まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」
02話 - ボックス生活、始まる
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f29m1
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バクフーン
「う……ん……」
???
「あ、気がついた?」
寝ころぶ彼を覗き込むようにあるポケモンが見ていた。
ピカチュウ♀
「起きたよ、ルージュラさん!」
ルージュラ
「あら、ほんと?」
バタバタと音を立てながらルージュラ。そしてその後ろからプクリン♀がついて走ってきた。
皆彼に興味津津で、色々な角度からじろじろと凝視し、そのまま2匹同時に彼に質問を浴びせる。
どうすればいいかわからず、彼は戸惑った。それを察したルージュラは2匹を止め、ある提案をした。
皆彼に興味津津で、色々な角度からじろじろと凝視し、そのまま2匹同時に彼に質問を浴びせる。
どうすればいいかわからず、彼は戸惑った。それを察したルージュラは2匹を止め、ある提案をした。
ルージュラ
「そろそろ朝ごはんの時間だしさ、取り敢えず広場に行きましょ。話はそこからでもいいじゃない。ね?」
ピカチュウ
「え、もうそんな時間?」
プクリン
「あ、ほんとだ。じゃ、いこっか。ほら、君も♪」
2匹はバクフーンの腕を掴み、中央の広場へと引きずっていった。
その様子を後ろから笑いながらじっとルージュラは見ていた。
その様子を後ろから笑いながらじっとルージュラは見ていた。
中央に広がる広場で多くのポケモン達がグループを作ってフーズを食べている。
彼らも広場の一角に輪になって座り、ポケモンフーズを食べ始めた。
口をもごもごと動かしながら、ピカチュウはバクフーンにある質問をした。
彼らも広場の一角に輪になって座り、ポケモンフーズを食べ始めた。
口をもごもごと動かしながら、ピカチュウはバクフーンにある質問をした。
ピカチュウ
「バクフーンさんって、どこのボックス出身ですか?」
バクフーン
「俺か? 俺は、“げんせん”ってボックスだが……」
ピカチュウ
「ええ!? げ、げんせんですか!?」
厳選。数百、数千の中から選ばれたエリート中のエリート。そこから彼は来たというのだった。
驚きを隠せず、3匹は眼を丸くしてバクフーンに視線を集める。
驚きを隠せず、3匹は眼を丸くしてバクフーンに視線を集める。
プクリン
「ええ~、なんか信じられな~い。バクフーンさんってもっと“ものがたり”辺りの出身かと思った」
バクフーン
「……それ、どういうことだよ」
プクリン
「いや、だって“げんせん”って超エリートじゃん? だからもっと硬派なイメージかと思ってたの」
バクフーン
「別に、そんな事ねえよ。お前のそれは“げんせん”じゃない、ただの“へんけん”だ」
うまいことを言ったつもりなのか、彼はどこか満足したような笑みを浮かべる。
しかし、辺りは凍りつき、冷ややかな目で彼を見つめていた。
しかし、辺りは凍りつき、冷ややかな目で彼を見つめていた。
プクリン
「あ、えっと、君ってげんせんの出なんでしょ? レベルってドンぐらいなの?」
ピカチュウ
「何いってんの、あの“げんせん”だよ? きっと100だって!」
バクフーン
「50だが」
ピカチュウ
「え? ご、50って、私以下じゃん! よっわ」
バクフーン
「しらねーよ。なんか50戦が云々とか言ってたが……」
プクリン
「そんな事言って、ただ育てるのに飽きられただけじゃないの? だってあんた、育てても弱そうだし」
バクフーン
「試してみるか?」
プクリン
「望むところじゃない!」
2匹はテーブルを境ににらみ合った。
両者1ミリも視線を動かそうとせず、しっかりとお互いの顔を捕えている。
両者1ミリも視線を動かそうとせず、しっかりとお互いの顔を捕えている。
──バシン。乾いた音が辺り一帯に響き渡り、皆の注目を集める。ルージュラが2匹の頬を思いっきり叩いたのだった。
バクフーン
「ってえな、なにすんだ!」
ルージュラ
「いいから落ち着きなさい。いきなり喧嘩なんて、……しかも相手は女の子よ?」
バクフーン
「先に吹っかけてきたのはあいつじゃねえk」
ルージュラ
「お黙り! さっさと飯食って、ボックス長に挨拶に行くわよ!」
バクフーン
「……ッチ」
ガタンと大きな音をたてて椅子に荒々しく腰掛けた。
