出てくるものなのだなと感じる。
落ち着いて、落ち着いて、手を前に伸ばした。
スローモーに動くフォーリナーが、視界を確保するために目を擦っていた左腕を上げ、僕を視認する。
枝からの炎で僕を迎撃するために右腕を振り上げる。
一瞬後に融かされプラズマになる僕だったが、不思議と大丈夫だという自信があった。
落ち着いて、息をもう一度吐いて。
僕は、僕の宝具に呼びかける。
兵の闘に臨む者は皆陣烈の前に在れ。
「『九字兼定』」
それは、いつかの日に目にした刀。
オガワハイムでの小事件の際に少女が手にしていた刀。
出会ったというのは大袈裟な、ただ一度すれ違っただけの刀で、僕の半分は構成されていた。
あの少女は、どこかで、この刀をもって大きな結界を破ったことがあったのだろう。
宝具の逸話は、そちらから引用されたものなのかも。
故に、対結界宝具。
僕の必殺技が、襲い来るフォーリナーの炎を裂く。
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現状見取り図 |
マスター |
藤丸立香 |
不在 |
芸術のアーチャー |
エロイカ |
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芸術のキャスター |
ミロのヴィーナス |
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セイバーの芸術幻霊 |
ID藤丸立花 |
|
アーチャーの芸術幻霊 |
九相図眼球譚 |
脱落 |
ランサーの芸術幻霊 |
塔&青騎士 |
撃破 |
ライダーの芸術幻霊 |
サモトラケのニケ |
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キャスターの芸術幻霊 |
ロゼッタ・ガイド |
撃破 |
アサシンの芸術幻霊 |
ブレイクタンゴ |
脱落 |
バーサーカーの芸術幻霊 |
キュビズム・フォーヴィズム |
撃破 |
芸術のフォーリナー |
プロメテウス |
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芸術のアサシン |
ベルフェゴール |
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最終更新:2018年09月03日 21:44