まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

02話 - 半分は優しさで出来ている

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f29m1

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ゴウカザル
「なあ、お前……、なんて名前だ?」
ナマケロ
「……」

 ガン無視かよ。オレは今、隣のベッドに寝ているナマケロ♀とのコミュニケーションを図っている。ブスだらけのボックスに居場所を見つけようと、オレなりに必死なわけで。

ゴウカザル
「おい、聞こえてんだろ?」
ナマケロ
「……えー……、ウチのこと?」
ゴウカザル
「他にいねえだろが。名前、教えろよ」
ナマケロ
「て、いうかぁ……、あんた誰えー?」

 一ヶ月以上も隣のベッドに寝てて、オレの存在に気付かなかったってのか? あきれた♀だな……。いや、落ち着け。ここでデリカシーのない♂と思われてはいかん。

ゴウカザル
「オレは『ひでよし』ってんだ。ここに来たのは"最近"だから知らなくても仕方ねえよな」
ナマケロ
「ふぅ~ん……」

 なんか他にリアクションはねえのかよ。つうかお前も名乗れ。

ナマケロ
「ウチはぁぁ……、なんかぁ、寝てたらぁ~ぁ……、いつの間にかぁ連れてぇこられててぇ~」

 だああイライラする! もっとハキハキ喋れねーのか。オレの『友達の輪大作戦』は早くも挫折しちまいそうだ。

ナマケロ
「ねぇ~、ドンちゃんもそうだよねぇ~」
ヤドン
「んぁ」

 ナマケロのベッドの下から新顔があらわれた。……いかん。こんな2匹と一緒にいたら、ノロマが感染しちまいそうだ。
 オレがベッドから降りようとすると、また別の奴が入って来やがった。

コダック
「……あ、あたま痛い……」

 そのまま前のめりに倒れちまった。少し驚いたが、起こしてオレが寝ていたベッドに運んでやった。それから頭痛薬に水……。冷てえ水は身体が冷えるからな、湯をちょっと足して……。暖房は適温だな。毛布は一枚でいいか。

ゴウカザル
「って、なんでオレが看病しなきゃなんねーんだ!? ハナさん(ダイノーズ)はどこ行ってんだよ」
ナマケロ
「ハナちゃんはぁ~、トレーナーさんがぁ連れていったぁよおぉ~」
ゴウカザル
「はあ? 聞いてねーぞオイィ」
コダック
「……たしか、ハードなんとかって山に……痛たた……、はやくお薬……」

 ちょ、オレ涙目www
 ハードマウンテンつったら炎ポケのすくつ(←なぜか変換できない)だろうが。ちくしょう、オレも行きてえよ……。

ヤドン
「んぁ」

 あまりのショックに薬を出すのも忘れ、うなだれるオレの肩にヤドンが手を置いた。

ナマケロ
「あ~、ドンちゃん……、『元気出しな』だってぇ」
ヤドン
「んぁ」
ゴウカザル
「おまえ……、慰めてくれてんのか」
ヤドン
「んあっ」

 なんかわかんねーけど、こんな感激したことは初めてな気がする。トレーナーに忘れられても、オレには仲間がいる……。それで充分だぜ。
 オレは少し腫れた目をこすり、コダックに頭痛薬を出してやった。成分の半分は、オレの優しさで出来てる薬をな。

 あ、結局ナマケロの名前を聞きそびれちまったぜ。まぁいいや。
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