4匹は食事を再開した。会話もろくにないまま、ルージュラがいち早く食べ終わり、席を立った。そのまま右隣のバクフーンの後ろに回り込み、食べている姿をじっと見つめる。後ろから感じる刺すような視線。
早く食べ終わらないと。彼はそう思って手を早めた。まだ有り余っているポケモンフーズをハムスターのように一気に頬張り、皿を空にした。
4匹は食事を再開した。会話もろくにないまま、ルージュラがいち早く食べ終わり、席を立った。そのまま右隣のバクフーンの後ろに回り込み、食べている姿をじっと見つめる。後ろから感じる刺すような視線。
早く食べ終わらないと。彼はそう思って手を早めた。まだ有り余っているポケモンフーズをハムスターのように一気に頬張り、皿を空にした。
ルージュラ
「食べ終わったわね。じゃ、行くわよ」
何も答えない。答えられない。
今にも吹き出しそうなポケモンフーズを手で押さえながら首を縦に動かした。
今にも吹き出しそうなポケモンフーズを手で押さえながら首を縦に動かした。
ルージュラ
「あんたも喧嘩を吹っ掛けた罰よ。皆の食器の片付けお願いね」
プクリン
「はいはーい」
(最初に言ったのはピカチュウなのに……)
(最初に言ったのはピカチュウなのに……)
2匹は広場を後にして、ボックス長がいるという部屋に向かって歩いた。
周りの部屋より一際大きい扉の前に2匹は立っている。
扉が大きいだけ。のはずなのにどこか威圧感があった。
ルージュラは何も言わずにギィッと扉を開き、リーダーの部屋とは思えないぐらい堂々と部屋に入って行った。それの後をやっとの思いでポケモンフーズを飲み込んだバクフーンがついて行く。
扉が大きいだけ。のはずなのにどこか威圧感があった。
ルージュラは何も言わずにギィッと扉を開き、リーダーの部屋とは思えないぐらい堂々と部屋に入って行った。それの後をやっとの思いでポケモンフーズを飲み込んだバクフーンがついて行く。
水。あたり一面水だった。
2匹が来たのを察したのか、入ってから間もなく中から水槽に波を作りながらポケモンが姿を現した。
2匹が来たのを察したのか、入ってから間もなく中から水槽に波を作りながらポケモンが姿を現した。
ルージュラ
「ラっちゃん。新しいボックス民増えたわよ!」
ラプラス♀
「ルージュラ、それはやめてください。……恥ずかしいですから。普通にラプラスって呼んでください」
ルージュラ
「もう、固いよ! あ、そうだ。こいつが、新しい子のバクフーンよ」
バクフーン
「あ、はあ。どうも……」
ラプラス
「そんなに固くならないでください。長、と言っても所詮はただの肩書ですから」
バクフーン
「は、はい」
固くなるな。という方が無理だ。温厚そうな性格だが、なにか違うものを持っていた。近づくのすら恐れ多いようななにかが。
ラプラス
「どうも、ラプラスです。ここは特に何もない所ですが、ゆっくりして行ってください」
バクフーン
「は、はあ……」
ラプラス
「それと、ルージュラ、あれを」
ルージュラ
「ほいさ」
バクフーン
「これは?」
ルージュラ
「このボックスの見取り図と、それぞれに住んでるポケモンの名前よ。まあ、参考程度に持っとくといいわ」
バクフーン
「ふーん」
ラプラス
「ルージュラ、すみませんが出て行ってもらえませんか?」
ルージュラ
「わかったわ」
じゃあね。と手を振りながら廊下に出て、バタンと扉を閉める。
2人っきりになってしまった。どこか張りつめた空気が辺りに漂っている。
2人っきりになってしまった。どこか張りつめた空気が辺りに漂っている。
ラプラス
「バクフーンさん。このボックスに来る事だけは大歓迎です」
バクフーン
「どうも」
ラプラス
「ただ……」
バクフーン
「ただ?」
ラプラス
「ここのボックス、特に小さい子はあまり刺激しないでください。襲ったりなどしたら……許しませんから」
今までおっとりとしたラプラスの目が一瞬にして鋭く変わった。
その眼で睨みつけられて、バクフーンの体を縛り付ける。
彼の頬を伝って汗が垂れ落ちる。
その眼で睨みつけられて、バクフーンの体を縛り付ける。
彼の頬を伝って汗が垂れ落ちる。
ラプラス
「わかりましたね?」
バクフーン
「は、はい!」
ラプラス
「私からの話は以上です。では」
バクフーン
「さ、さようなら……」
鋭い視線を柔らかくして、彼を束縛から解放した。
緊張が一気に解けたせいか、足の力がフッと抜けてその場に座り込んだ。一刻も早く逃げ出したい。その一心で彼は急ぎ足で部屋から駈け出した。
緊張が一気に解けたせいか、足の力がフッと抜けてその場に座り込んだ。一刻も早く逃げ出したい。その一心で彼は急ぎ足で部屋から駈け出した。