ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

偽愛! 素直クールに萌えろ! その②

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偽愛! 素直クールに萌えろ! その②

朝起きたら何もかも元通りになってないかな、と思った。
昨晩見たあれはすべて夢で、承太郎は今日も無愛想で寡黙でクールで。
「ルイズ、おはよう」
おはよーなんて言葉、承太郎の口から初めて聞きましたよ。
とルイズは昨晩の出来事が夢ではない事を確認しながら、ベッドから起き上がった。
「……おはよう」
この承太郎をどうしたものかと頭を悩ませながら、ルイズは朝の身支度を整えた。
頭が変になっても承太郎は承太郎らしく、
着替え中はちゃんと自分から部屋を出て行ってくれた。
ベッドの下に放り捨てられていたデルフリンガーもしっかり回収してだ。
その時「覗きなんざこの俺が許さねー」とか凄んでたりする。
また、朝食は厨房ではなく食堂で摂ろうとついてきて、クラスメイトを驚かせたりした。
ちなみにギーシュはモンモランシーを必死に口説いている。
昨晩急に姿を消した事を心配していたのだが、
なぜか朝会ってみたら妙によそよそしかったと、教室でギーシュは説明してきた。
「……そういえば、あの時モンモランシーも一緒にいたのよね。
 ジョータローがおかしくなった原因に何か心当たりないかしら?」
「ルイズ。俺は少しもおかしくなってねーぜ」
「……そう?」
確かに今は普段通りに見える、ような気がするけど、何か違う。
いつもより半歩ほどルイズに近づいて立ってるような気がするし、
眼差しが柔らかいというか優しいというかギーシュっぽいというか。
「どう思う? ギーシュ」
「今は普段通り見えるんだが、一晩眠ったら治ったんじゃないか?」
「だといいんだけど……」

異変が顕著に現れたのは、授業後になってから。
今日に限ってなぜか承太郎もギーシュも厨房に来なかったため、
どうしたのかなと思ってシエスタがわざわざ寮まで様子を見に来たのだ。
「ジョータローさん、今日は何か用事でもあったんですか?」
「いや……ただルイズの側にいただけだぜ」
その瞬間シエスタは戦闘体勢に入ったーッ!

今……この学院にキュルケとタバサはいないすなわちッ!
ツンデレ・ルイズ! ブラック・シエスタ!
一騎討ち!!

承太郎を挟んでルイズとシエスタが火花を散らす。
「ミス・ヴァリエール……一緒にいる時間が多いからって、なかなかやりますね」
「いや、特に何もしてないんだけど……」
「でも私とジョータローさんはマフラーの暖かい糸で結ばれているんです!」
無言で承太郎はマフラーをシエスタに渡した。
唐突すぎてその行為の意味を理解できずシエスタは首を傾げる。
「シエスタ、悪いがこいつは返すぜ」
「え」
ピシッ、とシエスタは真っ白に固まりヒビが入った。
黒が白に染まる時、それは敗北を意味する。
「ど、どうして……」
「悪いが……ルイズの前で他の女からもらった物を身に着けたくねーんでな」
「なっ!!」
「えっ!?」

この発言にはルイズも一緒に驚いて顔を真っ赤にしてしまう。
一方シエスタは涙目になってマフラーを抱きしめ走り去ってしまった。
「うわぁ~ん!」
泣きながら。
ちょっぴりシエスタに悪い気もしたが、それ以上にルイズは浮かれていた。
つまり承太郎はシエスタより自分を選んだのだ。感激であるハッピーである。
「じょ、ジョータローにもようやく、つつ、使い魔の自覚ができてきたのかしら」
「もちろんだ。俺はルイズの使い魔だぜ、おめー以外は目に入らねー」
「ほほ、ホントに? ホントにそう思ってる? 心から」
「俺が……嘘をつくと思うか?」
「『ああ嘘だぜだがマヌケは見つかったようだな』とか言うつもりじゃないでしょうね」
「ルイズ。お前が俺をどう思おうと、俺の気持ちは変わらない……」
「ああああ、あんたの気持ちって、なっ、何よ」
期待と期待と期待と期待と期待に平らな胸をふくらませてルイズは彼の言葉を待った。
「おめーは俺を惚れさせ――」
「こりゃ駄目だね。魔法で心をやられてら」
が、その言葉は無粋な声にさえぎられた。声は承太郎の背中から出ていた。
「で、デルフ!? ちょっと、今のどういう意味よ!?」
「いやね、こうやって身に着けられてたら、そいつの事は何となーく解んのよ。
 こいつ、魔法で精神を操られてるわ。水の魔法かねぇ? それとも一服盛られたか」
「一服盛られ……?」
次の瞬間、ルイズは部屋から猛ダッシュで駆け出してしまった。
一人残された承太郎は、いい場面を邪魔したデルフリンガーをぶん殴ったとか。

