乳首に軽い痛みが与えられる。股間の茂みは完全に濡れ尽くし、滴れた露はシーツに染みて背中にまで回り始めている。 「桃色だね」 下の毛を撫でながら耳元でサイトが囁く。 「キス、して」 唇が触れる。頬、額を撫で回してあげると、興奮で強張った表情をしているのがわかる。 ふと、のしかかっていた体重が軽くなる。私は慌てて抱き締める。はずみなのか狙われていたのか、体内にサイトが体を埋めてくる。私は必死でしがみつく。サイトの体を撫で回す。サイトを知りたいから。たとえ不自由な体でもサイトの全てが欲しいから。 サイトの動きが瞬間、止まった。離れようとするサイトを全身で、そう、膣まではしたなく収縮させて逃がさなかった。 遂にサイトの種が中に注がれる。思わず泣いてしまう。サイトの雫を胎内に受け入れられて。 「ルイズ」 サイトは離れると私を抱き上げ、体を温かいタオルで拭いてくれた。興奮が収まると靴下、パンツを履かせてくれる。脇の下を覗いてムダ毛を確認し、丁寧に剃刀をあててくれる。 「これ、何色?」 着せられたドレスについて聞くと、薄い水色だと答えが返ってきた。今日は大切なハープの発表会だ。見苦しい服装はできない。でもサイトに任せたから大丈夫。私のことはサイトが一番知ってる。とくに見た目なら誰よりも、私自身よりも。 盲目の、私よりも。
虚無に蝕まれていることに気付いたのは手遅れになってからだった。気付いたとき、私の眼球は既に何の像をも結ばなかった。 私は虚無のルイズからゼロのルイズに戻った。戦うことはもちろん、政治の書類すら読めずに貴族の禄を受けて生きるのはあまりにつらかった。だから私はハープの腕を磨いた。私と使い魔の食い扶持は自分で稼ぐ。今は貴族の子弟の教師と音楽家として生きているのだ。 「サイト、杖」 サイトは私の手に長い杖を握らせる。地面を探りやすい杖だ。そっと彼の頬にキスをしようとして、既に馬車の気配が近づいていることに気付く。私は照れ隠しに、彼が肩に回そうとした手を杖で打った。
「誰の子です」 母の詰問に私は答えず、自分の大きくなったお腹を手でかばった。 「シュバリエ・サイトだろう?身分はあれだが悪い男ではないと思うぞ?何せ盲目のお前に尽くして」 「使い魔が尽くすのは当たり前。私は犬の子なんて生むはずがないわ」 二人の戸惑いを感じる。サイトの緊張を背中で感じる。ごめんね、と心の中でサイトに謝りながら両親 には乱暴な言葉を浴びせかける。 結婚なんてできない。異世界から来たサイトを縛り付けるわけにはいかない。盲目だからって同情なん ていらない。 でも、愛は欲しいなんて私はわがままかな。
「ルイズ!」 サイトがシエスタを突き飛ばす音が聞こえる。顔が熱い。魔法薬で顔が焼ける。皮膚が爛れていく。 「見ないで!」 私は顔を隠してサイトを突き飛ばした。崩れた顔を見られたくない。 「見ないよ。一生見ないよ。俺の知ってるのは、かわいいルイズだけだ」 「相棒!」 私の手に何か液体が掛かった。恐々舐めてみる。鉄の臭いがする。 「サイ……ト?」 「俺もこれで、ルイズと同じだ」 サイトの顔を撫でた。目の周りを撫でると、手が血で濡れていた。 「サイトーッ!!」
目を開ける。見慣れた部屋が目に入る。今の私は……魔法学院の生徒。 体がぐっしょりと汗で濡れていた。下半身にはかすかに違う湿りを感じる。昨夜、陛下からいただいたサイトの国の本が枕元に転がっていた。サイトに渡すまで手放せないと必死になりすぎたみたい。もしかしてこの本のせいで変な夢を見たのかしら。 「ただいまー」 野盗が物騒だとシエスタを実家に送っていたサイトが帰ってきた。 「おしぼりちょうだい」 「なんだそれ。ってか俺も休みたいんだけど」 「変な夢を見たせいで汗びっしょりなの!陛下からあんたの国の本貰ってんだからつべこべ言わない!」 サイトは慌てて飛び出しすぐにタオルを持ってきた。私は全身を拭くように指示する。拭き取るタオルが足の付け根に到達したとき、私は尋ねた。 「もし私の目が見えなくなったら、言わなくてもこうやってきれいにしてくれる?」 サイトは怪訝な表情を浮かべ、でも、当然だろ、と言ってくれる。私は再び言った。 「拭いて。優しくね」 足をそっと開き、手を伸ばしたサイトの首に口づける。タオルを離したサイトの手が、まだ拭いてもらっていない二つの窪みを優しく撫でた。