アンロックの魔法でモンモランシーの部屋の戸は問答無用で開錠された。
そして目をギラつかせて入ってくるルイズ。
いったい何事かとモンモランシーと、ギーシュが目を丸くして彼女を見た。
「る、ルイズ? ノックも無しに失礼じゃないのかい?
 というか鍵をかけてあったのに、どうやって開けたんだ?」
「あらギーシュもいたの。実は最近簡単なコモンマジックは使えるようになったのよ」
虚無の魔法を覚えてから、ルイズは説明の通りコモンマジックを習得していた。
ようやく自分の系統を見つけたからこその成長といえよう。
だがそんな事、今はどうでもいい問題だった。
「ところでギーシュ、昨日の夜の事なんだけど」
「昨日の?」
「あのワイン、何か変な物入ってなかったでしょうね」
「ははは、まさか。あのワインはモンモランシーが僕のために用意してくれたんだ。
 変な物が入ってる訳ないじゃあないか。ねえ、モンモランシー?」
笑顔で振り向くギーシュ。苦笑で顔をそむけるモンモランシー。
その対照的な反応を見て、ルイズは『犯人』が誰であるか、頭でも心でも理解した。
一方ギーシュも、モンモランシーが冷や汗を垂らしている事に気づき眉をひそめる。
「ど、どうしたんだいモンモランシー?
 まるで『ワインに何か入れてました』みたいな顔をして……」
「ギーシュどいてそいつ爆発させられない」
ルイズが杖を構えると、ギーシュは慌てて身を引いた。
本当に土くれのフーケを倒した男かと疑問になるくらいうろたえている。
「も、モンモランシー。まさか、君は……」
「あなたが勝手に飲ませたんじゃない!」
ついにモンモランシーは白状した。あのワインに何か入っていたのは確定事項だ。
それを飲まされそうになっていたギーシュは顔を真っ青にする。
「いいい、いったい何を入れたんだい!?」
「ギーシュがいっつも浮気するから悪いのはギーシュよ!
 土くれのフーケをやっつけたなんて『デマ』まで使って女の子の気を引いて!」

顔を真っ赤にして怒鳴るモンモランシーの迫力は相当のものだった。
だがそれ以上に迫力のある顔でルイズが怒鳴り返した。
「ギーシュの事なんか『どうでもいい』のよ! ワインに何を入れたの!?」
「……惚れ薬よ」
「ほ……惚れ薬ですって!?」
「お、大声で言わないでよ! 禁制の品なんだから……!」
どうやらデルフリンガーの言っていた事は正解らしい。
承太郎の様子がおかしいのは、薬を盛られたからなのだ。
モンモランシー曰く、ギーシュにこれ以上浮気させないため自ら調合したらしい。
それを聞きギーシュは感激した。
「ああ! モンモランシー……そんな薬に頼らなくても、僕は君の虜さ!」
「ななな、何勘違いしてるのよ! べ、別にあんたとつき合ってるのなんて暇潰しよ!
 ただ浮気されるのが嫌なだけで、仕返ししてやろうと思っただけなんだから!」

このモンモランシー実にツンデレである。

そしてそのデレっぷりを垣間見たギーシュは思いっきりモンモランシーを抱きしめた。
「僕が浮気なんてする訳ないじゃないか!」
「してるじゃない!」
キィーンッ、という甲高い金属音が響いた。ギーシュの脳内だけで。
モンモランシーの膝がギーシュの股間にめり込み、男にしか解らない痛みが炸裂。
まさに黄金色の波紋疾走。
口を縦長に開いて唇を引ん剥き、白目になって脂汗を垂らすギーシュは、
瞬間最大風速とはいえマルコリヌのブサ顔を超越していた。
その場に崩れ落ちるギーシュを無視して、というか頭を踏んづけて、
ルイズは身を乗り出してモンモランシーを睨みつけた。

「ジョータローを元に戻しなさい」
「そのうち治るわよ」
「そのうちっていつ?」
「個人差があるから一ヶ月から一年くらい」
「ふざけないで。今すぐ何とかしなさい」
「生憎だけど解除薬作るお金がもう無いの。高価な秘薬が必要なのよ。
 惚れ薬を作る時に全部使っちゃったし、どうしようもないわ」
「じゃあ実家に頼んでお金を送ってもらいなさい」
「あんたの公爵家と一緒にしないでよ! うちにそんな余裕は無いわ!」
そういえばド・モンモランシ家は干拓に失敗して領地の経営が苦しいと聞く。
ついでにグラモン家も出征のたびに見栄を張りまくって金欠らしい。
となると、この二人は資金面では期待できない。
仕方ないとばかりにルイズは金貨の入った袋を取り出した。
(姫様。ジョータローのために、このお金使わせていただきます)
心の中で感謝の祈りを捧げ、袋を開ける。
モンモランシーは中身を覗き込んで目を丸くした。
「500エキューはあるじゃない。さすがラ・ヴァリエール……」
「これで秘薬を買って、明日中に何とかしなさい。
 それとこのお金はとある方からいただいた、とても大切なお金なの。
 1エキューたりとも無駄遣いしてみなさい。ただじゃおかないわよ」
渋々といった様子でモンモランシーはうなずいた。

部屋に戻ると、承太郎がデルフリンガーを踏みつけていたのでとりあえずなだめた。
それからルイズは改めて承太郎の様子を観察する。
惚れ薬を飲んだという事は、つまり自分に惚れている訳で。
「ね、ねえジョータロー。私の事、好き?」
などと試してみたくなるものだ。
「ああ。好きだぜ」
素直にクールに恥ずかしげもなく答える承太郎を見て、
逆にルイズは猛烈に恥ずかしくなってベッドの中に逃げ込む。
(明日になれば元通り明日になれば元通り……。解除薬は別に明後日でもいいかな?)
なんて考えながら、ルイズは眠りについた。


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